最終話 理外点のそれから…
箱庭学園生徒会室とは、ずいぶん懐かしい所に集まることになったもんだ。
それにしても……他の奴らはまだだろうか?
「皆来ないねぇ」
「兄さん、集合時刻の五時間前に来てるんですから当たり前ですよ」
ふむふむ、姫ちゃんの言うとおりだな。
五時間前はさすがになかったか、
漫画の世界ならあり得ると思ったんだが。
「面白そうだから集合時間を三時間はやめようとしたのに、
たった三日で戻されるなんて、世界の修正力ってすごいね」
「まぁ世界はそれだけ強力なシステムですから。
でも、兄さんはどうして『因果の種』を使わなかったんですか?
あれなら、兄さんでも世界を書き直すことが可能なんですよ?」
当然のことを言われて俺は少し黙ってしまう。
実は三年ほど前に、姫ちゃんに内緒で一悶着あったのだ。
「あー、それなんだけどね姫ちゃん」
「……あ、分かりました。
クランあたりでも兄さんのところに来たんですね」
「うん、そのとおりだよ」
俺が言い出す前に姫ちゃんが俺の言おうとしていたことを当てる。
夫が何を考えているかを瞬時に見抜く嫁、気が利きすぎるいい嫁さんだ。
俺は一息つくと、俺は細かいことを含めて姫ちゃんに事の顛末を伝えていく、
まぁ結論から言うと、『因果の種』を今の俺は持っていない。
いや、正確に言うなら核となる世界干渉の部分を持っていない。
今あるのは、強力になった代わり、
現象を起こすことに細かい設定が必要になった能力が一つだけだ。
「姫ちゃんの抜けた分の仕事のために、
『因果の種』の中心部分をよこせってさ」
「ずいぶんな要求をしてきましたね。
それで、兄さんはどんな条件をつけたんですか?」
さすが姫ちゃん、俺が条件をつけたことまで言い当ててくるとは流石だ。
まぁそんなにひどい条件はつけていない、可愛いものだ。
「俺達の世界移動と干渉の自由、
それから、無条件でこちらの都合に答えること、
後は姫ちゃんを二度土向こうに連れて行かないようにすることかな」
「『無条件で~』の当たりがひどすぎますね、
何をしても向こうは兄さんを咎められないってことですから」
「可愛いじゃないか、別に死ねなんてことは言わないんだからさ」
「兄さんがそんなことを言わないのはわかってますよ、それで……」
姫ちゃんが急に口を閉じてこちらを見る。
ああ、何をいいたいのかは分かった。
「分かりました。あなたの騎士がすぐ用意させていただきます」
「よろしくおねがいしますね、兄さん」
姫ちゃんの笑顔にこちらも笑顔で答える。
俺はすぐに準備に取り掛かった。
まずは空間倉庫から安楽椅子を取り出し、その上に自分で座る。
そして、倉庫から姫ちゃんのお気に入りの一冊を取り出し一言。
「いつでもどうぞ、可愛いお姫様」
「じゃあ、遠慮なく」
姫ちゃんがゆっくりと俺の上に座る。
色々柔らかいので非常に役得である。
頭ひとつ俺のほうが高いから、髪のいい匂いが嗅げて幸せである。
後ろから隙なだけ抱きしめられるので幸せである。
愛でることができて幸せである。
一緒に入られて幸せである。
……非常に満足だ!
「うへへへへ」
「えへへへへ」
夫婦揃って変な声を出して笑ってしまう。
此度、今日も世界は平和である。
****
さて、約束の時間一時間前だ。
そろそろ他の奴らもくるんじゃないかな。
ほら、そんなこと思っている間に足音がしてきたよ。
「おはようございます……
っと、神谷夫妻、今日もイチャラブっぷりはすさまじいね」
「ああ、おはようございます。
阿久根夫婦もきょうも中がよろしいようで何よりです」
阿久根先輩は右腕に嫁さんをくっつけた状態でいる。
なんとも仲睦まじい限りである。
「それはどうも、あれ? 終夫妻はまだかな?」
「二人は工場で残りの作業中です。
あの二人ですからサボりサボりやっててもすぐ来ますよ」
「そう、まぁあの二人だからそんなに気にはしてないけどね」
そんな話をしていたところ、姫ちゃんが思い出したように口を開いた。
「そういえば、今回頼まれたパーツどうでした? 使えましたか?」
「ああ、もうバッチリだよ。ずいぶんと役立ってる」
「それは良かった」
「前も思ったけど、ホントに従業員は四人だけなのかい?」
「四人だけですよ、本当に。
黒神グループに追いついちゃったのも本当ですよ」
俺達はあれから四人でひとつの会社を建てた。
従業員数は創設から今日まで四人だけだ。
あらゆるものの製造を承る会社として立ち上げ、
世界中に工場を作って四人で管理し、
材料費を能力も使ってケチりにケチったところ、
いつのまにやら黒神グループに匹敵する会社になってしまった。
「昔の後輩が今やそんな会社の社長と社長夫人とは、
恐れ多くてもう先輩面ができないね」
「いやいや、今も昔も阿久根さんは俺の先輩ですよ?
