No.669966

バドフレ詰めあわせ

アリタさん

プレイしていて気になったこととかぼんやり妄想していたことをつらつらと。 ほんのりネタバレがあるかもしれない。 セリフは覚えてる限りなので違うかもしれない。

2014-03-11 21:42:05 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1405   閲覧ユーザー数:1403

「…ほたるカ…」

ぽつり、と落とされた言葉にフレイは思わず顔を上げた。

だらしがなくていい加減でいつも間延びしたような喋り方をするバドの、聞いたことのない声。

しかし見上げた顔から何かを拾えるほどフレイは彼のことを知らない。

「また商売のことでも考えてるんですか?」

いつも通りの世間話だとあえて軽口を叩けばいつも通り返される軽口に息を吐く。

何に緊張していたのかフレイ自身にも分からない。

「明日、楽しみですね」

「そうだナ」

少しだけ口元を緩めるバドに先ほど感じた何かはきれいに消えていた。

ただ僅かな違和感と引っ掛かりがフレイから消えはしなかった。

 

 

 

 

 

水の遺跡近くにある占いにフレイはよく足を向ける。

占いが好きだという女の子らしい理由もあるが、一番の理由は町の人たちの反応が面白いからだ。

相性がいいと言われれば喜び、いまいちだと言われればがっかりしたり拗ねるような顔をしたりと意外な顔を見ることができる。

が、『意外と傷つく』と言われるのには驚いてしまった。

確かによく冒険には出かけるが時間の都合がつくから付き合ってくれているだけであり、そこまで大げさに反応されるほど好かれているとは思っていなかったから。

意外と占いが好きなのか、意外と目に見えないものを気にするんだろうか。

「占いは毎日変わりますから。また来ましょうね」

しょんぼりと眉を下げるバドがなんだかおかしくて微笑んだまま言葉をかければ、一瞬きょとんとした顔をされるのもまたおかしかった。

 

 

 

 

 

店名と店主の性格がイコールだと誰もが言う。

親しいフォルテはもちろんヴォルカノンやエルミナータもやる気がない、だらしない、適当すぎると口にする。

楽して金儲けが夢だと豪語しろくでもない商売をいつも考えているのだ、否定することは出来ない。

そう思いながらもフレイはバドとの会話をいくつか思い浮かべていく。

――誰かが悲しい顔をするのもだめだナ――

――オレやキミはいいけどお年寄りや子供は危ないからナ――

会話の端に時折浮かぶ他人を心配するような言葉。

確かにのらりくらりとしているし普段の言動は褒められたものではないが、彼の本質はそうでもないんじゃないだろうか。

フォルテやキールが口にする騎士の話、剣の話。

少し近づいたような親しくなったような気がするほど、バドのことがよく分からなくなっていく。

「もう少し親しくなれば、ちゃんとバドさんのことが分かるようになるのかな…」

フレイは誰に言うでもなく呟くと布団に潜り込んだ。

年頃の女性というものはこうも無防備なものだろうか。

はだけた布団にずり落ちかけた寝巻き、健やかな寝息を立てる彼女にバドは困ったように眉を寄せる。

男としてそういう対象として見られていないのは分かる。

だからと言って『毎朝起こしてください』などと男相手に無邪気に言うほど彼女は幼くはないだろう。

「あいつらも大変だなァ」

フレイに想いを寄せている男達を思い浮かべ同情してしまう。

誰の前でもこうだとしたら見ている方は色々な意味でたまったものではないだろう。

「ほら、朝だゾ。おはよウ」

あまりフレイを見ないようにして声をかければむにゃむにゃと眠そうな声に少し遅れて朝の挨拶がかけられる。

「あふ…おはようございます、バドさん」

「ああ、おはよウ」

彼女が朝から活動的なのは知っている。

二度寝をすることもないだろうし起こしたのだからいいだろうと玄関に向かうが。

「明日もまた起こしてくださいね」

「起きられたら、ナ」

まだ少し寝ぼけかけているような甘えるような声に振り向くことができず、少しだけいたたまれない気持ちで足を速めるのだった。

 

 

 

 

 

「バッチリラブラブだウラ~~!」

自称占い師にかけられる言葉にやった!と笑顔を向けられ一瞬反応に困ってしまう。

以前占った時に相性がいまいち、と言われたのが面白くなかったのか何なのか、フレイは時折冒険の合間にバドを占いの家に連れて行くようになった。

相性がいまいちだと言われれば何故か伺うような視線を送られ、ラブラブだと言われれば素直な笑顔を見せられどうにもむず痒い。

その結果を強く望んだわけではない、あくまで占いだと一線引こうにもにこにこと微笑む彼女にはかなわない。

「いい結果も出るんだナ」

いつも通りの声にいつも通りの台詞。

フレイがこんなにも喜ぶのは占いが好きな女の子だからだ、単なる『いい結果』が喜ばしいだけだと自分に言い聞かせ少しだけ笑みを返した。

 

 

 

 

 

青天の霹靂、とでもいうのか。

唐突に告げられた告白に柄にもなく言葉を探してしまう。

顔を見れば分かる、フレイは本気でバドに恋をしてはいない。

普段の態度からもそれは分かっていた。

彼女は誰に対してもそうなのであり、特別な感情を自分に向けている訳ではない。

分かっていたのに、分かっていたからこそその言葉が衝撃的で、言葉を失ってしまった。

「………というのは大体作り話なんだけド」

いつものようにうまい作り話が浮かばない。

どうして言ってしまったのかも分からない真実に少しの嘘を乗せる。

「キミが面白い嘘をつくからオレもそうしてみタ」

どこが嘘なのかはきっと彼女は探さないだろう。

はっきり断ることもできずうやむやにするバドの本心にフレイは気付かない。

そしていたずらがばれた子供のように眉を寄せるフレイの本心にバドが気を向けることはなかった。


 
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