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模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第23話

コマネチさん

第23話「くじ引きガンプラバトル!」

挑戦者ユキ、彼女はアイより実力の低いナナを標的にするも敗れる。ナナは徐々に独りで戦える力を身に付けつつあった。

2014-06-22 17:37:57 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:730   閲覧ユーザー数:684

「フア~……」

 

「随分あくびすんのねアイ、昨日寝てなかったの?」

 

朝日の登りきった午前8時、走る電車の中で、欠伸するアイに隣のナナが問いかける。

 

「恥ずかしながらね……12時回ったあたりから、もうちょっとガンプラ改造しようといじってたんだけど、その所為で寝付けなくなっちゃって……」

 

「ん?何を改造してたんだ?」

 

向かい合う座席に座ったコンドウが反応する。「改造」この単語にコンドウは興味を抱いた様だ。

 

「ユニコーンですよ。アーマー着せようと色々ジャンクパーツ合わせてたんですけどどうも気に入らなくて……」

 

アイが瞼を擦りながらつぶやく、

 

「ほぅ!」

 

「それはそうと……なんなんだろうね、イモエ地元のガンプライベント」

 

「さぁな、彼女がこっちのイベントに招待したいとか言っていたが、肝心の内容は話してくれなかった」

 

「内緒って言ってましたからね」

 

行先は前回サツマとガンプラバトルをした場所、模型店『ルジャーナ』

先日サツマからアイ達に『一緒に地元のガンプライベントで勝負しよう』という連絡があったのだ。

参加できたのはアイとナナ、コンドウの三人、ツチヤとソウイチは予定の為来れなかったが……。

 

「その所為でせっかくの休みなのに平日と同じ時間で起きるハメになったけどね」

 

「いいじゃないか、皆予定なかったし、ダラダラ家で転がってるよりはいいだろう。それよりヤタテ、辛いなら寝てていいが……、アーマー着せる改造ってどうしたいんだ?」

 

「あ、大丈夫ですよ。う~ん、パーフェクトガンダムみたいにしようかなって。HGUCだから変形はナシで割り切る予定です」

 

「デストロイモードか?」

 

「はい、でもそうなると単純に鎧着せただけじゃサイコフレーム隠れちゃうしどうしようかなって考えてて」

 

「まぁそうなるよな、フルアーマーユニコーンでもアーマー着なかったし」

 

徐々に話に熱がこもってくる。隣のナナは頬杖をつきながら、アイが眠そうな顔から活力に満ちた顔に変わってくるのを横から眺めていた。

 

――本当、好きな事やってるアンタはいい顔するよね――

 

そして一時間後、一同は電車を降り、最寄りの市民体育館へと着いた。待ち合わせはここだ、その入り口付近で彼女、サツマは待っていた。

 

「おはようございます。お待ちしておりましたわ。皆さん」

 

「あ、イモエ、随分早い時間に呼んだじゃない。どうよ、その後友達とは」

 

ピクッとサツマの口元が歪む。

 

「サツマとお呼び下さいまし……、恥ずかしながら友達とは和解出来ましたわ。今は昔と今のメンバーを統合して新しいチームとなりましたの」

 

「そっか。仲直りできたんだ」

 

「残念ながら今日は都合がつかなかった為これませんがね。本当は友達をあなた達に紹介したかったのですが」

 

「残念、アタシも一緒に出来るならやりたかったけどな~」

 

「あら命知らずですわね。ワタクシのチームは前のメンバーも粒ぞろいですわ。ハジメさん程度では瞬殺は確実ですわね」

 

名前を言ったお返しとばかりにいたずらな笑みを浮かべ、サツマはナナに言う。

 

「ちょっと、いきなりそれはないんじゃない?」

 

「ささ、ずっと店の前にいるのもなんですから入って下さいまし、早く受付を済ませましょう」

 

「スルーすんな!」

 

――……友達は未だワタクシの入ってた枠は残していてくれたらしくて……気に入りませんが……感謝はしますわ……ナナ……――

 

口を尖らせるナナを尻目に、誰にも聞こえないようにサツマは呟いた。

 

「ん?なんだろう?あの白い箱の山」

 

受付を済ませたアイ達は館内に入る。廊下には長方形のミーティングテーブルが廊下の壁にそって並んでおり、その上には白い箱の山が積まれていた。

 

「あれが今回のイベントの目玉、『くじ引きガンプラ』ですわ」

 

「くじ引き?なんなのイモエ」

 

