???:「・・・・・・あれは?」
華美な服装をした少女がふと空を見上げた。
晴ればれとした青空の中、白く光る流星が遥か遠くに流れていくのが見えた。
(あの方角は涼州か・・・・・・。)
「どうかなさいましたか――様?」
後ろに控えていた宦官達の一人が尋ねた。
少女は一瞬言うべきか迷った。自分が今見たことを話せば、それは口論の種になると思ったからだ。
しかし、昼間に流れる流れ星という珍しいものを見たせいか、少女は他の人にも今見たことを話しておきたかった。
「今、流れ星が見えたのだ。」
「流れ星・・・ですか?こんな昼間に?」
「うむ。」
周りにいた宦官達はいっせいに空を見上げたが、流れ星はもう見えない。
「それは、あまり吉兆とは思えませぬな。――様。」
ふと、もう一人の宦官が少女に言うと、他の宦官のうち数人が追随するようにうなずいた。
「なんだ、貴方がたはその程度のことに怯えているのか?ばかばかしい。」
と、最初に少女に尋ねた宦官が小ばかにするようにせせら笑うと、その周りにいた幾人らも、その者達を嘲笑する。
「何だと!貴様――――」
(ああ、やはり始まってしまった。)
やっぱり言うべきではなかったのだ。と少女は今さらながらに後悔した。
後はもうどちらかが相手をグゥの音が出なくなる程に言い負かすか、両方が話し疲れるのを待つしかないと諦めとともにため息をつくと、
「流れ星といえば――」
言い争いの最中に突然、一番後ろの方にいた――まだ宦官になってから日の浅いだろう――若い宦官が口を漏らした。
「流星と共に天の御遣いが現れるって管輅という占い師が言っていたような・・・」
その言葉を聞いて回りは水を打ったかのように静かになった。
『蒼天に降り注ぐ白き流星と共に現るは天の御遣いなり。かの者、乱れし世を照らす一筋の光なり。』という管輅の占いはこの洛陽はおろか、大陸中の民のうわさの的になっている。宦官達が知らないはずがなかった。
「・・・・・・ああ、あのインチキ占い師ですか。」
と、はき捨てるように一人の宦官が言ったのを皮切りに。
「確かに今、――様が仰った事と酷似してはおるが・・・・・・考えすぎじゃろうよ。」
「そもそも、世が乱れておらんのだからそんなのが出てくるわけないだろう。」
そうだ、そうだ、と他の宦官たちもその話に乗るように管輅という占い師を罵倒し始めた。
「・・・・・・・・・っ!」
少女は一瞬、怒りに震えた。「本気でそう思っているのか!?」と怒鳴り散らしたいほどに。
役人たちの賄賂が行きかい、そのさや当てかのように民に降りかかる重税。さらにそのわずかに残った蓄えさえ盗賊や山賊たちに掠め取られ、働く意欲をなくした民達は自棄になり賊に身をやつす。もちろん腐りきった役人等が賊を討伐しに行くわけがないので、(出来るとも思えない。)賊は増える一方だ。賊は増えればさらに民を襲い続ける。
まさしく負の連鎖。宦官達のおよそ半分も生きてない自分にだってそれが理解できているのだ。それが何故あの者達には分からないのだろう。
(・・・・・・天の御遣いか。)
ふと、さっきの若い宦官の言葉を思い出す。さっき見た流星が本当に占いどおりのものだとするなら、近いうち必ずその人物の名を聞くことになるだろう。
どのような人物なのだろうか?少女は自分が想像する天の御遣いを思いはせることで、この無為な時間を過ごすことにした。
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初めての投稿です。
自分なりに上手く書いたつもりですが、変なところがありましたらご指摘してください。
今回はお試しってことでものすごく短く作ってありますが、次回はある程度長めに投稿します。
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