No.695377 機動戦士ガンダムSEEDDESTINY 失われた記憶を追い求める白き騎士アインハルトさん 2014-06-20 20:39:07 投稿 / 全8ページ 総閲覧数:2298 閲覧ユーザー数:2228 |
C.E.73年10月2日。
ガンダムエクシアとガンダムデュナメスの授与からほぼ二ヶ月近くが経過した今日、刹那はプラントの軍事工廠“アーモリーワン“軍事工廠前に来ていた。明日、進水式をあげる新造艦“ミネルバ“と“プトレマイオス“通称トレミーのクルーとなる刹那はハイネ宅からアーモリーワンに一時期移り住んでいたのだ。シンたちとは同じ艦に配属されるということでモビルスーツの訓練をしていく中で確かな絆と親睦を深めていった。
特にシンとはモビルスーツにおけるライバル関係、平時は兄妹のように過ごしてきた。あの後知ったことだが、シンはC.E.71年6月15日に行われたオーブ解放作戦の中で両親と妹をザフトから強奪されたモビルスーツ、“フリーダム“の流れ弾に巻き込まれて亡くなってしまったらしい。
ザフトに入ったのも、平和なオーブを戦場に変えた連合が憎かったこと、またコーディネイターでもあるためであり、オーブもまた理念の事ばかりで国民を守ってくれなかったことによるものだったと聞いている。実際この解放作戦で国民の二割近くは死亡しているのはほんの少しばかり有名な話だ。
そんな刹那は今、アーモリーワンの市街地にいた。今日はシンと午後の集合までしばらく来れないであろう市街地を回る約束をしていたのだ。ルナマリア曰く「デート」らしいが、刹那にはあまり自覚はなかった。
というのも、シンは素直になれない……けれど本当はちょっぴり寂しがり屋さんな普通の女の子だという見方をしているのだが、それがどうしても“妹“の域から抜け出せずにいる。 記憶を失う前に妹がいたのかどうかはわからないが、とにかくシンを女性としてみるには、この価値観を変えなければいけないと刹那は何となく感じていた。
「おまたせー!」
シンとの待ち合わせ時間より五分前。十分前に来ていたから丁度五分が経過したところでシンの声が聞こえてきた。
振り返ってみると、そこには黒髪の乙女がいた。
「?どうかしたの刹那」
きょとんとした顔で尋ねるその仕草は男をくらっとさせる魔力だと思ったがそれについてはひとまず置いておくとしよう。
「いや……そういう服も持ってたんだなぁって思ってね」
「ああ、これ?ルナが貸してくれたの」
改めてシンの服装をチェックする。 真っ白のシャツワンピに白ジャケットをオンして、白のヒールを履いている。ジャケットには薄手のフードが付いていた。黒髪に新雪のような肌を持つシンに合った、まさにベストコーディネイトというべきだろう。
ナイスコーディネイトだルナマリア。今度の合コンのセットは(ハイネに)任せておけ。
「それにしても……ヒールってなんだか歩きにくいね。普段は運動靴とかブーツしか履いてなかったからこういうのって初めてなんだよね。それにこんなに長いスカートも初めて」
仕切りに足下を気にしているシン。 その仕草の一つ一つに愛らしさを感じて、普段の訓練中の凛々しさを感じさせるようになった少女とのギャップがいい。
━━そうか、これがヨウランの言う“ギャップ萌え“というものなのか……
「さて、それじゃあ行こっか」
「うん!」
