No.692229 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2014-06-07 16:16:08 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:2261 閲覧ユーザー数:2111 |
~北クロイツェン街道~
「あらら……意外にいい動きですね。」
領邦軍の動きを見ていたサラ教官は感心し
「まあ、領邦軍も日々の訓練は決して怠っていないからね。今回のような無用の戯れに活かされるべき練度ではないが。」
「……なるほど。」
ルーファスの説明を聞き、静かな表情で頷いた。そしてルーファスとサラ教官はサフィナとレンに近づいた。
「―――お初にお目にかかります。私の名はルーファス・アルバレア。アルバレア公爵家の長男です。以後、お見知り置きを。」
「メンフィル帝国軍竜騎士軍団団長にしてケルディックの”臨時領主”の一人、サフィナ・L・マーシルンです。」
「同じくケルディックの”臨時領主”の一人にして、メンフィル皇女レン・H・マーシルンよ。挨拶はこのくらいにして……今回の件、”アルバレア公爵家”はメンフィル帝国に対してどのような言い訳をするつもりなのかしら?国境付近にて戦車を持ち出してまで大規模戦闘は勿論、メンフィル帝国の貴族の一人であるツーヤやメンフィル帝国に”客人”扱いされているエステル達を捕えようとした事は大問題よ?」
ルーファスに会釈されたサフィナは敬礼で自己紹介し、レンは上品な仕草で会釈をした後不敵な笑みを浮かべて尋ねた。
「………………」
レンの質問を聞いたユーシスは複雑そうな表情をし
「……返す言葉もございません。父上の暴走によって再び国際問題に発展しかねない騒ぎを起こしてしまうとは、公爵家の一員として大変申し訳なく思っております。」
「………私も兄上と同じ気持ちで、メンフィル帝国には大変申し訳なく思っております。大変図々しい頼み事かと思われますができれば、寛大な処置をお願いします……」
ルーファスと共にそれぞれ重々しい様子を纏ってサフィナとレンに頭を下げた。
「あの……義母さん、レンさん。あたしは気にしていないので、ユーシスさん達の事をあんまり責めないで上げて下さい。マキアスさんもそんなに気にしていないですよね?」
二人に続くようにツーヤが申し出てマキアスに視線を向け
「え……あ、ああ。今回の件は父の立場を知っていながらも、このような騒ぎを起こしてしまった僕の不注意さにも原因があります。どうか、”アルバレア公爵家”への処置は寛大な処置をお願いします……!」
「………………」
ツーヤの視線に頷いたマキアスはサフィナとレンに頭を下げ、その様子に気付いたユーシスは呆けた表情でマキアスを見つめた。
「あたし達からもお願い、サフィナさん、レン!」
「僕達はあくまで遊撃士としての仕事を果たしたまでですから。」
「ミント達も全然気にしていないから、これ以上責めないで上げて!」
そこにエステルやヨシュア、ミントが助け船を出し
「襲われた本人達が気にしていないのだから、許してやったらどうだ?」
「……ここで”アルバレア公爵家”に対して厳しい処置を施すと、クラスメイトになっている貴女達の妹や娘の居心地が悪くなると思いますから、ここは寛大に済ませてあげたらどうですか?幸いエステル達の力で解決し、”未遂”に終わっているのですから。」
3人に続くようにメティサーナとフェミリンスも助け船を出した。
「う~ん……プリネお姉様達の事を出されると、そんなに責められないわねぇ。」
それぞれの主張を聞いたレンは苦笑し
「……そうですね。プリネ達は元々国家間の関係修復の為に留学しているのですから、エレボニア帝国ともめるような事はできれば避けたいですね。――――わかりました。今回だけは特別に私達の胸の奥にしまっておきます。」
サフィナは静かに頷いた後ルーファスを見つめて言った。
「え……よ、よろしいのですか……!?」
サフィナの判断を聞いたユーシスは驚いた表情で尋ね
「ええ。―――ただし、エステル殿達や”Ⅶ組”の方達との戦闘によって重傷を負った兵達の治療費は貴方方”アルバレア公爵家”が全て負担し、戦闘によって破壊された戦車や装甲車の請求や街道の舗装にかかる費用も我らメンフィルは勿論エステル殿達に求めず、遊撃士協会やトールズ士官学院並びに”Ⅶ組”の方達の関係者に賠償を求めない事が条件です。」
