No.688906

いぬねこ-犬神八千代誕生日SS-2014

初音軍さん

犬神さん誕生日おめでと~。
せっかくの誕生日だから良い思いしないとね♪
ということで猫山さんとイチャついてもらいました。
ちょっと犬神さんの扱い難しいんですけどw
少しでも良いと思ってもらえれば幸いです。

2014-05-24 15:24:53 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1195   閲覧ユーザー数:1195

いぬねこ-犬神八千代誕生日SS-2014

 

 学校から帰ってきて秋ちゃんにも怒られたから自主的に勉強をしていた。

集中するために耳にはイヤホン。聞こえてくるのは猫山さんの声。

以前録ったものだけれど、一度学校で猫山さんにバレてから自宅でしか聞けない

ことになったので、ここぞとばかりにリピートしまくって堪能していた。

 

 その時、僅かにイヤホンからとは違う音が聞こえたから外して玄関まで歩いていく。

家には誰もいない。共働きな上にいつも遅いから夜も戻ることは少ない。

 

 だから私がちゃんと管理していないといけないのは少し面倒。

玄関近くまでいくとうちの小さなわんこがきゃんきゃんと小さな声で鳴いていた。

 

「一応反応してくれてたのね…」

 

 私の耳に届かなかった時点で意味はなかったけれど、後で褒めておいてあげるか。

そう思いながら鍵を外してドアを開けると目の前には猫山さんの姿が…。

 

 一瞬疑った私は目を擦ってからもう一度猫山さんが居た場所に視線を戻すと

やはり猫山さんがちょっと緊張した面持ちで立っていた。

 

「夢でも幻覚でもない!?」

「当たり前じゃん」

 

「返事まできた!」

「そりゃ実際ここにいるんだからね…」

 

 私の大げさな反応に若干引き気味の猫山さん。はて、私の家まで来てすることなど

あっただろうか。そしてこんなご褒美をもらえるような日であっただろうか。

 

 首を捻りながら考えていると痺れを切らした猫山さんが軽くいらついた様子で。

 

「あの、中に入っていいかな?」

「どうぞどうぞ!」

 

 猫山さんを怒らせる前に私は彼女を中へと招き入れた。

まぁ多分わんこ目当てで来てるのかなって思って入ってすぐわんこがいる部屋に

連れていくと猫山さんは目を輝かせてうちの犬たちをモフりだした。

 

 やっぱりそれが目的だったのかなと思うと、目の前に広がる微笑ましい光景を

見ていて自然に笑みがこぼれる。

 

 愛おしい気持ちになって猫山さんの傍に寄っていく。

よほど夢中なのかいつもは私が近寄るとすぐ距離をとってしまう彼女が今は

私が近くにいても気づいていないようで寂しいような、嬉しいような。

 

 少しでも手を伸ばせば抱きしめてしまいそうな距離でその気持ちをグッと

堪えていると、ちょっとだけおあずけ食らった犬のような気持ちになった気がする。

 

「犬神さん!?」

「あやや、気づかれちゃいましたか」

 

 えへへ、と誤魔化すように笑うと猫山さんは苦笑しながら俯いていた。

 

「今回、わんこと遊ぶ目的じゃなかったのに。すっかり逸れちゃってた」

「え、違うんですか?」

 

 だとしたら他に私の家に来る目的が私の中で全く思いつかなかった。

 

「わからない? 今日が何の日か」

「はて何か特別な日でしたっけ、今日…?」

 

 私の反応に呆れたような表情の猫山さん。や、だって本当にわからないんですもん。

うろたえる私の前にポケットから取り出してきた小さな箱を突きつけるようにして

渡された。

 

 それは綺麗な紙と赤いリボンでラッピングされていて、明らかにプレゼント用な

感じで私は何を祝われてるのかと考える…。

 

「もしかして…」

「犬神さんの誕生日でしょ!もう!」

 

 ちょっと顔を赤くして大きめの声を出して必死に訴える猫山さんの姿が可愛くて

プレゼントとは別にキュンとなってしまった。

 

「ありがとうございます…!」

「どうして自分の誕生日忘れるかなぁ…」

 

「あ…、私この日は一人だったことが多くてその…どうでもよかったんですよ」

「犬神さん…」

 

「ほら、変に期待して何もなかったら寂しいじゃないですか」

 

 小さい頃から忙しい両親を見てきて良い子にしていれば寂しい思いはしなくて

すむんじゃないかと思っていたこともあった。

 子供の考えることだからそれが現実的じゃないことも知らなくて、

それでも時が経つにつれ気づいてきた。

 

 枕元にプレゼントだけ置かれていてもいつも通りの日で、一人で…。

だから楽しくパーティーとか期待などしてはいけないんだって。

 

「あはは、犬たちはいつも傍にいてくれましたけど。またそれは別の話でして」

「私がいるじゃん」

 

「え?」

「今年は私がいるでしょ!」

 

 やや俯いていた猫山さんがちょっと怒った顔をして上目遣いをしながら

私の胴体にぎゅっと抱きついてきた。痩せているのにほどよくふにふにやわらかい感触。

これが幸せというものか!

