No.688594

恋姫OROCHI(仮) 一章・弐ノ捌 ~正体~

DTKさん

DTKです。
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、15本目です。

今回は閑話休題。拠点イベント的?な回です。
恋姫OROCHIでやりたかったことの一つを、まとめてやっちゃいます。

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2014-05-23 01:01:11 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5982   閲覧ユーザー数:5034

 

 

 

「あっ…」

「戻ってきたようですね」

 

陣で剣丞たちの帰りを待っていた双葉と湖衣。

戻ってくる場所はいつも同じらしく、先ほど剣丞を助けて帰ってきたところに白い光が立ち込めだした。

光が人型に集まりだす。その数は出る時より多いので、救出は成功したようだ。

 

「双葉ちゃん、湖衣、ただいまなのー」

 

時を越えること三度。

もう完全に慣れきった鞠が元気よく帰ってくる。

 

「ただいま戻りました」

「はぁー疲れた~。双葉ーお茶~」

 

明命と蒲公英も帰ってくる。蒲公英は、まるで家にでも帰ってくるような感じだ。

 

「ふぅ……ただいま、双葉、湖衣」

 

剣丞も順応力が高い。

 

「うおっ!ななな、なんだ!?何が起こった!!?」

「はぁ~……こらまたけったいな…」

 

見慣れぬ二人。驚き方にも差があるようだ。

 

「もう、翠姉様驚き過ぎ!」

 

双葉に入れてもらったお茶をすすりながら、情けない姉を毒づく。

 

「いや、え?だって、さっきまで……あれ?」

 

未だに状況についていけないようだ。

 

「はいはい!とりあえず翠姉ちゃん落ち着いて」

 

パンパンと手のひらを叩き、注目を集める剣丞。

 

「みんな、疲れてるところ申し訳ないけど、一度、分かってることをまとめようと思うんだけど…どうだろう?」

 

と、全員の顔色を窺う。

異論のあるものはいないようだ。

 

「それじゃあ…」

「あちらに軍議をしていた場所がありますので、そちらで」

「うん。ありがとう、湖衣」

 

かくして『最初』の軍議が執り行われることになった。

 

 

 

 

 

 

車座になり、剣丞から見て左回りに、鞠、双葉、湖衣、明命、蒲公英、翠、霞、そして管輅と並んでいる。

双葉と湖衣、翠と霞が互いに自己紹介を交わした後、剣丞が話を切り出す。

 

「まずは翠姉ちゃんが分かっていない、この瞬間移動みたいな現象について説明してほしい。管輅さんからでいいかな?」

「はい、畏まりました。それでは、私から簡単に説明させて頂きます」

 

とは言ったものの、管輅の説明は全く簡単ではなかった。

案の定、翠などは余計に頭の中がこんがらがったようだ。

 

「ん゛~…あ゛ぁ!分かんねぇ!!外史だとか寄す処だとか、何を言ってるのかさっぱりだ!」

「もうー、ちょっとお姉様、落ち着いてってばー」

「じゃあタンポポは分かるってのかよっ!?」

「ちゃんとは分かんないけど、タンポポはお姉さまみたいに取り乱したりしないもんねー」

「ぐぅ……」

 

押し黙る翠。

 

「まぁ、俺も外史についてハッキリとは分からないけど、世界にはいろんな可能性がある、って感じの理解でいいんじゃないかな?」

 

どうだろう?と隣の管輅に目で問いかける。

 

「はい、そのようなご理解で問題ないかと」

「どういうことなの?」

 

逆隣の鞠が首をかしげる。

 

「例えば、光璃が前に言ってたように、俺が田楽狭間に現れなかった世界も実際にある、ってことかな。

 他にも、例えばエーリカが織田家の武将として久遠の天下布武に力を貸すような世界。

 例えば、一葉じゃなくて双葉が征夷大将軍を務めている世界。

 そんな『可能性』の世界一つ一つを『外史』って呼ぶんだと、俺は理解している」

「そんなことって…あるんでしょうか?」

 

双葉が不安げに眉をひそめる。

 