「だからサツマですわ……。あの中には様々な種類の作ってないガンプラがあります。今回のイベントはあの中の好きな箱を一つ選び、

その中のガンプラを組み立ててバトルする、という内容ですわね」

 

「なるほど、自分に合わない機体を選ぶこともありそうだから実力意外に運も絡みそうだな」

 

コンドウが興味深そうに積まれた白い箱を見つめる。

 

「その通り、ついでに三体でのチームでの出場が可能ですわ」

 

「へぇ~、面白いね。素組みでやるの?」

 

「はい、無論早く受付を済ませた順からガンプラを選ぶルールですから、早いうちに受付を済ませた方が必然的に良い機体を選ぶ確率が上がる為、有利になりますわ」

 

「だからこんな朝っぱらに呼んだってわけ?」

 

その通りですわ。と返すサツマ

 

「へ~、塗装とかの必要がないならアタシも気兼ねなくできそうだね」

 

「そううまくはいきませんわ。ハジメさん」

 

「ん?どういう事よ?」

 

「ここにだって強いビルダーは他にもいますもの。当然今日その人が出ますわ。そしてワタクシは友達がこれない為、その方とチームを組みますわ」

 

「やっぱいるんだ……」

 

「その通り、もう来ててもおかしくないんですけど……」

 

辺りを見回すサツマ

 

「その強豪ビルダーって、こないだ『ゴウセツ・ユキ』って人と戦ったけど、その人?」

 

「いえ、その方より強いですわね。もう来ててもおかしくないんですけど……」

 

もう周りは受け付けを済ませたであろう人がちらほら見える。男も女もいれば、年配の人間も若い人間も見えた。

 

「うーん、見ただけじゃわからんなぁ」

 

「え~と……あ!いましたわ!」

 

サツマが指を指す。そこにはベンチに座ってカバーのかけられた本を読んでる少年がいた。中性的な少年だ。

 

「カサハラくん!おはようございます!」

 

爽やかな笑顔でサツマは駆け寄る。それを見たカサハラと呼ばれた少年は…

 

「!?ひぃっ!サ!サツマさん!」

 

ビクッとすくみながら答えた、怯えながらもそのまま手をひかれ、連れてこられる少年。

 

「彼が『ルジャーナ』の強豪ビルダー、カサハラ・リョウ君ですわ!」

 

「あ……こ・こんにちは……」

 

 

オドオドしながら消え入りそうな声で挨拶をする少年、身長は140㎝位か、童顔と身長から見た目かなり幼く、

かつ中性的に見える。男の娘という奴だ。

タカコがいたら間違いなく食いついただろうな。というのがアイ達の感想だった。

 

「サツマさん、小学生ですか?」

 

「は……はい……五年生です。あなた達は……?」

 

「隣の県からこのイベントに参加しようと来たんだ。君も出るのかい?」

 

「はい……あの……お手柔らかに……」

 

怯えてるのか、サツマの後ろの位置で困惑顔で答える少年に、どうも強豪ビルダーと言われた実感が持てないアイ達だった。

 

「ちょいイモエ。こっち」

 

「だからサツマですわ。なんですの?」

 

ナナはサツマを連れて廊下の端に移動し、サツマに詰め寄る。

 

「あのさイモエ、本当にこの子が強豪ビルダーなわけ?」

 

「だからサツマっつってるでしょう。そうですわ。彼はこの辺では少しは名の知れたビルダーですわ」

 

「あのビビりっぷりからそうは見えないけど」

 

「まぁ、初対面ならそう見えますわね。ガンプラバトルでならわかりますわよ。……解らずじまいかもしれませんけど」

 

「は?」

 

ボソッと付け足すサツマの発言にナナは理解が出来なかった。

 

 

その後、イベントが始まり受付をした順にビルダーが箱を取っていく。取ったビルダーはこれから二時間ガンプラを作成し、サバイバルバトルに出場するわけだ。

 

「全員取ったね?」

 

アイがナナ、コンドウ、サツマに問いかける。全員が答えるかのように白い箱を見せた。

 

「じゃあさっき言った通り、いったんここで別れよう」

 

「それぞれ分かれてガンプラを製作、あえて見せないでガンプラ作ってバトルに参加しようという提案だったな」

 

「うん、バトルで再会して何を作ったか見せつつ戦おうって事」

 

「了解ですわ。二時間後に会いましょう」

 

そして全員が別れる。かに思えたが……

 

「あのさアイ、ちょっといい?」

 

