No.695204

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第96話

2014-06-20 00:09:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1977   閲覧ユーザー数:1835

リィンがグラウンドを歩いていると物陰から聞き覚えのある女子の声が誰かと会話をしている様子が聞こえてきた。

 

~グラウンド~

 

「……わからない。ノルドの地では”資質”を見せる事は無かったけど……」

「……ああもう、アタシもついて行けばよかったわ。どう考えても…………機能…………高いし。」

「…………でも………………」

「それに…………だったかしら?”怠惰”の魔王といい、連中は一体何を考えて……………に…………いるのよ…………」

(……?聞き覚えがあるような。)

耳に聞こえてきた会話の一人から聞き覚えのある女子の声を聞いたリィンは声が聞こえた方向に近づいた。

 

「「誰!?」」

するとそこには驚いた様子のエマが他の声と一緒にリィンを見つめた。

「―――すまない。邪魔しちゃったみたいだな。って―――なんだ、委員長か。あれ、その黒猫は…………」

エマの傍にいた黒猫に気付いたリィンは黒猫を見つめ

「…………………………」

(あら?あの猫は純粋な猫じゃないわね。)

(ええ、使い魔の類いでしょうかね。)

黒猫はリィンをジッと見つめ、ある事に気付いたベルフェゴールとリザイラは目を丸くした。

 

「……リィンさん……い、いつからそこに……?」

「いや、すぐそこで誰かの話し声が聞こえたからどこからだろうと思って……あれ……?今、委員長がここで話してたんだよな?いったい誰と話していたんだ?」

エマの傍に誰もいない事に首を傾げたリィンはエマに尋ねた。

「ええっ、それは……―――そうそう、ARCUSでお友達と話していたんですっ!べ、便利ですよね~、通信機能!」

尋ねられたエマは答えに詰まった後ある事を思いついてすぐにARCUSを取り出して説明した。

 

「はは、確かに。あ、邪魔したみたいだけどかけ直さなくていいのか?」

「あはは……大丈夫です。もう話は終わっていたので。ええもう、まったくもって気にしなくても大丈夫ですから!」

「わ、わかった。しかし……やっぱりその猫、委員長も知ってたみたいだな?ひょっとして委員長が飼っている猫だったりするのか?」

「……………………」

リィンの疑問を聞いた黒猫は鳴き声もせず黙り込み

「い、いえ、その……飼っているというよりお目付け役というか……」

エマは答えに困り、ブツブツ呟いた。

 

「お目付け役?」

「―――じゃなくて!そう、お友達なんです!この学院に入ってから何度も遭遇して……チーズとかミルクをあげてるうちになつかれちゃったみたいで……あはは。」

「はは、そうだったのか。うーん、今日は大人しいけど機嫌がいいのかな?」

「……にゃあ。」

リィンに見つめられた黒猫は一鳴きし

「あはは、そうみたいですね。……よいしょっと。えっと、街の子みたいなので私が外まで連れて行きますね。教官方に見つかったら問題になるかもしれませんし。」

「あ、ああ……?(大丈夫だとは思うけど……)」

黒猫を抱き上げたエマの答えにリィンは戸惑いながら頷いた。

 

「―――そうだ委員長。」

「……!」

そして去って行くエマを呼び止めたリィンの言葉を聞いた黒猫は警戒し

「な、なんでしょう?」

エマは焦りながら尋ねた。

 

「その子の名前、知っていたりしないかな?街の人が飼ってるんだとしたら名前があると思うんだけど。」

「ああ、確かにそうですね……えっと…………」

リィンの疑問を聞いたエマは頷いた後考え込み

「…………………」

黒猫はリィンから視線を逸らして黙り込んだ。

 

「ふふっ……―――この子の名前は”セリーヌ”っていいます。」

「…………!」

そしてエマが呟いた名前を聞いた黒猫―――セリーヌは目を見開き

「へえ……!セリーヌ、セリーヌか。うん、すごく良い名前だな。艶やかで綺麗な毛並みにピッタリの名前というか。それに”セリーヌ”って名前は確かリウイ陛下とイリーナ皇妃の間に産まれた皇女殿下の名前でもあるんだ。」

