No.680299 模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第19話コマネチさん 2014-04-20 22:45:09 投稿 / 全8ページ 総閲覧数:898 閲覧ユーザー数:868 |
強くなりたい……ナナはそう思ってた。ナナがガンプラを、ガンプラバトルを始めてだいぶ経つ、今まで趣味らしい趣味がなかったナナにとって、ガンプラは初めて熱中できる趣味だった。
バトルには出さなくとも作るガンプラも増えて来たし、バトルも勝つ経験も増えてきた。それでもナナにアイ程の実力はない。
それでも彼女は自分がサポートで役に立てるならそれでかまわないと思っていた。
だけど……最近はその気持ちも変わってきた。コンドウに勝ったことにより、実力あるビルダーが何人も挑戦してきたからだ。
加えて、ウルフのメンバーが助っ人としてアイに協力してくる。
それはナナも有難いと思っているのだが、彼らの強さは知っての通り。見ていると自分の今の立場が危うくなってしまうのは明白だ。
そうならない為、もっと実力をつけたいと思う様になってきた。
ナナ本人は気付いてないが、これはいわゆる部活で自分がレギュラーメンバーから外される焦りの様な物だった。
「ナナちゃん……?ねぇナナちゃん」
「え?」
「大丈夫?なんかボーッとしてたよ?」
「イメージしてたんじゃないの~?次のバトルで使う戦闘パターンとか~」
「調子悪いんじゃないの……?」
上の空のナナにアイが声をかける。そして呑気なタカコの声、ムツミを加えた四人がいたのは模型店『ガリア大陸』のガンプラ売り場の前だ。
きっかけはナナが次にバトルで使う機体を選びたいからと寄ったのだ。
「あ!うん!大丈夫だよ!次のバトルで使う機体どれにしようか迷っててさ!」
慌てて弁明するナナ、
「何かあらかじめ決めていたんじゃないんスか?」
「いいじゃないか。次のバトルの相棒を決めるわけだし」
今喋ったのはソウイチとツチヤだ。店内で出会ったコンドウ達も含めて今ナナの周りには六人集まっていた。
模型店の通路に男女六人が集まる光景はなかなか異様かもしれない……
「しかし……いざ選ぼうとしても悩むもんね……」
「いっそ、HGから外れてみるか?」
コンドウが棚から一つのガンプラを取り出す。そのガンプラは……
「あ、フリーダムガンダム」
ナナが食いつく。
そう、リアルグレード(RG)の『フリーダムガンダム』だ。『ガンダムSEED』の後半主人公機で青い翼と翼に内蔵されたビーム砲、
両腰のレールガンが特徴の細身ながらも高火力、かつ高機動の機体だ。ガンダム作品に馴染みのないナナも、
十年前にガンダムSEEDを見ていた為フリーダムは知っていた。
「レースの時RGのスカイグラスパーも作ったお前だ。RGフリーダムもお前なら使えるんじゃないか?」
コンドウの言葉を聞きながらナナは考える。
「うーん、そうは言っても……」
歯切れの悪い反応だ。コンドウはその反応が気になった。
「?嫌いか?フリーダムは」
「うぅん、そうじゃないのオッサン。フリーダムってアニメ本編凄く強かったからさ。アタシにそんな強い機体使いこなせるかなって……」
フリーダムガンダムは高速移動と、一度にいくつもの敵機を一度に狙い撃つという芸当が特徴の機体だ。
ナナは自分にそんな動きが出来るのかと不安だった。
「なーにお前ならスジは悪くないさ、実力も徐々につけてきたしこいつでも乗りこなせるさ」
「そうだよ。ナナちゃんは何度も私を助けてくれたもん」
今度はアイがナナに言う。
「アイ……アタシ別にそんな役に立ってないよ?」
