真・恋姫†無双~赤龍伝~第129話「本当の強さ」
赤斗「……ここですか?」
火蓮「そうだ。懐かしいな」
恋「…………」
夜空の下に火蓮、恋、そして、赤斗がいた。
ここはかつて赤斗が初めてこの世界に現れ、そして火蓮に拾われた場所。
赤斗「雪蓮たちに戦の準備を任せきりにして、ここに何しに来たんですか?」
建業に戻って最終決戦の準備をするはずだったが、戻る途中で雪蓮と蓮華と別れ、火蓮は赤斗をこの地まで連れてきた。
火蓮「…………」
火蓮は赤斗に背を向けたまま答えようとしない。
赤斗「火蓮さん?」
赤斗が火蓮に近づこうとした瞬間だった。
恋「危ない」
赤斗「!!」
恋の声とともに赤斗は後にのけ反る。
赤斗の首があった場所には、火蓮の剣があった。
火蓮「よく避けた」
赤斗「前にもこんな事がありましたよね?」
火蓮「憶えていたか」
荊州南陽の火蓮の館で赤斗と火蓮は戦った。その時は赤斗に戦いや殺気に慣れさせるのが目的だった。
だが、今回は違った。
火蓮「では、あの時どうなったかは憶えているか?」
赤斗「火蓮さんに負けて、その後……我を忘れて火蓮さんを殺そうとした」
火蓮「知っていたのか?」
赤斗「なんとなくですけど、分かってました。火蓮さんに負けた時、寿春城で鴉に撃たれた時、毒矢で死にそうになった時、共通しているのは僕が死を実感した事。そして狂神を発動させた」
火蓮「龍脈から気を借りる奥義だったな」
赤斗「その通りです。先生から聴いたんですね」
火蓮「ああ。だが、制御ができないと負の感情が暴走してしまうとも聴いたぞ。つまりお前は死を実感した時に龍脈から気を借りて暴走した。その結果、右目を龍に喰われた」
赤斗「…………その龍の眼も司馬懿に封じられてしまった。だけど、司馬懿に勝つために龍の眼が必要であるならば……」
火蓮「再び狂神を発動させ、龍の眼を取り戻すか?」
赤斗「はい」
火蓮「……やっぱり気にしていたんだな」
赤斗「え?」
火蓮「成都で貂蝉に言われてから、ずっと気にしているだろ」
赤斗「気づいていたんですか?」
火蓮「あれで気づかないとでも思っていのたか?」
赤斗「……すみません」
火蓮「謝る必要なんてないさ。だがな赤斗。お前の強さとは何だ?」
赤斗「強さ?」
火蓮「龍の眼がなくとも、お前は十分に強いさ」
赤斗「……先生との修行が終わった時は、僕も強くなったと思っていたんですが」
火蓮「白虎とやらに負けて自信喪失か?」
赤斗「白虎にも司馬懿にも負けたし、管亥を目の前で殺された。僕は力があると自信過剰になっていただけなんですよ」
火蓮「負けた事は別にしても、管亥が殺された事まで気にしていたのか?……お前は欲張りだな」
赤斗「そうでしょうか? ……いや、そうかもしれませんね。敵味方関係なく殺させたくなかった。これは欲張りですよね」
火蓮「まったくだ。まあ、でも…それがお前の良い所であり、強さの根源なのだろうな」
赤斗「強さの?」
火蓮「お前の誰かを守ったり、助けようとしたりする心こそがお前の強さなのさ。初めての戦の時にも蓮華を守ろうとして戦ってくれたのだろ?」
赤斗「あ……」
忘れていた。黄巾党討伐の際、初めて人を殺した。その事が原因で黄巾党が苦手になった。
でも、あの時は蓮華を守ろうとして必死だったのだ。
火蓮「あの時はお前に辛い思いをさせてしまったが、本当に感謝している。だが、あの時見せた力こそがお前の強さなのだと私は信じている。お前は本当の強さを持っているんだ。もっと自信を持て」
赤斗「…………火蓮さん。感謝するのは僕の方ですよ。僕がこの世界でやってこれたのは、火蓮さんや雪蓮、蓮華たちのお蔭です。本当に感謝しきれないですよ。だからこそ守りたい。この世界を皆を」
火蓮「赤斗」
赤斗「じゃあ、そろそろ戻りませんか? 蓮華や雪蓮たちが待っていますしね」
火蓮「ああ」
つづく
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