No.698414

ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』

piguzam]さん

只付き合わされて料理食った訳でもねぇーのにこんな事してる俺の立場は(ry

2014-07-04 08:25:08 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4201   閲覧ユーザー数:3766

 

前書き

 

 

無印の終わりも見えてきました。

 

早くA'sに入りたいですねー

 

 

 

 

 

 

 

 

『お母さん……お母さん……』

 

「あぁ、アリシア……また会えたわ……また……触れられた……ッ!!」

 

ボロボロと感動の涙を流して再会を喜ぶ二人。

アルフはその光景を複雑な表情で見て、俺はニヤリと笑っていた。

やっぱり読みが当たって良かったぜ。

あの杉本鈴美さんが幽霊なのに物に触れたり、岸辺露伴が触れられたのを思い出してプレシアさんをスタンド使いにしてみたが、間違ってはなかったらしい。

幽霊の方に触れようという意志があれば、幽霊が見える人間は触れる事が出来るって事だな。

これは、俺が今まで幽霊に会った経験も入れての考えだったけど。

ちなみにプレシアさんに入れたDISCは『水を熱湯に変えるスタンド』のDISCだ。

俺達に被害も来なくて危機感の少ないスタンドなんて、これぐらいしか思いつかなかった。

尤も、スタンドを操る訓練すらしてないプレシアさんには、どんなスタンドも操れるとは思わない。

ちなみにアルフにもスタンドを貸し出して、アリシアと意思疎通が可能な状態になってる。

勿論犬繋がりでザ・フールを貸したけど、「アタシは狼だッ!!」って怒られた。

どうにもこの世界、スタンド使いの素質がある奴が居過ぎる気がするぜ。

 

「さて、感動の再会に水を差すのは気が引けますけど……プレシアさん。アリシアちゃんは生き返った訳じゃ無え。ただ、死んで体を離れた魂……幽霊を、プレシアさんが見える様になっただけだ」

 

「幽、れい……?……そんな……」

 

『お兄ちゃんの言ってる事は本当だよ、お母さん』

 

ホラ、と言いながらアリシアちゃんは手をプレシアさんに向けるも、その手はプレシアさんの体をすり抜けてしまう。

その様子を見て目を見開くプレシアさんだが、目の前の娘が紛うことなき自分の娘と分かっているんだろう。

それでも……触れられる、と言って、プレシアさんは泣きながらアリシアちゃんを抱きしめる。

 

「……アリシアちゃん。プレシアさんに言いたい事があるんだろ?」

 

『……うん……あのね、お母さん……』

 

「グスッ……な、何?アリシア?」

 

俺がアリシアちゃんを促すと、アリシアちゃんはプレシアさんから一度離れて視線を合わせる。

一方でプレシアさんは目元の涙を拭いながら、アリシアちゃんに心からの笑顔を見せた。

 

『お願いがあるの…………私の事を……『生き返らせないで』……』

 

「――え?」

 

しかしその笑顔も、アリシアちゃんの言葉を聞いて、まるでこの世の終わりの様な表情に変わってしまう。

まぁ、そうなるのも無理はねぇ……蘇らせようとしてた娘から、それを望まないなんて言われるんだから……。

呆然としたプレシアさんだが、直ぐにぎこちなくも笑顔を取り繕う。

 

「な、何を言ってるのアリシア?貴女は生き返る事が出来るのよ?ジュ、ジュエルシードを使ってアルハザードに行けば――」

 

『次元断層を引き起こして、地球の人達を……皆死なせて、私は生き返るの?』

 

「……ッ!!」

 

『そんなの嫌だよ……私の為に、関係ない人達が死んじゃうなんて……それで生き返っても、私は嬉しく無いよ……ううん、苦しくて生きていけない……』

 

「ア、アリシア……ッ!!」

 

『私ね、見てたんだよ?お母さんが私を生き返らせる為に、病気を……体を壊しているのに治療しない。それどころか、無理矢理にでも研究を進めてたのを』

 

二の句が継げないプレシアさんに対して、アリシアちゃんは言葉を並べかけていく。

しかもその眉が少しづつ吊り上がっていた。

あぁ、怒ってるな、ありゃあ。

プレシアさんも愛する我が娘の怒りには弱いのか、タジタジになってる。

 