アイに一人話しかける。

 

「ナナちゃん?どしたの」

 

「いや、なんか変なガンプラ引き当てたみたいで、なんの作品に出てたのか聞きたいんだけど」

 

「変な?」

 

「うん……これなんだけど」

 

そういってナナは箱の中身を見せた。アイは袋に入ったランナーの束を見る。三角形のパーツがやたら多く、一方で丸みを帯びたパーツも多かった。

説明書に描かれた完成図はガンダムタイプだ。しかし普通のガンダムタイプとは違う。

クリアイエローのアンテナ、丸みを帯びたフォルムにさっき見た赤、青、黄の三角形のパーツ全身に装着してある。ビームサーベルは背中に六本もあり、

そして何より背面にバックパックがない。通常のガンダムとはまるで違う。まるで玩具の様な印象すら受けた。

 

「これって……」

 

「こんなにサーベル持ってどうすんのよ?って思って」

 

「凄い!ビギニングガンダムだ!」

 

「ビ・ビギ……?」

 

「うん!登場作品のない最初からガンプラだけの機体だよ!ハル君も初めて作ったガンプラがこのガンダムだって!

これの強化型が選手権ではハル君が乗って大活躍したんだよ!」

 

眼を爛々と輝かせてアイは説明する。

 

「ハル君の……じゃあアンタにとって思い出の機体なんだ」

 

「あ、うん。まぁ、ね」

 

アイにとって目標でありきっかけの人だ。『思い出』という言葉にアイは歯がゆさを感じながらも返事する。

 

「じゃあアンタのガンプラとアタシのこれ、交換する?そういうガンプラとなるとアンタが乗った方がいいんじゃ……」

 

「いや、さすがにそうは思わないよ。そのガンプラはナナちゃんが使って」

 

「分かった。ハル君程じゃないけど、やってみるね」

 

「うん、じゃあバトルでね」

 

ナナは近くの観客席に座ると隣の席に箱を置き、ニッパーを手にした。

 

「ビギニング……始まり……か」

 

 

そして二時間後……、サバイバル戦が始まった。ステージはランタオ島。『Gガンダム』に登場した島で、島全体がバトルロイヤルの戦いの場だ。

曇天の空を飛ぶナナのビギニングガンダム。

ナナは始まってさっそく戦闘になった。ビギニングが飛んでる所を『Zガンダム』に登場した量産機、

ハイザックが地上からマシンガンを撃ってくる。その名の通りザクの発展型でフォルムはよく似ている。

 

「始まって早々!?だけど!」

 

シールドで弾丸を受けると、ナナはビギニングのビームライフルで撃ちかえした。ハイザックはビームをかわしビギニングに迫る。

 

「接近戦!ビームサーベルを!」

 

背中にある三本のビームサーベルをまとめて抜くビギニング、そのままハイザックを叩き斬る。切り裂かれたハイザックはそのまま爆炎に包まれて落ちて行った。

 

「一気に三本も持てるなんて、変わってるわねホント、羽根もナシに飛べるし……」

 

飛ぶ感覚はフリーダムやストライクの飛行とまた違った感覚だ。飛ぶというより浮かぶといった感覚だろうか、

ナナはその飛行感覚の違いに違和感を感じる。と、Gポッドに警告音が鳴り響いた。ナナのガンダムめがけて二連の砲撃が飛んでくる。

 

「!?誰!」

 

ナナは空中で機体を器用にくねらせ避ける。非常に動きやすい機体だとビギニングの感想を心で述べるナナ。

かわした砲撃は放物線を描き遠くの岩山に着弾。大きな爆発を起こす。

砲撃は森林地帯から撃ってきた。威力からしてかなりの強敵だとナナは警戒しながら森へとビームライフルを構える。

 

「まさかビギニングガンダムを引き当てるとは驚きましたわ」

 

「その声!イモエ!」

 

「サツマですわ!その機体はあなたには過ぎた物です!即効退場させていただきましょう!」

 

森からサツマの機体が姿を現す。小型の球体にマニピュレーター、頭頂部に2連装キャノンを備えたHGUCボールだ。

『ファースト』から登場。本編劇中は棺桶扱いされるなど弱い印象が強い。

大きさはナナのガンダムの膝くらいしかなく、その珍妙な姿にナナは吹き出した。

 

「って言ってる割にはショボ!」

 

「やかましいですわ!単純にハズレ引いただけです!たかがガンプラの基本性能!戦力の決定的差でない事を思い知らせて差し上げますわ!」

 