こうして俺たちは午後になるまで市街地へとくり出していった。
すれ違った人たち全員が総出で振り返る。そこに男も女も関係なく、一斉に振り返る。
透き通るような白い肌。何かと比べるのさえおこがましいくらいに綺麗な黒髪。滅多にお目にかかれない深紅の瞳。そんな少女をより美しく魅せる白のシャツワンピ。
ある独身の男は、あまりに少女を見つめすぎたために電柱に顔をぶつけ、
またある彼女連れの男は彼女である隣の女性に抓られている。
ほとんどの男たちが彼女を目で追いかけ……その視線が隣に仲良く並んでいる少年に移った途端に凄まじい嫉妬の視線に変わる。
━━なるほど、メイリンが以前“女はちょっとしたコーディネイトで周囲からの評価は大きく変わる“と言っていたが、どうやらそれは本当のようだ。
普段のどこか人を寄せ付けようとしないトゲトゲしい雰囲気を脱ぎ捨て、完全に浮かれているシン見ていると誘った甲斐があったというものである。
最初に向かったのはゲームセンターで、そこでクレーンゲームにてシンに某ペンギンポケモンと某電気ネズミのぬいぐるみを取ってやったり、太鼓を使った音楽ゲームでフルコンボしたり(なおシンは初めてのゲームだったらしく困惑しながら太鼓を叩いている姿が高ポイントだったのは内緒の話だ)。また最近設置されたというアクションレースゲームで自身が使う赤い帽子のおっさんがシンの使う緑色の恐竜に負けて思わず連コインしたり、お返しにとシューティングゲームでは圧倒的差で勝ってやったけど涙目で睨まれた(大人気なくはなどはない。むしろ負けたままの方が格好悪い)。
次に向かったのはバッティングセンターだ。
これには生身での実戦訓練が劣る俺には分が悪く、三球中シンは二八回。俺は六回ホームランを打てた。
先件のシューティングゲームにおいて圧勝されたことを根に持っていたのか、終了後には少しの膨らみを持つ胸を張って勝ち誇った笑みを浮かべていた。
そして集合時間まで刻々と迫ってくる中で、俺たちは最後にちょっとお洒落なレストランで昼食を済ませてから市街地を後にした。
途中何度かシンがペンギンと電気ネズミを両腕に抱き抱えながら洋服店やアクセサリーショップに寄り道しそうになるのを止めるていきながら集合場所まであと少しのところまで来ていた。
それにしても今日は刹那・F・セイエイとしての人生の中では、とても楽しい部類になる時間を過ごせた。
それに、今日のシンはいつもと違った子供らしさが垣間見れてよかったと思えた。
「刹那」
ふいにシンが俺の名前を呼んでくる。
「どうかした?」
「……ありがとう」
少しばかり照れくさそうにぼそりと呟いてから、シンは恥ずかしく思ったのか逃げるように先走っていった。
なんというか、彼女のこういう面は滅多に見れないから新鮮でいい。
それに……こんな風に思いっきり楽しめたのも軍の訓練があったおかげで久しぶりだ。そういえば記憶を無くす前の自分もこんな風に誰かと遊んでいたのだろうか……?
たまに思うことだが、そもそもどうして自分は記憶を無くしてしまったのだろうか……
デュランダル曰く暴力だけでは出来ない傷まで負いながらシャトルの救命ポッドに収容されて宇宙を漂流していたと聞いたが、何故そんなところにいたのかも謎だ。
どこかへ捨てるつもりなら海に捨てるなり埋めるなりすればいい。なら逃げ出したのだろうか?だとすれば何から?