「……………………

「まあ……そうだったんですか。”英雄王”と”聖皇妃”の間に産まれた皇女殿下と同じ名前だなんて、光栄な事ですね。」

リィンの称賛の言葉を聞いてリィンから視線を逸らし、エマは微笑み

(うふふ、さすがご主人様ね♪)

(獣相手で、よくあそこまでの賛辞が自然と口から出てきますね……)

ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべていた。

 

「ああ、ってことはやっぱりメスなのか?」

「ふふっ……ええ、女の子ですよ。―――それじゃあセリーヌ。行きましょうか。」

「…………ニャア。」

そしてエマはセリーヌを抱いたままその場から去って行き

(うーん、俺もできればもっとお近づきになりたいけど……まあ、見かけたら新鮮なミルクでもご馳走するか。)

リィンもエマ達に続くようにその場から去った。

 

「フウ………………」

人気のない所までセリーヌを運んだエマは周囲を見回して安堵の溜息を吐き

「全く……どうして私の名前を教えるのよ!?」

セリーヌはエマを睨んでなんとしゃべった。

「ふふっ、いいじゃない。リィンさん、すごく褒めてくれたし……」

「フン、あの子もよく平然とあんな言葉を口にできるわね。」

エマに微笑まれたセリーヌは鼻を鳴らして呆れた様子で答えた。するとその時

 

「うふふ、それはご主人様だからこそよ♪」

「「!!」」

なんとベルフェゴールとリザイラが転移魔術でエマとセリーヌの前に現れた!

「ベ、ベルフェゴールさんにリザイラさん………ど、どうしたんですか、一体……」

二人を見たエマは大量の冷や汗をかきながら二人を見つめ

「……………………」

セリーヌは警戒の表情で二人を睨んだ。

 

「ふふふ、その猫―――セリーヌでしたか?”彼女”の存在が少し気になりましてね。」

「あ、ご主人様には適当に誤魔化して来たから、心配いらないわよ♪」

「え、えっと……何の事でしょうか?」

二人の話を聞いたエマは大量の冷や汗をかきながら尋ね

「誤魔化しても無駄よ。その猫――――”唯の猫”じゃないわよね?」

「使い魔如きが私達の目を誤魔化せるとお思いですか?」

尋ねられた二人はそれぞれ口元に笑みを浮かべて答えた。

 

「誰が使い魔よ!?馬鹿にするのも大概にして!」

「セ、セリーヌ!」

そして二人を睨んで怒鳴ったセリーヌの様子を見たエマは慌て

「その二人を誤魔化そうと思っても無駄よ。相手は”魔王”に”精霊王”。そんな存在にアタシの正体が誤魔化せるわけないわ。」

「あら、開き直っちゃったわね。」

「ふふふ、正しくは”精霊王女”ですけどね。」

冷静な様子で答えたセリーヌの言葉を聞いたベルフェゴールは目を丸くし、リザイラは静かな笑みを浮かべて答えた。

 

「ちょうどいいわ……アンタ達に聞きたい事があったから、この際聞かせてもらうわ。」

「あら、何かしら?」

「―――どうしてアンタ達みたいな”超越した存在”が自分達と比べると圧倒的に格下の存在であるあの子―――リィンに従っているのよ?」

「何だ、そんな事。私はご主人様が女性関係で面白い出来事ばかり起こしてくれるだろうから、契約したのよ♪」

「ええっ!?」

「ハアッ!?そんなふざけた答えで納得すると思っているの!?」

ベルフェゴールの答えを聞いたエマは驚き、声を上げたセリーヌはベルフェゴールを睨んだ。

 