『それに、私を生き返らせる為に違法研究に手を染めて……ううん。それは怒ってない、かな。だってそれで結果的にフェイトが産まれてくれたんだし……でもッ!!』

 

妹……テスタロッサが生まれた事を喜んだかと思えば、今度は声を荒らげてアリシアは怒る。

 

『どうしてフェイトの事をあんな風に扱う様になっちゃったのッ!?フェイトが産まれてから暫くは……アルフがフェイトと契約する前は、あんなにフェイトの事を大事にしてくれてたのにッ!!』

 

「――なっ!?ど、どういう事だよそれッ!?」

 

「ッ!?そ、それは……」

 

アリシアから吐き出された言葉が余程信じられないのか、アルフは目を見開いて絶句してる。

プレシアさんは痛いところを突かれた、とでも表現すりゃ良いんだろうか?

兎に角、凄く答え辛そうな反応を見せる。

アリシアはプレシアさんから視線を外すと、驚きの表情を浮かべるアルフへと視線を向ける。

 

『アルフ……貴女がフェイトと契約する前は、まだフェイトは魔法の訓練をしていなかったの。リニスと一緒に、お母さんとはしゃいで遊んでた普通の子供だったんだ』

 

「それは知ってるッ!!アタシがフェイトに会ったのは、フェイトがアタシの居た森に遊びに来た時だったんだからッ!!で、でも、この鬼婆はフェイトが契約したアタシを連れて会った時から……ッ!!」

 

『うん。その半年くらい前から……お母さんは少しづつ、変わり始めたの……何か、何時も怖い顔をして、フェイトやリニスに対する態度も棘々しくなったと思ったら、フェイトに厳しい魔法の訓練をする様に言い付けて、自分は研究用の塔に籠もり始めて……私も自分の体から遠くに離れられないから、何があったか詳しくはわからないけど……』

 

「そんな……ッ!!」

 

アリシアの言葉を有り得ないとでも言う様に、アルフは声を荒らげてアリシアへ言葉を返す。

プレシアさんはそんな二人から視線を外して俯き、無言を貫いてる。

一方で二人はそんなプレシアさんに感情は違えど「話して欲しい」という視線を向けてた。

……まぁプレシアさんが『自分には話す資格が無い』って感じてる今じゃ、何を言っても話さないだろうな。

何せ、『愛する娘』にとんでも無い、自分でも嫌悪する仕打ちをずっと続けてきたんだし。

でもこのままじゃ話が進まねえし……俺が勝手に話させてもらうとするか。

 

「○○年○月、研究所の途中で血を吐いてしまう。血は少し黒く濁っており、とてもでは無いが健康的な色合いには見えない。リニスとフェイトには黙って医者に行く事にしよう。心配は掛けたくない」

 

「ッ!!?」

 

「??ジョジョ、いきなり何を……?」

 

『??お兄ちゃん?』

 

突然、何かの独白の様に流れる調子で語り始めた俺に、アルフとアリシアの怪訝な視線が突き刺さる。

だがプレシアさんだけはその反応が著者であり、現界まで見開かれた目は俺に対して驚愕を見せていた。

そりゃ当たり前だ。俺の言ってる言葉はプレシアさんが自ら書いた日記の記録なんだからな。

 

「同年○月、医者の話によると、私の体は不治の病に侵されているらしい。長く生きるには寝たきりの生活をしなければならないが、元より長生きする気は無い。アリシアを生き返らせる為にも早く研究を終わらせなければならない。そしてアリシアの妹の様な存在として生まれたフェイト……私の愛する娘を心配させない為に、症状は無理矢理薬で抑えこむ」

 

「……めて」

 

「翌年○月、最近記憶が朧気で体の節々が痛む。疲れの所為だろうか?症状を抑える薬の増量に加えて鎮痛剤も服用する事にする。フェイトに構える時間も減ってしまったので、リニスに魔法の訓練をさせる様に命じる。少しでもあの子の将来の為になれば良いと思う。今は寂しい思いをさせてしまっているけど、何時かはアリシアを入れた四人で、アリシアが望んだ様にピクニックへ行こう。その為にも、私は止まる訳にはいかない」