 

「猫山さん…」

「今日は犬神さんに寂しい思いはさせないから」

 

「・・・」

「ちょっ、何か言ってよ! 恥ずかしいでしょ!」

 

「…ありがとうございます」

 

 感極まるものがあったのか、言葉と共に胸が詰まるような気持ちで何とか出た言葉が

それだった。

 

 でもちゃんと猫山さんに伝わったのだろうか、表情が和らいでいくのがわかる。

それに少しずつ慣れてきたのか強張って力んでいたのがほどよく緩んでいった。

 

 しばらくこの幸せを吐血しながら味わっていたかったけれど、空気を読めない

わんころ共が吠え出して空気を一変させた。

 

 それによってすっかり我に返った猫山さんは再び私と少しだけ距離を開ける。

でもまぁ、少しは縮まっているのかもしれない。何気に手を握ってきてるのが

その証拠。

 

 かわいい・・・かわいすぎる!

 

 

 どれくらいぶりだろうか、自宅で誕生日を祝われて。

それだけでなく、それをしてくれたのが私が大好きでたまらない子で。

愛おしくて…私今とてもキスしたい。

 

 食事をした後にもらったプレゼントを開くと猫の飾りがついた銀のネックレスが

出てきた。

 嬉しくてはしゃいでいると、猫山さんが「つけてあげようか?」って自ら

言ってきてくれた。喜んで受けるとすごく近づいてきて髪の毛から微かに猫山さんの

匂いがしてドキドキする。

 

「猫山さん…」

「なに?」

 

「もう一つプレゼントもらっていいですか?」

「…なに?」

 

「今度はちゃんとした…キスがしたいです…」

「なっ…!」

 

 急な私の申し出に驚きはしたものの、拒絶するような気配はなかった。

カップケーキの時は偶然とか事故とかそういうのが強かっただけに

今度は本当のキスをしたかった。

 

 誕生日を利用して最低かもと思ってしまうけれど、手段は選んでいられない。

待っていたらいつまでも出来ない気がするから。

 

「いいですか?」

「う…うん…」

 

 顔を真っ赤にして丸まるようにして小さく頷く猫山さん。

すごく可愛い…。

 

 ネックレスをつけてもらった後、ゆっくりと猫山さんとの距離を縮めて

顔を近づける。

 

 徐々に体勢が下がっていき、猫山さんを下にして私が上から迫るような形になる。

少しずつ唇と唇の間が狭まっていき、やがて柔らかい感触が私の唇を包み込む。

 

「…!」

 

 触れてぬるっとした感覚を味わった刹那、猫山さんが跳ねるように体を動かす。

実は彼女の唇に触れた後に猫山さんの口の中に舌を侵入させて舐め回していた。

ただ舐めるのではなく猫山さんの舌を探していたのだけど。

 

「んぅ…」

 

 熱を帯びた色っぽい声が唇と唇の間から漏れてイヤらしかった。

少し涙目になっている猫山さんが可愛くて可愛くてもっと泣かせたくなったしまう。

だけど、慣れないキスに息が続かなくなって一度唇を離した。

 

 離れた後の猫山さんは目が潤んで顔が真っ赤で息を荒げ、責めるような眼差しで

私を睨んでいるのがとてもゾクゾクきてたまらない。

 

「犬神さ~ん・・・」

「はい!好きなようにお仕置きしてくらはい!」

 

 よだれを垂らしながら猫山さんのお仕置きを楽しみにして、わぁぃわぁぃと

喜ぶのだった。その日はこれまでの人生の中で一番といっていいくらいの

充実した一日だった。

 

 こんな誕生日だったらいくらでもウェルカムだよ。

 

 

 月曜日、登校の途中で秋ちゃんと会って少し驚いた顔をしていた。

 

「犬神あんたどうしたの?」

「なにが?」

 

「随分肌つやつやして」

「うふふ、この間猫山さんが訪ねてきてね」

 

「あぁ、誕生日…」

「そう! あんなことやこんなことしちゃって最高だった!」

 

「そう…猫山も大変ね。でもまぁ、それもだろうけど」

 

 秋ちゃんは私の首から下げてるネックレスを指差して笑みを浮かべていた。

 

「これが一番だったんでしょ」

「うん」

 

 いやらしいことも、お説教されるのも好きだけど。

こうして形に残って相手も私もお互い想っていられるのが一番幸せだなって思える。

だけどそういうのを理解してくれる親友がいてくれるのも幸せだ。

 

「秋ちゃん、いつもありがとね」

「何よいきなり。気持ち悪い」

「ひ、ひど!」

 

 そんな他愛の無いやりとりも楽しくて、実に私は恵まれているんだなぁって

あの日から実感しているのだった。

 

「あ、猫山さん」

「犬神さん、おはよ」

 

 今日もみんなで歩いていく。いつものように、けどいつもと違うちょっとした光景。

私と猫山さんが手を繋ぎながら歩いていくこと。

 

 女の子の手って柔らかくて好き、けど想っている子の手だから尚更愛おしい。

猫山さん…大好きだよ。

 


 
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