No.693551

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第79話

2014-06-13 08:14:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1863   閲覧ユーザー数:1735

 

~ノルド高原~

 

「凄いな……とんでもない解放感だ。」

「ええ……!まるで風になったみたい!」

「私もこんな解放感で馬を走らせた事はありません。馬を走らせる事ってこんなに気持ちよかったんですね……!」

「そ、そうですね……ちょっと恐いですけど。」

馬を走らせているリィン達がそれぞれ雄大な高原に馬を走らせる解放感に浸っている中、初めて馬に乗るエマは不安そうな表情をし

「まあ、じきに慣れる。―――しかし馬術部の連中に羨ましがられそうな体験だ。」

エマの言葉に答えたユーシスは口元に笑みを浮かべた。

 

「ははっ……確かに。」

「お父様達も知ったらきっと羨ましがりますよ……」

「フフ……―――オレの故郷は北東に向かった先にある。日没までに何とか辿り着くとしよう。」

「ああ……!」

「行きましょう……!」

その後リィン達は分かれ道に到着した。

 

「分かれ道に来たけど……」

「こう広いと、方向感覚が曖昧になってくるな。」

「遭難したら大変な事になってしまいますね……」

「ちょっ、プリネ。縁起でもない事を言わないでよ……」

「た、確かにこんなに広いと逆に不安になってしまいますものね……」

「一応、目印となる地形を教えておこうか。あれが出発地点である”ゼンダー門”だ。あれは”三角岩”……この一帯の中心となっている。」

ノルド高原の広さに若干の不安を抱えているリィン達にガイウスは次々と目印となる物に視線を向けて説明した。

 

「すごく大きな岩山ですね。」

「確かに、いい目印になってくれそうだな。」

「ええ、迷ったらまずはあの岩山を目指せばいいわけですから。」

「あら、その横に見える人工物みたいな建物は?」

それぞれが岩山に注目している中、建造物を見つけたアリサはガイウスに尋ねた。

 

「あれは”監視塔”……帝国軍が建てた施設だ。ノルド高原の南東、共和国方面を監視するための施設と聞いている。」

「”共和国”……」

「帝国の東に位置する大国、”カルバード共和国”か。」

「クロスベル方面だけじゃなく、こちらでも繋がっているんだな。」

「ああ、そして――――あちらの山脈の方角にオレの故郷でもある集落がある。」

「なるほど……」

「えっと、地図で確認すると……」

ガイウスの説明を聞いたリィン達はそれぞれ地図を取り出して現在位置を確認した。

 

「うん、大体の位置関係が掴めてきたような気がするわ。」

「ええ。わかしやすい目印とエレボニア軍が測量した詳細な地図のおかげですね。」

「しばらくは地図を片手に慣れる必要がありそうだな。」

アリサとプリネの言葉に続くようにリィンは頷いた。

 

「そういえば……あちらの方に不思議な石柱がありますね?」

その時何かが気になったエマは石柱が何本も立っている場所を見つめてガイウスに尋ねた。

「あ、ホントだ。」

「明らかに人の手で立てられているようだが……」

「この高原には、ああいったものがあちこちに点在していてな。どうやら千年以上前にあった巨大文明の遺跡らしい。」

「巨大文明……」

「ふむ、帝国にも残っている精霊信仰の遺跡のようなものか。」

「……そうかもしれませんね。」

ガイウスの説明を聞いて考え込んだリィンとユーシスの言葉を聞いたエマは真剣な表情で石柱を見つめながら呟き

「精霊信仰………(フィニリィ。)」

ある言葉が気になったプリネはフィニリィに念話を送った。

 

(何ですの?)

(精霊で思い出したけど……以前ケルディックで貴女が教えてくれた”精霊王女”―――リザイラ様はエレボニア帝国付近の緑豊かな土地に”領域”を同化させているって話をミルモから聞いていたようだけど……)

(ええ、ここですわ。この高原全体からリザイラの”領域”――――”リスレドネー”の気配を強く感じますから、この高原のどこかに”リスレドネーの領域”への入り口があると思いますわ。)

(そう…………)

フィニリィの答えを聞いたプリネは真剣な表情で考え込んだ。

「色々興味はあるだそうが、今日は後回しだ。何とか日没までに集落に辿り着かなくてはな。」

「ああ、了解だ。」

「それじゃあ、行きましょうか。」

その後リィン達は馬を走らせて小さな集落に到着した。

 

~ノルドの集落~

 

「これが……」

「……ガイウスの故郷か。」

「なんだか新鮮なような懐かしいような……」

「……不思議と郷愁に誘われるような光景だな。」

「ええ……とても暖かい雰囲気が集落全体から感じますね。」

「……確かに。」

集落を見つめたリィン達はそれぞれの思いを抱えた。

 

「まあ、この場に定住しているわけではないが。夏から秋にかけては北へと移動するのが常だ。」

「なるほど、遊牧民だもんね。」

ガイウスの説明を聞いたアリサは納得した様子で頷いた。

「だからああいう、変わった建物なんだよな?」

「ああ、厚手の布でできた移動式の住居でな。――さて、まずはオレの実家に案内しよう。長老などには改めて紹介するとして―――」

そしてリィンの質問に答えたガイウスが行動に移りかけようとしたその時

「あんちゃああああん!」

「わぁ……!」

「か、可愛いっ……!」

子供が3人ガイウスにかけより、幼い少女がガイウスに抱き付いた。

 