 

何か小さくプレシアさんが声を出すが、俺はそれに構わず独白を続ける。

この状況とプレシアさんの記憶を読んで分かった事がある。

多少の荒療治でもしなきゃ、この人はテスタロッサに向き合っちゃくれねえだろう。

傷口を抉るのは俺の趣味じゃねえが、今はそんな事も言ってられないな。

 

「同年○月、やはりアリシアを生き返らせる方法が見つからない。イライラする。この憂さはあの人形にぶつけて晴らす事にしよう」

 

「止めて……」

 

「同年○月、あの人形の基礎教育が終わり、体の負担を減らす為にリニスとの契約を切る。お人形自身も使い魔と契約したと言ってた覚えがあるので、戦力としては役に立つだろう。」

 

「アタシの事……」

 

「翌年○月、この世界の技術では無理ならば、失われた都アルハザードを目指すしか無い。しかしそうなればロストロギア級の魔力エネルギーを使って次元断層を起こす他無い上に、管理局に目を付けられては全てが水の泡と化してしまう。もどかしい上に酷く頭が痛む。イライラする。あぁそうだ、あの人形にこの怒りをぶつけよう。お人形なら私の怒りが静まるまで嬲っても耐えられる。そこは本当に良く出来てるわ」

 

「止めてッ!!」

 

俺の口を止めようと飛び掛かるが、プレシアさんにはヘブンズ・ドアーのセーフティーロックが掛かってる。

だから俺に飛び掛かろうとした体が無理矢理他の向きへ向いて、床に倒れ込む結果に終わった。

それでも俺を止めようとするプレシアさんには構わず、俺は言葉を続ける。

 

「同年○月、遂に発見した。あの墓荒しの一族の一人がジュエルシードというロストロギアを発掘したとの情報が入った。しかも経由する航路を照合すると、一つだけ管理局の目が届かない管理外世界である地球の上を通過するルートがあると判明した。チャンスだ、ここを逃せば次は無い。私の次元跳躍魔法で地球に落とし、人形に回収させれば良い。管理外の世界ならばお人形の戦闘力でも充分に役立つ筈だ。これでアリシアを蘇らせられる。そしてあのイライラするお人形ともお別れ出来る。それならば真実を告げてからいっその事私が――」

 

「お願いだから止めてッ!!もうそれ以上は――」

 

「分かりました。もう止めますよ」

 

と、まぁ地球にジュエルシードが落ちる一連までの日記を語り終えた俺は、プレシアの静止の声に漸く答えた。

最後の方は最早悲鳴と言っても差し支えないプレシアさんの叫び。

それに答えて沈黙した時には、アルフは驚きに目を見開き、アリシアは寂しそうな顔をしていた。

今の日記の内容を聞いていたら判る筈だ……途中からプレシアさんの言動がおかしくなり始めていたのが。

この人は俺とアルフに語った様に、最初からテスタロッサを恨んでいた訳じゃねえ。

只、どこからかおかしくなり始めていたんだ。

 

『今の……どういう事なの、お兄ちゃん?』

 

「日記だよ。プレシアさんが書いてた日記。その内容を読みあげただけだ」

 

「……もしかして、地球でアタシにしたアレと同じかい?」

 

俺が知る筈の無い日記の内容を知ってた事にアリシアは驚き、アルフはここに来る前の出来事を思い出して質問して来た。

アルフの質問に頷く事で肯定とし、俺は床に視線を落とすプレシアさんに目を向ける。

 

「プレシアさんは初めからテスタロッサを憎んでた訳じゃねえ……全部、薬の所為なんでしょ?」

 

「……」

 

「ち、ちょっと待っておくれよッ!?薬って……ッ!?」

 

「あぁ。さっき俺が読みあげた日記の中で、『病気の症状を抑える為に薬の量を増やして飲む』って言ったろ?プレシアさんがテスタロッサにキレてたのは、あの薬が元凶なんだろーよ。俺が読んだプレシアさんの記憶の中に、あの薬の副作用を知って青褪めたって記憶があったし……そうでしょ、プレシアさん?」

