はやて「お邪魔します…」
士希「おう、まぁ上がれよ」
私は今、士希君の部屋に来ている。年頃の男女が部屋で二人きり。
ここまで聞けば、色恋くさい感じではあるが…
士希「さて、なら早速やるか」
はやて「え?もう?」
士希「あぁ、こっちはもう準備出来てるんだ」
はやて「そんな…私にも心の準備が…」
士希「あぁ?何言ってんだお前?出来たから来たんだろ?」
はやて「いや、年頃の男女が部屋で二人きりやで、言わなアカンかなって」
士希「なんだそれ?」
そう、今日はそんな甘い感じの理由で来た訳やない。
この前手に入れたタナトスについて、士希君のお父さんに話を聞きに行く予定や。
と言うのも、管理局のデータにタナトスについての記述がなかった。
現在はユーノ君に頼んで無限書庫で調べてもらっているが、
ユーノ君も忙しいらしく少し遅くなるとのことやった
士希「さて行くか。レーゲン、ユニゾンだ」
レーゲン「はい!」
士希君とレーゲンはユニゾンし、魔法陣が展開される
はやて「士希君、次元転移もできるん?」
士希「まぁな。そんなに珍しいことでもないだろ?」
次元世界を移動すること自体は珍しくない。
私ら魔導士は、その次元世界を渡り歩ける技術を持っているから。
でもその際には何かしらの装置、もしくは数人の魔導士の力が必要やったはずや。
単身でやるには有る程度素質がないとアカンのやけど、士希君は簡単にやってのけた
士希「まぁ、俺ができるのは次元世界の移動と、魔力による身体能力の強化、
後は空を飛ぶことくらいしかできないがな」
はやて「いや、これも十分凄いことやで?」
ホンマに、士希君には驚かされるわ
士希「あぁそうだ。はやて」
士希君は私の名前を呼び、突然何かをこっちに投げた。私はそれを慌ててキャッチする。
なんやこれ?指輪?
士希「俺がいた世界は中々デリケートでな。
他の世界の人間が入ってくるとそれだけで大事なんだわ。
だからその指輪は、入っても大丈夫だっていう証。通行証みたいなもんだ。持ってろ」
私は士希君から渡された指輪をはめる。デリケート、そんなに厳しいんやろか
はやて「なぁ、士希君の世界って…」
士希「悪いはやて。それだけは俺も教えちゃいけねーんだわ。
一応決まりでな。破れば俺は強制送還だ」
はやて「…なんや、事情があるんやな。それならいいわ。深くは聞かんよ」
士希「すまんな。それじゃあ行くか」
士希君は手を差し出す。私が士希君の手を取ると、魔法陣は輝きを増し辺りを照らした
気付けばそこは、先ほどとは打って変わって木造建築の部屋に出た
士希「ようこそ。ここが俺の実家だ」
はやて「ここが…」
部屋にはベッド、机、本がぎっしり詰まった本棚、タンスとあった。
これだけなら普通の筈なんやけど、ここは少し違う。
私らの世界には当たり前の、電気がない
レーゲン「なんだか、歴史を感じさせますね」
いつの間にかユニゾン解除していたレーゲンが答える。
確かに、歴史的建造物の中にいるみたいや
士希「さて、物珍しいかもしれないが、とりあえず親父が先だ。ついて来てくれ」
私とレーゲンは士希君の後について行く。家はかなり広く、部屋がいっぱいある。
士希君の部屋は二階やったらしく、私らは階段を降りて一階に来た
はやて「なんや、屋敷って感じやな」
士希「はは、違いないな」
一階に降りて程なくして、士希君が一室の戸を開けた。
そこは台所とリビングが一緒になったかのような部屋で、中には眼鏡をかけた男の人がおった
士希「ただいま父さん」
士希君に父さんと呼ばれた男性は、読んでいた本を下げ、こちらに向く。
確かに、士希君と似てる。とても優しそうなおじさんって感じの人や。
左眼が前髪で隠れとんのはわざとなんやろか?
士希パパ「おや?おかえり士希君。今回は早かっ……た………」
士希パパはこちらを見て固まった。どうしたんやろ。見れば士希君も心配してるようやった
士希「父さん?」
士希パパ「さ、さ、咲ちゃーーん!!大変だーー!!
士希君が女の子と子どもを連れて来たーー!!」
はやて・士希「え!?」
あ、まさか、子どもってレーゲンの事で、このおじさんは…
士希「待て待て父さん!こいつらは…」
士希パパ「士希君!君はいつからそんな子になったんだい!こんな大きい子がいるなんて。
こちらの可愛らしいお嬢さんに何てことをしてしまったんだ!」
士希「だー!落ち着け父さん!こいつは俺の子じゃない!」
士希パパ「なんてことだ…見損なったぞ士希君!責任から逃れようとしてもダメだ!
