第三章‐玖話 『 決戦!反董卓連合~恐怖の灯火~ 』
汜水関を落した連合は意気揚々と虎牢関を目指す…とはならなかった。というのも今や肥溜めと化した汜水関を通る為に袁紹は各陣営に肥溜めの埋め立てを指示、そして当の本人は排泄物まみれなので体を洗い流している。そうしている内に日は暮れ初め、進軍再開は明日へと持ち越しになった。
「しかし、関をまるまる肥溜めにして董卓達はその後どうするつもりだったのかしら?」
「案外そのまま畑にでもするつもりだったんでしょうか?」
「伽羅…流石にそれは無いと思うわよ」
曹操陣営では先の戦闘に参加していなかった為被害はなかった。その為、次の虎牢関に向けての軍議を行っていた。だが、守りの要所をまるまる肥溜めにするような相手の考えなど解るはずもなく、相手が次に何を仕掛けてくるのかまったく予想も出来ずにいた。
「それで桂花。連合の士気は?」
「芳しくありません。特に先の戦闘で橘と当たった劉備陣営は深刻のようです。」
「ふん。あんな男など私一人で倒してやる!」
「私は自信無いです。あの人の斬撃、速すぎて全然見えませんでしたし」
「そうね。それに橘ということは、あの時交渉に来た御遣いの兄ということ。つまり彼もまた、御使いと見て間違い無いでしょうね。」
尋常ならざる殺気を放つ所といい、兄がいることを仄めかしていたのでまず間違い無いだろう。
「それに、立華組の兵も無視出来ません。こと守りにおいては恐らく大陸屈指の実力があります。関羽、張飛の武を正面から受け止め押し返していますし」
「そうね。将が当たっているならともかく兵だけでそれを成せる。唯一の欠点は殺傷能力の低さだけど…橘一人で関羽と張飛を無力化出来るなら問題無いでしょうね。さしずめ、橘が剣でその兵は盾といったところかしら」
「加えて張遼と華雄の部隊も強力でした。特に華雄は先の戦闘では冷静だったと…」
「知恵をつけた獣…なかなか厄介ね」
「はい。すこしは見習って欲しいものです」
「ん?なぜそこで皆私を見るのだ?」
こっちの猪は自覚無し。頭が痛くなる。
「凪。あなたは何か気付いた?」
「そうですね。最後に袁紹の旗を落した氣弾ですが、速度と精度はかなり高かったと思います。威力は無くとも遠距離では脅威でしょう」
「そう。ではそれらを踏まえて虎牢関を落す案は誰かあるかしら?」
そう促すと全員が口を噤んでしまう。つまり、今の所打開策は無いということ。だがそれを責めることは出来ない。何せ相手は天の御使い、それも三人もいる。自分達の知らない知識や技術を有した相手では仕方無いのかもしれない。
「――出ないなら、今日は終わりにしましょう。ただ、何か思いついたなら逐次報告に来なさい。」
そう言って各人が自分の天幕に戻る。ただ一人…徐晃を除いて。
「どうかしたのかしら?伽羅」
「あの、一つだけ。その、華琳様はもし私達がその…死んじゃった時は悲しいですか?」
「どうしたの?突然」
「お願いします」
「…そうね。私には覇道を成すという野望があるわ。その為には一々人の死に悲しんでいる暇はないわ。でも、そうね。もし全てが終わった後なら…」
「そうですか。じゃ、じゃあそのこれで失礼します」
そう言って飛び出すように出て行く徐晃を、一人残った曹操はキョトンとしながら見送っていた。
「褚燕姐さん準備できやしたぜ」
「よし!んじゃ後は旦那に貰ったコイツに火を点けるだけだな」
「しかし、なんか変な臭いがしますね、これ」
楠達の言っているのは和輝達御遣いが用意した物。掌大の丸い球で中は陶器の入れ物。その周囲は油布で巻いており更に硫黄を塗している。彼女の部下の言った変な臭いの正体でもある。
「それくらい糞尿に比べればマシだろ?それと火を点けたら絶対に落すなよ。狙いは連合だ」
そう言って幾つかの球をとって連合の宿営地が見える所まで移動する。そこには丁度連合の真上を横切る様に対岸の崖と此方を数本の糸が張られている。其処に小さな鉄の環を通し其処から更に一本の糸を先程の球に括り付ける。これで最後の準備も整った。
「よし。じゃ、作戦開始」
そう言って楠達は球に火を点し、糸を滑らせて連合の真上に送り出した。
「ん?なんだあれ?」
哨戒中の兵の一人が何気なく空を見上げたときそれに気付いた。ゆらゆらと揺れる青い火の玉、それが十数個連合軍の上空に漂っていた。
「ひい!なんなんだよ!」
普通、火は赤く、もしくはややオレンジ掛かった色で燃える。それが当たり前である。だが今上空で揺れる火の色は青…異質であり見ただけで恐怖を感じる。その内の一つが唐突に落下してくる。しかし腰を抜かした兵はまともに動くことも出来ずそれが直撃する。
パリン
そんな小さな音と共に火の玉が割れる。その瞬間。
「ぎゃああああ!!!」
