「Stille Nacht, heilige Nacht」
彼女の歌声が、教会内に響き渡る。
よく難しい歌かと思われるが、そうでもない。
有名なあの『きよしこのよる』だ。
それでも彼女の歌声は奇麗で、清く透き通っている。
終わっても拍手はしない。
神に祈る時間だ。
その時間は誰もが無言。
ただ無音という名の神の声だけが聞こえる。
「どうでしたか?」
すべてが終わった後、彼女はうれしそうに言った。
「どうでしたかと言われても、綺麗だったよ。」
私は答える。
「でも何で賛美歌なんて歌うんでしょうね?神様に祈る、という感じではないような気がするんです。そう考える私は不謹慎なのでしょうか?」
彼女はそう言って、目の前の十字架を見る。
相変わらず、そこにはうなだれたキリスト様だ。
「いや、べつにね、神様に祈らなくてもいいんだよ。ただ歌う時、歌っているのをを聞いているとき、神様を感じられたらそれでいい。神様は思ったより寛大だからね。」
ここからだと、キリスト様には触れられない。
けれど、ほこりを掃除する時に下ろすので、毎日のように触れている。
神様とはそんなものだ。
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五分小説です。
読みやすいように書いております。
読んでくださったら、うれしいです。
自分事ですが石垣島に行ってきまして、なかなか面白かったです。海きれいですね。