「━━考えても無駄か」
わからないことを何時までもうだうだと考えていても埒があかない。デュランダル議長だって、プラントの技術がこのまま進めば五年以内には記憶を取り戻す方法が見つけられると断言していたのだ。それを信じて、ただ自分は自分の成すべきことをするだけだ。
「そうさ、無理に自分を型にはめなくたっていい。四の五の言わずに、やればいいんだ。自分が思ったことをがむしゃらに……俺は、そのために議長からガンダムを託されたんだ」
遠目にシンが大きく手を振っているのが見える。
何時までも追い付かない自分にじれて急かしているのだろう。ここからでは人混みの声も相まって何を言っているのかはわからないがシンの性格を考えれば早くしてよとかその辺だろう。
市街地で購入した荷物を背負い直して、刹那は再び歩き出した。
「━━おっと」
と、そこに街角から人影が突然現れ、刹那と衝突した。
背負い込んだ荷物がどさりと足下に落ちる。弾みで跳ね飛ばされそうになっていた人影の身体を刹那が慌てて手を伸ばして抱き留めた。人影の正体は、一人の女の子だった。
「大丈夫か?」
ふっと鼻先を甘い匂いがくすぐる。柔らかそうな金髪の頭が目の下にあった。相手は驚いた様子で刹那の顔を見上げる。きょとんとした大きな目が印象的な、妖精めいた雰囲気の少女だ。白いドレスが、彼女の非現実的な印象をさらに深めている。明日の式典に招待された客の一人だろうか。
「━━だれ……?」
少女は呟く。刹那はそれに少し驚きながら、素直に名を開かすことにした。
「俺か?俺は刹那。刹那・F・セイエイだけど……」
「刹……那?」
金髪の少女はぽーっとしながら刹那の名前を呟く。しばらくして、何か大事なことを思い出したのか急に刹那から離れたと思うとすぐさまどこかへ行ってしまった。
「……なんだったんだ?」
それから刹那は、何時までも集合場所に来ないことに探しにきたシンが来るまで少女が走った方をその場で見つめていた。
薄暗いコックピットの中で、ステラ・ルーシュはシートにもたれかかってぼんやりとしていた。起動システムは既に立ち上がり、周囲の機器は明滅を繰り返していて。見たことない文字の羅列が膝元のパネルに流れては消え、流れては消えていく。
ただ、さきほど入れたデータディスクによるOSの書き換えにはもうしばらく時間がかかるということ。それだけがなんとなく分かる。だから、ステラは思い出していた。
さきほどのほんの僅かな時間の出会いのことを。
『俺か?俺は刹那。刹那・F・セイエイだけど……』
そう言いながら抱き留めていてくれた少年。
紅い瞳の、少年。どこかひどく悲しげで、そしてひどく優しい感じがした。けれどもそれ以上に脆く、儚い気がして。だからこそ、ステラはその少年に惹かれていた。
「刹那……」
その名を呼んだのは何度目だろうか。もう二度と会うはずがないのに……でも、何となく会えるような気がする少年のことを。
「刹那……」
心に思い浮かべる。
それははっきりとすみずみまで再現できる。ほんの少しの間の出来事だったというのに、それほどまでに強く印象に残っていた。偶然に街角で出会い。偶然にお互いぶつかって。偶然に目があってしまった。ただそれだけのことなのに……
なぜ、こんなにも気にしてしまうのだろう。慣れないその気持ちにステラは戸惑う。こんな気持ちは、ネオ以外に感じたことなどなかったのだ。いや、もう少し突き詰めて見ればそれとも違うことに気づく。
『おいステラ、そっちは準備OKか?』
と、聞き慣れた声にステラは現実に引き戻される。見れば膝元のコンソールパネルにはOS書き換え完了のメッセージが表示されていた。目の前のモニターには頭部のメインカメラによる格納庫内の様子が映し出されていて。
「……うん、大丈夫」
声の主、スティング・オークレーに通信を返す。ステラたち三人の中で一番年上でちょっとだけ優しい。
『おいステラ、お前が乗ったやつの名前は?』
そしてもう一つの声。
「え……」
『名前だよ、機体の名前。ミーティングの時に確認したろ』
「あ……えっと……」
『はい終了。答えはガイア。で、俺のがアビスでスティングのがカオス』
