「…書類を落としたときに拾って頂いた事がありまして」
「マジでそれだけなの!?」
「仲達貴女チョロいチョロいとは思っていたけどモノには限度ってものがあるのよ!?」
「それ拾ったのたまたま一刀様じゃなかったらあんた今頃女郎屋に売られてたんじゃないの!?」
「…?初めてお会いした時はいつなのかというお話ではないのですか」
「違うわよ!どうして一刀様に惚れたのかって話!」
子廉様と子孝様が卓に噴かれた酒を台拭きで拭いながら、お二人の御言葉に対する自分の解釈は本当におかしかっただろうかと考えたがあまり納得出来る考えは浮かばなかった。また幼少のみぎりはやや引っ込み思案であった子丹御嬢様も御明朗になられた事は喜ばしいが、下世話な事に耳年増なところが見られるようになったのが多少心配ではある。
「そうでしたか。多少長くなりますが」
「全然構わないわよ、酒の席だし」
「…そういうことでしたら」
一刀様の事を語らせて頂くのは、面映くも誇らしい気持ちになる。
「私は一刀様が統一されてからの中央勤務で、その前年まで河内に地方勤務だったのですがその頃に多少問題が起こりまして」
「おおお?どんなよー」
「その頃一刀様河内に出張とかして無かったはずなんだけど」
…なぜそんなに旨そうに酒を飲まれるのか。上官の方々ではあるのだが、何故か胸にいらっと来るものがある。
「直接の詳しいところは私自身は実は存じ上げないのですが、姉様が」
「ふんふん伯達さんが?」
「さる高貴な方が私を出仕させるようお求めであると」
「「「…」」」
何故かお三方の酒盃の手がぴたりと止まった。
「姉の話によりますと、その方はどこからか私の事を聞きつけたらしく私を中央勤務とするよう命じられたそうです。ただその方は大変好色な方で、中央勤務のあかつきには私を見定めて気に入れば業務と称して愛妾としてお求めであるのは明らかであると言い、姉は一刀様に御相談されたのだそうですが何故皆様目を逸らされているのですか」
「…へえ」
「…そぉ」
「…あの、ごめんね仲達…」
「?なぜ御嬢様が謝られるのでしょうか?…続きですが、姉の話を聞かれた一刀様は大層御心痛下さりその方を御説得下さったとの事です」
「…なんとなく想像つくけど、どんな風に説得されたか聞いてる?」
「はい。姉の話によりますと『一刀様はその方を毎晩のようにねちねちずっぷずっぷと骨の髄から執拗に精力的に説得されて、メロッメロの骨抜きにして仲達への関心を失わせた』とのことでした」
「「だよねー」」
「ですよね…」
「また私は知らされていなかったのですが姉はお礼にと一刀様へ私を後宮の末席に入れて頂くようお願いされたのですが、一刀様はそれでは本末転倒なので自由恋愛で良人を見つけるようにとお断りになられたそうです。姉は私にその話もし、御恩もある上大変御立派な方なので早々に中央に転勤して私の意思で公私共に一刀様お尽くしすることを目指すようにと命じられました。その頃は私は一刀様の御尊顔も存じ上げませんでしたが姉の命も尤もと思い中央へ転勤致しました。そしてこちらでの勤務となり新入職員訓示の日に初めて拝謁したのですが大変柔らかな物腰で、威で圧するという風でなくあくまで穏やかで御優しく、私の心は包み込まれるようでした。直接に言葉を交わさせて頂いたのははじめに申しました通り書類を拾って頂いた際で、その朗らかな声に聞き惚れてしまい礼を述べるのがやっとで名乗る事さえ出来ず、後で大層悔いたことです。その次にお見かけしましたのは庁内食堂で四人程前に許褚殿と並ばれているところで、許褚殿と談笑されている姿を見て私は初めて自分の身長を意識しました。今では一刀様は瑣末なことであると笑われますが、その時一刀様よりも若干なりとも背が低いことに安心したのを今も覚えております。異動希望調査では一刀様に御仕えしたい為と書くと総務室に採用されないと姉に教えられ、何度も姉に書き直させられ最後は喧嘩のあげく姉に代筆されてしまったのも今となっては感謝すべきことで良い思い出です。そして総務室勤務となり着任の拝謁に伺った時の感動は」
「うんもういい仲達そこまで」
「手酌もちょっと止めなさい、その抱えてる酒瓶も離してこっち寄越して」
折角興の乗った所ではあったが、御嬢様らの御指示では止めざるを得ない。ただ当時思ったやや下世話な疑問を思い出し、ふと口にしてみた。
「私ばかり話をしてしまい申し訳ありません。ただ後になって思った事がありもしご存知でしたら教えて頂きたいのですが、官位もそれなりの姉が高貴な方と言う程の身分の男性が現在の宮中には見当たりませんが、その方は失脚されたか地方転勤となったのでしょうか」
