No.667172 真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第二十九話2014-03-01 20:18:03 投稿 / 全7ページ 総閲覧数:8177 閲覧ユーザー数:5614 |
「これで頼まれていた書類は全てですね?」
「はい、確かに。ありがとうございます、これだけの物を揃えるのは大変では
ありませんでしたか?」
「こんな程度、命の補佐で日々忙しくしている董卓さんに比べたら大した事は
無いですよ」
俺は董卓さんに頼まれ洛陽の治安に関する情報をまとめていて、提出し終え
た所であった。
実際の話、こんな程度の仕事など命を筆頭とした新たな漢の体制の中で中核
を担う事になる董卓さんの仕事量などに比べれば楽な物だ。
しかし、それよりも気になるのが、俺が『董卓さん』と言う度に彼女の顔が
不満気になる事であった。そしてその後で大体何かを言いたげな顔をするの
だが、結局何も言わないままなので、疑問に思いながらも何も聞けないまま
此処まで来ていたのであった。
そして今日もまた董卓さんは同じ顔をしている。さすがに此処で知らんぷり
も出来ないよな…。
「あの~…」
「は、はい!?どうしました?」
「俺、何か気に障る事しました?」
俺がそう聞くと、董卓さんの眼が完全に泳ぎ始める。
「い、いえ…何もありませんよ」
「何も無いなんて顔をしてないから聞くんじゃないですか。俺に何かしら落度
があるのなら言ってください。直せる所は直していきますし」
俺がそう言うと、董卓さんは消え入りそうな声で…。
「い、いえ…北郷さんは何も悪くないんです。ただ…私は、あなたに…」
そこまで言った時、
「ちょっと!北郷、あんた月に何してんのよ!!」
そこにやってきた賈駆さんの怒鳴り声で董卓さんの話は中断してしまい、結
局何も聞けなかったのであった。
・・・・・・・
「まったく、油断も隙もあったもんじゃないわ。月もあれほど気を付けろって
言ったでしょう!?」
「詠ちゃん…私は別にそれでも構わないって前にも言ったよね?」
「そ、それは聞いたけど…でもあいつの女関係は知ってるでしょう?あいつに
近付いたら女は苦労するって分かってるのに…」
「それだって、皆自分から進んで北郷さんに近付いているだけだし…それを言
っちゃったら、命様達の事も悪く言っちゃう事になると思うけど?」
董卓にそう言われて、賈駆はぐうの音も出なかったのであった。
「ともかく、私は少しでも今より前進したいの。今のままじゃただの主従関係
で終わっちゃうし」
そう言って董卓は拳を握りしめていた。
そして次の日。
俺は璃々と一緒に昼食を摂っていた。
「お兄ちゃん、あれって月お姉ちゃんじゃない?」
璃々が指差した方を見ると…何だか、物陰からじっとこっちを見つめている
董卓さんの姿が。本人は隠れているつもりなのかもしれないけど、完全に丸
分かりである。
(ちなみに璃々は既に董卓さんからも真名を預かっている)
そして俺がそっちの方を向くと慌てて隠れてしまう(俺が向いてから隠れる
からそれも完全にバレバレだが)。
「月お姉ちゃん、どうしたのかな?」
「さあ…そうだ、璃々…」
俺は璃々にそっと耳打ちする。
「分かった」
璃々はそう言うと席を離れる。
董卓さんはその様子をじっと眺めており、璃々がいなくなった瞬間に何やら
気合を入れるようなポーズをするが…しばらく何かしら逡巡する様子を見せ
て、結局そのままそこに留まっていた。
「ねえ、月お姉ちゃん何してるの?」
「へ、へぅ!?」
そこに後ろに回り込んだ璃々が声をかけると董卓さんは跳び上がらんばかり
に驚いてその場に尻餅をつく。
実は先程璃々に耳打ちしたのは、部屋の裏口から密かに出てもらって董卓さ
んの後ろ側に回り込んで驚かしてもらうよう頼んだのである。おそらく普段
の董卓さんならすぐに気付いたのだろうが、ずっとこっちの方にばかり注意
を向けていたのでまったく気付かずに現在尻餅をついているのであった。
「で、董卓さんは何の用ですか?」
「い、いえ…その、特に用とかいうのでは」
「じゃ何でずっとお兄ちゃんの事を見てたの?」
俺の質問に董卓さんは何やら言いよどんでいたが、璃々にツッコまれて言葉
に詰まっていたのであった。
「へぇ…俺の事をですか?董卓さんに好いてもらえているなんて、光栄だなぁ」
俺はそう冗談めかして言ったのだが…。
「へぅ…そんな、私の方こそ北郷さんにそう言ってもらえるなんて////でした
ら私の事は月と呼んでください…へぅ、言っちゃった」
董卓さんは完全に顔を赤くしたままそう消え入るように呟く。
えっ…今のって?まさか…?マジで?