「あんちゃん!ガイウスあんちゃん!」

「ガイウスお兄ちゃん……!……おかえりなさいっ……!」

「ただいま、リリ、シーダ。トーマも、元気そうだな。」

「へへ、あんちゃんこそ。―――おかえり。ガイウスあんちゃん。」

「ああ、ただいまだ。」

ガイウスは久しぶりに会う家族である子供達を優しげな微笑みを浮かべて見回した。

 

「はは……すごく慕われてるな。」

「ええ……一人っ子には目の毒ね。」

「そうですね……」

「ガイウスさんがどことなく大人びている理由がわかって気がしますね……」

子供達に慕われているガイウスの様子を見たリィン達は微笑ましそうに見つめ

「………………」

ユーシスは目を伏せて黙り込んだ。

 

「あ、ひょっとして手紙に書いてあった……?」

一方リィン達に気付いた少年―――トーマは目を丸くし

「ああ、オレと同じクラスの仲間達になる。」

「えっと、初めまして。ガイウスあんちゃんの……じゃなくて、ガイウスの弟のトーマっていいます。こちらは妹のシーダとリリ。」

「は、初めまして……」

「あんちゃんのお友達~?」

ガイウスの説明を聞いたトーマは妹達と共に自己紹介をし、リィン達を見つめた。

 

「はは……初めまして、リィンだ。」

「アリサよ、よろしくね。」

「エマです。ふふっ、みんな可愛いですね。」

「プリネです、よろしくお願いしますね。」

「ユーシスだ、よろしく頼む。」

「うわ~……帝国のヒトって感じだなぁ。」

リィン達が自己紹介をするとトーマは興味ありげな表情でリィン達を見回し

「あれ?お姉ちゃん、耳、私達より長くない??」

「リリ、失礼よ。」

プリネの耳に気付いて目を丸くした幼い少女―――リリの言葉を聞いた少女―――シーダはリリを責めた。

 

「フフ、気にしないで下さい。私は人間ではなく”闇夜の眷属”ですからこの耳が珍しく見えるのも仕方ありません。」

「え……そ、それって……」

「もしかして噂の異世界の種族ですか……?」

「ええ、そうよ。異世界には色んな種族がいるわよ?―――例えばこの子もその一人よ。――――ミルモ!!」

プリネの説明を聞いて目を丸くしているトーマとシーダの言葉に頷いたアリサはミルモを自分の傍に召喚した。

 

「わぁ~!可愛い~!」

ミルモを見たリリは目を輝かせ

「え、えっとその妖精みたいな人ってもしかして……」

「精霊様ですか!?」

トーマとシーダは驚きの表情でミルモを見つめた。

 

「ええ、その精霊よ。でもこの子はゼムリア大陸に住んでいる精霊じゃなくて、異世界に住んでいる精霊だけどね。」

「…………♪」

アリサの肩に止まっているミルモはアリサに頭を撫でられ、気持ちよさそうな表情をしていた。

「わぁ~、お姉ちゃん、セーレイさまと仲良しなんだ~!」

「凄い人とお友達になったんだね、ガイウスお兄ちゃん……」

「えへへ、さすがあんちゃんだよ。」

アリサとミルモの仲の良さを見たリリははしゃぎ、シードは驚きの表情で嬉しそうな表情をしているトーマと共にガイウスを見つめた。

 

「ああ、アリサには素晴らしき風の導きがあったな。」

「フッ、クラスメイトが精霊に好かれる変わり者と知った時は少々驚いたがな。」

「何よ?文句でもあるの?」

(俺なんか魔神に何故か好かれているんだが……)

口元に笑みを浮かべたユーシスの言葉を聞いたアリサはジト目でアリサを睨み、リィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「まあまあ……」

「………………」

アリサの様子を見たプリネは苦笑しながら諌め、エマは真剣な表情でミルモを見つめていた。

 

「フフ……よき友に恵まれたようだな。」

その時民族服を着た男性と女性がガイウスに近づいてきた。

「父さん、母さん。ただいま戻りました。」

「ふふ、お帰りなさい。―――皆さんも初めまして。ガイウスの母、ファトマです。」

「お、お母さんっ!?」

「ぜ、全然見えませんね……」

ガイウスの母―――ファトマの見た目があまりにも若い事にアリサとエマは驚き

「そうですか?私は普通に見えますが……」

(両親どころか親戚のほとんどの見た目が若いけど、実際は凄く年を取っている人達を家族に持つプリネさんしかありませんよ、その感覚は……)

首を傾げているプリネをリィンは苦笑しながら見つめていた。

 

「ふふっ、お上手ね。」

エマの褒め言葉を聞いたファトマは微笑みながらリィン達を見つめた。

「―――ガイウスの父、ラカン・ウォーゼルだ。よろしく頼む、士官学院の諸君。」

「はい、こちらこそ。」

「よろしくお願いする。」

「さて、客人用の住居を離れに用意しておいた。積もる話もあるだろうがひとまず荷物を置くといい。じきに日も暮れる……我が家で夕餉にしよう。」

その後ラカンに用意してもらった住居に荷物を置いたリィン達はウォーゼル家の好意によって夕食をご馳走になり始めた。

 

 


 
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