「そうねー(むしろ君臨してるみたいな)」
「どっかいっちゃったのかしらー(今夜も一刀様のところとか)」
「それともその、一刀様の御魅力は性別を超えてあの…姜維のように、男をも女に成さしめる程のものですから、実は今いらっしゃる方々の何れかの方が女性へと成られたのでしょうか」
「そうかもしれないわねー(珍しく当たらずとも遠からずね)」
「一刀様ですもんねー(元々性別自体は女だけどね)」
「御使い様ですものねー(まだ勘違いしたままなのね…)」
「あと一点不思議に思いましたのは、その高貴な方という方は見たこともない筈の私を召しだすよりも、ひとかど以上の美人と思います姉を何故召し出そうとしなかったのでしょうか」
「そりゃそーよ、ほら、あんまりおっぱい大きいとあの娘自身はアレだからちょっと劣等感あるし」
「それに伯達さん年齢的にもあの娘の好みからはちょっともうアレだかr」
と話されている最中にガゴン、と入り口の扉が蹴り割られた。そちらを振り向くと
「あらぁ、お喋りな身内が飲んでる店はここかしら?」
「違いますよ華琳様、ここは目上を敬わない娘が飲んでる店ですよ?」
と妙な威圧感のある笑顔を浮かべた曹操様と伯達姉様が立っていた。
お二人はガタガタと震え出して杯を取り落とした子孝様と子廉様の腕をそれぞれ掴まれると
「生殺し潮吹き失神地獄が見たいのはどこの葵(曹洪)かしらね、ちょっと本気の一刀のところに行ってみない?いつも譲れ譲れってうるさいぐらいですものねぇ」
「やだやだやだやだごめん、ごめんてば華琳!?私マジの一刀様のお相手とか無理、無理無理死んじゃう!死んじゃうってば!!」
「いえいえ華琳様、普段二時間持たない子孝さんが涙も涎も垂れ流しの絶叫地獄が見たいらしいですからぜひ譲ってあげて下さいな。凌遅に大変御興味があると言われてましたし、ねえ子孝さん」
「ないないないない!私凌遅とか全っ然興味ありませんから!!興味あるのは葵です葵前審配さん羨ましいとか言ってました!」
「あっ茜(曹仁)、姉妹売る普通!?それに私羨ま恐ろしいって言ったのよ!?」
「では華琳様、私華陀さんに一刀様が『元気になる』お薬頂いてきますのでお二人をお願い致しますね」
「ええ、私は二人に猿轡噛ませたら連れてくわ」
等と言いながらお二人を引きずって行かれてしまった。
子丹御嬢様と二人残されてしまったが、御嬢様はすっかり酒が抜けてしまったようで口は災いの元ね、仲達貴女には余り関係ないかもしれないけどと言われてお開きとなった。
----------------------
「…おはよう御座います、葵(曹洪)様、茜(曹仁)様…」
「…おはよ、楓(曹真)…」
「…あの後、どうなりました…?」
「…華琳が凌遅かけろって言うのを一刀様が取り成してくれて…」
「拷問は勘弁して貰えたけど…ビンッビンになっちゃって収まりつかない一刀様と華琳がヤり倒すとこ芋虫みたいに転がされて延々と見させられたわ…あと最後泣き入れて、一発づつお情けで」
「その位で済んで良かったですね…」
「…まだなのよ…」
「えっ?」
「このあと伯達さんが一刀様と例の鏡の部屋でするから見学しろって…いかに一刀様が年上きょぬーが好きか知るようにって。あたし達だって一応年上だっつーの…」
「きょぬーじゃないけどね…揉ませて吸わせて挟んでしごくとこ勉強しろってさ…」
「それは御愁傷様です、ところであの」
「何よ」
「なぜお二人は私の腕を掴まれてるんです?あとあの、私これから出勤なんd」
「あんたも来るのよ、一人だけ逃げようったって曹家の掟が許さないわよ」
「大丈夫よ、一刀様も飲んだちょっと性的に元気になっちゃう薬飲まされて鏡の部屋で伯達さんたちがずっこんばっこんするところを芋虫みたいに転がされながら小一時間眺めるだけだから」
「それ拷問ですよね!?わ、私何にもしてないじゃないですか!」
「うるさい黙れこのいい子ちゃんめ。一刀様の前じゃかわい子ぶってあんあん言ってんでしょうけど、切羽詰ってぐっちょんぐっちょんのを自分でくぱぁするような淫乱女の本性見てもらいなさいよ、お情けで一発くらいは伯達さんの後にしてもらえるでしょうから」
「や、やめて下さい―っ!!私、ここの人達じゃ普通な方なんですからぁぁぁ―――っ!」
Tweet |
|
|
56
|
3
|
追加するフォルダを選択
Gigina様リクエストの、仲達 さんが一刀を慕う切っ掛け…のようなものです。