「あら、私が司る”大罪”を忘れたのかしら?」

「”怠惰”……なまけてだらける罪ですが……それがどうかしたんですか?」

「そ。私は気持ちいいコトをする事と面白いものが見れればそれでいいのよ♪」

「………………」

「とても”魔王”のいう事とは思えないわね……」

「ふふふ、”色欲”の大罪も司れるのではないですか?」

ベルフェゴールの答えを聞いたエマは信じられない表情で絶句し、セリーヌは呆れ、リザイラは静かな笑みを浮かべ

「そ・れ・に♪ご主人様は”唯の人間”じゃない事くらい、私達はとっくにわかっているわよ?私達がご主人様に従っているのはそれも理由だわ。人ではない”力”を持つ人がどんな未来を描くのか、それぞれ魔王として……精霊王女として気にならない訳がないでしょう?」

「「……………………」」

そして口元に笑みを浮かべたベルフェゴールの言葉を聞いたエマは複雑そうな表情で黙り込み、セリーヌはベルフェゴールとリザイラを警戒していた。

 

「ふふふ、そう警戒しなくても私達はそれぞれの理由でご主人様に従う事を決めましたからご主人様に危害を加える事はありませんし、貴女達が秘密にしている事に干渉するつもりもありません。」

「そ、そうなんですか……?」

リザイラの答えを聞いたエマは戸惑い

「ええ、だって面倒だし。それに貴女達はご主人様に危害を加えようとは思ってないでしょう?」

「はい。それは絶対に断言できます。」

ベルフェゴールの問いかけにエマは静かな表情で頷いた。

 

「そ。私達が確認したことはそれだけだったから、その答えで十分だわ。」

「邪魔をしましたね。」

「あ、あの。私達の事、黙っていてくれる代償とかを払わなくていいのですか……?」

ベルフェゴールとリザイラが去ろうとしたその時エマは不安そうな表情で尋ねた。

「そうね………………じゃあ、ご主人様に抱かれるとか言ったら抱かれる?”処女”を抱くご主人様の様子を見るのも面白そうだし。」

「ええっ!?そ、それって…………!」

「ふふふ、いかにも睡魔らしい代償ですね。」

「…………………………」

そしてベルフェゴールが口にした条件を聞いたエマは顔を真っ赤にして混乱し、リザイラは静かな笑みを浮かべ、セリーヌはベルフェゴールを睨んだ。

 

「うふふ、冗談よ、冗談。私達の身体を何度も味わっても初心なままのご主人様じゃあ、好きでもない娘を抱くなんてさすがに無理でしょうしね。」

「フフ、そうですね。まあ、そこが良い所でもあるのですけどね……」

「え”。あ、あの……」

二人の話を聞いて何かを察したエマは表情を引き攣らせた後真っ赤になった顔で二人を見つめ

「……その言い方だと、彼はアンタ達を抱いた風に聞こえるのだけど。まさかとは思うけど………」

セリーヌは信じられない表情で二人を見つめた。

 

「ええ。まあ、私達が嫌がるご主人様を犯しているんだけどね♪」

「ふふふ、その言葉には少し語弊があるかと。ご主人様は私達の行為を受け入れている……唯それだけの話です。」

「……………………」

二人の説明を聞いてある事を察したエマは真っ赤な顔で固まり

「……呆れたわ。アンタ達ほどの存在が何でそんな事をしているのか、理解できないわ……」

セリーヌは呆れた表情で二人を見つめた。

 

「うふふ、言ったでしょ?私は気持ちいいコトをするのが好きだって♪ご主人様の精気ってとっても美味しくて最高だわ♪それじゃあね♪」

「ふふふ、それにこれはご主人様の為でもあるのですよ?私達の力を分け与えてあげる事で力を得て強くなる一番効率的な方法なのですから。―――失礼します。」

そして二人はそれぞれ転移魔術でその場から消え

「………………………」

「……今の話から推測すると、あの子はその身に”魔王”と”精霊王”の力を宿しているって事よね?その事によってアタシ達の”目的”に支障が出ないか心配ね…………」

エマは真っ赤な顔で固まり続け、セリーヌは真剣な表情で考え込んでいた…………

 


 
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