「あるかどうかは『今』ここにいる俺たちには分からないよ」

「なるほど、胡蝶の夢、ですね」

「あぁ!」「なるほどなの」

 

戦国の知識人たちは、湖衣の言葉で理解できたらしい。

 

「お姉様。胡蝶の夢って何?」

「えっ!?いや、な、何だっけかな?聞いたことはあるような…ないような……」

「確か、人が蝶になる夢を見とるんか、蝶が人になる夢を見とるんか、っちゅー話やなかったか?」

「あぁ、その話か」

 

国語の授業でやったような記憶がある。

 

「まさにそういうことだろね。今ここにいる翠姉ちゃんも、もしかしたら別の世界では蝶々で、今のこの世界はその蝶々が見ている夢で、俺たちはその登場人物なのかもしれない」

「そんなわけないだろ!?あたしはあたしだ!」

「だから可能性の話なんだって。そういう世界があるかもしれない。

 一刀伯父さんが、姉ちゃんたちの前に現れない歴史だってあるかもしれないんだからね」

「そんなことあるわけ…」

「落ち着きや翠。剣丞も言うとるやろ、あくまで可能性の話や。まぁ、ただその場合は、今みたいに三国が並び立って仲良しこよし、とはいかんやろうけどな」

 

そう。それが俺の知っている歴史。

魏・蜀・呉の三国は同盟や分裂を繰り返し、最終的には全て潰されてしまった。

……もし姉ちゃんたちの中に司馬懿がいたら気まずいなぁ。

と、そうだ。

 

剣丞は話そうと思っていたことを思い出す。

 

「と、長くなったけどこの話はこれで終わりにしよう。大事なことは、俺たちは管輅さんの力で時間を戻ることが出来て、色んな人たちを助けることが出来る、ということだけ覚えて置いて下さい」

 

納得の有無はあるものの、とりあえずは全員が首肯してくれた。

 

「それじゃ、次は俺の話を聞いて下さい」

 

と、剣丞は前置いて話し始める。

 

俺が未来から来たということ。

その未来では、両親が亡くなった後、伯父さんと姉ちゃんたちに育てられたこと。

両親が亡くなって辛かった時、俺たちを支えてくれたのが伯父さんと姉ちゃんたちだったこと。

大きくなってからは、修行だなんだとキツイこともあったけど、そのおかげで戦国の世でも生き延びることが出来たこと。

そして姉ちゃんたちは真名で生活していて、本名は知らなかったこと。

一つ一つ、想いを込めながら、出来るだけ丁寧に説明した。

 

「はぁ~…未来から来た、なぁ…」

「だから一刀様の妹さんのお子さんなのに、一刀様と同じ位のお年で、私たちのことを『姉ちゃん』と呼ぶんですね」

「しかし、ウチらが約千八百年後の世界で生活なぁ…」

「ちょっと想像できないよねー」

「割と馴染んでたけどね」

 

普段は山奥の広大な、ちょっとした街くらいの規模の屋敷で生活してたけど、テレビとか普通に見てたし、ゲームや携帯を持ってる姉ちゃんもいたし、結構な頻度で街や観光地に出掛けてたりする姉ちゃんもいた。

今から考えれば、性質の悪いことに、雪蓮姉ちゃんは某無双シリーズの愛好家だったりする。

そう言えば、良く分からないポイントで笑ってたりしたなぁ…

リアルにその時代を生きた人じゃなきゃ分からないポイントでもあったのかな?

