第九話 新入部員
今はホームルームが終わり、一年生にとっては初めての放課後
ウルとリアス、朱乃の三人は昇降口で生徒たちを品定めしていた
リアスが『同好会でもいいけど、折角なら部を作りたいじゃない?』と言い出したからだ
その為に三人は部員を捕まえるべく昇降口で待ち構えているのである
リアスと朱乃は絶世の美少女であるため、男子生徒の入部希望が後を絶たない
しかし軒並み入部を却下されていた
理由は単純。そもそもリアスがオカルト研究部を作るのは、自身の眷属を庇護下に置くためだ
悪魔は『
チェスを模しただけあり、それぞれの駒には特異な能力があるのだが今は省こう
リアスは学園生活の中で下僕悪魔候補を見つけあわよくば支配下に置こう、と考えているため欲望まみれの男子生徒は弾いているのだ
ウルを狙っているらしいが強引に転生させないあたり、相手の意思は尊重しているのだろう
「やっぱり、中々眷属候補の素質を持った生徒はいないわね…」
「それはそうよリアス。むしろウル君を誘えただけで御の字よ?」
「分かってるんだけどどうしてもね。ほら、悪魔は欲深いから」
ちなみにウルは今、即席で作った『オカルト研究部、新入部員募集中!※ただし入部には部長と副部長の審査があります。あらかじめご了承ください』と書かれた看板を掲げている
看板がウルの身長より少し大きいためフラフラしているのはご愛嬌だ
「っやっぱり、今年は同好会で我慢したほうが良い、んじゃないですか?来年なら後輩っも、いるでしょう?」
「…ねえウル、大丈夫?」
「やっぱり私が持ってあげましょうか?」
「大っ丈夫ですってあわわわわわわわ!?」
やはりウルは看板を持ったまま倒れこんでしまう
「おろ?」
「っよ、避けてください!(くっ、秘匿がまずいけど魔法で!)」
そこに一人の小柄な女生徒が通りかかる
ウルは魔法を使って彼女を避けようとする
―しかし
「…『~~~~ンス』。助けてあげてくれないかー?」
―ウルが彼女に倒れこもうとした刹那、彼女の背後から『ナニカ』が出現
ウルの両肩を掴んで無理やり立たせたのだ
もちろんウルにも彼女にも怪我は無い
「怪我は無かったか?坊や。でもな~んで学校に子供がいるんだ~?」
「あ、ありがとうございます…じゃなくって僕はれっきとしたこの学校の生徒です!」
「あはは、そんな夢でも見たのかー?」
「現実ですー!ほら、校章と制服見れば分かるでしょう!?」
そんな漫才を続ける二人をリアスと朱乃の二人が抱きかかえる
リアスが女生徒を、朱乃がウルを抱きかかえて連行する
そして四人はオカルト研究部暫定部室である駒王学園高等部の旧校舎、そこの一つの教室に来た
「な、なにさ!?誘拐か!?自分ちは裕福じゃないぞ!?」
「誘拐じゃないわ。落ち着いて。さっきの人型は何?あなたから出てるように見えたのだけれど」
「っき、きみ、あれが見えたのか?」
いきなりおどろおどろしい旧校舎に連行され慌てる女生徒に、リアスが矢継ぎ早に質問する
女生徒はなにやら驚いているらしい
「見えた?ええ、見えたわよ。ウルに朱乃も見たわよね?」
「もちろん、この目でしっかりと見ましたわ」
「えーっと…そんなのを見たような気はするんですけど、焦っててあんまり覚えてないんです」
リアスと朱乃はしっかり覚えていて、ウルはぶつかりそうで焦っていたため覚えていないらしい
「…な、何のことを言ってるのかなー?自分わからないぞー?(ぴゅー)」
「口笛って…わざとらしいわね…。知られたくないのかしら。例えば、そのチカラのせいで過去にいじめられた、とか?」
「ッ…」
女生徒は図星といわんばかりに表情を歪ませる
どうやら過去に何かあったようだ
「大丈夫よ、安心して。私たちは貴女をいじめしたりしないわ。もちろん貴女のチカラを吹聴するようなこともしない。信じてくれて良いわ」
「…そんなこと言って、みんな自分から離れていったんだ。『私は違う』『僕を信じて』そんな言葉は、もう聞き飽きたぞ!もう…もう沢山なんだよぅ…」
彼女はどうやら過去にひどいトラウマがあるらしい
頭を抱えて顔を青くし、涙目でガクガクと震えてしまっている
ウルはそんな彼女に近づき、手を握って優しく話しかける
「…じゃあ、僕の秘密から話しましょう。僕は『魔法使い』なんです」
「…まほーつかい?…はは…自分をバカにしてるのか?いくら自分でも、君が魔法使いだなんて…」
「信じられないなら、証拠を見せましょう。ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト『
