No.697372 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2014-06-29 13:25:33 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2280 閲覧ユーザー数:2107 |
~夜・サンクト地区~
「見送り、ありがとうな。しかしまさか、エリスが皇女殿下の友達は思わなかったよ。」
「……知りません。はあ、本当に姫様ときたらどこまで本気なのかしら……」
「あの、エリス?」
リィンの疑問に答えず、エリスはアリサ達を見回して頭を下げた。
「―――ご足労いただき、誠にありがとうございました。それでは皆さん、お気をつけてお帰りくださいませ。」
「ええ、ありがとう。」
「案内、感謝する。」
「ふふ、おやすみなさい。」
「おやすみなさい。―――それで姉様やリフィア殿下達は本当に泊まっていかなくてよいのですか?姫様やオリヴァルト殿下は王宮に客室を用意させると仰っていましたが……」
アリサ達に会釈をしたエリスはリフィア達を見つめた。
「うむ。明日来るはずの皇女の突然の訪問でエレボニア皇家を混乱させたくないしな。」
「エヴリーヌはどっちでもいいし。」
「……混乱させたくないのなら、最初からこんな事をしないで。―――それではエヴリーヌ様、大使館へお願いします。」
「ん。―――転移。」
そしてリフィア達はエヴリーヌの転移魔術によってその場から消えた。
「ベルフェゴールやリザイラで慣れているとはいえ、相変わらず転移魔術って訳がわからないよな……」
「でも、使いこなす事ができれば滅茶苦茶便利だろうね。飛行船や鉄道を使わず、一瞬で目的地につけるんだから。」
「………………」
疲れた表情で答えたマキアスの言葉にフィーは答え、エマは真剣な表情でリフィア達をが消えた場所を見つめ
「リフィア殿下か………話に聞いていた以上に皇族として相当な変わり者のようだな?」
「え、えっと……とても賑やかな方ですね。」
ユーシスの言葉を聞いて冷や汗をかいたセレーネはプリネとツーヤを見つめ
「フフ、よく言われます。」
「……少しは大人しくしてほしいんですけどね……」
プリネは苦笑し、ツーヤは疲れた表情で答えた。
「―――それでは私はこれで失礼します。」
そしてエリスはアリサ達に会釈をした後女学院の中へと入り
「あ……」
その様子をリィンは呆けた表情で見守っていた。
「はあ……」
「………………」
「どんまい。」
「あはは……でもエリスちゃんの気持ちもわかるよ。」
「ふふ、まさか殿下からあんなお誘いをされるとはな。」
エリスが去った後疲れた表情で溜息を吐いた様子をアリサはジト目で見つめ続け、フィーは静かに呟き、エリオットとラウラは苦笑した。
「いや……それって俺のせいか?」
二人の言葉を聞いたリィンは数時間前の出来事を思い出した。
~数時間前・聖アストライア女学院・聖餐室~
「――そうそう、忘れてました。実はリィンさんにひとつお願いがあるんです。」
「え……」
「ひ、姫様……?」
「……?」
「ほほう、例の件か。」
アルフィン皇女の申し出を聞いたリィンは呆け、エリスとエリゼは戸惑い、オリヴァルト皇子は興味ありげな表情をした。
「ふふ、そうです。―――わたくし、明日の夏至祭初日、帝都庁主催の園遊会に出席するんです。マキアスさんのお父様に招待されているのですけれど。」
「え、ええ……自分も話だけは伺っています。」
「マーテル公園のクリスタルガーデンで開かれるというイベントですよね。」
「確かそのイベントにはリフィアお姉様とレンも招かれていると聞いておりますが……」
アルフィン皇女の説明を聞いたマキアスとエリオットは頷き、プリネはアルフィン皇女を見つめた。
「ええ……それでお願いなのですが。リィンさんに、ダンスのパートナーを務めていただきたいんですの。」
「!?」
「「!!!」」
(あら♪なんだか面白い話になってきたわね♪)
(ふふふ、ついに人間の王族まで惹きつけましたか。)
アルフィン皇女の申し出を聞いたリィンは驚き、エリゼとエリスは血相を変え、ベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をしていた。
(そ、それって……!?)
(お、皇女殿下の将来の相手になるかもしれないっていう……!?)