 

「とまぁ、そんなわけで、姉ちゃんたち全員の真名じゃない方の名前、本名を今のうちに知っておきたいんだよね。これから助け出すたびに驚いてたんじゃ心臓に悪いからさ」

 

うっかり真名で呼んで武器を突きつけられたり、姉ちゃんが驚くほどの超有名人だったりと、心臓に悪いことこの上ない。

 

「そっかー。そういうことなら教えておいた方がいいかもねー」

「せやな。てか、誰がおるん?ウチら全員、一刀の時代に行けたんか?」

「誰がって…」

 

俺には誰が全員か分からない。

仕方がないので、全員列挙していく。

 

「…で、全員かな?」

「どうやら、全員いるみたいですね!」

「え~?一人か二人多くなかったぁ~?」

「まぁ、細かいことはえぇやないか。で、どないする?国別に教えていこか?」

「そうだな。じゃあ、まずはあたしらの蜀からでいいか?」

「おー!!それじゃあね、タンポポが馬岱で、翠姉様が馬超は大丈夫だよね?それから…」

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

こうして聞いても心臓に悪かった。

あのほんわか桃香姉ちゃんが劉備で、厳しい愛紗姉ちゃんが関羽、ちっさい鈴々姉ちゃんが張飛……

翠姉ちゃんに、星姉ちゃんと紫苑姉さんを加えて五虎将軍。

そして、あの朱里姉ちゃんと雛里姉ちゃんが伏龍鳳雛……などなど。

トンデモない人たちと暮らしてたんだな、俺……

てか、恋姉さん呂布かよっ!!

そりゃ勝てるわけないよなぁ~…

はぁ……胃が痛くなってきた。

 

そんな俺を見て、霞姉ちゃんがニヤニヤしてる。

気のせいか、猫の耳と尻尾が姉ちゃんから生えてるように見える…

 

「ほな、次は呉ぉいこか?」

「はいっ!それでは、私がご説明します!」

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

頭も痛くなってきた。

雪蓮姉ちゃん、蓮華姉ちゃん、シャオ姉ちゃんの三姉妹が孫策・孫権・孫尚香。

冥琳姉さん、穏姉ちゃん、アー姉ちゃんがそれぞれ周瑜・陸遜・呂蒙。

それに甘寧と黄蓋って、完全に呉のオールスター状態だ。

そう言えば、たまに祭姉さんが雪蓮姉ちゃんや蓮華姉ちゃんのこと「策殿」とか「権殿」って呼んでたけど、あれって孫策、孫権って意味だったのか……

てか、孫尚香は女の子のままなのね。

 

さて、残るは……

 

「…魏、イッとこか?」

 

いいイタズラ先を見つけたような霞姉ちゃんの目。

範囲も狭まったし、文官武官も何となく分けられるから、もうなんとなく……

なんとなーーく、分かるけど!!

改めてハッキリと宣告されるとなると、聞きたくないなぁ~~なんて?

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

「はは……はははっ………」

 

もう、笑いしか出てこない。

華琳姉ちゃんが曹操で、春蘭姉さん・秋蘭姉さんが夏侯惇・夏侯淵。

季衣姉ちゃんと流琉姉ちゃんが許緒と典韋(二人揃うのは反則だろう!)

軍師には桂花姉ちゃん・風姉ちゃん・稟姉ちゃんが荀彧・程昱・郭嘉。

そういえば、賈駆…詠姉ちゃんは魏じゃないし、月姉ちゃん…董卓と仲良しだったなぁ。

この辺は史実とは違うのかな?

まぁ、史実云々が通用する世界じゃ、最早ないけどね。

 

「だ、旦那様?確か旦那様は、お姉様のお一人に魏武註孫子の薫陶を受けたと仰っていましたけど、もしかして……」

「……あぁ」

 

著者本人だったわけだ。

そりゃ書いてないところも知ってるはずだよな。

 

他にも歌大好き天和姉ちゃんたちが、黄巾党の張角たち。

派手好きな麗羽姉ちゃんが袁紹。蜂蜜大好きな美羽姉ちゃんが袁術。

などなど。

もう何が何やら……

 

…姉ちゃんたちの本名を知って唯一良かった事は、司馬懿がいなかったことかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

「落ち着いたの、剣丞?」

「……うん、大丈夫。落ち着いた」

 

頭の整理と、心を鎮めるのに剣丞は少々の時間を要した。

 

「よしっ、じゃあ今度は現状の把握をしよう。過去に戻って助けられるとはいえ、場所と時間を広げていかないとならない」

「そうか。好きな時間と場所にいける訳やのぅて、ウチらの誰かが居た事のある時間と場所やないとアカン言うてたもんな」

「そうなんだ。それで今行ける場所を…」

「ちょっと待ってくれ」

 

