No.690026

真・恋姫✝無双~萌将伝~ 青年よ、外史で生きよ その三

Jukaiさん

※この作品には以下の要素が含まれています

・オリジナルの主人公、または登場人物
・筆者がだらしない
・原作主人公の登場(まだ名前だけ)

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2014-05-29 01:07:18 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1262   閲覧ユーザー数:1168

 

「さて、着いた着いたぁ」

 

森から出た後、2人は彼女の屋敷に来ていた。

 

「(この人は王粛と名乗った… 三国志演義だと名前が出てきたのは結構後の方だった気がする)」

 

「ほいほい、そいじゃあ進路相談を始めよう。まず大事なのは君が何をしたいのか、それから君は何ができるのか。ここらへんからかなぁ」

 

「そうですね… 皇帝となるべく自然に接触できるような職業がいいかなと」

 

「それだけなら中央で商売でもやればいいんじゃないの?さっきも言った通り、北郷様はかなりの頻度で街に出ていらっしゃるようだし」

 

「商売、というと何か自分で店を開くとかそういうことですか? さすがにそれは難しいんじゃ…」

 

「なにも自分で商売を始めろって言ってるわけじゃないよ。どこかのお店で何とかして雇ってもらうくらいできるんじゃないのって話」

 

「うーん…………」

 

「お気に召さない? じゃあ君は何ができるのさ」

 

そう訊かれたところで盾平にはうまく答えられない。先ほどこの世界に来たばかりであり、さらには今までの自分とは色々と異なっている部分が多い。盾平自身も自分に何ができるかわからない部分が多い。

 

「まず読み書きはできるの? できないと不便だよぉ。それに覚えるのも一苦労だろうしねぇ」

 

「…………あー、それもやってみないことにはわからないみたいです。すみません」

 

「仕方ないねぇ… じゃあいくらか試してみようか」

 

そういって王粛は、筆と墨、それから竹簡の一部を取ってきて何かを書き始めた。

「なんだよ君、読み書き普通にできるんじゃないか」

 

驚くことに盾平は読み書きができた。これには本人が特に驚いていた。

 

「ねぇ、ここの役所で働くっていうのはどうかな? そうすれば役人として中央の人と繋がりができるでしょ。北郷様とお会いできる機会も自然と生まれるでしょ」

 

「確かにそれは非常にうれしいお話ですが、仕官ってそんなに簡単なものじゃないのでは…」

 

盾平にとって、ここ洛陽で一役人として働くというのはとてもいい話のように思えた。この世界で生きていくにはどうにかして職にありつかなければならない、そう考えていた矢先、めぐって来たのは役人として働かないかという誘い。

だがここで盾平は考えを改めた。王粛はなにもないかのように話すが実際はそのようなことはないだろう。役人とは言ってみれば政治をする人間のことであり、誰でもなれるようなものではない。自分が国のため、民のために何ができるかを示しそれを認められる必要がある。盾平は政治のことなどわからない。三国時代の大まかな歴史の流れを知っているだけであり、最早それも役に立たなくなりつつある。役人という職は彼には厳しいものだった。

 

「え? だって君、あの天の国から来たんでしょ? 天の国では万民に教育を受ける義務があるというじゃないのさ。だったらちょっとくらいできるでしょ」

 

「いやいやいや、待ってください。確かにその天の国じゃあ義務教育という制度があって自分もそれを受けましたけど、別に政治のやり方を習ったわけじゃありませんよ。そりゃまあ国家の仕組みみたいなのはちょっとくらい教わりましたけど、それとこちらで為政に携わる資格があるかどうかはまた別の話。役人としてやっていくならそれ相応の教育が必要だと思います」

 

「…うん、君の言いたいことはわかった。だけど君の意見を聞いているとここであきらめるのはちょっと勿体無いなぁともおもうんだよねぇ」

 

うーん、と考え始めた王粛だったが、何か思いついたのかなんとも軽い調子で盾平に言った。

 

「じゃあさ、ちょっとお勉強しない? できる範囲でうちが教えてあげるからさ」

それからしばらくの間、盾平は王粛の下で大陸の歴史や情勢、政治に関することなどを習った。といっても大体が広く浅くを念頭に置いていたようで、後は実際に現場で学べとのことであった。王粛にしてみれば、盾平は良い生徒だったようで、人に教えるという経験のなかった彼女にも教えやすかったようだ。

 

そして2人はいよいよ仕官について考えるようになった。

 

「今更だけど君、文官としてやっていくということでいいの? 体格もいいし、兵士としてもやっていけそうではあるけど」

 

「いえ、いいんですこれで。自分は武器を振るうことに向いているとは思いませんから」

 

「そっか、ならいいよ。それじゃあ、仕官するにあたってなんだけどね、1つ決めておきたいことがあるんだ」

 

「はい、何でしょう」

 

「君の身元なんだよ。天の国から来たってことは隠したいんだよね。そうなると君の素性を偽装しなくちゃいけなくなるわけなんだけど、何か考えてたりしてる?」

 

「…………いえ、恥ずかしながらなにも考えていません。正直思いつきもしませんでした。自分で素性を隠すと言っておきながら、申し訳ないです」

 

「あぁ、そこまで気にしないで。じゃあさ、そのあたりは任せてもらってもいいかな? ちょっと考えがあるんだ」

 

「本当ですか? なら、お任せしてもよろしいですか?」

 

「あれ、どんなのか訊かないの?」

 

「王粛さんの考えなら信じられると思ってますよ」

 

あまり長い時間ではなかったものの、盾平も王粛の人となりというものがなんとなくわかっていた。そして信頼できる人物であるということも。

それは王粛にも言えることであった。

 

「おお、嬉しいこと言ってくれるじゃないのさ。それでも確認はしないとね。――――君、うちの養子にならない?」

「…………」

 

その考えは、盾平の想定しうるものとは少々異なっていた。

 

「いやぁ、いきなりで悪いねぇ。君も知ってのとおり、うちは独り身でねぇ。仕事を任せられるような後継も無し。どうしようかと悩んでた時に君に出会ったんだ。最初はそんなこと全然考えてなかったんだけど、話してるうちにさ、これなら任せてもいいんじゃないかって思えてね、いきなり教育なんて言い出したんだ。ごめんね、君を利用したみたいになちゃって」

 

そんなことを言いながら謝る王粛に対して、盾平は怒ることなどできるはずもなく、むしろ感謝していた。

 

「王粛さんが謝ることなんてないです。自分なんて貴女に助けてもらってばかりでまだ何もできていないじゃないですか。むしろ自分のほうが謝らなければいけないんです。そもそも、損得勘定を省いた人間関係をつくるのはすごく難しいことじゃないですか。世の中打算抜きで生きてる人なんていませんよ、きっと」

 

「そういってもらえると助かるよ。じゃあそういうことで君の身分については私がとりなしておくよ。…あ、それからさ。君これから使う名前とかも考えてないよねぇ。折角うちの養子になったんだし、うちが名付けてもいいかな?」

 

盾平は素直に首を縦に振った。この恩人との大切な繋がりになるだろうと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の名は、元輝。そう、王元輝だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

皆様こんにちは、Jukaiです。

 

気が付いたらめちゃくちゃ時間たっててびっくりしております。全然投稿できず申し訳ございません。でもこれからもすごく不定期になるかもしれないです。もし読んでくださっている方がいらっしゃるならご了承ください。

 

 

あと、元輝という名前は誤字ではございません。一応ご報告させていただきます。

 

 

 

 

 

 

 
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