まぁ、社会の中での商談であれば対等な存在ですけれど」
「お手柔らかに頼みたいものだね」
「そちらがこちらの得になるのであればですね」
会社を経営するもの同士、
やはり商談の時には黒くならないといけない。
****
「おはよー」
阿久根さんの次に来たのはもがなさんでした。
兄さんと阿久根夫妻は次の商談の話を始めています。
こんな時にも商談とは、兄さんは仕事熱心で素敵です。
「おはようございます、もがなさん」
「あ、姫ちゃん、久しぶり。今日も仲がいいね」
「えへへ、ありがとうございます」
兄さんのお膝はとっても気持ちが良いのです。
いつまで乗ってても飽きません。
そういえば、もがなさんは小さい子を抱いてます。
「その子ですよね、この間お知らせが来た子は」
「うん、かわいい我が子だよ」
赤ちゃんですか、いい響きですね。
「家はもうあと二千年くらい新婚気分ですかね」
「二千年なんて数字が出るのが驚きだけどね」
「私からすると二千年は二秒と変わりませんよ」
「じゃあ、零がいれば?」
「二千年は四千年と同義です」
兄さんがいる時間はもれなく二倍になっちゃいます。
ヤダもう兄さんったら、どれだけ私を骨抜きにすればいいんですか?
「ふへへへ」
「今も昔も四人は変わらないね」
ですよね。廻さんもまだまだ子供はいらないみたいですし。
私達はそんなに変わっていないと思います。
でも、
「皆さんは変わりましたね。やっぱり不老不死じゃない故に、でしょうか」
「そうかもね、自分時が進むのがわかると、
否が応でも変わっていくものなのかもしれない」
「時が進むっていうのは、大人に変わるってことです。
大人になればなるほど、世界が綺麗に見えるはずですよ」
「逆に汚いところも見える時があるけどね」
それはそれです。しかたのないことです。
「人がいるので仕方ありません。
でも、それでも、よく身て感じれば、わかりますよ。
世界は美しいです。私達神の仕事は、その美しさを保つことでもありますから」
「そう。じゃあ、その神様の言葉を信じてみようかな。
この子が生きていく世界がとてつもなく美しいものだって」
信じてもらって構いません。五番目くらいに大切なことですから。
一番はもちろん兄さんへの愛です。とっても大切ですよ。
そして、愛しい人は、今私のすぐそばに、
「えへへ、今日も世界は平和です。ね、兄さん」
「ああ、平和だね、姫ちゃん」
****
「やっほー元気ー?」
「こんにちわー」
次に来たのは不知火ちゃんと江迎ちゃんでした。
江迎ちゃんのところのお花はとってもきれいなので私もお家でお世話しています。
不知火ちゃんのところからはからくり屋敷のからくりの発注が偶にあります。
この間はセルフ踏みつけ機でしたっけ……何に使うんでしょう?
「こんにちわ、おふたりとも」
とわいえ、お二人に合うのも久しぶり、
そんなことは置いておいて、お話することにしましょう。
「江迎さんのところのラベンダー、綺麗に咲きましたよ」
「本当? 良かったぁ。
大事にしてね? あ、姫ちゃんにいう必要はないか」
江迎さんはそう言ってはにかみます。
美人さんですが、ここ数年でさらに大人の風格も出始めました。
本当、善吉さんが逃しちゃったのはもったいない気がしますね。
「綺麗ですよ、とっても優しい色のお花です」
「えへへへ」
「あー、姫ちゃん、乱入して悪いんだけどさ」
「どうしたんですか?」
不知火さんが私に近づいて声を潜めました。
「『セルフ踏みつけ機』っていうの造った?」
「ええ、オプションも含め、色々つけたやつですよね?」
「あの変態、経費をこんなことに使ってやがったか……」
不知火さんからなにか黒いものが立ち上っている気がします。
「あ、なにか問題があるならと商品と交換で返金しますけど……」
「あー、商品には全く問題ないんだ。
問題があるのは使ってる奴の方なんだよ」
「はぁ」
「あ、今度はあたしが注文してもいい?」
「あ、構いませんよ?」
そう言うと不知火さんは設計図を出して言いました。
「忍者屋敷にした里なんだけどさ。近々修繕工事する予定があるんだ。
予算はいいんだけど、人手が足りなくてさー、自動組立機とかダメかな?」
「ああ、別に構いませんよ。明日にでも送りますね」
「流石、仕事が速い」
「それはどうも」
そんなこんなで短い商談を終わらせた私は、
独身故に自炊している二人と料理の話なんかをするのだった。
*****
「チョリーッス」
「あ、名瀬さん、チョリーッス」
軽い挨拶を棒読みしながら入ってきた名瀬さんに俺も軽く返した。
「ああ、零くん久しぶり、会社の調子はどうだい?」