「――つまりは今回の件で出てしまった全ての被害に関する負担を”アルバレア公爵家”が負う事よ♪バリアハート市内での騒ぎに関しての住民たちへの口止め料や慰謝料を考えると、相当な金額に膨れ上がるでしょうね♪」
サフィナは静かに頷いた後真剣な表情で答え、レンはからかいの表情でルーファスを見つめ
「た、確かに……」
「市内の多くの市民の方達が領邦軍が私達を追って来るところを見ていますしね。」
「しかも市内に戦車や持ち出した事や発砲しようとした事が帝国内は勿論、他国にも知れ渡ると大問題に発展するだろうな。」
「このままほおっておいたら、下手したら”アルバレア公爵家”の威厳が落ちて”四大名門”の地位から落とされるもしれないね。」
レンの話を聞いたリィンやエマ、マキアスは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、フィーは静かな口調で呟いた。
「寛大なご処置に感謝いたします。”アルバレア”の名にかけて必ずその条件を守りますので、どうか今回の件は御内密にお願いします。」
ルーファスはサフィナとレンに会釈をし
「ええ。さてと、私達も戻りますよ、レン。」
「はーい。それでは皆様、ごきげんよう♪プリネお姉様の事、よろしくね♪」
「――失礼します。」
サフィナとレンは飛竜に乗って空へと舞い上がらせ、ケルディック要塞へと帰還した。
「エステル、どうやら彼らはもう領邦軍に追われないようだし、ここで別れてもいいんじゃないかい?」
「そうね。”Ⅶ組”のみんな!バリアハート地方からの脱出は中断して、あたし達もここで失礼するけど、いいかな?」
ヨシュアに言われたエステルは頷いた後リィン達に尋ね
「はい。」
「ご協力、ありがとうございました。」
「凄く助かった。さすが遊撃士だね。」
「僕達を守る為にここまで動いて下さって本当にありがとうございました!」
「リィンさんやあたし達に協力してくれてありがとうございました。」
「……父の暴走を止めてくれた事、感謝する。」
リィン達はそれぞれエステル達にお礼の言葉を言った。
「えへへ、お礼なんていいよ~。ミント達は遊撃士として当然の事をしただけだから。」
「ああ!メティも天使として今回の件を見過ごすわけにもいかなかったからな!」
「……私は久しぶりに人間の誇り高き魂を見せてもらえて、女神としても満足な結果でしたわ。」
リィン達にお礼を言われたミントは恥ずかしがり、メティサーナは胸を張り、フェミリンスは静かな口調で呟いた。
「その子達に力を貸してくれた事に関してはあたしも感謝しているけど………エ・ス・テ・ル~?今回の騒動、ちょっと暴れすぎじゃないのかしら~?」
「え、えっとサラさん?もしかして怒ってるの??」
「間違いなく怒っているよ……」
顔に青筋を立てて怒気を纏い、口元をピクピクさせて笑顔を浮かべるサラ教官に見つめられたエステルは冷や汗をかいて戸惑い、ヨシュアは呆れた表情で指摘した。
「誰が領邦軍と”戦争”してまで守れって、頼んだのよ!?おまけにメンフィル帝国との国際問題への発展もしかけたし!あんた、それでも遊撃士!?」
そしてサラ教官はエステルを睨んで怒鳴った後エステルの頭に拳骨を落とし
「いたっ!?せ、戦争って言いすぎよ~。あたし達は襲い掛かってくる領邦軍と仕方なく戦ったから唯の正当防衛よ~!」
頭に拳骨を落とされたエステルは呻いた後答えた。
「これのどこが”正当防衛”よ!?どっからどう見ても”戦争”……いえ、”災害”が起こった状態にしか見えないわ!”過剰防衛”のレベルもとっくに超えているレベルよ!」
エステルの答えを聞いたサラ教官はまだ無事な兵士達の肩を借りたり担架によって運ばれている重傷を負った兵士達の様子や装甲車や戦車の残骸、クレーターだらけになった街道を見回した後再びエステルを睨んで怒鳴った後拳骨をエステルの頭に落とした。
「あたっ!?あたし達は領邦軍が諦めないから、しょうがないから戦っただけなんだって~!」
「もうちょっと他にもマシなやり方があったでしょうが!?ヨシュア、ミント!他のやり方を考える事もしないで、その暴走娘を止めなかったあんた達も同罪よ!」
「っつ!?す、すみません。」
「はうっ!?サラさんの拳骨、凄く痛いよ~。」
エステルの答えを聞いたサラ教官は再び怒鳴った後ヨシュアとミントの頭に拳骨を落とし、サラ教官の拳骨を受けたヨシュアは呻き、ミントは涙目になって拳骨を落とされた部分を両手で撫でていた。
(うわ、凄く痛そうだね。)
(ま、まさか僕達も殴られるのか!?)
