第三章‐壱拾肆話 『 何を信ずるか 』
一刀達が袁術軍を事実上壊滅させた頃、張遼隊、黒山賊と曹操軍の戦いは和輝率いる立華組の介入により更に激しさを増していた。
「先の汜水関の時といい今のといい、中々の氣の使い手と見た」
「褒めてもらえるのは嬉しいッスけど…自分、放出系の使い方は苦手ッス」
太白は楽進と…。
「も~、すばしっこくて全然当たらないの~!」
「むはははは。“飛燕”はそう簡単には落とせんよ」
楠は于禁と…。
「ちぇいさー!」
「うわっ、ウチの槍壊す気かいな!?」
「関係無いんさっ」
白妙は李典と…。
「ええーい、当たれ当たれ当たれー!」
「きゃははっ、鬼さんこっちら~。きゃはははは」
稲葉は許褚と…。
「ほう、槍のような斧のような…なかなか面白い得物ですな~」
「ええ、まあ、よく言われます。」
星は徐晃と…。
そして…
「皆楽しそうで何よりだな」
「俺は痛いのは苦手だな」
「…なあ、和輝。なんで
「そりゃ、それなりに強ぇからだろ」
戦場の中であるにも関わらずそんな会話を交わす三人。その三人に若干冷ややかな視線を向け対峙しているのは夏侯姉妹である。その視線からは「なぜこんな奴等に苦戦を強いられているのか理解できない」といった感情が伝わってくる。
「で?霞。お前ぇ、どっちと闘る?」
「ん!?ウチが選んでいいんか?ならウチは惇ちゃんもらうわ」
「旦那、俺はどうする?」
「てめぇは霞が
「おう」
て事で俺の相手は夏侯淵になるわけだ。牛角の奴はとっくに蹴散らしに行っちまったし。こっちも始めるかな。
「霞、アレは出来るようになったか?」
「まぁ、前進だけなら一応は」
「そうか。まぁ、あまり無理はすんなよ」
そう言って、俺と霞はその場から姿を消して互いの相手へと肉薄した。
「疾ッ!」
夏侯淵に放った初太刀は紙一重でかわされる。小手調べ程度とはいえ、なかなか良い反応しやがるな。
「今のは一体…」
あ~やっぱ気になるのか。
「今のは『
「…それだけの武がありながらなぜ董卓に与しているのだ?仮にも御遣いなのだろう?」
「御嬢には色々世話になってるからな。それに、御嬢の願いってのは、俺みてぇな悪党でもそれなりに叶えてやりてぇモンでもあるんだよ」
「それは、董卓に天を掴ませると言う事かしら?」
突然、夏侯淵以外の声がそう聞いてきた。
「華琳様!」
「ほぅ、あんたが曹操か…。一刀や楓が世話になったらしいな」
「そんな覚えはないわね。むしろ、私に仕えるべき人材を掠め取られたくらいだわ」
あ~…、一刀が連れて来た風の事か。
「横取りされて怒ってんのか?」
「そこまで卑しいことを言うつもりは無いわ。そもそも私の配下に加わる前だったのだから誰に仕えるかはその者の自由というものよ」
「違ぇねぇな。それより、大将がのこのこ前線うろついてていいのか?」
「あなたに言われたくないわね…。それに、折角だからもう一人の御遣いを見ておこうと思ったのよ」
「酔狂なこって…。」
にしても、どうもコイツからは俺に似た印象があるんだよなぁ。何がとは言えねぇけど。だからこそ、聞いときてぇ事ができた。
「お前ぇ、息苦しくねぇか?」
「はあぁぁぁー!」
「でえぇぇぇい!」
咆哮と共に互いの武器が火花を散らす。今、霞は夏侯惇との勝負に心躍らせていた。和輝達御遣いも確かに強いが正面から打ち合うような戦い方ではないし、恋はどこか無意識に手加減してしまう。鈴蘭も前よりは強くなっていたが何度もやっているので新鮮さが無い。立華組や黒山賊は気になる相手はいてもこの戦の準備の為手合わせの機会が無かった。早い話がこのところ手合わせの相手に事欠いていたのだ。だからこそ、今こうして正面からぶつかれる相手が現れて夢中になっていた。
「流石は『神速』と呼ばれるだけはあるな。いきなり目の前に現れた時には度肝を抜かれたぞ」
「ははっ。せやけど、アレは元々はウチやのうて和輝の技なんや。初めてそれ知った時には自信無くしたんやで」
とはいえ、今では何とか直進だけなら形にする事は出来た。しかし、今はまだ未完成である故に少なからずリスクがある。その事を勝負に夢中になるあまり失念していた。
「つっ!脚がっ…」
「もらった!」
覚えたての『縮地』の使用での負荷といつも通りの高速戦闘で脚にガタが来たのだ。そしてその隙を見逃してくれるはずもなかった。