「うん、そんなだった気がする……」
『ったく、足引っ張るんじゃねーぞステラ』
こっちはちょっと意地悪だけどいつも一緒にいてくれるアウル・ニーダだ。だけどつい喧嘩してしまってネオによく怒られている。
そう。いつだってこの二人と一緒にステラはいる。ネオの言いつけを守って三人で行動する。嫌だなんて思ったことはない。第一ネオの言うことは絶対だし、スティングもアウルも暖かだ。
だから今日も一緒にいる。一緒にモビルスーツに乗っている。
「そんなこと、ないもん……アウルこそはしゃぎすぎてネオが言ったこと忘れないでね」
『はっ、そりゃご丁寧にどうも!』
そこでようやく思考が追いつく。今、自分が何をしているのか。この後に何をやらなければいけないのか。
『おしゃべりはそこまでだ……二人とも、さっさとガーティ・ルーに帰還するぞ』
『りょーかい』
「うん、わかった……」
ネオが「敵だ」と言うコーディネーターの基地で。さっき三人で奪ったモビルスーツを使って暴れつつ母艦に帰還する。それがステラたちの目的だ。
『先頭はアウル、殿は俺がやる。ステラはアウルの援護を頼む』
『まっかされました!』
「うん」
『どうも俺たちが奪った機体以外にも新型がありそうな気がする……気を付けろ』
そう言えば、ここに来たときにやけに警備が少なかった気がする。まるでここを捨ててでも守り抜かなければならない機体があるかのような……そんか気がステラは感じていた。
『かんけーねーよ。そいつらもまとめて奪ってくか、俺が倒してやるっての』
『馬鹿、今ある機体の奪取が最優先だ。無駄な戦闘は極力避ける』
『えーなんでだよ、つまんねー!』
『ネオも待っている。それに作戦時間に余裕はない…………それとも、一人でここに残りたいか?』
『……ちぇっ、分かったよ』
さすがはスティングだとステラは思う。自分ではアウルに言うことを聞かせるなんてできないのに。そして━━
『よし、発進だ』
スティングの声にステラはゆっくりと駆動ペダルを踏み込み機体を前進させる。黒を基調とした、細身のシルエットのモビルスーツ。それは他の二機に比べてどこか女性的で、だから一目見た時に自分が乗ると決めていた。
拘束具を引きちぎった僅かな揺れと、操縦桿から伝わる確かな感触。 まず問題はないようだった。ディスプレイにも機体の異常は表示されていない。
『それじゃぁ、行くぜぇ!!』
そして先頭を行くアウルの機体から放たれる赤い光。暗い空間を引き裂き、格納庫の天井を突き抜けた光の後にはコロニーの空が見えた。
『いくぞ!』
続くスティングの合図と同時にバーニアを噴かし、機体を飛び立たせる。
「……刹那」
軽いGに身体をシートに押さえつけられながら、ステラはもう一度少年の顔を思い出していた。
「一体、何がどうなっているんだ!」
オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハはデュランダル議長との非公式会談を申し入れ、その最中にこの事件に巻き込まれた。プラント側のSP、それに護衛の随員と共に避難中だったが、着弾の爆風で押し返されてしまいはぐれてしまった。振り返れば、3機のモビルスーツが格納庫の破壊行為を続けている。
「ああ、あぁぁ……」
ツインアイを持つ3機のモビルスーツの戦いに、カガリはどことなくデジャヴを覚えていると言葉にならない声を漏らしながら、一瞬、呆然と立ち尽くしてしまった。
「カガリ!」
直後、1人のサングラスをかけた若い男性が背後からカガリを庇うように抱き寄せる。
「死にたいのか!?」
オーブから同行している随員、アレックス・ディノはカガリを叱責するように言った。
「す、すまない」
カガリは顔を僅かに赤らめつつ、申し訳なさそうに言った。
「いや、はぐれてしまったこっちも悪い。すまん」
アレックスは言いつつ、カガリを庇うようにしながら、周囲を見渡した。 流れ弾や瓦礫が断続的に降り注ぎ、生身の人間が無事に歩いていけるような状況ではない。しかし、そのうちに視界に比較的無傷な状態で横たわっている、緑一色のモビルスーツが目に入った。確かザクと言われていたモビルスーツだ。
