また別の日のことだ。
S子が大人の出会い交際誌で知り合った男性とデパートの前で待ち合わせて、待ち合わせ相手(大人の出会い交際誌の文通欄で知り合った男性だ)に出会い頭、「約束だから洋服売り場行こうよ!」と誘い、そそくさとデパートの洋服売り場に二人仲良く連れ立って向かって行ったのだ。
それからのことは、時間にするとあっと言う間のことだった。S子は終始うつむき加減で、一言も口を利かずに黙々と洋服売り場の洋服を一着づつ手探りで眺めながら、気に入ったものがあるとその場でピックアップして片腕にハンガーごと乗せて歩き回っていた。
文通欄で知り合った男の方は、あっけに取られた様子でその光景に見入っていた。そして、S子と同様一言も語らず雷に打たれたり、金縛りにあったかのようにその場に立ち竦んでいた。途中でS子の行動を邪魔したり遮ることもまったくなかった。
「はい、これお願いします」
全てことが終わった時、S子は片手に何着か乗せている気に入った洋服類を当然のようにさっき出会ったばかりの男に手渡し、男が躊躇していると、「何しているの?早く買って下さい、約束でしょ」と大声でまくしたてたのだ。そう言われてS子の目の前の男は、特に強く言い返すこともなく素直にそのままレジへと走ったのだった。あれだけの高そうなブランドの洋服複数枚だ。かなりの金額だと予想される。またこのようなものを女性からせがまれるまま一つ返事で買える男性だったのだから、それなりのお金持ちだろう。
出会ってから買い物が始まるまでの時間も短時間だったが、洋服売り場でS子が買いたい洋服が全て決まった後の清算し終わる時間も非常に早かった。だいたい全部で20分か30分くらいだったろうか?
これもまたほんの一瞬の出来事であった。
先ほどの予想はあたっていてレジで計算された洋服全ての金額は10万円を軽く超えていた。これはいとも簡単に書いているが、なかなかできることではないと思う。S子は常に男あしらいが天才的だったのだ。こんなことがS子といると日常茶飯事に起こっていたのは紛れもない真実だった。
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引き続き小説訓練です。強要と意見文章だけでは足りない部分を小説で表現してみました。