はやて視点
「…やて……はやて」
ふと、誰かが私の名前を呼んでる声が聞こえた。
優しい声音。この声は、よく知ってる。最近の私の、気になるあの人の声や
士希「はーやて、そろそろ起きなよ」
目を開けると、目の前に士希君の顔があった
はやて「……あれ?……しきくん?」
士希「おはよう、はやて」
士希君はとても優しい笑顔で言った
あぁ、わかった。これ夢やな?流石にありえへん。私の願望的なアレやろ?
士希「はやて?」
士希君は心配した様子で私の名前を呼んだ。
えぇなぁこの夢。めっちゃリアリティあるやん。士希君の顔真っ赤やで
そんな真っ赤な士希君を見て、私はちょっとしてみたいことができた。
どうせ夢なんや、なにしてもええやろ
士希視点
士希「………」
いったい、何が起こっている?
はやて「えへー、しきくん、あったかいなー」
レーゲン作『起こし方百選!』のクジで、『添い寝をしながら起こす』を引いた俺は、
理不尽さを感じながらもそれを実行した。すると、何故かはやてに抱きつかれた
士希「は、は、はやてさん!?あったかいどころか、今夏だし暑いくらいだぞ!?」
思わず声が裏返る。しかしはやては、そんな俺の発言も気にせず俺にすり寄って来た
はやて「ふふ、しきくん、かわいいなぁ。そんなまっかになって、どーしたん?」
はやての目はトロンとしていた。
そんなはやての状態を見て、なんとなく察した。こいつ、寝ぼけてやがる
シャマル「あー、はやてちゃん、夢と現実がごちゃ混ぜになってますね」
リイン「わわ!はやてちゃん、大胆です!」
レーゲン「しきさん、固まってますね」
ザフィーラ「ふむ、流石のあやつも、混乱しているな」
ギャラリーの声が聞こえるが、こっちはそれどころじゃない。
なんとかして脱出しないと、いろいろヤバイ
はやて「やー、いったらあかん」
俺がベッドから出ようとすると、はやてに掴まれてしまった。そして首に手を回された
シャマル「きゃー!はやてちゃん、キスしちゃうんですか?」
レーゲン「しきさんとはやてさんの顔、凄く近いですね!」
ザフィーラ「む、流石にこれは、撮らない方が…」
リイン「ザフィーラ、そのままです!これもはやてちゃんの成長記録です!」
ヤバイヤバイヤバイ!この状態は非常にマズイ!
はやての唇がすぐそこにある。目は少し潤んでいて、顔も心なしか赤い。
はやての吐息が当たり、俺の思考を鈍らせる。
そして一番マズイのは、この状況、俺自身も満更ではなかったことだ
はやて「なぁ、しきくん…」
はやてが顔を近づけて来る。
こんな状態でキスするのは反則じゃないのか?と思いつつも、俺は既に動けなかった。
受け入れてしまっていた
士希「はやて…」
そして俺は、はやての唇に………
「貴様、我が主に何をしている?」
キスする直前、シグナムが現れ、気づけば俺は掴まれ、投げられていた
シグナム「おい雑賀士希。お前は何をしようとしていた?」
士希「……シグナム、とりあえず、ありがとう」
シグナム「は?」
俺はシグナムに投げられ、剣を突きつけられ、ようやく冷静になれた。
そしてその頭で、俺が何をしようとしていたのか改めて考え、死にたくなった
シャマル「もう!なんで邪魔するのシグナム!」
リイン「そうです!もうちょっとだったのに!」
ザフィーラ「士希が投げられる瞬間も、バッチリ撮ってしまったな」
レーゲン「あ、はやてさん、まだ寝てますね。てことは、ホントに寝ぼけてたんですね」
ヴィータ「おいお前ら。何してんだよ?さっさと飯にしようぜ」
はやて「うわぁ、なにこれ!めっちゃ美味しそうやん!」
あの後、ヴィータちゃんが普通にはやてを起こし、皆でリビングにやって来た。
ホント、なんであんな事したんだろうな…
はやて「やぁー、ありがとうな士希君!ん?士希君、どないしたん?えらいグッタリしてるけど」
シグナム「主はやてが気にするほどの事でもありませんよ」
士希「あぁ、ほんと、大丈夫だから…さぁ、飯にしよう」
はやて「そぉか?んなら、いただきます!」
『いただきます!』
皆で揃って『いただきます』を言い、それぞれ思い思いに食べ始めた
ヴィータ「お!このオムレツ美味いな」
リイン「野菜をふんだんに使ってるのがポイントですね!」
シャマル「お味噌汁も、ホッとする味で美味しい」
シグナム「確かに、料理の一点だけは、認めてやろう」
はやて「ほうれん草もきんぴらごぼうも美味しい。士希君、ほんま料理凄いなぁ」
とりあえず、美味いらしいな。それはよかった。頑張った甲斐があったな
はやて「ふんふーん♪」
士希「ん?妙にご機嫌だな?」
はやてはニコニコしながら食事をしていた。なにかあったのか?