「そんな事ないよ。サバイバルでのコンドウさんとの戦いも、この前のヒロさんとのバトルの時もナナちゃんがいなかったら負けていたもの」
「そうだよ……ナナ……君は自分に出来ることをちゃんとやっている……全部なんかいきなり出来やしないもの……」
アイのフォローにムツミが加わる。アイもムツミも今までのバトルで理解していた事だ。
「アイ……ムツミ……」
「失礼、あなたがヤタテ・アイさんですか?」
その時、突然アイ達に話かける人物がいた。長身の少女だ。ウェーブがかかったシルバーブロンドが目を引く。
左右にはそれぞれビルダーらしき青年がいた。
「そうですけど……あなたは?」
「失礼、ワタクシはチーム『サターン』のビルダー、名前はサツマと申しますわ。まだ高校生でしてよ」
右手には扇子が握られている。大人びた雰囲気がありお金持ちの令嬢といった感じだ。
「『サターン』?この辺じゃ聞かない名前だな?最近できたチームかい?」
ツチヤが首を傾げるとサツマが答える。
「まぁ!あなたは『ウルフ』のツチヤ・サブロウタさんですわね!あなたともお会い出来るなんて光栄ですわ!」
「は・はぁ……どうも」
眼を輝かせ迫るサツマにツチヤはたじろく。
「お答えしましょう。ワタクシ隣の県から来ましたの。ヤタテ・アイさんにどうしても用がありまして」
「そんな遠くから?用ってなんですか?」
「あなたをワタクシのチームに迎えたいんですの!」
手に持った扇子でアイを指すサツマ、
「チームに?!そりゃ私はまだチームに入ってないフリーだけど……」
「ワタクシはヤタテ・アイさんの実力に感服いたしましたわ!ワタクシは向こうでは相応に実力あるビルダーです!アイさんを迎えればワタクシのチームは更に強くなれますわ!」
「……ちょっと待ってよ!隣の県からでしょ!?そんな遠くからチームに入れるなんて無理があるわよ!」
ナナが止めに入るとサツマは答える。
「あら?でも実力あるビルダーがチームに入るのは自然な事ですわ。実力者同士がチームを組めれば激戦や大会でも勝ち抜く確率は高くなりましょう?」
「そりゃ……そうだけど……」
「高校の部活動でもそうでしょう?競技の実力ある中学生をその高校に特待生として迎え入れる。実力者は実力ある場所に誘われて然るべきですわ」
「折角ですけど、誘ってくれるくらい認めてくれたっていうのは嬉しいんですが……」
「あら?駄目ですか?」
「えぇ、チームは組んではいないですけど今私はこれで満足していますので……」
「でもあくまで今は……でしょう?その内今の周りの実力では満足出来なくなりますわ。自分一人が強くとも、
周りが見合った実力を持っていなければそれはつり合いは取れませんもの」
「!」
ビクッとナナの体が震えた。コンドウがサツマを止めに入る
「なぁ君、ヤタテはちゃんと断ってるんだ。ちょっとしつこくないか?それに初対面でそういう決めつけは正直失礼だろう?」
「あ……これは失礼いたしました。熱が入ると止まらなくなってしまう性分でして、ではこれだけなら聞き入れて下さいません?」
「なんでしょうか?」
「記念にワタクシ達とバトルして下さいまし、チーム『サターン』と!」
お互いすぐさまバトルに入った。アイのチームはナナと、助っ人として消去法でまだ組んでないという理由でソウイチの三人だ。
「いきなりバトルになっちゃったなぁ、まぁ向こうが記念になってくれるって言うならいいんだけど……」
ユニコーンに乗ったアイが呟く、今回のフィールドは。タクラマカン砂漠、ファーストでランバ・ラル駆るグフがガンダムと交戦した場所であり、
同時にガンダムooで刹那達が15時間戦い続けた場所でもある。そして第3話でアイと三兄弟がバトルした場所だ。