「お決まりのセリフを!返り討ちよ!」

 

地上のサツマがキャノン砲を向け、上空のナナがビームライフルを向ける。しかしその時だった。突然オレンジ色のビームがビギニングに迫る。

 

「何!上からっ!?」

 

警告音に気づき、真上にシールドを構えて防御するナナ、シールドの表面はただれるも防御しきる。

 

「いきなり誰ですの?!」

 

「ヒャーッハッハッハ!!防いだかぁ?」

 

「っ!?」

 

 

撃った機体。一体のガンプラがビギニングより高い空中で姿を現す。ガンダムタイプで赤と白で分けられたボディが目を引く。

紅白のガンダムは先ほどまで戦っていたであろうボロボロのガンプラを頭から掴んでいた。胸に穴が空いたM1アストレイだ。(ガンダムSEEDに登場した量産機)

先程の赤い板が紅白のガンダムの背中に納まる。

 

 

「彼は!まさかリボーンズを引き当てるなんて思いませんでしたわ!」

 

サツマが驚愕の声を上げる。リボーンズガンダム、『ガンダムOO』のラスボスだ。

 

「あぁん?さっきの年増共か?そっちのオバサンはボールひくたぁついてねぇなぁ。安心していいぜ?俺様は御覧の通りリボーンズだ。勝ちは確定だしなぁ」

 

リボーンズのビルダーはサツマのボールに話しかける。彼女の味方の様だ。

 

「年増?!ア・アンタね……初対面に失礼でしょうが!」

 

「あぁ?!ボケたのか?来たときあったろうが!」

 

「ハジメさん……その人、カサハラ・リョウ君ですわ」

 

「は?!」

 

ナナは素っ頓狂な声を上げた、あまりにも今朝あった少年とは喋りも態度も別人だからだ。

外見もリョウは前髪をオールバックにし、(額に生々しい傷跡がある)目つきも悪くなっており印象が全く異なっていた。

 

「知りません?ガンプラバトルに入ると性格が変わるビルダーもいるって」

 

「あーアイが前に言ってたような……」

 

「そういう事ですわ、彼もその類ですの」

 

「呑気にくっちゃべってんじゃねえよ!行けや!フィンファングゥ!!」

 

リボーンズガンダムはM1アストレイを放り投げると、背中から先程のフィン状のファングを放出する。ガンプラバトルという制約上、

登場原作程の性能はないにせよ、難敵なのは間違いない。フィンファングはビギニングに高速で迫りビームで追いつめようとする。

 

「うわ!ちょっとそれはないんじゃない!?ならこっちも!」

 

今の所距離があるためビームはかわせる。が、いつ当たるか解ったものではない。

当てる自信はないがナナはビギニングのビームライフルを構える。ファングを撃ち落そうというのだ。

だが直後、そのライフルにキャノン砲が撃ちこまれ爆発。

 

「!?うわ!」

 

「ファングだけかと思ったら大間違いでしてよ!」

 

サツマのボールの援護だ。ファングに気を取られていたナナは避けることが出来なかったのだ。

誘爆によりバランスを崩したビギニング、更にそこからフィンファングがビギニングに撃ってきた。

 

「ゲッ!」

 

ナナはシールドを構えて防御、が、再装填したボールのキャノンがビギニングに命中、着弾の衝撃でビギニングは荒れ地に墜落。

距離をつめたリボーンズはビギニングを破壊しようとGNバスターライフルを向ける。

 

「なんだぁ。イマイチだなつまんねぇ、とっとと消えな」

 

「クソッ!機体も実力も向こうが上なの!?」

 

その時だった。リボーンズへ何かが飛んできたのだ。それはボールと同じキャノン砲の弾だ。まっすぐリボーンズガンダム目掛けて飛んでくる。

 

「なんだぁ?!」

 

リボーンズガンダムは弾を撃ち落そうとライフルを撃つ。ビームは弾を飲み込み爆発するがその直後、

GNバスターライフルを何かが切り裂いた。輪っか状のビームだ。

 

「何だとぉ!?」

 

「誰なの!?まさか!」

 

ナナが声をあげたその時、二体のガンプラが姿を現した。片方はサツマと同じHGUCボールだ。

もう一体はセーラー服を着た少女のような姿のガンダム、『Gガンダム』に出てきたノーベルガンダムだ。

 

「あの機体、そうかアイ!その女の子みたいなガンダムに乗ってるのアイなんでしょ!?」

 