(で、できれば勘弁してほしいな……)
(ア、アハハ……だ、大丈夫ですよ、きっと。)
(そうであると願いたいがな。)
(え、ええ……)
その様子を見守っていて呟いたフィーの言葉を聞いたマキアスは表情を引き攣らせ、リィンは疲れた表情になり、苦笑するエマの言葉を聞いたユーシスは重々しい様子を纏って頷き、ツーヤは冷や汗をかいて頷いた。
「ハア~……あの馬鹿もこうなる事が予想できたのに、何で放置していたのよ……後で絶対文句を言ってやるんだから。」
サラ教官は大きな溜息を吐いた後ジト目になってブツブツ呟き
「え、えっと……どうしてサラ教官もここに来たのですか?」
その場の空気を変える為にツーヤが冷や汗をかいて尋ね
「……さすがにタイミング良すぎかも。」
「領邦軍の連絡が来てからこちらに向かったんですか?」
フィーはジト目で呟き、エマは尋ねた。
「いや~、実はとある筋から早めに連絡を貰ってね。急いで帝都にいた理事さんに連絡を取ったのよ。それで帝都からの飛行艇に一緒に乗せてもらって、車でここまで乗せてもらったってわけ。」
「何とまあ……」
「まったく、用意周到な―――え。」
苦笑しながら答えたサラ教官の話を聞いたユーシスはリィンと共に呆れたが、ある事に気付いて呆けた表情でルーファスを見つめた。
「”理事”と仰いましたか?」
「ああ、君達にはまだ教えてなかったっけ。」
エマの質問を聞いたサラ教官が答えたその時
「改めて―――士官学院の常任理事を務めるルーファス・アルバレアだ。今後ともよろしく願おうか。」
ルーファスが一歩前に出て自己紹介をした。
「じょ、常任理事……」
「そ、そんな話、俺も初耳ですよ!?」
ルーファスの答えを聞いたマキアスは呆け、ユーシスは信じられない表情で尋ね
「フフ、そなたの驚く顔が見られると思って黙っていた。ああ、ちなみに常任理事は私一人ではない。あくまで4人いるうちの一人というだけだ。」
「……………………」
口元に笑みを浮かべて答えたルーファスの説明を聞き、口をパクパクした。
「道理で俺達Ⅶ組についても詳しかったんですね……」
「用意周到すぎ。」
ルーファスの説明を聞いたリィンとフィーは呆れ
(あのスチャラカ演奏家が関わっているだけあって、変わり者の貴族よね~。)
(お茶目な所があるよね。)
(二人とも、聞こえるからそのぐらいにして。)
ジト目になって小声で呟いたエステルと苦笑するミントの言葉を聞いたヨシュアは疲れた表情で指摘した。
「いや、しかしまさか私の留守中にあんな無茶を父が押し通すとは思わなかった。相当、頑なではあったが……今回ばかりは引いてもらったよ。理事として、生徒への不当な拘束は断じて認められないからな。」
「……兄上。」
「……ご配慮、感謝します。」
こうして――――今回の特別実習は幕を閉じた。街道でエステル達と別れた頃は既に日は暮れていたため、バリアハートのホテルで一晩、疲れ切った身体を休めてから……翌朝、リィン達はサラと翡翠の都を後にすることにした。
という訳でエステル達の出番はここまでです。次の再登場の予定は今の所は終章のラストダンジョン突入時です。なお、閃Ⅱ篇での登場に関してはまだ発売もしていないので不明です。碧の終章の時期と被っていない時期があれば出すかもしれませんが……同じ時間軸の碧篇は光と闇の軌跡と同じ流れにしますので、時期が被っていなければセリカ登場もあり得るかもしれませんwwなお、今の所セリカ登場が可能な章は5章のレグラム篇か終章のラストダンジョン突入時ですww
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第64話