僕は許さないぞ!」
士希「なんなんだよ!ホント少し落ち着いてくれ!はやてもレーゲンも引いてんじゃねぇか!」
士希パパ「これが落ち着いて…」
スパーンスパーン
士希・士希パパ「おふっ!」
「お前ら、少し黙れ。店まで聞こえてるぞ」
士希君と士希パパの間に、女の人が突然割って入り、ハリセンで二人の頭を思い切りどついた。
すっごい綺麗な人やなぁ
「悪いなお前も。迷惑かけて」
はやて「あ、いえ、大丈夫です。私は八神はやてです。あの、あなたは…」
咲夜「八神はやて、ね。士希の向こうの友達か。
私は士希の母親で、名前はし……咲夜だ。よろしくな」
はやて「うぇ!?お母さん若っ!」
士希君のお姉さんかと思てたわ
士希パパ「じゃあ、本当に君は士希君の子じゃないんだね?」
レーゲン「はい。しきさんはお兄さんみたいな人です!」
とりあえず落ち着いてくれた士希パパに、レーゲンの事情を説明し、
なんとかわかってもらえることに成功した。
私はその間、咲夜さんに出されたお茶を飲んでた。咲夜さんのお茶めっちゃ美味い
士希「第一、俺まだ今年で16だぞ。この年で小3くらいの子がいたらおかしいだろ」
士希パパ「いやぁ、ちょっと取り乱しちゃって…」
あははー、と笑う士希パパ。なんやえらいおちゃめなお父さんやな
士希パパ「それで君は、士希君のお友達かな?」
はやて「はい。八神はやてです。士希君とはクラスメイトで、ちょっとした縁で知り合いました」
士希「ちなみにはやては、時空管理局の人間だ」
士希パパ「!?」
士希パパが一瞬だけ動揺したように見えた。どうしたんやろ
咲夜「その時空管理局ってのは何なんだ?」
はやて「そうですね。簡単に言えば、治安維持や犯罪者を捕まえる、警察みたいなもんです」
私は噛み砕いて答える。実際は警察だけやなくて、裁判所みたいな事もしてるけどな
咲夜「なるほどな。とうとう零士も、年貢の納め時ってわけだ」
え?士希パパなんかやったん?
士希「違う違う。今回はちょっと、父さんの知恵を借りにきたんだ」
士希パパ「僕の?」
士希「あぁ。ここで出すのも危ないし、庭に出るか」
咲夜「なら、私は仕事に戻るか。はやても、まぁゆっくりしてってくれ」
はやて「あ、はい!お茶、ありがとうございます!」
咲夜さんはそう言って振り返らず、こちらに手をヒラヒラとさせてどこかへ行ってしまった。
うわぁ、カッコいいなぁ。あれで子持ちの母親なんや
士希パパ「それで、いったい何を見せてくれるんだい?」
士希「あぁ。レーゲン」
レーゲン「はい!」
レーゲンは士希君に促され、大鎌、タナトスを出現させた。
それを見た士希パパは目を見開いていた
士希パパ「これは、驚いたな。それはタナトスかい?」
士希「知ってるのか?」
士希パパ「いや、僕も資料でしか見た事ないし、
その資料もあまり詳しい事は書いていなかったが…これをどこで?」
士希「レーゲンを保護してから、何かと化け物に狙われててな。
それでつい先日、化け物が襲ってきてボコボコにしたらゲットした」
士希パパ「ぼ、ボコボコかい?仮にも、神器と呼ばれていたはずだけど…」
はやて「え?そんな凄いやつなんですか?」
めっちゃ一方的にフルボッコにしてたけど
士希パパ「あぁ。確かタナトスは、切れば切るほど威力が増大すると言われていて、
あらゆる物を殺せる力を宿しているって資料には書いてあったはずだよ」
士希「あ、それならボコボコにできたのも納得だな。あいつに切られる前に叩き潰したから」
士希パパ「そ、そうかい…」
士希パパは苦笑いやった。となると、あの時一気に畳み掛けたんは正解やったんやな
士希「てことは、プロメテウス、オケアヌス、アルテミス、ガイア、ミネルバも、
その神器と呼ばれる奴か」
士希パパ「あぁ。まさかその5つにも狙われているのかい?」
士希「あぁ。なんでも、長年封じ込めていたレーゲンに復讐だってさ」
士希パパ「復讐ね。となると、レーゲン君の正体は製作者…
だがそうなると、中に閉じ込めていたと言うのがよくわからないな。
それに記憶を失う理由も…」
士希「封じ込めた理由は力が強大過ぎるから。それは父さんの話からわかるんだがな」
士希パパ「はは、士希君もつくづく、僕に似て巻き込まれ体質だね」