 

「…………そうよ」

 

床に座りこんで下を向いてるプレシアさんに質問すると、返ってきた答えは酷く弱々しいモノだった。

だが、その弱々しい口調の中には、これ以上無いってぐらいの後悔が滲み出ている。

自分のしてきた事がどれだけ酷い事なのかを自覚して、自己嫌悪してる様にも感じられる声だ。

 

「坊やの言う通り、私が常用していた薬には重度の副作用があったわ……禁断症状に精神性への異常、そして暴力性が著者に現れる。それに病気も少しづつだけど進行していた」

 

「それを抑える為に、更に沢山薬を摂取して副作用が悪化する……悪循環ってヤツか」

 

だが、これでキュアーが異常な程に大きくなった説明が付く。

ザ・キュアーは他人の痛みや悩みという概念を吸い取るスタンドだ。

恐らくキュアーはあの時、プレシアさんの怪我、病気。

そして薬の副作用が引き起こした症状の悪化とかを全て吸い取ってあんなに膨れ上がったんだろう。

精神にきたした異常に暴力性なんかを吸い取り尽くした結果が、今のプレシアさんって訳だ。

図らずもキュアーを使って吸い取りすぎた結果がこれとはな。

 

「ええ。その事に気付いたのは、つい最近……偶々薬を飲んでいなくて、正気が保てた時に頭痛と激しい吐血に襲われながら私は……あの子にした仕打ちの恐ろしさに漸く気付けたのよ……それでも、止まれなかった」

 

「……」

 

「気付いた時には、もう全てが遅かった……ッ!!あの子はもう管理局に目撃されてしまっているし、身元が割れるのも時間の問題……なら、あの子……フェイトが救われる道は一つだけ……」

 

最後の方は、ほぼ涙声でプレシアさんは言葉を続けた。

それはアリシアに対してでは無く、自分が痛めつけてしまったフェイトテスタロッサという別の少女に対する感情なのは明白だった。

俺は先に記憶を読んで知ってたけど、それを知らないアルフはプレシアに複雑な表情を浮かべてる。

長い間テスタロッサがプレシアに虐待されてきたのを見てたら、簡単には信じられないんだろう。

床から俺達……いや、俺に視線を向けたプレシアさんは、覚悟を決めた『母親』の顔で、ある決意を述べた。

 

「私がこのまま管理局に目を付けられた状態で生きていたら、あの子の将来は苦しくなる。犯罪者の娘としてね……それなら……私が管理局に『錯乱した挙句、虚数空間に落ちて生死不明の犯罪者』として裁かれれば、『犯罪者プレシア・テスタロッサに虐げられ続けた少女』として、フェイトを時空管理局に保護させる事が出来る」

 

「ッ!?……あんた、まさかッ!?」

 

『死ぬ気なの、お母さんッ!?』

 

プレシアさんの言葉で合点がいったのか、アルフとアリシアは目を剥いて驚く。

そんな二人とは違い、俺は顎に手を当てながら思考を回転させる。

虚数空間に落ちて……相馬が言ってたのと同じだ。

相馬の言う原作の最後、プレシアさんは虚数空間に身を落として行方不明になるって。

確か虚数空間っていうのは、魔法の一切がキャンセルされて、落ちたら最後何処とも分からない次元の空間を一生漂い続ける事になる場所だったか?

アルハザードはその昔にこの空間の何処かに落ちたって言ってたし……。

色々と考えを巡らせている俺の前で、プレシアさんは驚く二人に苦笑いを見せていた。

 

「……どの道、私は長くなかったのよ、アリシア……だからこの身をフェイトの為に使えるなら、惜しくは無いわ……運良くアルハザードに辿り着けば、貴女を生き返らせて、私の病気も治るかもという見込みもあったし」

 

『で、でも、お母さんの病気は治ったんでしょッ!?お兄ちゃんのお陰で……』

 

「それも偶然の産物よ。アルフがここに坊やを連れて来なかったとしても、私のする事は変わらなかった……只、病気が治ったお陰で、貴女を生き返らせる可能性が増えたのは事実だけれどね」

 

『そんな……そ、それじゃあ、フェイトの事は……』

 