それから半刻後。
俺は何故か月(預かったのでここからは真名で)と二人でしかも俺の自室に
いた。(璃々は何時の間にか侍女さん達と何処かへ遊びに行ってしまってい
たりする…気を使ってくれたという事か?)
「あ、あの…一刀さん?ご迷惑…でしたか?」
「い、いや、そんな事は…むしろそう想っていてくれてありがとう、でいいの
かな?」
月がおずおずと聞いてくるので、俺はそう答えるが…それ以上話が続かない。
どうしよう…こういうのはさすがに経験が無いから対応の仕方が分からない
のだが。これ以上このままじゃさすがに月も退屈じゃないのかと思い彼女の
方を見ると、顔を赤くしたままだったが何だか楽しそうに笑みを浮かべてい
た…改めてこう見ると、やっぱり月って可愛いなぁと認識したりする。
「どうしました?私の顔に何か?」
「いや、その…退屈じゃないかなぁと思っただけで」
「退屈なんて…こうやって一刀さんと一緒にいられるだけで幸せなんですから」
月はそう言ってますます顔を赤らめる。
「でも…何時から俺の事を?」
「何時からかは私にも分かりません。気が付けばもう…」
「俺なんかでいいのか?月が望めばもっと条件の良い男なんて幾らでも『一刀
さんが良いんです!』…あ、ありがt『だから…』…えっ?」
俺の言葉を遮るように月は顔を近付けてきて…ちゅっ。
月の唇は俺の唇と重なっていた…といってもどちらかというと体ごとぶつか
ってきた感じで、柔らかい感触よりぶつかった衝撃と痛みの方が強かったり
するのだが。そして、
「あ、あの…今日はこれで!続きはまた今度に!」
月はそう言ってそそくさと部屋を出て行った。でも、続きって…あるのか?
俺はそう思いながら呆然と見送っていた。
次の日の朝。
俺が朝議の場に姿を見せると同時に、
「おはようございます、一刀さん♪」
月がそうご機嫌な口調で挨拶してくる。
「お、おはよう…月」
俺はしどろもどろに返事をしながら何とか落ち着いた様子を見せようとする
のだが…。
「ほぅ…一刀、何時の間に月と真名を…」
「遂に月ともですか…」
命と夢が、それだけで刺し殺せるのではないかと思う位の視線を突き刺して
くる。
「い、いや、その…何と言えば良いやら」
「私も一刀さんの事が好きだとはっきり言っただけですけど?」
俺が言いよどんでいる横で月ははっきりそう宣言する。
それを聞いた瞬間、命と夢の顔がみるみる夜叉と見間違う程に恐ろしい形相
になっていく.
「そうだ、急ぎの用事を思い出したのでこれで…」
「「逃がすか!!」」
逃げようとする俺を二人が追いかけてくる。そして俺は朝っぱらから必死に
走り回る事になったのであった…ガクッ。
・・・・・・・
「ははは、やっと月も素直になったか。しかしドンドン一刀の周りは女が増え
ていくな…そろそろ私も本腰を入れるかな?」
それを遠くで見ていた空はそう一人ごちていた。
続く。
あとがき的なもの。
mokiti1976-2010です。
今回は…月が素直になった話でした。
ちなみに詠は後でこれを知り、怒りと呆れとで脱力した
という話です。
そして…そろそろ拠点を終わりにして、反董卓連合編へと
入ろうと思っています。この状況で連合なんてあるのかと
疑問に思いますが…。
それでは次回、第三十話にてお会いいたしましょう。
追伸 そろそろ親子の再会もある予定…。
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お待たせしました!
今回は拠点第四回目という事で、登場するのは
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