No.667500

Need For Speed TOHO Most Wanted    第10話VSガルム

主「TINAMIよ!私は帰ってk・・・!(ファイナルスパーク)アッー!」

魔「遅すぎ」


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2014-03-02 21:52:17 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:785   閲覧ユーザー数:783

 低い雲が空を覆う。いよいよガルムとの対決の日が来た。ハイウェイ手前のドーナツ屋で彼女の到着を待つ。

「よし、いいな」

 M3を奪われた日以来、私はスタート前の車の点検を怠らない。またあの時みたいにつまらん理由で負けることなどこりごりだからな。ダークネス戦の三日後に届いたカーボンの新ホイールも決まっている。

「!」

 その時、私の耳に甲高いロータリーサウンドが届いた。どうやらご登場のようだ。私はクルマを信号の前に移動する。

 猛スピードでバスターミナル方面から走ってくる白と赤のRX-8。交差点前で縁石にタイヤサイドを引っかけ真横を向く。そこからアクセルを戻して振り返し、私のベンツの真横に綺麗に横付けした。

「忠告を無視してかかってくるとは、愚かな人間もいたものですね」

「バカよりかはマシさ」

 開戦前から火花を散らす私達。静かな圧力が、辺りを包み込む。

「まぁいいでしょう。現実というものを思い知らせてあげましょうか。後で後悔しない事ですね」

「ほざけ。お前みたいなザコ相手に手間取ってる暇はないぜ。私には時間は無いんでな」

 私にザコと言われ、ガルムの眉間にわずかにしわが寄った。

「どこまでも減らず口を・・・。ならお望み通りさっさと始めましょうか。ピンクスリップはきっちり用意しておくことですね」

「お前が私に勝てればな」

「ふん、ハンドル握りしめて待ってることですね」

 その言葉を最後にガルムはエイトの窓を閉めた。私も窓を閉め、戦闘態勢に入る。

 

 全神経を信号に集中し、スタートを待つ。

 一瞬の静寂から青信号。バトルがスタートする。

(スタートダッシュはこっちに分ありか・・・)

 トルクの無いロータリーはゼロ発進からの加速が不利だ。スタートに有利な私のベンツが前に出る。

 ハイウェイに入る交差点、ブレーキングから一気にベンツをドリフトに持ち込む。

「っ!?」

 いきなり左側からガルムのエイトが横を向いて現れる。インベタのラインを通ってるのだが、それを大外から仕掛けられ、私は先行を許す。

(なるほど・・・、確かに骨があるな。少し油断があったとはいえ、外から抜かれるとは思わなかったぜ)

 私は気合を入れなおし、再びエイトの背後に張り付く。

 ゴルフ場近くのインターを降り、バトルはキャンデンビーチの方へと向かう。

 

「チッ・・・!」

 思った以上に狭いキャンデンビーチの道路に私は苦戦していた。車幅も大きく、パワーもあるベンツではかなり性能を持て余してしまっていた。それに反して軽量で重量バランスにも勝るエイトは腹が立つくらいにスイスイとテクニカル区間を潜り抜けていく。

 その時だった。

 ポツリ。

 ベンツのフロントガラスに水滴。雨が降ってきたのだ。

「天気が怪しいとは思っていたが・・・」

 雨はすぐに本降りになった。ワイパーを動かし、雨粒を取り除く。雨は降り始めたこのタイミングが一番怖い。路面に付着したゴミやら埃やらが浮いて想像以上に滑るのだ。完全に濡れきった状態の方が遥かに走りやすい。

「つう・・・!」

 少しでもラフなアクセル操作をすればすぐにクルマがあさっての方向へ向いてしまう。どこからでも湧き上がるトルクが逆に仇になってしまっている。

「仕方ない・・・!」

 自己流ではあるが高トルク型のクルマの雨の走らせ方は心得ていた。雪道などでホイルスピンをさせない要領で通常より一段上のギアを使うのだ。ショートシフトになるのでペースは落ちてしまうが、トルクカーブがなだらかになるので、ベンツのようなトルクの太い車には使える強引な技だ。

「よし・・・!」

 次第にエイトとの差が詰まってきた。雨が降ってきてから確実に向こうのペースが落ちている。ピーキーなトルク特性のロータリーターボ。高回転では私のベンツに互角に対抗するほどのパワーがあるので、相当なビッグタービンを回していることには薄々気づいていた。型にハマれば高いパフォーマンスを発揮するが、一度崩れるとその勢いは一気に落ちる。

 タービンが大きくなるほど低回転のトルクが無くなるロータリーでは私のように上のギアを使うこともできないだろう。これで形勢は逆転しつつあった。

「うおっと」

 S字の切り返しで挙動が乱れたガルムのインを突こうと仕掛けるが、強引なブロックラインで抑え込まれた。アンフェアでラフな走り方なのは、仲間であるせいかどっかのお嬢様と似てるな。

(ならこっちにもやり方はある、悪く思うなよ)

 強引なラインからインを攻め過ぎたせいで立ち上がりのスピードが落ちたガルムの背後にピタリと張り付く。この距離ならブレーキングで仕掛けられる。

(これくらいは向こうでも日常茶飯事だったぜ!)

 早いタイミングでインについたエイトのリアバンパーにベンツのフロントバンパーで軽く小突く。バランスを崩したエイトはアウトに膨らみ失速。一度落ちた回転を戻すには時間が掛かる。

 ぱっくり空いたスペースにベンツを放り込む。どこからでもトルクが生まれる大排気量エンジンの成せるオーバーテイクだった。

 その後も雨足は強まり、勢いを失ったガルムに私を追える余力はなく、レースは私の勝利に終わる。

 私はエイトのキーを受け取る。苦虫を噛み潰したようなガルムの悔し顔に、思わず優越感が湧き上がる。

「雨さえ降らなければ、私が勝っていた」

「かもな。だが1センチの差だろうが、運悪く雨が降ろうが槍が降ろうが核弾頭が落ちようが関係ない。勝ちは勝ちだぜ」

「く・・・!」

 返す言葉の無いガルムは歯を食いしばり、仲間の車の助手席に乗る。悪いな、ここでお前は終わりだ。

「お疲れ、魔理沙」

 雨に打たれていた私にアリスが傘を差してくれた。

「おう、悪いな」

「これで活動範囲が大きくなるわね。そろそろミスも焦り出す頃だわ。ふふっ、面白くなってきそう・・・」

 私たちは勝利の優越に浸りながら、次なる刺客への準備を始める。

 


 
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