アリシアが悲しそうな声を出すが、プレシアさんは苦笑いを隠さない。

薬の副作用も、病気も治ったお陰で冷静な思考が出来てるんだろう。

このままじゃ、テスタロッサに良い方向には転がらないと。

 

「今、私の気持ちを吐き出してしまったら、あの子は確実に私と一緒に滅びの道を歩んでしまう……未来のあるあの子に、そんな選択はさせたくないの……だからアルフ。聞いてちょうだい」

 

「……何だよ」

 

苦笑いとは一転して真剣な表情を浮かべたプレシアさん。

彼女がアルフへと視線を送ると、アルフは不機嫌な表情を崩す事無く対応する。

まぁ大事な主人を虐げられ続けて、尚且つ自分も殺される一歩手前だったんだ。

そう簡単に良い顔は出来ねえだろうよ。

 

「私は最後まで、あの子を虐げる魔女として振舞うから……私が虚数空間に落ちた後、あの子の事を支えて頂戴……お願い」

 

「……アンタに言われるまでも無い……アタシはあの子の使い魔だ。最後まであの子の傍に居続ける」

 

「そう…………ありがとう……それと坊や。確かジョジョ君、だったかしら?」

 

「ん?」

 

と、色々と考え事をしてた俺に、プレシアさんは屈んで目線を合わせながら声を掛けてくる。

その声に反応して視線を合わせると、プレシアさんは頭を下げながらアルフに言ったのと同じ事を言ってきた。

 

「出来るなら、厚かましいけど貴方にもフェイトの事をお願いしたいの……あの子を守ってあげてくれないかしら?」

 

「……」

 

何時もなら、答えるまでも無く拒否してるトコだろう。

しかし俺はこの家族が抱え続けた闇に深く入り込んでしまった。

なら、ここで見捨てるという選択肢はNOであり、断るまでも無い。

しかし、まだこのテスタロッサ一家『全員』が助かる道は……多分、残ってる。

 

「なぁ、プレシアさん。幾つか質問しても良いか?」

 

「??え、えぇ。何かしら?」

 

唐突な質問を聞かれて、プレシアさんは首を傾げながらも律儀に答えてくれる。

俺は頭の中で考えていた予想とプレシアさんの記憶を照らし合わせて、ある計画を立てていたんだ。

その計画を実行するには、幾つかの確認と協力者が必要となるけど……まぁ何とかなんだろ。

俺はプレシアさんの記憶を読んだ時の『ある項目』について確認し、更にそこに俺の考えを言ってみた。

 

「……そ、それなら確かに、管理局の上層部を黙らせる事が出来ると思うわ。けれど……フェイトは既に管理局員に対して反撃してしまっているし、恐らく逃走も罪状に加味されてる」

 

「いやいや。俺、実はここに来る前に相馬……その場に居た友達にその時の話を聞いたんですけど……」

 

「……強引な言い訳ね。それじゃあ少し苦しいし……そうね。ならさっき言ってた案と……」

 

「じゃあ、こうしたらどうですか?まず……」

 

「……確かに、それなら司法取引という形で、フェイトの、いや『私達全員』の無罪は勝ち取れるわ……やってみる価値は充分にあるわね」

 

『お、お母さんとお兄ちゃん……すっごく悪い顔してるよ……』

 

「……まぁ、アタシはフェイトが無事に暮らせるならそれで良いんだけどね……なんというか――」

 

正に悪い事企んでるよね?と、アルフが何か複雑そうな表情でそんな戯言を言ってたが綺麗にスルー。

全てはテスタロッサ一家全員のハッピーエンドと、俺が清々しい平穏を迎える為の努力だ。

ここまで色々な案を話すと、元々娘を大事に想ってるプレシアさんは真剣に計画を練り始めた。

でも多分まだこの人の頭の中じゃ自分が居ない状態ってのが大前提みたいだし、死ぬ前の整理程度にしか考えて無い。

まぁさっき言ってた計画を実行すんならそうだろうが……それ、無理。

 

「それと自分が死ぬだなんだと盛り上がってる所悪いんですけど、プレシアさんはジュエルシードを使えませんから」

 

『「「――は?」」』

 

俺が何げ無く追加する様に呟いた一言を聞いた3人は、「何言ってんのコイツ?」みたいな顔で俺を見る。

俺はその視線に肩を竦めながら言葉を返した。

 

「俺の能力でプレシアさんに俺とアルフを攻撃出来ないと制限を掛けた時に、ついでにジュエルシードも使えないとしておきましたんで」

 

「――な……な……ッ!?」

 

「??な?」

 

なって何ですか?