今回は同じチームでもそれぞれ離れた場所に降り立った様だ。遠くでナナとソウイチらしき二人の機体が降りるのが見えた。
「でもさ……さっきの口ぶりなら向こうも結構な実力あると思うよ?チームにアタシ組んで大丈夫?」
ナナが通信を入れる。ナナの機体はお馴染みのストライクI.W.S.P.だ
「さっきと違って弱気だよナナちゃん。大丈夫、記念って言ってたんだから楽しめればそれでいいって!」
「そう……かな」
「ナナちゃん……大丈夫?なんかバトルに消極的になってない?」
「え?……そんなことないよ?……!ごめんアイ!敵が来たから切るね!」
ナナが通信を切る。見通しのいい砂漠だ。ナナはすぐ敵を見つけた。背中にリフターを背負った機体。トサカの長い機体。
「ジャスティス!?でも色が全然違う!」
『ジャスティスガンダム』ガンダムSEEDに登場したフリーダムガンダムの相棒的存在だ。
背中に飛行ユニット『ファトゥム-00』を背負っておりこれを使用した飛行や遠隔操作、連携が持ち味だ。
今ナナの目の前にいるジャスティス。通常の赤いジャスティスと違い紺色に塗装されており。
足はキュリオス、左肩はリゼルの物に変えられており、リフターは重武装、そして大型化していた。
「この機体はジャスティスであってジャスティスではありません。悪魔と土星の二重の意味を持つ機体『ジャスティスガンダム・セートゥン』とでもしておきましょうか!」
サツマがジャスティスガンダム・セートゥンを自分の誇りであるかの様に説明する。
「アンタ!?サツマっての!」
「あなたは先程ヤタテさんと一緒にいらした……『ウルフ』に女性メンバーがいらしたとは存じませんでしたわ」
どうやらサツマはナナがビルダーである事は知らなかったらしい。
「アタシは違うよ!アイの付添いで友達!」
「そうでしたの。よく見れば確かに機体の工作は基本的な物ばかり……ではあなたからもヤタテさんにワタクシのチームに入ってくれるよう頼んでいただけません?」
「しつこいよ!アイは嫌だって言ってるんでしょ!?」
そう言うとナナはストライクIWSPの対艦刀を右手に、左手にコンバインシールドを構え突っ込んだ。
「まぁいいでしょう。ウォーミングアップとしてお相手願います!」
ナナに興味なさげな反応をしながらも、サツマのジャスティスガンダムセートゥン(以下セートゥン)もビームライフルを尻にマウント、両手にビームサーベルを構える。
リフターの背後が火を噴くと共に物凄い勢いでセートゥンが突っ込んできた。
「は!速い!?うわっ!!」
二刀流にストライクの対艦刀は容易く弾かれる。セートゥンの改造は飛行突進力を重視した改造なのだ。
反面この改造だと飛行の安定性が悪くなるが彼女はそれを操縦技術でカバーしていた。
「このセートゥン、伊達に自ら大口を叩いてるわけではありませんわ!反面あなたの実力はまだ未熟!」
なおも追い打ちをかけようとするサツマ、ナナは残りの対艦刀で迎え撃とうとする。
セートゥンは舞う様に両手のビームサーベルで斬りかかる。ナナはどうにかセートゥンにダメージを与えようとするも
ストライクの斬撃はセートゥンの剣捌きに切り払われる。
「くっ!アンタの緩慢でアイをチームに引き込もうとしないでよ!」
ナナが叫ぶと同時に左腕のコンバインシールドをセートゥンに向ける。先端についたガトリングでセートゥンを撃つ。
「緩慢?では聞きますが……あなたはヤタテさんの背中を守るだけの実力はお持ちなのですか?」
が、ナナが撃とうとする直前、ガトリングはセートゥンにたやすく切り落とされた。
「?!」
「こう言ってはあれですが……あなたのレベルはヤタテさんに釣り合いません。差が大きければいずれそれはヤタテさんの墓穴となってしまいますわ」
サツマは全く余裕を崩さない。