はやて「ん?あ、いや、今日は夢見が良くてなぁ。
それに、起きたらこんな美味しい朝ご飯にありつけるんやもん!今日も一日頑張れそうやわ!」
夢?まさか…
士希「なぁ、その夢って、どんな夢?」
はやて「え?あー、それは秘密や!」
はやては微妙に顔を赤らめて答えた。やっぱり、そうだよなぁ。触れない方が良さ…
ヴィータ「そういえば、ザフィーラなんでビデオカメラなんて持ってたんだ?」
空気が凍りついた。よりによって、今このタイミングで言うのか…
はやて「ビデオカメラ?」
シグナム「そういえば確かに…何を撮っていたんだ?」
マズイ、お前らの寝顔撮ってたなんて知ったら、間違いなく殺される…
ザフィーラ「大した物ではないさ。士希の調理映像だ。シャマルが参考にしたいと言うのでな」
シャマル「あ、はい!私ももっと、お料理作れるようになりたいですし!」
ザフィーラ、シャマルさんサンクス!あんた達最高だよ!
ヴィータ「なーんだ。朝からご苦労なこった」
シグナム「ふむ、別段興味の引かれる内容ではなさそうだな」
よっしゃぁ!これで首皮一枚…
はやて「あ、それ私も見たい!後で見せてもろてもええか?」
繋がらなかった…しかしザフィーラならなんとかして…
ザフィーラ「もちろんです。しかし、見る前に一つだけ。
今回私はただのカメラマンであり、企画したのは士希、レーゲン、
シャマルだと言うことをお忘れなく」
こいつ!?自分は責任から逃れるつもりか?
だがなザフィーラ、お前も共犯なんだよ!それで逃げれると思うなよ?
はやて「ん?なんやようわからんけど、仕事まで時間あるし、ご飯食べたら見てみよか」
そして、上映会が始まった。
ちなみに、ヴィータちゃんとシグナムは午前からの勤務なので先に出て行った。
こればっかりは運が良かった。見られたら即死は免れない
シャマル・レーゲン「………」
レーゲンとシャマルさんは冷や汗を流していた。かく言う俺もだ
はやて「じゃあ再生開始!」
映ったのは朝の玄関での映像。ノリノリな俺とレーゲンとシャマルさんの姿だった。
こうして客観的に見ると、なんて恥ずかしい事をしていたんだと思う
はやて「え?なにこれ?え?なんのバラエティ番組?」
はやても混乱していた。調理映像が映ると思っていたんだろう。見事に裏切られたな
はやて「はっは~ん。なるほどそう言うことか」
はやてはジト目で俺達を見てきた。まだ怒らない辺り、最後までは見るようだ
はやて「ヴィータ可愛い寝顔やなぁ。めっちゃ癒されるわぁ」
はやては楽しそうに見ていた。これはもしかしたら、怒られないかもしれない?