「あれだ!」
アレックスはカガリを抱えたまま、そのモビルスーツに向かって駆け出した。胸部に向かって飛び乗る。幸いにもコクピットハッチのドアロックはかかっていなかった。
「ど、どうする気だ?」
問いただしてくるカガリをコクピットのシートの脇に押込めると、アレックス自らはそのシートに納まる。イグ ニッションスイッチのキーは差したままになっていた。起動スイッチを入れる。
アレックスはOSの起動画面を見る。表示された形式号はZGMF-1000ザク。
計器類のバックライトが点灯し、メインディスプレイにメインカメラの画像が表示される。
「こんなところで、君を死なせるわけには行かないんだ!」
アレックスはそう言い、ザクを立ち上がらせた。
『“インパルス“発進スタンバイ。パイロットは“コアスプレンダー“へ━━』
戦闘区域からほど近い工廠内のドッグに、明日に進水式を控えた新造艦“プトレマイオス“通称トレミーが繋留されていた。
モビルスーツ管制の声が響き渡る艦内をシンと刹那は走っていた。二人の身を包んでいるのはエースの証、赤いパイロットスーツだ。二人は格納庫へ駆け込み、ヘルメットの
『コアスプレンダー、デュナメス、それぞれカタパルト・デッキに到着。リニア・カタパルト、ボルテージ230から520へ上昇。コアスプレンダーとデュナメスをリニア・フィールドに固定。射出準備完了、タイミングを各機に譲渡』
「了解。刹那・F・セイエイ、ガンダムデュナメス。目標を狙い撃つ!」
「シン・アスカ。コアスプレンダー……行きます!」
トレミーから射出されたモビルアーマーとガンダムが、戦場と化したアーモリーワンを舞った。
工場地帯に辿り着くと、テロリストに奪われたというセカンドステージシリーズ。“ガイア“、“カオス“、“アビス“の三機がシグーやディンを次々と撃ち落としているのが見えた。
「くっ……あいつら、どうしてこんなことを!!」
「シン、お前はインパルスに合体してろ。俺が奴らを牽制する」
「任せたよ!」
コアスプレンダーを少し下がらせると、デュナメスのデュアルアイが強く輝いた。
「行こうぜ、ハロ……ガンダムデュナメスの初陣だ!」
『ネライウツゼ!ネライウツゼ!』
コクピットの右前部、専用のポッドに収まっている独立AI式球形小型汎用マシン“ハロ“が合成声をあげた。
刹那はデュナメスコクピットの特徴である大型ランチャー並の精密射撃スコープシステムを引き下ろしてセットした。小型の接眼用モニターが迫り出す。その接眼用モニターに顔を近付け、グリップに手を置くと、デュナメスの額にあるV字形センサーが下にスライドしてガンカメラモード用のカメラアイが現れた。カメラアイのレンズが絞り込まれ、標的に照準が固定される。
接眼用モニターに映し出されたガイアにポインタが重なった時、刹那はトリガーを引いた。
GNスナイパーライフルから発射された光線は、寸分の狂いもなくガイアの手に握られたヴァジュラビームサーベルを弾き飛ばした。
「っ……!スティング。あれ……」
ガイアに乗っているステラは目を見開いた。
「ちぃっ!やはり新型がまだあったか……」
「ちっくしょー!ネオの奴……!」
再び迫るGNスナイパーライフルの光線に肩のアーマーを破壊されながらアウルはこの場にいない指揮官に対して悪態を吐いた。
デュナメスは下手に接近せずにGNスナイパーライフルで牽制しつつ、確実に敵の戦力を削っていく。
「このーっ!」
『コウホウチュウイ!コウホウチュウイ!』
上空から狙撃しているデュナメスに、背後に回り込む形で接近していたモビルアーマー形態に変形したガイアがグリフォン2ビームブレイドを翼のように広げて飛びかかってくるのをハロが知らせる。
「不意打ち上等!」
素早くGNスナイパーライフルを右肩のラックに接続すると、GNフルシールドを纏って攻撃を防いだ。そこへ両腰のGNピストルを取り出して押し出すように連射する。
パイロットは敵とはいえ、元々は自軍の兵器なのであまり傷つけるわけにはいかないのだ。
「もらったぁぁぁぁ!」
ガイアに続いてデュナメスに接近していたカオスがヴァジュラビームサーベルを引き抜いてフルシールドの隙間に狙いを定める。