そう思って声の発生源を見ると、そこには俯きながら震えるプレシアさんの姿が――。

 

「何してくれてるのッ!!!直ぐに制限を外しなさいッ!!ジュエルシードが使えないんじゃフェイトが犯罪者の娘として管理局に逮捕されてしまうし、アリシアだって――」

 

バッと顔を上げたかと思えば、憤怒の表情でプレシアさんは俺に詰め寄ってくる。

女の人が浮かべるにはあんまりな表情だが、アルフがボソッと「あ。何時もの鬼婆だ」と言ったのには納得した。

確かにこの表情は鬼と言われても反論出来ねえだろうなぁ。

しかしここは敢えて言わせて貰おう。

 

「いやいや。俺はさっき言った筈ですよね?『敗者は黙って勝者に従え』って」

 

「完全なる事後申告じゃないのッ!!良いから早く私に付けた制限とかいうのを――」

 

「逃げるんスか?自分の子供から」

 

「ッ!!?」

 

「俺が読んだプレシアさんの記憶の中には、確かにテスタロッサを愛するプレシアさんの気持ちがあった……なのに、自分のしてきた事が許せないから、自分の子供から逃げるんで?」

 

「わ、私は……ッ!?」

 

畳み掛ける様に言葉を並べると、プレシアさんは難しい表情で沈黙してしまう。

確かに、正気に戻ったプレシアさんには、テスタロッサは顔を会わせ辛い存在だろうよ。

でも、俺も直にテスタロッサに会って確信した……テスタロッサは、本当にプレシアさんの事が大好きなんだって事を。

なら、お互いを大事に想うからこその辛く悲しい別れ……ってのは却下、大却下だ。

そんなもんはフィクションの昼ドラかホームドラマで充分足りてる。

態々現実に生きて、息をしてるこの人達がする必要は無い。

少なくとも戦いの勝者である俺は認めねえ。

それにプレシアさんがここまでジュエルシードに拘るのは、何もフェイトの事だけじゃ無い。

 

『良いんだよ、お母さん』

 

「アリ、シア……ッ!!?」

 

今、俺達に向けて小さく微笑むアリシアを生き返らせたいって思いも入ってる。

だからこそ、ジュエルシードという奇跡に拘るんだろう。

 

『お母さん、私はもう死んだの。死んだ存在なんだよ?私はもうお母さんの傍には居ないの』

 

「で、でも、貴女は私の……ッ!?」

 

『分かってる。私の事を忘れないで、ずっと思い続けてくれたのは素直に嬉しいもん……でも、お母さんの娘は私だけ?そうじゃないでしょ?』

 

「……」

 

『フェイトの事を幸せにしてあげて?……確かに、一緒にピクニックには行けなかったけど……私は、今を生きてるフェイトとお母さんが幸せに暮らしてくれたら、それだけで良いの』

 

「う、ううぅ……ッ!!」

 

アリシアが微笑みながら発した言葉に、プレシアさんは大粒の涙を流す。

多分これで、プレシアさんはジュエルシードを使うのを諦めてくれる。

なんてったって最愛の娘に、もう一人の最愛の娘を大事にして欲しいと直に言われたんだからな。

それは娘を蘇生させる為に頑張ってきたプレシアさんには辛い言葉かもしれないが、同時に救いでもあるんじゃねえかな。

病気も治って時間も増えた。やろうと思えばテスタロッサの罪も消せる。親子として向き合える。

アリシアはずっと言いたかった事をやっと伝える事が出来た。

その思いが、プレシアさんとアリシアという長い間会う事が出来なかった二人に、涙を流させてる。

 

 

 

 

 

あー……あのアルフが涙ぐむ程にとても感動的な一場面なんだが……。

 

