「…ふぅ。このご時世どこの鉄道もダイヤ改正の季節なのね…」
裡鋸駅のホーム。貼りかえられたばかりの新しい時刻表には『3月15日より新ダイヤとなります』の貼り紙と、
従来のダイヤが書かれた紙が貼られていた。
…極楽寺みどりの言うとおり、3月と言えばほとんどの鉄道はダイヤ改正の季節。
ここ裡鋸電鉄でも例外はないのだ。
「ま、15分間隔から12分間隔になってるあたり、利用者もそこそこいるってことなのかな…」
平日昼下がりのプラットホームはどこか閑散としていて乗客もまばらだ。
ホームの掃除をしていると、仕事仲間であるペガサス獣人の女性駅員…虹村
「やあお疲れ!極楽寺さん!」
「あ、虹村さん」
「毎日ホームの監視に出札に大変でしょ?疲れない?」
「いやー、これが仕事だし…私ロボットだからねぇ…」
「甘い甘い!ロボットだからって無理ばっかりしすぎるとどうなることか…ま、どっちみち交代の時間だしさ。あとは僕に任せてゆっくり休んでなって」
「うーん…じゃあお言葉に甘えてみようかな。よろしく虹村さん」
「おう!任されて~」
と、虹村と挨拶を交わし、ラッチの通用門を通り抜けるみどりの目の前に、見覚えのある顔が…。
「あれ?八鍬さんじゃないですか」
待合室に座っていたのは八鍬隼。山奥のガラス工房を営む職人である。
「あ…いつぞやのロボの人」
「ロボの人ってあなたねぇ…」
と、少々呆れ顔になったみどりだったが、すぐに表情を戻すと隼に訊ねた。
「今日はどうしたんですか?」
「新作ができたから売りに来た」
「それで、回ってる最中なんですね?」
「そういうこと」
相変わらずぶっきらぼうな答えしか返ってこないが、見慣れた顔と話をしていると、
やはりみどりの心にはどこか安心感があった。話しているうちに、自然に笑顔になっていく…。
「あ、そうだ…片手間でこんなん作ってきたんだけど」
すると、隼が背負っているカバンから何かを取り出した。
それは、手のひらサイズのガラス細工だった。
人の形をしていて、顔の部分がクリーム色。緑色の部分は服だろうか。
耳に当たる部分には白色のガラスが取り付けられている。
みどりは、そのガラス細工の形から、すぐに自分の姿だと確信した。
「…こ、これ…私?」
「…今日ホワイトデーらしいから。昨月のチョコのお礼」
「ど、どうも…」
みどりの頬は赤く染まっていた。よほど照れくさいのか、それ以上に嬉しかったのだろう。
「じゃ、そろそろ俺行くから」
「あ、お気をつけて…」
と、プレゼントを渡し終えた隼はふたたび荷物を背負い歩き出した。
「そっか…隼さんもホワイトデーのプレゼント渡しに来てくれたんだ。なかなか可愛いじゃん」
みどりは、ガラス細工を駅事務室にある自分の机の引き出しの中に入れると、
同じ引き出しに入っていたチョコレートを取り出した。
「さーてと。オレナちゃんにチョコ渡してこなくっちゃ」
…今日は3月14日。ホワイトデー。
ダイヤ改正を翌日に控えた日の昼下がりは、ほんのりと暖かな日差しが注いでいたのだった。
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ダイヤ改正要素ほとんどなし。むしろホワイトデー話だった。
あとモブでみどりの同僚が出てきていますが、わかる人にだけわかるパロネタだったりw
■出演
みどり:http://www.tinami.com/view/655747
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