はやて「ぷっ!マジでかシグナム!一体夢ん中で私とフェイトちゃんに何されとんねん!」
リイン「これは…普段凛々しいシグナムが…」
二人は笑いを堪えようとしていた。ここまでは良い。俺達も安心して見ていられた。
だが問題は次だ…
はやて「うわっ!やっぱ私も撮られてたんや!めっちゃ恥ずかしいやん!」
はやては顔を赤らめて俺を睨んだ。ですよねー、流石に俺に見られるのはアウトですよねー
はやて「ん?なぁ、士希君はえらい熱心に私の寝顔見てんなぁ」
うっ、そりゃそうだろ!見ちゃいけねぇのかよ!なんて事は言えない
はやて「……ふふ、えらい嬉しそうに見るんやなぁ」
士希「ん?何か言ったか?」
はやて「なんでもあらへんよ!」
場面は変わり、俺の調理シーン。これははやてだけではなく、
シャマルさんも熱心に見ていた。どうやら本当に料理の勉強をする気でいるらしい
はやて「海辺でカフェかぁ…それも……」
ん?はやてが何かを言っていたが、俺には聞こえなかった
そして、最大の問題シーンがやってきた。
『起こし方百選!』で、俺が『添い寝しながら起こす』を引いた場面
はやて「……え?」
はやても信じられないといった様子だ。俺はここからの展開、正直直視できそうにない
はやて「え?え?あれ、夢やったんじゃ…」
はやての顔はみるみる赤くなっていった。俺も顔が熱い。燃えてしまいそうだ
はやて「うわっ、うわっ、うわぁぁぁ!」
はやては耐えられなくなり、クッションで顔を隠した
ザフィーラ「以上になります。大丈夫ですか?」
ザフィーラ意外とSだな。大丈夫な訳ないだろ
はやて「お、おい士希!」
士希「はい!」
名を呼ばれ、俺は思わず敬語になる。
あぁ、怒るよなぁ。何言われたって、文句言えねぇよなぁ
はやて「士希には、この夏休みの間、私の命令は絶対聞いてもらう。ええな!?」
いわゆる奴隷か。死ねって言われなかっただけ、まだマシか
士希「はい。畏まりました」
俺は素直に了承した。するとはやては、微妙に目を見開いていた
はやて「…え?マジで?」
士希「あぁ、俺はそれくらいのこと、しちまったからな」
はやて「そ、そうか…」
まぁ、夏休み期間限定だ。はやては基本はミッドにいるだろうし、そんなに問題ではないな
士希「てか、俺だけ罰受けんのかよ?他のやつらはどうすんだ?」
はやて「え?あー、ザフィーラはただのカメラマンやでいいわ。
シャマルも、私の為を思ってやってくれたことやし。
リインとレーゲンは子どもやでお咎めなし」
士希「ちょ、ちょっと待て!流石に不公平じゃないか?」
はやて「なんやねん士希、乙女の寝顔見た奴が文句あんの?あんな熱心に見て」
士希「いや、そりゃあ…」
はやて「そ、添い寝までして、あんたアホやろ」
士希「申し訳ありません…」
はやて「言ってくれたら、添い寝くらい…」
士希「あ?なんだって?」
今日のはやてはボソボソ喋るなぁ
はやて「なんもない!それとこの映像、こっちで預かるでな!」
ですよねー
士希「あの、はやて、俺もちょっと悪ふざけが過ぎた。ごめん」
はやて「ふ、ふん!その罪は今後きっちり償ってもらうでな」
士希「わかりました…」
こうして俺は、朝の軽はずみな代償により、はやての奴隷になってしまった。
せめて、命令内容は軽いものであってほしいと願うだけだった
はやて視点
あの上映会の後、私はリビングを出て一旦自室に戻った
はやて「ふふ!」
あかん、ニヤニヤしてしまいそうなん我慢すんの必死やった。
寝顔を見られた事や、添い寝の状況はホンマに死にそうなほど恥ずかしかったけど、
それでも…
はやて「あの士希が、私の言うこと聞いてくれるんや」
しかもこの夏休みの間ずっと。これなら十分お釣りがくるで。何したろうかな
はやて「それにしても、士希の私を見る目、あれ、期待してもええんやんな」
あの映像の、私を見る士希はとても優しそうな目をしていた。
思い上がってもええんなら、あの目には確かに…
はやて「こういうの、相思相愛って言うんかな。あは、なんやくすぐったいけど、ええ気分やな」
今日一日どころやない。この夏は頑張れそうや!
Tweet |
|
|
4
|
0
|
追加するフォルダを選択
こんにちは!
前回の続きで朝の一コマ
少しずつ変わっていく二人の関係