第三章‐壱拾伍話 『 狙う者、願う者、鈍い者 』
虎牢関での開戦から三日が経った。その間、連合の攻撃に対し董卓軍は討って出る事無く守り抜いていた。
端から見れば明らかに董卓軍の優勢、だが虎牢関では一部で撤退の準備が進められていた。
「お兄、そろそろ準備終わるって」
「おう、じゃあ今後の事を話しとくか」
会議の場に遅れてやってきた楓の報告を受けて和輝はそう切り出す。
「先ず、黒山賊は自分達の邑まで撤退してもらう。鈴蘭と稲葉と星と風の四人は洛陽で御嬢と合流してから同じく黒山の邑に向かってくれ。その時に捕虜の搬送も頼む。ここまではいいか?」
「一ついいでしょうか~?」
「何だ?」
「今、我々は優位に戦えています~。なのになぜ撤退するんでしょうか~?」
風の発言に鈴蘭やその他血の気の多い者は同意を示している。まぁ、今の状況でこれから負け戦をすると言っているのだから当然といえば当然なのだが。
「何度か言ってると思うが、御嬢を守る為にわざわざ勝つ必要が無ぇんだ。むしろ此処での戦は負けた方が後々楽ですらあるからな。まぁその負け方が重要になってくるから曹操を巻き込んだんだけどな。で、続き話していいか?」
「はい~」
和輝の説明で風はなんとなくだが理解したらしく、又、理解出来ていない者も月を守る為ということで無理やり納得したようだった。
「じゃあ続けるが、その曹操の方だが霞と一刀で相手して適当なところで負けて降伏してもらう。これはこの戦の後全員が合流する為だ。で、俺の見立てじゃ此処が一番難しい」
「どういうことだ?」
「実力に其処まで差が無いからな。それに余力を残して降伏すれば周りが不審がる」
「つまり、ギリギリで負けなあかんゆーことかいな」
「そういうことだ。最後に
「ちょ、何でわざわざそんな事するんだ?!」
「最後の時間稼ぎだ。それと、これが上手くいけば張譲は詰む。ってな訳だから全員しっかり頼むぞ」
その頃、洛陽では詠が和輝からの手紙を読んでいた。
その内容は今後のそれぞれの行動についてと詠、流琉への指示。そして最後に『嫌な役目を押し付けてすまん』と締め括られていた。
「まったく、謝るくらいなら頼まなければいいじゃない…」
だが、この策は月の願いを叶えるだけでなく張譲とそれを匿う勢力を一つ滅ぼすことができる。それはこの先来るであろう乱世においては大きな足がかりとなる。なら、多少の不満は再会した時にでもぶちまければいいだろう。
「はぁ、それじゃ色々準備しないと。月…暫く傍を離れるけど無事でいてね」
さらにその頃別の場所では――。
「なあ、皇甫嵩」
「あら?珍しいですね何進。私に何か用ですか?」
私の知る限り、彼とはそんなに親しい仲という訳ではなかったはずである。たまにお茶や食事に誘われる程度で・・・
「それで?どうしたんですか?」
「いや、あの御遣いを本当に信用してもいいのかと思ってな。こんな策、思いついても恐れ多くて誰もやらんぞ」
「確かにそうですけど、だからこそ信じてみる価値もあると思いませんか?」
「ん~、俺には分からん。それより、この後一緒に食事でもどうだ?」
「なら、満漢全席で」
「ちょっ、おまっ…」
「ふふっ、冗談です」
皇甫嵩と何進は親しい仲ではない。
しかしそれは山吹一人に限っての話であり、周囲は全くそう思っておらず、生温かい眼差しで二人を見ているのであった。
あとがき
ツナ「随分長い事空けてしまって申し訳ありませんでした」
狐燐「何やってたの?nakuさんから心配のコメントも来てたよ」
ツナ「県外就職しようと思い色々と頑張っていました。その結果見事!墜ちました…」orz
狐燐「哀れで何も言えないよ」
ツナ「という訳でまた暫くは執筆に取り組んでいきます。本当に心配掛けてすみませんでした」
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長く空けて心配掛けてすみませんでした。今回は?戦闘無しです。
『Re:道』と書いて『リロード』ということで
注:オリキャラでます