(さ、さすがにそれはマスコミの憶測だろうが……)
信じられない表情をしているエリオットとアリサの小声を聞いたマキアスは疲れた表情をし
(……当然、そういった風に捉えられる可能性もあるな。)
ユーシスは真剣な表情でアルフィン皇女を見つめていた。
「ま、待ってください!その、自分にはあまりに大役すぎると言いますか……!それに俺達―――シュバルツァー男爵家がエレボニア帝国貴族に”裏切り者”として相当嫌われている事はご存知でしょう!?」
一方リィンは慌てた様子でアルフィン皇女を見つめた。
「ふふっ、そんなことはありませんわ。外国の貴族とは言え、シュバルツァー家は皇族とも縁のある家柄ですし、長女のエリゼさんは若輩ながらリフィア殿下の専属侍女長という大役を務め、メンフィル皇家の方達から信頼を寄せられていると聞いています。こう言っては失礼ですが、ユーシスさんにお願いするよりも角が立たないとも思いますし。」
「なるほど………それは確かにそうでしょうね。いや、なかなか面白い選択だと思いますよ。」
「ユーシス、あのな………」
アルフィン皇女の説明を聞いて納得するユーシスを見たリィンは呆れた後再びアルフィン皇女を見つめた。
「―――その、不調法者で殿下のダンスのお相手などとても務められるとは……」
「あら、エリスやエリゼさんに頼まれてダンスの練習を付き合ったと聞いてるのですけど……?一通りのステップは軽やかにこなせるとか?」
「まあ……!そうなんですか、お兄様?」
「うっ……」
「~~~っ~~~……!」
「………………!」
アルフィン皇女の答えを聞いたセレーネは表情を引き攣らせているリィンに微笑み、エリスは頬を膨らませてジト目のエリゼと共にアルフィン皇女を見つめた。
「でも、そうですよね……こんな唐突なお願い、あまりに不躾ですよね……それにわたくしごとき小娘など興味も湧かないでしょうし……」
「いえっ、そんな……!」
(やっぱ、オリビエの妹だね。)
(血は争えんという事か……)
残念そうな表情で肩を落とすアルフィン皇女を見たリィンは慌て、エヴリーヌとリフィアは呆れ
「ヒューッ、さすが我が妹。なかなか攻めるねぇ~。」
「ひ、姫様!オリヴァルト殿下も……!――――!そ、そうです!姫様、私達はメンフィル帝国の貴族です。他国の皇女である姫様のダンスのお相手を兄様が務めてしまうと、メンフィル皇家や貴族の方々にいらぬ反感を買ってしまいます。」
からかっているオリヴァルト皇子の様子を見たエリスは慌てた後すぐに気を取り直してアルフィン皇女の提案を阻止する為に自分の推測を口にしたが
「そんな事くらいで、余達は気にせんぞ。シュバルツァー家がエレボニア皇家と縁のある家である事はわかっておるし、国家間の関係修復の為にもちょうどよいじゃろ。」
「フフ、確かにそうですね。」
「エレボニア皇族であるアルフィン皇女とメンフィル帝国の貴族であるリィンさんがダンスをしたという出来事が知られれば、確かに国家間の関係修復に役立ちますね……」
「リ、リフィア殿下!プリネ姫にルクセンベール卿も……!」
「余計な事を言わないでくれるかしら……?」
リフィアやプリネ、ツーヤの発言を聞いて再び慌て、エリゼは膨大な威圧を纏って微笑んでリフィアを見つめ
「ぬおっ!?」
「ヒッ!?何で火に油を注ぐような事を言うの!?」
エリゼに微笑まれたリフィアは表情を引き攣らせ、エヴリーヌは悲鳴を上げた後リフィアを非難し
「ハッハッハッ!リフィア殿下達のお許しも出たんだから、遠慮なく務めたらどうだい?」
「い、いえ!で、ですから俺には大役過ぎます……!」
声を上げて笑った後からかいの表情で自分を見つめるオリヴァルト皇子の言葉を聞いたリィンは慌てていた。
(ノリノリだね。)
(帝国の皇族というのはここまで愉快な方々だったか。)
(さ、さすがにかなり例外だと思うんですけど……)
一方その様子を見守っていたフィーとガイウスは静かに呟き、エマは表情を引き攣らせた。
「ああ、なるほど。―――ひょっとしてもう、心に決めた方がいらっしゃるとか?それとも既にお付き合いをなさっている方がいるとか……」
「「!!」」
「……!」
アルフィン皇女が呟いた推測を聞いたエリゼとエリス、アリサは顔色を変えた。
「フフ、実際のところ、そこら辺はどうなんだい?」
「いえ、何と言ったらいいのか……(困ったな、どういって辞退すればいいか……)」
そしてオリヴァルト皇子に問いかけられたリィンが答えに困ったその時
「うふふ、付き合っている訳じゃないけど、私達はご主人様のお仕えしているから、ご主人様は女には困っていないわよ♪」
「ふふふ、むしろ別の意味で女性に困っているでしょうけどね。」
「ベ、ベルフェゴール!?リ、リザイラ!?」
ベルフェゴールとリザイラがリィンの傍に現れ、リィンは表情を引き攣らせた。
「おおっ!?こ、これは……!フフ、やるじゃないか♪既にこんな美しいレディ達を侍らせているとは……!さすが我が妹、目の付け所が良いね。」
「ふふっ、そうですか?でも、そうですわよね……お二方ともとても綺麗で羨ましいスタイルをなさっていますから、わたくしのような小娘には見向きもしませんわよね……」
二人を見たオリヴァルト皇子は目を輝かせた後口元に笑みを浮かべてアルフィン皇女を見つめ、アルフィン皇女は微笑んだ後二人を見て肩を落とした。
「うふふ、睡魔の女王たるこの私に容姿やスタイルで勝とうなんて、甘すぎるわよ、お嬢ちゃん♪」
「ふふふ、ベルフェゴールは睡魔の女王にして”七大罪”の一柱を司り、そして私は”精霊王女”。ご主人様にはそれぞれの皇族である私達が常に傍にいますから、今更皇女に声をかけられた所で、特に驚く事ではないと思いますが?」
「ちょっ、ベルフェゴール!?リザイラ!?」
それぞれからかいの表情でアルフィン皇女を見つめる二人の言葉を聞いたリィンは慌て
「ほう?あの者達が報告にあった”七大罪”の一柱と”精霊王女”か……」
「へえ、二人ともかなりの力を持っているね。」
リフィアとエヴリーヌは感心した様子でベルフェゴールとリザイラを見つめた。
「ふふっ……―――わかりました。”今回”は諦めます。」
慌てているリィンの様子をおかしそうに見つめていたアルフィン皇女は意外な答えを口にした。
「えっ……」
「…………ぁ………………」
「ですが来年はわたくしも妹さんと同じ16歳――――正式に社交界にデビューするので考えていただけると嬉しいです。」
そしてアルフィン皇女は誰もが見惚れるような可憐な笑顔を浮かべてリィンを見つめた。
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第121話