翠が剣丞の言葉に割って入る。

 

「あたしたちの過去に戻れるなら、こうなる前に戻れば、問題解決なんじゃないか?」

「それだ!さっすがお姉様、あったまいいっ!!」

「残念ながら、それは叶いません」

「な、なんでだよっ!?」

「三国の世と戦国の世の融合が為ってしまった時点で、ここは既にそれまでとは違う、新しい外史となってしまいました。私の力では、外史と外史の間を行き来させることは能いません」

「…そ、そうなのか?」

「もう!お姉様のバカバカバカッ!」

「うっさいぞっ!!」

「まぁまぁ、二人とも……」

 

剣丞が間に入る。

 

「とにかく、状況を整理しよう。確か、一刀伯父さんたちは異変を調査するために大陸各地に散らばってるんだよね?」

「はいっ!三国それぞれの自領を中心に調査をすることになっていました!」

 

元気良く明命が答える。

 

「細かな場所とか分かる?」

「う~ん……ウチらは振られた場所に行っただけやから、細かいところまではなぁ…」

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

大まかには魏蜀呉の領地ごとに割り振られていたこと。

翠姉ちゃんが涼州を担当したように、旧領を宛がわれた人もいること。

そして都(三国の真ん中辺りにあるらしい)には、華琳姉ちゃんを始め、数人の姉ちゃんが詰めていることが分かった。

 

「なるほど…それじゃあ、戦国の方は?」

「少なくとも、大規模に消失したのは駿河が最初です。次いで越後が消え、その次に私たちの甲斐がこちらに来てしまったので、後のことは残念ながら分かりません」

 

と、湖衣は双葉に説明を継いでもらうよう目で促す。

 

「申し訳ありません。京も…山城国も甲斐の次に異変が起こりましたので、それ以降のことは……」

「そっか……」

 

それなら、もしかしたら久遠は無事かも……

一瞬頭を過ぎった甘い考えを、(かぶり)を振って外へ追いやる。

どちらにせよ、鞠や双葉があそこまで悲しんでいたんだ。

久遠が泣いてないわけがない。

 

「……また約束破っちゃったな」

 

ポツリと、誰に聞こえるでもない声で呟く剣丞。

しかしまたブンブンと顔を振る。

弱気になっちゃダメだダメだ。

今度久遠と会えた時に、胸を張って会えるように、今、頑張らないと!

 

「よしっ!とりあえず、なんとなく現状を把握したところで、次は誰を助けに行こうかっ!?」

 

う~ん、と互いの顔を見合す一同。

 

「あの…」

 

と、双葉がおずおずと手を挙げた。

 

「よろしければ、次はお姉様たちをお助けしたいのですが……」

 

そうか、一葉たちか。

 

「そういえば、双葉はどういう状況だったの?」

「はい。二条館が襲われ、お姉様が敵を引き付けている隙に私たちは退避をしたのですが…」

 

行く先々で敵に襲われ、山城国を脱出することになったらしい。

 

「幽と雫は、私だけ先に逃がして、敵の足止めをしてくれていました。しかし敵は追いすがり、私についてくれた護衛も悉く討たれ、私も危ないというところを、明命さんに助けて頂いたのです」

「なるほど…」

 

双葉も大変な目にあったようだ。

でも…

 

「でも、その双葉の過去に渡るとなると、双葉も現地に…戦場に向かわなきゃならなくなるけど……大丈夫?」

「はい。もとより覚悟の上です」

 

きっ、と強い眼差しを見せる。

 

「お姉様に幽、雫を助けるためならば、この双葉、矢面に立つことも恐れはしません」

 

大きくはないが、はっきりと通る声で決意を示す。

声には出さなかったが、翠や霞などの武人も、ほぅ、と感嘆の息を漏らす。

 

「分かった。行こう、双葉!一葉たちを助けに!!」

「はいっ!」

 

 

 

 


 
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