そして実力差と言葉に動揺したナナの隙を突くかのようにストライクの対艦刀を右手ごと斬り落とした。
「あっ!」
「くわえて今はヤタテさんに挑戦者が次々と現れてる状況!あなたがいる事とワタクシ達のチームに守られてるのではどちらがやりやすい状況かは分かるのではなくて!?」
セートゥンはストライクの腹部を蹴り飛ばす。後方に吹っ飛ぶストライク、
「うあ……!」
振動するGポッドに顔をしかめるナナ
そのままサツマはストライクを撃ち抜こうと、セートゥンの左肩のビームキャノンをストライクに向けた。
「そんなことありませんよ!」
その時白い機体がストライクを庇い、セートゥンのビームキャノンをアームドアーマーDEで受け止めた。アイとソウイチの二人が駆けつけてくれたのだ。
「どうにか間に合ったッスね!」
「アイ!アサダ!」
「ナナちゃんがいなければ負けていた勝負もありました!」
「まぁ!待っていましたわヤタテ・アイさん!やはりあなたとでなければここへ来た意味もありません!」
「アタシじゃなくてアイを相手にする気!?アタシだって加勢すれば……!」
「ここまで相手はいなかったッスよ!そっちもチームを揃えたらどうスか!?それとも三対一で勝負する気ッスか!?」
「せっかちですわね!でも大丈夫!こちらも到着してくれたようですわ!」
雲一つない空から数条のビームが飛んできた。かわすアイ達、サツマのチームメイトの二機だ。
片方は台座のような支援機、ベースジャバーに乗ったヤクトドーガギュネイ機。もう片方はフォビドゥンガンダムだ。
ヤクトドーガは『逆襲のシャア』に登場した機体、ずんぐりむっくりの体型と頭部のモノアイの上に鳥の目の様な目が描かれていた。
両肩に遠隔操作型兵器『ファンネル』を六期搭載してるのが一番の特徴だ。
そしてフォビドゥンガンダムは『ガンダムSEED』に出てきた敵のガンダム。大鎌とひっくり返したお椀の様なバックパックが目を引く。
このバックパックは頭部に被るように装備し、敵のビームを曲げる事や自分のビームを曲げて敵の意表をつく戦法が可能なトリッキーな機体だ。
「どうやらちゃんと相手はいるみたいっス!」
ソウイチの機体は赤いアストレアFにエクシアリペア2の手足を組み込んだ『アストレアFR2』だ。
ガンダムアストレアは『ガンダムOO』に登場したガンダムエクシアの試作機だ。ソウイチはそのアストレアにエクシアの改修機のパーツを組み込んだわけだ。
フォビドゥンはアストレアを誘うように撃ってきた。難なくかわすソウイチ
「俺と遊びたいんスか!?いいでしょう!やるからには勝つッスよ!」
右腕のGNソード改を展開し、そのままフォビドゥンに飛ぶアストレアFR2、
一方ナナの方の相手はヤクトドーガ、両肩からファンネルを展開しストライク目掛けて撃ってきた。
「!くっ!上等よ!アタシ一人でも倒せるって!アタシにも実力があるって証明してやるんだから!」
手負いながらも強気なナナ、
ファンネルのビームを翼に掠めながらも、負けじと115ミリレールガンを撃ちながら迎え撃つナナ。
「ナナちゃん!待って!ビームサーベルもナシに!」
少し離れた場所でナナの心配をするアイ、
「礼儀がなってないですわね!他人の心配とは!」
「チッ!」
アイはユニコーンのビームサーベルをストライクに渡す方法を考えたが、
目の前のセートゥンに隙を作ってしまう事になる為渡せない。現にセートゥンの猛攻は早く、そして激しい。
かく乱するかのように周囲を動き回り、ビームサーベルのレンジ外からビーム砲を撃ってくる。
「速い!」
「当然です!重量は増しましたが!リフターの出力は倍以上上げた仕上がりですもの!セートゥンの意味は悪魔と土星!
