No.689285

魔法少女とま☆ラビ(第十話)

月野美夕さん

すごく久しぶりになりました。たぶん二年ぶりくらいかと思いますが、オリジナルの小説「魔法少女とま☆ラビ」シリーズの第十話になります。
まだまだクライマックスには遠く、内容ものんびりとした感が大きいですが、気楽に読んでいただけたらと(^^;)
ちなみに、今回があらかじめ書き溜めていた最後の分なので、今後はさらに執筆が遅くなる可能性大です~~。

2014-05-25 23:18:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:572   閲覧ユーザー数:560

<魔法少女とま☆ラビ>

 

第十話

 

 

「さあ、先を急ぎましょう!」

 

夕子が気を取り直し、みんなに声をかけると、先ほどの大キャぐるみットの登場で身を隠していたフーセンアニマルたちが

ひょっこりと顔を出してこちらを見ていた。

 

フーセンアニマルのもとへ近づいて、夕子は安心した。

「よかった・・・無事だったのね。」

 

’とま’とラビ、それに隣にいた虎次郎もフーセンアニマルのそばにきて言った。

「夕子ちゃん、フーセンアニマルたちが無事で良かったね!」

「がんばった甲斐があったってことね。」

「俺たちのおかげだぞ、感謝しろよな。」

 

フーセンアニマルたちは、もじもじしながら頭を深く下げている。どうやらお礼をしたいようにも見えた一行は、そっと

フーセンアニマルの頭を撫でながら、軽く手を振って別れをしようとした。

 

「これからはもっと気を付けるのよ。」

 

夕子がそう言って歩き出そうとするが、ところがフーセンアニマルたちがトコトコと後をついてきている。

その様子を見た虎次郎は、ポンと手をたたきながら何か思いついた素振りで言った。

 

「もしかしてこいつら、何かお礼をしてくれるんじゃないのか?」

 

お礼といっても、一体どういうことなのか何も思い浮かばないでいる一行の前で、突然プクーーーッ!と

フーセンアニマルたちは膨らみ始めた。

その姿はむくむくと膨らんでいき、ようやく膨らむのが収まった時には、なんと元の大きさの数倍にまでなっていた。

 

「ありゃま!」ラビが思わず声を出すと、すかさず虎次郎も口を開く。

「あっ!フーセンアニマルってもしかして!」

「どしたの?」

 

「こいつら、フーセンってからには空を飛べるんじゃないのか? で、もしかして俺たちを別の場所まで連れてってくれるとか。」

「ホント?」

 

虎次郎の発言にラビが振り向くと、大きくなったフーセンアニマルがシッポをひょいっと差し出してきた。

「ホントだ!空に連れてってくれるみたいだよ!」

 

’とま’はそれを見て喜びながら、ポンとラビの頭の上に飛び乗った。

「行きましょ。空ならそうそう危険な目には遭わないでしょ。」

 

’とま’がそう言い終わると、フーセンアニマルの一匹がスルスルッとシッポをラビの体に巻きつけ、途端にフワリと浮かび始めた。

「おぉーーーー!」

 

驚くラビを抱えて、フーセンアニマルはフワリフワリと空へ向かい始めていたその様子を見て、遅れてはいけないと慌てて

夕子ももう一匹のフーセンアニマルのシッポをつかんだ。

 

「ほら、虎次郎!さっさと行きますわよ!」

 

 

夕子が慌てていたため、とっさに虎次郎の首輪を引っ張ってしまっていたせいで、虎次郎は青ざめた顔になりながらも答える。

「ムギューー・・・・。ゆ、夕子、苦しいっ・・・・。離せ・・いや、離すと落ちるから離すな・・・でも苦しい~~~。」

 

そんなこんなで慌ただしく飛び立つことになった一行は、それでもキャぐるみットとのこれ以上の戦闘を避けることに成功したことに

なり、空をゆっくりと進んでいくのだった。

 

フーセンアニマルの力を借りて、空の移動をふわりふわりと風に揺られながら、ゆっくりと進む中、

 

「ふわぁ・・・空を移動するのってスゴイねぇ~~。こんなふうに真下を見下ろしながら進むのって新鮮♪」

ラビがキョロキョロと下の景色を見ながら、’とま’に向かって浮かれ気味に言った。

 

「あたしも空を直接の移動手段にしたことなかったから、感じがわからなかったけど・・・これは確かにスゴイわ。」

 

そして、それとは正反対の様子をしているのは、夕子と虎次郎。

 

「あ、あああたし、よく考えたら高いところ苦手なのよね・・・。虎次郎、早めに降りるようにしましょう?」

「・・・・虎次郎?どうして返事しないんですの?虎次郎ってば!」

何度も呼ぶが一向に反応のない虎次郎を不審に思い、夕子が様子をうかがってみると、虎次郎が真っ青な顔になったままうなだれていた。

 

「きゃあっ!虎次郎、ちょっと!大丈夫ですの!?」

大声で虎次郎に呼びかけると、虎次郎は力を振り絞りきったかのような弱弱しい声で答えた。

 

「お、お前が首絞めてる・・・・から、息がぐるじいんだ・・・・。早く・・・なんとか・・・しろ。」

そう言われてハッとなった夕子は、照れた顔で虎次郎に返した。

 

「あ、あら・・・そそそうでしたわね。ご、ごめんあそばせ。」

 

夕子が恥ずかしそうに、首を絞める原因となっていた首輪を引っ張る体勢を解いたおかげで、ようやく窒息寸前の虎次郎は解放された。

虎次郎は、とまがラビにしたのと同じように夕子の頭の上によじ登りながら、ぜいぜいした声で文句を言った。

 

「まったく・・・死ぬところだったぜ。俺は手提げ袋じゃないんだぞ!」

「だから、ごめんって言ったじゃないの!男のくせにいつまでも小さいことをグダグダと・・・。」

 

「小さいことじゃないだろうが!」

 

ギャーギャーと言い合っている夕子と虎次郎に、’とま’とラビはやれやれとした顔になりながら二人に問いかけた。

「ねーねー。あそこ、あのへんが広くて見やすい場所になってるから、そこに降りてみない?」

「そうそう、面白いけどいつまでも空を飛んでるだけじゃ、先の具体的なことがわからないかもだし。」

 

その提案に、一旦休戦のような顔をしながらケンカしていた夕子と虎次郎も賛成し、フーセンアニマルに呼びかけた。

 

「フーセンアニマルさん、ここらでよろしいですわ、降ろしてくださる?」

 

夕子の言葉を理解したのか、フーセンアニマルはそっと下へ向かってゆっくりと降りていった。

 

「よっ。」

「ほっ。」

「そらよっ。」

 

’とま’、ラビ、虎次郎がひょいっと地面に降り立ち、夕子も最後にふわりと足を下ろした。

 

「ふう・・・・。フーセンアニマルさん、どうもありがとう。」

 

夕子がそう言うと、フーセンアニマルたちは再び体を小さく元の大きさに変え、森に向かって帰り始めた。

 

「じゃーーねーーー。ホントありがとう!」

「助かったわ!」

「じゃあなーーっ!またいつか会おうぜ!」

 

帰りゆくフーセンアニマルたちに、夕子に続いてラビ、’とま’、そして虎次郎も声をかけた。

 

フーセンアニマルたちが森の中へ消えゆくまで、ずっと見ていた夕子は、

(本当にありがとう・・・あたしが昔会ったあの子にもし会えたら、その時はよろしく伝えてくださいな・・・。)

 

と、そっと心の中でつぶやいた。

 

 

 

 


 
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