 

 

 

 

「あーすいません。言い忘れてましたけど――もしかしたら、アリシアちゃんを『生き返らせられるかも』しれませんよ?忘れてたけど」

 

「「(プッツン)――早く言えぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!」」

 

途轍も無くKYな発言をした俺に、プレシアさんとアルフが同時に吼えてきた。

うん、これは間違い無く俺が空気読めなさ過ぎだった。

怒れるプレシアさんとアルフを諌めながら、俺はそんな事を思う。

後、俺の発言を聞いてポカンとした表情を浮かべるアリシアの顔が少し面白かったです。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……やれやれ。やっと帰ってこれたな」

 

「ホント……長い1日だったよ」

 

さて、時間は飛んで夜の8時。

俺はアルフと共に一端海鳴の町へと戻ってきていた。

とりあえずプレシアさんとは和解出来たし、スタンドはそのまま貸しておいた。

長い間擦れ違ってた親子の絆をゆっくりと暖めてもらうには、DISCが必要不可欠だからな。

アルフからは返してもらったけど。

 

「しかしまぁ、明日から暫く忙しくなりそうだなぁ……面倒くせ」

 

「そんな事言わないでおくれよ。アンタには感謝してるんだからさ」

 

「分かってるって。感謝されてるのは判ってるから、ちゃんと頼まれた事は最後までやるさ」

 

俺の発言を聞いて苦笑いするアルフに手を振りながら、俺達は家への道のりを歩く。

アルフから頼まれたのは、『テスタロッサが幸せに暮らせる様に助ける』って事だ。

とりあえず問題の半分であるテスタロッサ家の方は何とか片付いたとして……。

 

「次は管理局だけど……どうするつもりなんだい、ジョジョ?」

 

「ん?どうするってのは?」

 

「だから、どうやって『管理局の船に乗り込む』つもりなのさ?……はっきり言って、侵入なんて無理だよ」

 

「あぁ。それか……ん~……そうだな~」

 

俺はアルフの言葉で漸く意味を悟り、頭を悩ませる。

そう、目下の問題点としては、俺は時空管理局とやらにパイプを持ってないから、侵入するなんて事は出来ない。

そこなんだよなぁ……プレシアさんの話じゃ、管理局の船は次元の海とかいう異次元空間に居るらしいし。

ちなみにさっきの時の庭園も似た場所を漂ってるそうだ。

まぁそんな事はゴミ箱に捨て置いて……。

 

「侵入が無理ならまぁ……相手に招き入れてもらうしかねーだろ?」

 

「バカ言ってんじゃないよ。少なくとも向こうからしたら犯罪者の使い魔のアタシと、何者かすら分かんないアンタを迎え入れてくれる訳無いじゃん」

 

と、俺の名案とばかりの言葉も、すげなく却下されてしまう。

だが忘れてねえかコイツ?俺のダチが向こうサイドに着いてるってのをよ。

 

「まぁ兎に角、俺には俺で何とかなるプランがあるから、お前は自分の仕事に集中してろよ。正直俺よりも、そっちの方が重要なんだからな」

 

「分かってるよ。大丈夫。フェイトの匂いが見つかったから、今から追ってみる」

 

「おう。じゃあ頑張んな」

 

そしてアルフの役割は、今も管理局に狙われてるテスタロッサを時の庭園に連れ戻す事。

これはアルフだけじゃなくプレシアさんの援護もあるから問題ないだろう。

大好きな母親が帰って来いっていえば、テスタロッサも素直に従う。

主の匂いを見つけて嬉しそうに尻尾を振るアルフの背中に応援を掛けると、アルフは笑顔で振り返ってきた。

 

「……今日は本当にありがとうね、ジョジョ」

 

「あ?んだよ?いきなりお礼なんて言いやがって」

 

「ちゃんとお礼を言ってなかったと思ってさ……今日だって、一歩間違えたら死ぬかも知れなかったんだし……本当に、ジョジョには感謝してるんだからね?」

 

「……礼なんざ要らねえよ。これも全ては俺の平穏な生活の為だ。そんな事言ってる暇があんならとっととテスタロッサを探して来い。シッシ」

 