士希「もう慣れたさ」
そういう二人には、哀愁が感じられた
はやて「ところで、士希君のお父さんは何もんなんですか?えらい物知りやけど」
士希パパ「はは、僕はただの料理人だよ……って、信じる訳ないよね」
はやて「そりゃあ、まぁ。それに時空管理局って聞いた時に、表情変えてましたし」
私は気になっている事を聞いてみる。すると士希パパは少し驚き、すぐ様笑顔になった
士希パパ「はは、なかなかどうして、こんな子があの世界にいるんだね」
士希パパは関心したように呟いた
士希パパ「まぁなんだ、僕はちょっと、裏事情に詳しいだけだよ。
さっきの知識だって、昔ミッドチルダに行った時に見たものだし。
確か今その資料は無限書庫にあるはずだよ。管理局員なら、詳しくはそこで調べるといい」
話をはぐらかされたような気がした。そんなに、知られたくないんやろか
はやて「事情があって、教えられませんって感じですね」
士希「はやて、悪いがこれ以上は…」
士希君は心配そうに割って入る。ま、そういう約束やったしな
はやて「わぁってるよ。深くは聞かへん。ただな士希君、これだけ確かめさせて。
士希君のお父さんは、犯罪者なんかな?」
士希「違う!それだけは嘘じゃない!」
士希パパ「士希…」
はやて「そぉか。ならええわ」
犯罪者なら即連行やったけど、士希君が嘘ついとるとは思えやんだ。なら、私の仕事はないな
士希パパ「…月並みな言葉だけど、八神はやてちゃん、これからも士希君をよろしくお願いします。
それと、ありがとう」
士希パパは頭を下げて言った
はやて「いえいえ、士希君にはご飯食べさせてもらってますし、いいんですよ」
士希パパ「へぇ、士希君の料理かぁ。父さんも食べたいなぁ」
はやて「士希君の料理、めっちゃ美味いですよ」
士希「ッ!?そりゃどうも…」
珍しく顔を赤くする士希君。それを見た士希パパは何やら興味深げに見て
士希パパ「……はっは~。そうかそうか、とうとう息子も、色を知る年なんだな。
いやはや、これはいろんな意味でよろしくお願いしたいな」
はやて「え?あ、はい。わかりました」
なんやようわからんけど、お願いされてしまった
士希「チッ!帰るぞレーゲン、はやて!」
レーゲン「はーい!」
はやて「え?もう?」
顔の赤い士希君は、居心地が悪そうに言った
士希パパ「おや?もう行くのかい?」
士希「あぁ、これでも忙しくてな」
はやて「えー、もうちょいゆっくりしてこうよ!私もっと咲夜さんとも話したいし」
士希「別に話しててもいいぜ?その代わり明日の小テスト、どうなっても知らんぞ」
はやて「げ!忘れとった…うー、また連れてってよ?」
士希「気が向いたらな」
士希パパ「ふふ、いつでも来るといいよ。士希君も、たまには実家でゆっくりしていきなさい」
士希「あぁ、また近々寄らせてもらうよ。それじゃあな」
はやて「ほな、士希君のお父さん、咲夜さんにもよろしくお伝えください。それでは」
レーゲン「また来まーす!」
そして私は士希君の後についていき、士希君の部屋へと戻ってきた
はやて「なに柄にもなく照れとるん」
私はニヤニヤしながら言ってみる。士希君は依然、顔が赤いままやった
士希「照れてねぇよバカ!ほら、さっさと行くぞ!」
はやて「はいはい」
私は行きと同じように、差し伸べられた士希君の手を取り、元の世界へ帰還した。
その時の士希君の手の温もりが、とても暖かかったのが印象的やった
あとがき
読んでくださった皆さん、こんにちは!
暖かくなり、花粉に悩まされるようになった桐生キラです!
という事で、今回はストーリーを進めてみました
最初の敵、タナトスについてなんですが、分かり辛いでしょうけど強い設定なんですよ?
ただ尻上がりっていうか、やればやるほど強くなるタイプなので、開幕は弱いです
なのでフルボッコにできました(笑)
次回はもうちょい苦戦してくれると嬉しいなぁって感じです(笑)
今後もユルッユルでフワッフワでダラッダラな高校日常を書いていきます
それでもよければ、お付き合いしてくださると幸いです
それでは、また次回に!!
Tweet |
|
|
3
|
0
|
追加するフォルダを選択
こんにちは!
ちゃんとストーリーを進めているつもりです(笑)