突然激しく燃え上がり炎が兵を包み込む。その断末魔で各陣営も飛び出す。だが、まるで意思でも有るかのように、残りの火の玉が降り注ぐ。
「ああ、あがっ!!」
「がああ!」
次々と兵にあるいは天幕などに引火していく。
「直ぐに水を!!」
「はわわ。早く消火を」
訳も分からずにだが被害を食い止めようと連合から声が上がる。だがそれも裏目に出た。
バチバチッ
「ぎゃあ!」
「なんだこれ!全然消えねぇ!」
火に水をかければ消える。それは子供でも知っている常識だがこの時ばかりは通用しなかった。引火したひは消せてもその火種に水をかけた瞬間飛び火し近くの兵が被害に遭った。
その常識を超えた自体に連合は阿鼻叫喚の地獄絵図の様になっていた。怖がり逃げ惑う者、呆然と立ち尽くす者、中には失禁する者までいた。
「旦那のこれ凄いな。なんつったっけ?」
「確か『さーめいと』とか言ってましたね」
サーメイト。テルミット反応を利用した焼夷弾のことで戦時中にも使われた物である。その原理は簡単で軽鉄、つまりアルミニウムを粉末状にして砂鉄や赤錆等の酸化鉄と混ぜ火を点ける。するとアルミその物が燃える。また、燃焼に必要な酸素は酸化鉄が供給するので水の中でも燃焼ができる。更にはその温度も3000℃の高熱を有し鉄すら溶かす。(絶対に真似してはいけません)
「という事らしいです」
「解らん。とりあえずやる事やったし引き上げるぞ」
「へい!」
その後明け方近くにようやく騒ぎは収まった。だがその被害は甚大だった。戦闘継続が出来ないほどの重症者や死者もさることながら、一番の問題は連合の士気と物資、特に水が不足していた。只でさえ遠征軍なのに袁紹の水の浪費に加え昨晩の騒ぎでかなりの水を消費していた。それも無駄だったわけだがそれ故に連合の士気はがたがただった。本来であれば一度出直すことも考えなければならないが、総大将である袁紹は
「私の顔に泥を塗った者達を生かしておけませんわ!」
との事で。一応、総大将であり汜水関を落した功績もあり諸侯は諌めることも出来ず進軍を余儀なくされた。
その連合が次に目指す先、虎牢関その外見は今までと大きく様変わりしていた。
関の前には広く深い堀が作られ、正面から関に入るには只一つの跳ね橋を降ろさなくてはならず、仮に梯子を掛けようにも関の縁、梯子の掛けられそうな場所は斜めに削られ、更に壁のあちこちに小さな小窓が開けられそこから弓や槍を突き出せる様に成されている。
その虎牢関には御遣い達と牛角率いる立華・黒山軍、恋、霞、鈴蘭、鬼灯の董卓軍が連合を待ち構えていた。
せっかくなのでネタ
劇的ビフォー・○フター風虎牢関紹介
なんということでしょう。あの堅固な要塞として知られる虎牢関の前にはまるで日本の城を思わせるような深く広い堀が作られているではありませんか。無理に越えようにも堀を降り、登る頃には関からの攻撃で一網打尽。
その虎牢関の玄関はたった一つの立派な跳ね橋が取り付けられそれを閉じれば巨大な壁になってしまいます。
また、関の縁は斜めに削られ梯子も掛けられません。そして関の小窓からは弓での射撃だけでなく槍も突き出せる工夫がなされています。
今回のリフォームでのお値段は
木材調達 ・・・ 立華組
跳ね橋作成 ・・・ 立華組
堀作成 ・・・ 立華組
跳ね橋鎖 ・・・ 費用橘負担
________________
董卓軍負担・・・・¥0
となりました。
番組では(以下略
あとがき
狐鈴「タグが怖いわ!」
ツナ「でも真実。絶対やってはいけません。例えお手軽に作れても」
狐鈴「そうだけどさあ。あんまし酷過ぎない?」
ツナ「そうかなぁ?当然の報いだと思うけど?直撃した描写は優しさで省きましたし」
狐鈴「因みにもしテルミットが直撃したらどうなるの?」
ツナ「アルミなんかは自身の熱で溶けて液体になっています。もしそれが付着すれば肉は焼け爛れ、骨まで達します。頭なら脳みそ沸騰してパーンです」
狐鈴「聴かない方が良かったorz じゃあ、話変えて、最後のおまけは何?」
ツナ「なんか皆さん虎牢関の改装が気になっていたようなので折角ならと思いまして。マイクラの匠より良い仕事してると思いますよ」
狐鈴「ああ~確かク○ーパーさんでしたっけ?」
ツナ「なぜ知ってるの!?」
狐鈴「太一さんが最近遊んでました」
ツナ「仙界なんでもありだな」
狐鈴「原作も横文字多いですしね」
ツナ「漫画とか禿げ薬があるくらいだしね」
狐鈴「用途不明の機械とかね」
ツナ「まあその話は今はいっか。というわけで」
ツナ・狐「「また次回!」」
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殺るからには徹底的に。戦場には救いも正義もありゃしやせん!
『Re:道』と書いて『リロード』ということで
注:オリキャラ出ます。リメイク作品です。『作るな危険』