アイの機体だと確信し通信を入れるナナ、そして通信で出てきたビジョンは

 

「俺だよ」

 

「……は?」

 

コンドウだった、しかも彼の衣装がまた酷かった……体のラインが出る水色のボディスーツ、

しかも胸元にはリボンがついておりあまりにもコンドウにはミスマッチだった。ぶっちゃけ気持ち悪い。

 

「気持ち悪っ!!なんでそんな恰好してんのよオッサン!!」

 

「やかましい!俺だって恥ずかしいんだ!Gガンダムの機体引いたビルダーは強制でFポッドだったんだぞ!」

 

「Fポッド?何それ?」

 

顔を赤らめながらコンドウが言う。通常、ビルダーはコクピットを模したGポッドでシートに座り操縦するが、

FポッドはGガンダムの操縦システムを模したポッドだ。直にビルダーの動きをトレースする為、

立った状態でビルダーは動かす必要がある。そして必然的にスーツも体にフィットするタイプになる。割と近年になって出回り始めたポッドだ。

 

「残念だけど私はこっちのボールに乗ってるよナナちゃん、皆揃ったからにはもう大丈夫」

 

「あ、そっちの玉みたいな奴ね。……アンタもそれ引いたんだ」

 

アイのボールは機体こそ同じだがサツマとは武装が違った。頭頂部のキャノン砲はひとつだけだった。

 

「チッ!数が多い!ここはリボーンズキャノンで!」

 

増えた敵にカサハラが舌打ちする。そのまま反転し、機体が変形する。

 

「何あれ!?裏返し!」

 

リボーンズガンダムは前後を反転する事によって砲撃戦用のリボーンズキャノンに変形する事が可能だ。

ガンダムタイプの顔はゴーグルの顔になり、飛んでいたリボーンズキャノンはそのまま地面に降り立ち、ナナ達に向く。

 

「来る!?……あれ?」

 

身構えるアイ達、が、何もしてこない。

 

「ちょっと!どうしたのよ!わざわざカッコよく変形した割には何もしてないじゃない!」

 

「ひぃ!ご・ごめんなさい!怖くてぇ!」

 

「……へ?」

 

カサハラの取り乱した情けない声にナナは絶句した。さっきの口の悪さと威勢からは想像もつかない変化だった。

リボーンズキャノンは何もしない、カサハラはGポッド内でガタガタ震えていた。

 

「あーあ、変形しちゃいましたか」

 

余計なことを、とでもいわんばかりの調子でサツマは言う。

 

「ちょっとイモエ!どういう事よあれ!?」

 

「イモエじゃなーい!どういう事もこういう事も、彼はガンダムタイプ限定で性格が変わるタイプのビルダーなんですの、

『ガンダムに乗れば自分が主役みたいに強くなった気になれる』とかで、しかも本人は性格が変わってる自覚が一切ありませんの」

 

「リボーンズキャノンはガンダムタイプじゃないから、か?」

 

「その通りですわ」

 

「……」

 

「と!とにかく何はともあれチャンス!何もしてこないならこっちから!」

 

「そ!そうだな!」

 

拍子抜けだが絶好のチャンスとリボーンズキャノンに迫るビギニングとノーベル、そしてボール、カサハラはその三機を見るとますます怯えだす。

 

「うわぁぁ!!こっちこないでぇぇっっ!!」

 

カサハラは眼をつむり、一斉にGNキャノンを乱射、射線上にある物を破壊しまくる。

 

「撃ちまくって!でもここからならキャノン砲で狙える!」

 

アイは狙い撃ちじゃ無い分動かない方がいいと判断、リボーンズキャノンに照準を合わせ、頭部のキャノン砲を撃とうとする。が……

 

「そうはさせるか!」

 

「!?」

 

上空から一機のガンダムがボールに殴りかかってくる。これまた『Gガンダム』に登場した格闘戦主体のガンプラ、ゴッドガンダムだ。

恐らくカサハラの残りのチームメイトだろう。

 

「カサハラをやらせはしないぜ!覚悟!」

 

乗ってるのは大人だ。ゴッドガンダムはボール目掛けてパンチを繰り出す。

 

「来るっ!っボールだってぇ!」

 

避ける暇はないとアイは判断、ならばとアイはボールのマニピュレーターを使いパンチを受け止める。

ボールがゴッドガンダムのパンチを受け止めるとは思っていなかったのだろう。ボールのマニピュレーターは鳥の足のように小さく細長いのだ。

驚愕するゴッドガンダムのビルダー。

 

