紅と桜~想いの交差~
雨泉 洋悠
何よりも、こういう事に普通に喜んでしまっている自分に、少し戸惑う。
目の前のテーブルには、一人で食べるには、大き過ぎる、ピンク色のスイーツ。
その向こう側、私の向かいの席に座るのは、格好良い、にこちゃん。
自意識過剰かな、にこちゃん、その凛々しい横顔が、ちょっと照れているようにも、見える。
私みたいに、少しは、嬉しいって、思ってくれて、いるのかな。
私は未だに、やっぱり自分の気持を素直に表現するのが苦手で、結局今も、この状況をセッティングしてくれたことり先輩に、非難の声をあげちゃったりして、本当は凄く嬉しいのに、ありがとうって、当たり前に言えるようになれたら、良いのに。
本当はもっと、素直になりたい、にこちゃんと一緒に居たいって、ちゃんと言えるようになりたい。
私なんか、正直まだまだ子供で、格好悪いところを時には見せつつも、ちゃんと先輩で、部長で、大人なにこちゃんは、本当は私からとっても遠くて、時々焦っちゃう。
にこちゃんは、何時だって格好悪い時も含めて、全部が素敵だから、こういう時にも大人な態度でいられる私の方が良いかなとか、気持ちバレバレになっちゃうのは恥ずかしいとか、色々考えちゃう。
今日だって、お昼ごはんの時も、放課後も、私の方からにこちゃんのところに押し掛けちゃって、にこちゃんはそういう時は大体は先輩らしくて、大人な感じで、いつも押し掛けちゃう側の自分の子供っぽさが恥ずかしくなったりもする。
でも、しょうがないの、私が、にこちゃんの傍に、いたいから。
そんな私の気持ち、にこちゃんには迷惑じゃないかな、鬱陶しかったりしないかな、大人なんだから、にこちゃんだって、一人で居たい時があるんじゃないかな、そう思ってしまう時もある。
でも、やだ、やっぱり探しちゃう。
何処かに一人で居るにこちゃんなんて、私が嫌だから。
にこちゃんは、あんなに可愛くて、素敵なんだから、いつでも皆が居る場所に、私が居る場所に、いつでも笑顔で居て欲しい。
あれ、そう言えば、今日にこちゃんと二人で部室に向かっている時に、この状況の首謀者の顔を見たような気もする。
この状況は嬉しいけれども、そんなバレバレなのは、やっぱり恥ずかしい。
ああ、何か凛と花陽が何だか暖かな優しい目をしてこっちを見ているのも、更に恥ずかしい。
二人にはもう、どう隠したってバレてるもの。
だって、何時もお昼と放課後に、にこちゃんのところに向かう私の姿が、どう頑張ったって二人には、全部見えちゃうんだもの。
ああ、希先輩もこっち見てる。
希先輩、その何時だって深い、エメラルドグリーンの瞳で、いま、誰を優しく見つめているの。
何時も希先輩が、誰の事を気に掛けていて、誰の事を見ているのかなんて、私でも解る。
二人には、私が知らない、私が踏み込んではいけない、二人だけの絆がある。
それは、本当は、私が、欲しかったものかも、知れない。
どうすれば、にこちゃんを、希先輩みたいに、にこちゃんを私が、受け止められるようになるのかな。
まこちゃんの時みたいに、まだまだ、私はにこちゃんに引っ張ってもらってばかりだ。
私は、私ののぞみは、にこちゃんと、同じ場所に、にこちゃんと同じ高さで、傍にいたい。
子供っぽいだけの私じゃなくて、ちゃんとにこちゃんの全部を受け止められる、にこちゃんと同じぐらいの、大人になりたい。
にこちゃんと同じ目線で、話せる自分になりたい。
あ、海未先輩、やっぱり素敵ね。
にこちゃんもそっち見てる、一緒に曲を創る時の海未先輩もそうだけど、やっぱり海未先輩も格好良いと思う。
ことり先輩も、女の子らしくて素敵だし、二年生の三人は、私をここまで導いてくれた大切な人達。
穂乃果は何となく、まこちゃんに似ているから、友達感覚になっちゃうけれども、あの日からずっと私にとっては、にこちゃんとはまた別の意味で、やっぱり特別だ。
穂乃果が居なかったら、きっとにこちゃんに会えないままで、そんな可能性、考えたくもない。
にこちゃんだけでなく、私は穂乃果も、ずっと大切にしていきたい、そう思う。
私は穂乃果が居なかったら、きっとにこちゃんを見付けてあげる事が、出来なかった。
それが、少し、悔しかったりもするけれども、今もまだ一人で居たかもしれない、にこちゃんの可能性を思えば、私はやっぱり穂乃果が居てくれて、良かったなと思う。
いつの間にか、にこちゃんがこっちに向き直っていて、私の、海未先輩に感心している顔を見られちゃった、またもやちょっと恥ずかしい。
この状況、どうすれば良いのかな私、私はもちろん、にこちゃんは、どうなのかな。
ことり先輩は、既に私達の傍から離れて、他のお客様の接客に向かっちゃった。
凛と花陽も、もうあんまりこっちを見ないようにしているみたい、気遣ってもらえてるのかもしれないけれども、私としてはちょっと心細い。
希先輩も、さっき格好良い笑顔を見せた後には邪魔をしないように見たいな感じになってる。
何だか、何時もと違って、こんな風ににこちゃんと二人きりにされると、嬉しいのに、どうしたら良いのか、解らなくなる。
私は、眼の前のスイーツとにこちゃんの顔を交互に見つめる、恥ずかしくて、顔から火が出そう。
にこちゃんも、ちょっとだけ赤くなっている気がする。
ちょっと色っぽい、赤色に染まる、にこちゃん。
ああ、やっぱり、可愛いなあ、にこちゃんは。
「ま、全くねえーにこと真姫ちゃんの前にこんなもの置いていくなんて何考えているのかしらねーサービスです、何て言っちゃって」
にこちゃんが、そんな風に話をふってくれる。
何時もの、格好良いにこちゃん。
「そ、そうね。ことり先輩は意外と無茶なことをするというか、突拍子も無いことをしてくるわね」
私は、そんなにこちゃんの前では、少しだけ素直になれる、そんな気がするの。
「ま、まあ真姫ちゃんが嫌なら、別に無理に二人で飲む必要も無いのよ?にこだって無理には……」
こんな風に、にこちゃんは私の扱いが、もう、凄く上手なの。
「嫌じゃない!そ、その、飲まないなんてもったいないし……」
何時ものにこちゃんの香り、私の心に、届いてくる。
嬉しいな、にこちゃんとこんなことが出来る日が来るなんて、思っても見なかった。
ことり先輩に感謝かな、ことり先輩は、私の事も、にこちゃんの事も、他の皆の事も、ちゃんと見ていて、やっぱり凄いなと思う。
にこちゃんは、大人だから、本当はこう言うの嫌かもしれないけれども、やっぱり私は、にこちゃんとこういう事もしたい。
これからも、ずっと、にこちゃんと、一緒に、居たい。
可愛いにこちゃん、格好良いにこちゃん、優しいにこちゃん、素敵なにこちゃん。
色んなにこちゃんと、穂乃果のお陰で一緒に居る事が出来て、一緒の場所で、一緒の場所を目指せることが、私にとってそれが、とても幸せなことなの。
次回
幸せ
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今日はもう放送がないんですねえ…。
寂しいですがまだまだTVアニメが終わっただけですから色々楽しみながら映画を待ちたいところです。
取り敢えず後3回ぐらいこのまま続けた後で、
にこちゃんと真姫ちゃんのために、
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