「させるかっ!!」
そこへ合体を終えたインパルスが対艦刀 エクスカリバーを構えてカオスに斬り掛かる。 突然のことに不意を突かれたカオスは対応しきれずにヴァジュラビームサーベルを握っていた左腕を断たれた。
「こいつも新型だったのか!?」
「ネオの奴……!ちゃんと調べておけよ!新型が五機だなんて聞いてないぞ!?」
苛立ちながら叫ぶスティングとアウル。
確かに新型はこの場にいないセイバーも含めて五機なのだがあえて言わせて貰うとデュナメスは古代のモビルスーツなので正確には新型とはいえない。
「……仕方ない。アウル、ステラ。あの二機はもういい、バスの時間だ。退くぞ!」
「でも……」
「馬鹿!このままじゃ、こっちが不利なんだよ!ちくしょう……次は絶対に墜としてやる!!」
ステラを説得しながら忌々しそうにインパルスとデュナメスを睨むアウル。
ステラも渋々とアビス、カオスに続いてガイアを撤退させようとしたが……
「っ!?」
突然、コクピットが大きく揺れ、すぐさま原因を確認すると、オレンジ色をメインカラーにした機体、ガンダムキュリオスのGNシールドがクローのように広がってガイアの足を捕らえていた。さらにそこへ隠し武装のニードルが展開され、高周波パルスを流す。
「ふっ、エースってのは遅れて登場するもんなんだぜ!」
キュリオスのパイロット、ハイネは不敵な笑みを漏らしながら聞こえるはずのないガイアのパイロットに向けてそう言った。
「流石だなハイネ!」
『グッショブハイネ!グッショブハイネ!』
例え
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
GNシールドクローニードルの高周波パルスに耐えきれずステラは気絶し、ガイアは落下していく。
「ステラ!!」
「よせアウル!ステラのことは諦めるんだ。……運が無かったんだ」
アウルを抑えるスティング自身も、後ろ髪引かれるような様子で、しかしそう言った。
「畜生……お前ら、後で皆殺しにしてやるからなぁっ!!」
ガイアは助けられないと判断し、見捨てることを選んだアビスとカオスがこちらに背を向けてアーモリーワンからの脱出を図った。
「逃がすか!」
すぐさまGNスナイパーライフルを構えたデュナメスだったが、次の瞬間に電子警告音が鳴って、刹那に意を促した。精密射撃スコープから顔を上げてサブモニターに目を向けると、そこには“OVER ROAD“という単語が危険を知らせるように赤く表示されていた。
「オーバーロード……こんな時に!」
彼方此方から煙を噴きだし、デュナメスは大地に降り立つと膝を突いて止まってしまった。
元々コズミック・イラの技術から逸脱しているこの機体は必要以上にこまめな調整とオーバーホールが必要不可欠であり、今回はそのオーバーホールの途中だった状態で出撃したため、当然といえば当然だった。
「ちぃっ!このままだと逃げられるぞ!」
キュリオスが代わりに距離を詰めながらGNサブマシンガンを連射しているが、元々のスタート位置が悪すぎた。
「インパルスよりトレミー!デュナメスとガイアの回収を。それからフォースシルエット射出をお願いします!」
『ええっ!?だ、だが……』
「もう機密だなんて言ってられないでしょ!さっさとして下さいよこのエロゲ脳!」
トレミーから副長のアーサー・トラインの戸惑っている様子に苛立ったシンは思わず上官に強く当たるとさっさと通信を切った。
「エ、エロゲ脳て……」
一方、トレミーブリッジでは、アーサーがメイリンを初めとするブリッジクルーに白い目で見られている。
白服の女性、艦長のタリア・グラディスは意を決して決断すると指示をとばす。
「……そうね。もう機密だのどうだの言ってられる状況じゃないわね」
「か、艦長!?」
「フォースシルエット射出準備!デュナメスとガイアの回収はルナマリアとレイに任せるよう伝えて。それと、エクシアの射出も頼むわね」
指示を請け負ったメイリンがルナマリアたちに言われた通りにルナマリアたちにデュナメスとガイアを回収するよう伝えると続いてフォースシルエットとエクシアの射出準備に入った。