「!?アイ!」

 

ナナは援護としてビギニングをアイのボールに向けようとするが、

 

「駄目!ナナちゃんはコンドウさんとリボーンズキャノンを!」

 

「よそ見とは生意気な!空手段持ちの俺を舐めるな!」

 

ボール相手にこんな余裕をかまされる事にゴッドのビルダーは怒る。圧倒すべくボールにラッシュをかける。

幾つにも見える拳の嵐、一発でも直撃すれば立て続けに食らうとアイは判断、ラッシュにあわせて高速でマニピュレーターを稼働させパンチを受け止める。

 

「くぅぅっ!!」

 

前面から迫り来る拳の嵐を全て受け止めるアイ。ボールのマニピュレーターは割とフレシキブルな稼働を誇る。

が、手が届かない範囲は機体ごと動かさなくてはならないため

機体の移動とマニピュレーターの移動を高速でこなしていた。彼女はもう必死だった。

 

「ば!馬鹿なぁ!」

 

ゴッドガンダムの拳をボールが『シュパパパパパ!』と全て受け止めている。絵面は完全にギャグだ。ゴッドのビルダーはそれが信じられなかった。

 

「ニッパーの斬り方ひとつで強度は変わる!それを可能にするのが!!ビルダーなんですよ!!」

 

「くっ!ならばこれで!」

 

腰のビームソードに手をやるとボールに横一閃に降るう。さすがにボールにビームソードを受けることは出来ないだろう。

ゴッドガンダムのビルダーはこれで勝ったと安心していた。が、彼のFポッドに警告が走る。

 

「何!?」

 

気付いた直後、ゴッドガンダムの脳天からキャノン砲が撃ちこまれ、ゴッドの頭部と胸部は爆散、ビームソードを振るった瞬間、ボールは高くジャンプしていたのだ。

 

「相手がボールと油断した……。修行のやりなおしだぁぁ!!」

 

爆発するゴッドガンダムを尻目にアイのボールは着地、「ボールでよくできたな」と自分でも感心していた。

凌ぎ切ったとはいえボールのマニピュレーターはボロボロだった。やはり素組では無理があったらしい。

だが直後、考えを切り替えたアイは、ボールをリボーンズに向け飛ぶ。ナナとコンドウの援護の為だ。

 

「待ってて!皆!」

 

 

――その頃ナナとコンドウは……

 

大型ビームの乱射、ナナは阻まれるがコンドウにとって突破できない弾幕ではない。

 

「よし!このまま一気に!」

 

一番乗りは軽量のノーベルだ。だがノーベルがリボーンズキャノンを攻撃する前に、リボーンズキャノンを背後から掴む機体がいた。

 

「何?!別のチームか!」

 

リボーンズは両腕を掴まれ持ち上げられる。両腕には三本の指状のクローがガッチリ食い込んでいた。クローの持ち主はかなりの大型機だ。

 

「ひっ!何!」

 

正体はHGのゾックだ。ファーストに登場した前後対象の水陸両用の機体。その姿は太った河童の様な出で立ちだ。

その大きさ、およそリボーンズの1・5倍、別チームのビルダーの機体なのだろう。

その体躯はリボーンズキャノンを軽々と持ち上げる。そのままゾックは胸部のメガ粒子砲でリボーンズキャノンを破壊しようとする。

 

「うわぁぁっ!!やめてぇぇ!!」

 

が、カサハラは慌ててリボーンズキャノンをリボーンズガンダムへと変形させる。

 

「しまった!変形するぞ!」

 

「あぁもう!こんな時に!」

 

リボーンズキャノンはそのままリボーンズガンダムに変形、フィンファングをゾック目掛けて射出した。

 

「へっ!俺を倒そうなんざ甘ぇんだよ!!」

 

カサハラはフィンファングを操作しゾックを真上から撃ち抜いた。一撃で沈黙するゾック。それを尻目に再びフィンファングはコンドウ達に向き。撃ってくる。

 

「くっ!だがそんな簡単にやれると思うな!」

 

防戦一方なナナに対し、ステップを駆使しながらコンドウのノーベルは、リボーンズに近づこうとする。

しかし隙を突こうにもノーベルとビギニングが近づこうとするとサツマのボールが援護射撃で二人の進行を阻んだ。

 

「マズイよオッサン!このまま固まっていたら皆やられちゃう!」

 

「ならばハジメはボールを頼む!あんなナリだけどキャノン砲は協力だぞ!気を付けてくれ!」

 