ウルが彼女の目の前で広げた手の上に、小さな火が灯る
小さくとも暖かい、オレンジ色の火だ
「えっ…ライターもマッチも無いのに火がついた!?ウソっ!?」
「まだまだですよ。ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト『
ウルは魔法で教室にあった椅子を吹き飛ばす
ガタンッと大きな音が出たので、リアスと朱乃、そして女生徒は若干びっくりしてしまった様だ
「ああ、すいません、驚かせたみたいですね。まだ信じられないなら空でも飛びましょうか?」
「い、いや!もう充分だぞ!君が魔法使いだって言うのは充分わかったから!」
彼女はわたわたと手を振りながらもう良いとアピールする
「…そうね、ウルも話したし、貴女からチカラのことを聞き出そうというのに秘密にしてるのは悪いわね…朱乃?」
「大丈夫よ、リアス」
「そう、じゃあ私たちの秘密も言うわ。実は私たち二人は―――悪魔なの」
そういってリアスと朱乃は悪魔の象徴たる、蝙蝠のそれに似た黒い翼を背中から出す
女生徒は目をぱちくりさせて驚いている
「あ、あはははは…まほーつかいと悪魔か…自分のチカラだけでも非日常なのに、どんだけ非日常になっていくんだー…」
「えーっと…」
女生徒は遠い目をして乾いた笑いをあげている
ウルは話しかけてもいいのか迷っているようだ
「あ、大丈夫大丈夫。…うん、君たちにだったら、話しても良いかな。自分の『スタンド』のこと」
「『スタンド』?」
リアスは女生徒の出した『スタンド』という固有名詞が分からないのか、疑問符を浮かべる
朱乃とウルも同様だ
「あ、『スタンド』って言うのは自分のチカラの種類見たいなものの事さー。魔力ーとか超能力ーみたいな。いっつも自分の傍にいるから『
「じゃあ、聞かせてくれるかしら?あなたのその『スタンド』の事を」
「分かったぞ。―出てきて『ゴールド・エクスペリエンス』ッ!」
気合を込めて女生徒が叫んだ瞬間、彼女の体から『ナニカ』…いや『スタンド』が出てきた
それは例えるならば黄金のテントウムシのような人型
「…それが貴女のスタンドね。驚いたわ、こんな能力初めて見るもの」
「そうさー。これが自分のスタンド、『ゴールド・エクスペリエンス』。ちなみにコイツには能力があるんだ。え~っと…えいやっ!」
『
女生徒がゴールド・エクスペリエンスに何かを指示したかと思うと、ゴールド・エクスペリエンスは落ちていたテニスボールを殴る
するとそのテニスボールは形を変え、なんとリスの姿になって彼女の手のひらに登る
「これがコイツの能力。『モノに生命を与える』ことが出来るんだ。生き物に生命を与えたらどうなるのかは、やった事ないからわかんないんだけど」
「(…これは…使いようによっては、ゲームでかなり有利になる能力ね)…ねえ、貴女」
「何だー?」
「貴女、オカルト研究部に入ってみない?」
リアスは彼女に目をつけたようだ
「オカルト研究?…う~ん、こんなチカラを持ってるから興味が無くはないけど…」
「ちなみに、この朱乃とウル君もオカ研の暫定部員よ。今は三人しかいないから同好会なんだけどね。あなたが入ってくれれば部まであと一人なのよ」
「うむむむむ…よっし分かった!自分、オカルト研究部に入るぞ!」
しばらく悩んでからオカ研に入る事を選択した女生徒
そんな彼女にまずはウルから自己紹介をする
「では自己紹介でもしましょうか。僕はウルティムス・F・L・マクダウェルと言います。ウル、でお願いします」
「私は姫島朱乃です。朱乃、でよろしいですよ。暫定の副部長です」
「そして私が部長のリアス・グレモリーよ。さ、あなたも自己紹介してくれるかしら?」
「うん!自分は
響は八重歯を覗かせながら、屈託のない笑顔を煌かせた
「…あと自分2年生だから、そこんとこ勘違いしないでほしいさー」
「えっ」
「えっ」
「えっ…ごめんなさい、身長が小さいから同級生だと思ってたわ…」
「…ごめんなさいね。私もそう思ってました」
「うがー!そんな事だと思ったさー!ウル、お前は分かってたよなぁ!?」
「…エエ、モチロンデスヨ」
「ウル?何でこっちを向かないんさ?何で自分の目を見て言ってくれないんだ!?」
余談であるが、響の身長は143cm前後である
さー次回はどうしよっかなー
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第九話 新入部員