手で軽く追い払う仕草を取ると、アルフは(・∀・)←こんな顔して「ハイハイ」とか適当な返事をしてから街へと駈け出して行きやがった。

今のアルフの顔を見て、俺は再びDEATH13による悪夢攻撃を1週間連続でプレゼントしてやろうと固く心に誓うのであった。

さあて、俺は俺でやる事があり、その為にある人物を探さなきゃいけねえ訳なんだが……。

 

「って訳で、少し協力してくれや。相馬?」

 

「……バレていたか」

 

誰も居ない筈の公園でそう言えば、茂みの奥から相馬が苦笑いしながら出てきた。

そう、元々俺は相馬をここに呼んだ状態で、今の話をアルフとしていたって訳なんです。

種は単純、地球に戻ってから直ぐに『レッド・ホット・チリ・ペッパー』を電線に送り込み、隣町の海鳴を探しまわっていたって事だ。

運良く1人で歩いてた相馬を見つけて、姿は現さずに奴の携帯へ直接アクセスして事の次第を話しておいた。

そして、お前の協力が欲しいと言えば、相馬は一も二も無く了承し、この場所を待ち合わせに選んだって寸法さ。

 

「しかし定明。協力するのは良いんだが、どうするつもりだ?まさかとは思うが、管理局に正体を明かすつもりじゃ無いだろう?」

 

「たりめーだ。アイツ等にスタンド使いだってバラしても、俺にゃ1ミリも得が無えよ」

 

「だろうな……だったらどうする?さすがに俺にはお前を転移で連れて行く事が出来ても、お前の姿を誤魔化す事は出来ないぞ?お前なら出来るのか?」

 

相馬は持っていたジュースを片方俺に手渡し、自分もオレンジジュースを飲んでいた。

……どうでも良いけど何故、俺のジュースは苺ミルクなんだろうか?

俺は礼を言ってから渡されたジュースを飲みつつ答える。

 

「ング、ング……プハァ~……姿を消す方法はあるが、そうじゃねぇ。こっちには既に秘策があるんだ」

 

「秘策?」

 

「あぁ……俺が直接行かずとも、俺のスタンドを送り込む秘策が、な?」

 

ニヤリと悪どい笑みを浮かべながら、俺は相馬に俺が考えた作戦の内容を伝える。

その内容を聞いた相馬は「なるほどな」と頷いて、俺の作戦の有効さを肯定してくれた。

 

「確かにその作戦なら問題無いな。分かった、協力するよ。丁度明日はアースラに戻るつもりだったからな」

 

「おう。それじゃあ明日、頼むぜ?」

 

お互いにニヤリと笑いながら拳を合わせて、俺達は公園から出た道で別れた。

さあて、明日は結構忙しくなりそうだが……まぁ、何とかなんだろ。

幸い明日から二連休というありがたい日取りだ。

特に予定も入れてねぇし、何の気兼ねも無く作戦に集中出来る。

テスタロッサが無罪になればアルフの頼みも完遂出来て、アリシアが生き返ればプレシアさんもジュエルシードから手を引く。

それで管理局も居なくなって、誰も彼もがハッピーなんだよな。

そうすりゃ俺の平和な暮らしも守れる訳だし……いっちょ気張るか。

やっと見えてきた平和への道筋を辿る為に、俺は覚悟を新たに家の扉を潜るのであった。

 

 

 

「お帰り~定明~♪ポトフ、お父さんが全部食べちゃったわよ~?」

 

「ゲフッ。いや~スマンな定明……父さん徹夜でお腹空いてたもんだから……」

 

 

 

『ウ~ウウウ、アンマリダ……HEEEEYYYY!!アァァァンマリダアアアア~~ッ!!』

 

るっせぇーーぞNO,5!!部屋にあるハンバーガーやるから泣き止め!!

くっそ、くっそ!!頑張った筈の俺がこんな扱いかよ!!

ご褒美が無いという絶望を身に感じながら、俺は母ちゃんが作ってくれていた別の夕飯にありつくのだった。

 

 

 

 

 

短くパリっと纏める!!

 

これが中々難しいのです(´・ω・`)ショボーン

 

 

 

 


 
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