 

「あいさ!」

 

コンドウはノーベルをリボーンズに突っ込ませる。

ノーベルを撃とうとするボールだが、そのタイミングでナナはビギニングをボールへと突っ込ませた。

 

「イモエ!アンタの相手はアタシよ!」

 

「ハジメさん!?やはりアナタとは個人的に雌雄を決したいところですわね!」

 

「その機体でよく言うわよ!」

 

ボールはノーベルに撃つはずだった連装砲をビギニングに撃ちこむ。ビギニングはシールドで防ぎ、ビームサーベルを三本構える。

そのままボールのふところへ入る。

 

「もらった!」

 

「斬らせはしませんわ!」

 

ビームサーベルを振ろうとしたがボールの連装砲は既にビギニングに向いている。

 

「あなたがビームサーベルを振るう前にワタクシが撃ちぬきましてよ!」

 

「!甘い!」

 

そう言うとナナはビギニングの頭部バルカンを撃ち込む。ビギニングのバルカンはビームなので通常の物より強力だ、あっという間にボールは鉢の巣となり爆発する。

 

「それはやっぱ卑怯でしょぉぉっっ!!」

 

「よしっ!オッサンの方は!?」

 

ノーベルの方も有利に進めつつある様だ。四枚のフィンファングは主を守ろうとコンドウとアイへ集中砲火をかける。

しかしノーベルはうまくかわしながらビームリボンを操り応戦している。

 

「やるじゃねぇか!華奢な体型の割にはパワーがあるぜ!」

 

「ガンプラを見かけで判断するなって事だ!」

 

「しゃらくせぇ!色塗りかえてプリキ○アかアイ○ツ仕様にしてやらぁ!」

 

「塗り替えただけで出来るかぁ!」

 

その隙にアイのボールは、リボーンズの背後から少し離れた場所に着地、

 

――ヤタテか?――

 

コンドウは向かい合うリボーンズの背面にいるアイの存在に気付いた。アイはここからリボーンズを狙い撃とうというのだ。

ならとコンドウはビームリボンをビームサーベル状に変形、リボーンズに斬りかかる。

 

「いい度胸だ!」

 

リボーンズもビームサーベルを持ちノーベルと鍔迫り合いになる。カサハラは動きを止めたノーベルの背面にファングを配置、狙い撃とうというのだ。

だが狙い撃とうというのはアイも同じだ。

 

「今だ!」

 

ファングを撃たれる前にとアイはキャノンを撃とうとする。しかし……

 

「甘ぇよ!」

 

リボーンズは見越したかのようにサーベルを持ってない手を変形させ、その手だけをリボーンズキャノンの形態に変える。

その手には高圧電流を射出するワイヤー『レグナーウィップ』が仕込まれてる。ボール目掛けそれを射出。そこから放たれる電流をモロにボールは食らってしまう。

 

「うそぉっっ!!」

 

電撃を受けるボール、アイのGポッドの電撃再現の振動に揺られながら叫ぶ。

 

「見えてねェと思ったのか!?このリボーンズを!」

 

「ヤタテっ!ハッ!」

 

コンドウはアイの安否を気遣う、が直後コンドウのノーベルも背面をファングで撃たれる。直前で横に動いた為

直撃は避けられたが背面を損傷しノーベルはその場に倒れ込む。

 

「うぉぉっ!」

 

その隙をついてリボーンズガンダムはボールに突っ込んだ。ビームサーベルで直接倒そうというのだろう。

 

「くっ!早く動かなきゃ!」

 

「マズい!」

 

「ア!アイ!」

 

見ていたナナは倒されそうなアイをどうすれば救えるか、と思案していた。この距離ならビームライフルは当たるだろう。しかし肝心のビームライフルがない。

コンドウのノーベルはまだファングにつきまとわれてる。その時、ナナは自身の手に握られた三本のビームサーベルが目についた。

 

「よし!九本もあるんだからたかが三本!」

 

アイの目の前にリボーンズガンダムが迫る。もう駄目か、とアイは目を瞑った。しかし次の瞬間だった。

 

「ぐおっ!」

 

「!?」

 

リボーンズガンダムの頭部と胴体に、三本のナイフ程度の長さになったビームサーベルが突き刺さっていた。

ナナのビギニングだ。ビームを短く調整したビームサーベルを投げつけたのだ。

 

「アイ!今よ!」

 

「ナナちゃん!サンキュー!」

 