(やられる)
そう思った時だった。
「ぬをぉぉぉ!」
誰かが間に割って入り、霞を庇うようにして立ちはだかる。
「ええい、邪魔だー!」
それを、夏侯惇は立ちはだかった者…牛角の背を斬りつける。
「牛角!っこのあほんだら!お前、何してんねん!」
「だってよう。御嬢の願いは皆で一緒に居る事なんだろ?俺等みてぇな賊にも優しくしてくれたんだ、体張ってでも恩返ししたかったんだよ」
「無駄話はもういいだろう。張遼、貴様には華琳様に付くかどうか選ばせてやる」
そう言って、夏侯惇は剣を突きつけた。
「ふふっ、どうやら賊風情では春蘭の足止めにもならなかったみたいね。それにしても『自分に仕える者達をどう思っているか?』ね…。あなた達御遣いがなぜそこまでして他人との繋がりに拘っているのか疑問ね」
「…なら、身をもって理解してみるか?」
「どういう意味?」
曹操の抱いた疑問。しかしてその問いに対する和輝の答えに曹操は更なる疑問を抱く。
「俺はな、敵味方関係無く『
ゾクリと背筋が冷える。だが、和輝は曹操に背を向けて姿を消した。
「まさか、春蘭!」
曹操の叫びにも似た声が夏侯惇に聞こえた時、誰かに頭を掴まれたのを感じ、目の前には地面が見えた。
縮地で和輝が狙ったのは夏侯惇だった。その頭を掴み思いきり地面に叩きつける。
ぐちゃり、と嫌な音がする。死んだのか、それとも気を失ったのか分からないがそれきり夏侯惇は動かなくなった。
「春蘭!」
「姉者!」
曹操と夏侯淵の声が響く。
「全員!退くぞ!誰か牛角と霞に肩貸せ!」
「逃がすか!」
夏侯淵が矢をつがえて引き絞る。だが、その瞬間に構えた弓は真っ二つに折れてしまう。良く見れば、弓には斬られた痕があった。
「あの時かっ!」
折れた弓を投げ捨て、夏侯淵は和輝に肉薄しようとする。その夏侯淵に対し和輝は足元に転がる夏侯惇を投げつける。
「橘!あなただけは!」
絶を構える曹操に和輝は向き直る。その目には激しい怒りと――。
「そういう目が出来るんだな」
「何を!」
「今のてめぇなら信用できるって話だ。たかが部下一人の為にはその目は出来ねぇ。だからまぁ、御嬢達はおめぇに預ける。せいぜい裏切るなよ」
「勝手な事ばかり言わないで頂戴!」
「勝手なのは親父譲りなんだよ。それと二度と他人の覚悟を笑うな、それだけは憶えとけ」
言いたい事だけ言って、背を向ける和輝。今なら…と思いはしたが曹操は絶を下ろした。それよりも今は。
「此方も下がるわ!医療班を待機!すぐに春蘭を運びなさい!」
なぜ、今になって信じる気になったのか。あの男が自分に何を感じたのかは分からない。だが、今は春蘭を、彼女を失いたくないと強く願っていた。
あとがき
狐燐「更新遅かったね…」
ツナ「まあ、色々理由はあるんですよ。リアルで忙しかったり(主に増税のせい)それに対曹操戦は今後に多大な影響のある一戦でしたから。一度案を出し、その後の展開まで考えて没ってを繰り返してこうなりました」
狐燐「ちなみに、もし和輝が曹操を信用しなかったらどうなったの?」
ツナ「…最悪首チョンパですかね」
狐燐「うわぁ~、沢山敵を作りそうな感じ」
ツナ「そうなんですよね。んなもんこっちも望んでねぇんだよ!」
狐燐「それで、次回は?」
ツナ「次回は拠点を挟みます。その為に前回、前々回でアンケート取りましたからね」
狐燐「じゃあ、アンケート結果発表!」
1位 月 8票
2位 風 5票
3位 一刀・音々音 4票
5位 恋 3票
以下2票
鈴蘭、稲葉、楓、詠、柊、セキト
1票
霞、星、白雪
ツナ「以上となりました。これ+シェア希望案を元に拠点製作になります」
狐燐「まさか、セキトに2票も入っているなんて…」
ツナ「それと、狐燐は次回のあとがき来なくてもいいよ」
狐燐「なんで!?」
ツナ「『Re:道』更新前に『虎と狐』を更新するから。そこで新しいオリキャラ出るからそっちに来てもらう」
狐燐「斑様じゃないよね?」
ツナ「・・・」
狐燐「なんで黙るの!?」
ツナ「ではまた次回~」
狐燐「ちょっと、ねえ!勝手に逃げるな!」
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今回の和輝はプチおこです。
『Re:道』と書いて『リロード』ということで
注:オリキャラ出ます。リメイク作品です