その頃、宇宙では。
フォースシルエットに喚装するため、アーモリーワンに一時待機したインパルスをおいてキュリオスは単機でアビスとカオスを追い掛けていた。
「くそっ、まだ追い掛けてくるのかよ。ええい、墜ちろー!」
アビスがモビルアーマー形態に変形すると、フリーダムに採用された「M100」の省電力化モデル、バラエーナ改2連装ビーム砲を発射するが、キュリオスはこれに対してバレルロールで回避する。
「避けただと!?」
「ならこれでどうだ!」
今度はカオスが機動兵装ポッドからミサイルをキュリオスに向けて掃射させるが、キュリオスはモビルスーツ形態に変形して手に持っていたGNサブマシンガンで全てを撃ち落とした。
「そこらの赤服とは違うんだよ!そこらの赤服とは!」
「ちぃっ、なんて機体だ……!」
一方その頃、キュリオス、カオスそしてアビスの戦闘が行われている場所から少し離れたプラントの外壁付近着地している、一機のモビルアーマーがコバンザメのように張り付いていた。
「なるほどね……これは確かに、俺のミスかな?」
母艦“ガーティ・ルー“へ通信文をお送ったモビルアーマー“エグザス“のパイロット、ネオ・ロアノークは自嘲するとキュリオスに目掛けて急迫した。
「……なに!?」
突如真横から放たれたビームに対してハイネは咄嗟にGNシールドで防御する。すると、エグザスからガンバレルが分離してキュリオスを包囲した。
「スティング、アウル。ステラはどうした!?」
「それが……」
ネオの問いに、思わず口ごもってしまうスティングだったが、それだけでネオは全て理解する。
「……そうか、ステラは失敗したのか」
仮面で隠されていない部分からは、悲しげな様子が見えていた。三人の中でもステラはもっともネオに懐いていたからだろう。
「はい……」
こちらも哀しげな様子で答える。
「なら、仇ぐらいは取ってやらんとな!この新型は俺が抑える。お前たちは合流地点へ迎え!」
エグザスから放たれたガンバレルが一斉にビームを放つ。
キュリオスはそれを翻すと、シールドクローを延ばしてガンバレルの一基を破壊することに成功する。
「何っ!?……ザフトもそう寝ぼけてはいない、ということか!」
キュリオスからエグザスに追い討ちをかけるようにGNサブマシンガンが放たれるが、モビルアーマーのアドバンテージともいえる機動力でそれらを避けきる。
一端ガンバレルを収容しようと指示を飛ばしたネオだったが、ガンバレルはさらに二基破壊されてしまう。しかし、やったのはキュリオスではない。
「ハイネ無事?!」
「大丈夫かハイネ!」
フォースシルエットに喚装したインパルスと、オーバーホールを終えたエクシアがキュリオスに合流する。ガンバレルが撃ち落とされたのは、この二機の仕業だったのだ。
「チッ……欲張りすぎは元も子もなくすか」
ネオは潮時というものを知っていた。それ以上時を浪費せず、機体を翻す。突然の退却に、キュリオス、エクシア、インパルスは反応できず、あっという間に距離を開ける。
この時とほぼ同時にトレミーが港から発進したのだが、テロリストの母艦“ガーティ・ルー“こと“ボギーワン“を追撃しようとする前に船体の推進剤予備タンクを分離させ、それを機雷代わりにしてトレミーにぶつけることでボギーワンは姿を眩ました。
本編開始!
ガイアとセットでステラを捕まえさせました。
相手機体が悪すぎたとしか言えない。
それとキュリオスのGNシールドクローニードルにはスレイヤーウィップの高周波パルスを備えているというのはむろんプラントが改良したオリジナルです。エクシアとデュナメスはまだ思いついてませんが、何か意見があったら感想下さい!
それ以外でも感想くれてもいいのよ?(チラッ
最後にシンとステラにフラグ建てたっぽい刹那はもげろと思ってもいいのよ?(チラッ
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PHASE4 奪われる深海と混沌
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