アイはボールのキャノン砲を至近距離のリボーンズのコクピットに撃ち込もうと撃つ。

 

「くそ!トランザム!」

 

慌てたリョウはトランザムで機体性能を向上させる。上がったスピードで至近距離の砲撃をかわそうと試みたのだ。

結果、砲撃はコクピットの直撃を免れたが、右に飛ぼうとしていた為左胸と左腕、至近距離のキャノン砲の余波で頭部が吹き飛んだ。

派手な爆炎と共にリボーンズガンダムは吹っ飛ばされる。

 

「あぎゃあ!」

 

「ここまでね!覚悟なさい!」

 

改めて三本のビームサーベル持ったビギニングがリボーンズをこのまま斬り裂こうと迫る。このままでは負けるとカサハラは判断する。

 

「ひっ!やだ!負けちゃうよ!そ・そうだ!だったらトランザムの火力で!」

 

カサハラが強気になるかどうかはガンダムの頭の有無で決まるようだ。弱気に戻りながらも

持続するトランザムの火力で起死回生を図ろうとする。しかしその時だった。

 

「ならば!バーサーカーモード!!」

 

コンドウの野太い声が響くと共に、赤く輝くノーベルガンダムがリボーンズに凄い勢いで突っ込んだ。

ノーベルにもトランザムと同じ仕様でバーサーカーモードが入っていたのだ。

リボーンズガンダムの懐へあっという間に入ると、ノーベルはビームサーベルでリボーンズガンダムを袈裟がけに切り裂いた。

 

「ひ……!」

 

「ハジメェ!!トドメを!」

 

「それあるんだったらもっと早くつかってよぉぉ!!!」

 

返事の代わりにコンドウへの愚痴を叫ぶナナ、

上空からビギニングガンダムが三本のサーベルをふりかざす。サーベルを振り下ろすと同時に真っ三つにされたリボーンズガンダムは爆発した。

操作主を失ったファングも力なくその場に落ちた。

 

「そ・そんなぁぁ!!」

 

その後もバトルは暫く続いたが結果的にアイ達の勝利となった。

 

 

 

「いやいや、一時はどうなる事かと思ったが勝ててよかった。しかしいつもと違う機体に乗るのも面白いもんだ」

 

上機嫌でバトルの感想を述べるコンドウ

 

「気に入りました?ノーベルとあのスーツ」

 

「バカいえ」

 

「あの……ボクも勉強になりました。またよろしければバトルしてくれますか?」

 

バトルが終わった後、カサハラ達は距離感が縮まっていた。なんやかんやいって彼も立派なビルダーだという事だ。

 

「あぁ、いい気合だったよ。またやろう」

 

「でもその時はもうちょっと口調は軟らかくしてほしいかな?」

 

それを遠巻きに見るサツマ、ナナを見つめながら何故彼女が気に入らないか考える。

ナナは自分の考えを見抜く、サツマが自分の強さと実績を求める一方、友達を捨てたという行為、それに後ろめたさを感じていたのは事実だ。

しかし彼女のプライドとガンコさと性格上、自分の間違いを指摘される事を嫌ってる。

だがナナは間違いを指摘し、結果的に仲直りの電話をかける後押しをしたのは事実だし、サツマ自身もそれは理解していた。

 

(サツマは知らないが、ナナは完全に見抜いたわけではない。自分がアイとガンプラをしてる時が一番楽しいという経験からの予想だったが)

 

自分にとってはまだ格下ではあれど、ナナを認めてあげるべきか、とサツマが思ってるとナナがサツマに駆け寄ってくる。

 

「あのさ、イモエ」

 

「もう今日はイモエでいいですわ、それで……」

 

こうやって遠慮なしな性格も気に入らない要素の一つだとサツマは考える。

 

「あの子が強いビルダーならアイじゃなくてあの子勧誘すればよかったじゃない」

 

「そうですね。それは試しましたわ。でも……」

 

「?」

 

「何故か怖がられてますのワタクシ、何故でしょう」

 

「あ~納得」

 

「どういう意味ですの!?」

 

――やっぱコイツ憎ったらしい!!――そうサツマは思っていた。

 

ファイティングスーツ姿のコンドウは今の私には描けませんでした……23話終了です。

ビギニングの逆転の投擲、ちょっと気に入りませんが他に思いつかなかったのでこうしました。

ここんとこ話の中心がナナばかりでアイが主人公という立場が薄くなりつつあるため、次回はアイが中心となります。


 
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