【コラボ】 『 狐と千里眼・前編 』
「それじゃあ、教主様。行ってきます」
「ああ、それじゃ気を付けて。狐燐。いや、蘇業と呼んだ方が良かったかな?」
「どっちも僕ですよ。でも、強いて言うなら狐燐で。信頼している人に預ける名前。それが真名と言うものらしいですから」
この日、仙界から一人の道士が人界に旅立とうとしていた。名を蘇業、字を白貴、真名を狐燐という。
仙界――過去、とある大戦の後、大陸のほぼ全ての仙道が移り住み、暮らす場所。人の世界とは別に在り人間界とは途中の神界を経由して寄り添うように存在している。
「人間界に行ったらまずはどうするつもりだい?」
「とりあえず、斑様の所に寄ってから雪蓮を探してみようと思ってます」
しゃべりながらも手続きは終わり教主…
「それじゃ、くれぐれも問題は起こさない様に」
「はい。行ってきます」
そう言って部屋を去るその背を楊戩は感慨深く見送る。
「まさか、あれが妲己の子とはね。性格は全然似てないのにね…」
そう、彼―狐燐はあの大戦での引き金になったともいえる、蘇妲己の子供である。といっても半分だけだが。ともあれ彼、狐燐はこうして旅立った・・・
「楊戩さーん!大変ッスー!」
「どうしたんだ!?
「太乙さんから連絡でワープゾーンが不安定だから調整が終わるまで誰も通さないようにって言ってたッス」
「・・・ぬわんだってー!?」
はずだった。
『やっと着きましたね。ご主人様♪』
霊獣、
『どうしたんですか?ご主人様』
「ねえ、タマ。僕達、神界は通ったっけ?」
『え?あっ!そういえば!』
そう、狐燐達は本来経由するはずの神界を通らずにこの人間界に来た。普通はそんな事ありえないのだ。そして何より、狐燐が感じているのはこの人間界の空気である。幼い頃に過ごした人間界では何かに包み込まれているような、そんな温かい感じがいつもしていた。だが、今はそんなものは微塵も感じられない。
「・・・斑様の所に行く前に、すこし調べてみよう」
『分かりました。では手近な所に降りますね』
そう言ってタマこと玉麒麟は地上を目指して行った。
「さて、これでいいか」
洛陽近郊の小さな邑から出てきたばかりの男が伸びをしながらそんな独り言をぼやく。彼――朝史(真名を麗異)はとある目的の為にこうして洛陽のみならず近隣の邑にまで来ていた。彼の目的、それは、今洛陽を治める義妹――董卓と今や家族同然の賈詡や多くの仲間達の為だった。
「そろそろ帰らないと、月達にどやされるかな」
そう言って歩きだそうとした時だった。
「あの~。すみません。ちょっといいですか?」
「あ?」
声を掛けられ振り返ると金髪に左眼に眼帯をした青年と白く透き通った髪の少女の二人組みが居た。
「すこし訪ねたい事があるんですが」
それが狐燐と麗異の―――本来出会うはずのなかった邂逅だった。
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初の他作品とのコラボ!どっちもチートだけどね。キャラをお貸し下さった孫縁様に感謝です。
今回はあとがきはありません。