土星エンジンを積んだジャスティスという設定と能力はヅダですら追い越せますわ!」
「そして重い!」
隙を付き、ビームサーベルで決定打を与えようとするセートゥン、とっさにビームトンファーで受けるアイ、加速がついた分セートゥンの押しは強く、
ついにユニコーンを弾き飛ばした。大きくバウンドするユニコーン。セートゥンは勢いそのままにユニコーンに追い打ちをかけようとする。
しかしその隙をアイは待っていた。
「だからってこっちもただ突っ立てるだけじゃない!」
アイは弾かれ、崩れたままの大勢で、セートゥンが曲がりきる地点を狙いユニコーンのビームマグナムを撃った。確かにセートゥンの突進力は高い、
だが反面小回りが利きづらく急カーブがやり辛いというデメリットがあった。大型のビームはセートゥンに向かう。
「っ!?味な真似をしますわねぇぇ!!」
サツマは機体への負荷を承知で目いっぱいレバーとペダルを動かし、セートゥンに急停止をかける。止まったセートゥンのリフター右側面にビームマグナムのビームが掠める。
ライフルの四倍ものビームマグナムの出力により片方のエンジンは爆発し、セートゥンはバランスがとれず飛行を維持できなくなる。
「しまった!リフターを!?」
「小回りが効かないってのは、直線的なスピードを強化した機体によく見られる短所でしょ!?」
「不覚!でもやはり素晴らしい腕ですわヤタテさん!やはりアナタはワタクシのチームに欲しい人材です!」
バランスを崩し、砂漠の大地に落ちながらサツマはまくし立てた。
「さっきから同じ勧誘ばっかり!しつこいですよ!今のチームで……友達とのチームで満足しないんですか!?」
アイは接近戦に持ち込もうとビームサーベルを抜く、そのまま砂漠の大地で斬り合う二機、
「友達ではありませんわ!ワタクシのチームはあなたと同じ様に勧誘し、作り上げたものですもの!」
「なんですって!?じゃあ他のメンバーも勧誘して!?」
「そう!かつてはワタクシも友達とチームを組んでいました!その中でワタクシは全国一のビルダーを目指し!精進してきました!なのに!
友達はそこまで高い志は持たず!そこそこの腕で満足していたんですの!」
「それで自分だけチームを抜けて!?」
「その通り!ビルダーである以上、あなたも憧れているガンプラマイスターはいらっしゃるでしょう!?
その方と同じ領域に踏み込むには自分だけ強くなっても意味はありませんもの!
自分個人が強くとも!周りが釣り合うレベルでなくては強者はなりたちませんわ!
だから解るんです!あなたも周りの彼女!ハジメ・ナナさん!彼女のレベルではいずれあなたの足を引っ張るだけですわ!」
「ナナちゃんをそんな風に言うな!!前半は一理あるかもしれませんけどね……だからって……友達をそんな事に言われても腹が立つだけですよ!」
「体験談ですもの!ワタクシの!!」
つばぜりあいながら二人の叫びが響いた。そのまま二機は一度離れる。
「くそっ!さっきから全然当たらないよ!」
「中々やるっス!」
こちらはナナとソウイチの方、こちらも各々で戦っていたのだが今回の敵のレベルは高く、ソウイチと……特にナナはファンネルにより苦戦を強いられていた。
「どうやらヤタテさんへの援護は厳しそうッス……こっちはこっちで相手をするしか……」
「そんな……最初の相手に邪険にされてサブの相手にもかなわないなんて……」
ナナの焦りはどんどん大きくなってきた。心の中が悔しさでいっぱいになってくる。
――あなたはヤタテさんの背中を守るだけの実力はお持ちなのですか?――
自分が、置いて行かれる様な不安がどんどん大きくなる。
――あなたのレベルはヤタテさんに釣り合いません。差が大きければいずれそれはヤタテさんの墓穴となってしまいますわ――
自分の所為で足を引っ張る……自分だって頑張っているのに……
「なんでよ……」
サツマに言われた事が決定打だった。不安と焦りはどんどん膨れ上がり、そしてナナはもうそれを抑えることは出来なかった。
「なんで!なんでよぉ!!」
突然我を忘れたかのような絶叫が響く。ナナは叫びながらレールガンを撃ちまくった。
「!?ハジメさん!?」
「アタシだって!アタシだってぇ!」
「落ち着いてください!ハジメさん!」
アストレアFR2でフォビドゥンの攻撃を凌ぎながら、ソウイチがナナを通信でなだめる。
しかしナナは聞く耳を持たず乱射しまくった。
散漫的な射撃はヤクトドーガに難なくかわされ、逆にファンネルで撃ち返される。回避を忘れたナナはストライクの左肩に攻撃を受け左腕を破壊されてしまう。
「ぁつっ!」
「冷静になってください!ハジメさん!」
被弾の衝撃で少しは冷静になった様だ。
「うっ!ゴメン……あっ!?」
その時、ナナは自分の撃ったレールガンがどこに飛んだか気付いた。ヤクトドーガの後ろにはアイとサツマが戦っていたのだ。
「アイ!逃げて!!」
「ストレートならスピードはそっちが上……でもこっちだって反応速度なら対応できる!」
「地上戦ならば、損傷していてもこのファトゥムーはまだまだ使えますわ!」
再びアイの方、ユニコーンとセートゥンが共にビームサーベルを構え立っていた。そのままお互いバーニアを吹かし肉薄する二機、だが突如アイのGポッドに警告音が響いた。
「えっ!?」
予期せぬ方向からレールガンが飛んできたのだ。レールガンはアイのユニコーンのすぐ傍に着弾、
「うわっ!!」
爆発し砂を大きく撒きあげる。直撃はしなかった物の、その瞬間アイは全神経がそっちにいってしまい。その場に留まってしまった。
「隙あり!」
そしてその隙を、サツマは逃さなかった……目の前に迫るセートゥンのビームサーベル。
「しまっ……!!」
アイが言い終わらないうちに……セートゥンのビームサーベルはアイのユニコーンのコクピットを貫いた……
「ヤタテさんが……負けたんスか……?!」
「ア・アイィィィィ!!!!」
ソウイチが茫然と呟き、ナナの絶叫が響く中、リーダー機が倒れた事により、アイ達は敗北した……
「残念でしたわね、あの時邪魔が入らなければあなたが勝っていたのかもしれないのに」
「流れ弾が来ることだってあります。運も絡むって事ですよ」
「でも……これで解ったでしょう?強いビルダーには強いビルダーが必要なんです。あなたにはワタクシが必要という事ですわ。
もう一度言いますわ。ワタクシのチームに入っていただけないでしょうか?」
「出来ませんよ……記念で戦うって言ったハズです」
「そう……では仕方ありませんね、でもまた誘いにきますわ。その時はいいお返事を待っています」
ペコリと頭を下げるとサツマは他のビルダーと去って行った。アイは見送るとナナを見る。ナナはただうつむいていた。
「ハジメさん!アンタが出しゃばんなきゃ今日のバト……」
ナナに文句を言おうとするソウイチ、だがソウイチの目の前をコンドウの手が遮った。
「コンドウさん……」
ソウイチの隣、ソウイチと同じ向きを向いたコンドウはソウイチに顔だけ向け、無言で首を振った。
「ナナ……ちゃん……」
「ゴメン……アイ……アタシの所為で……」
ナナの声が震えている。その心は負けた悔しさと、自分が敗北を招いてしまった自己嫌悪で一杯だった。
「大丈夫だよ。また今度頑張れば……」
「でも……アタシ……アタシ……」
その場にいた誰もがナナにかけてあげる声が見つからなかった……。少女は声を殺して、ただ泣いていた……。
これにて19話終了です。コマネチです。
前々から言っていたナナの試練の話となります。ここからしばらくはナナが話の主役です。
アイとダブル主人公、というわけではないのですが続きを見て頂けたら幸いです。
今回のオリジナルガンプラです
ジャスティスガンダムセートゥン
http://www.tinami.com/view/680305
ガンダムアストレアFR2
http://www.tinami.com/view/680311
見てくれたら嬉しいです。
中々タカコがソウイチにアプローチかけるシチュエーションが作れない……
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第19話「ぶつかる壁」
アイとコンドウは協力を結び、アイ達の結束と強さは更に増す。しかしアイの親友であるナナはアイやコンドウ達との差に焦りを感じ始めていた。