「すこぶる調子いいですよ。この間建てた研究所の使い心地は?」
「文句がないことが文句だな。
規格外過ぎて未だに操作にあたふたしてる時があるぜ。
ま、その機械のお陰で増えた研究項目もたくさんあるんだけどよ」
名瀬さんには研究所を半ばプレゼントのような形で渡したんだったか。
……能力で研究所の機会を作るのが面白すぎて、少々張り切って機材を創ってしまった。
それ故に、オーバーテクノロジーもいいところのものができた。
文句がないことが文句か……ふむ新しいクレームだな。
「研究項目が増えたことはプラスと解釈したとして、
文句が言えないことが文句とは……また厄介なクレームですね」
「あぁ、別にクレーム対応はしなくていいぜ、
クレーム対応されたら、せっかく見つけた研究項目が消える気がするからな」
ああ、流石名瀬さん、予想ついたんですね。
もちろん対応しろと言われれば対応しますとも、規格を落とすという形で。
機械の規格外さがなくなって、普通の研究しかできなくなりますけどね。
「まぁ、もう一回創りなおさなくていいならいいですよ」
「そうか、まぁ今度また何かあったら頼むぜ」
「アイアイサー」
そう返すと、名瀬さんは「じゃあ姫ちゃんの相手しに行くわー」
と言って料理の話をしている姫ちゃんの方によっていった。
そして、簡単な挨拶の後、姫ちゃんに顔を近づけると、何かを囁いた。
「……え!? 本当ですか?」
姫ちゃんが驚き、名瀬さんが彼女の声に頷く。
次の瞬間、姫ちゃんのがこちらを向き、照れ笑いをした。
何を言われたのかは知らないが、照れ顔を見れたので良しとする。
「姫ちゃん、子供薬、使ってみたいよな?」
「ええ、無邪気で可愛い兄さんが見れるなら、
いくらでも試作品を受け取りますとも!」
「……相変わらず、夫婦揃って相手のことしか考えてないのな」
「そう言われるのは褒め言葉です!」
****
「おーう、またせたね」
「ごめんねー、サボってたら遅れちゃった」
「遅れたって言っても約束の時間の三十分前だけどな」
創と廻さんが来た。これで残りは原作通りの二人とめだかだけだ。
それにしても……どうしてシャンプーの香りがするんだ?
「……まさか」
「いや、俺は何もしてないぜ?」
俺が発した言葉に創が反応する。
その顔を見ると慌てたように視線を逸らしてきた。
「まだ何も言ってないぞ」
「………」
あからさまに創は目をそらしている。
ということは、サボったってそういうことか。
「お前、同窓会前に何してんだよ!」
「仕方ないだろ! ねーちゃんの破壊力がやばかったんだって!」
「はぁ!? そんなのが理由になるわけ……」
「姫ちゃんが髪を括りあげていたとする!
工場での作業により汗をかき、汗に光る項を想像しろ!」
「……理由になるな。済まなかった」
それはもうしかたがない。
そんな破壊力の高いものにやられたら、止まらない。
だが、
「それでもやっていいことじゃねーよなぁ?」
「ああ? 理由として認めたくせにいちゃもんつけんのかよ?
なに? 吹き飛ばされたいの? 左半分くらい消えとく?」
「いいとも、じゃあこっちは右半分でも抹消してやろうか?」
売り言葉に買い言葉。一戦興じることにしよう。
………マジ殺す。
「ごめんね、迫られると断れなくって」
「わかりますよ。私も同じようなことがありましたから」
「しかたないよねー」なんて二人で笑いながら話します。
今の生活に不満なんてありません。
「いつまでもこうしてられるといいな」
「そうねぇ、まぁ零くんなら大丈夫よ。
それにね、胃袋取ったら男は放れないわ」
「そうですか、じゃあ安心ですね」
でわ、今夜は兄さんを放さないために、
美味しいお料理を作っちゃうことにしましょう。
****
「そういえば、めだかは?」
創との一戦を交えた後。遅刻ギリギリの二人ではない、
というか、遅刻をしなさそうな奴がまだいないことを思い出した。
「ああ、めだかさんなら理事長室だよ、
このところ徹夜が多かったようだから犬に囲まれてうとうとしてるはずだ」
「あれ、阿久根さん、どうして知ってるんですか?」
「そりゃあ、ここにいなかったから連絡したに決まってるじゃないか。
彼女は遅れるはずがないし、一番乗りでもおかしくないからね」
なるほど、じゃあめだかと今話すのはいいかな。
最終的には話すことになるだろうし、その前に善吉とバトらせないと。
「さて、そろそろ二十分前だな。
女の子はおめかしでもした方がいい時間なんじゃねぇか?」
創がそう言って手を叩く。
すると、地面に穴が開き、そこから布袋が五つ飛び出した。
「ねーちゃんがこの日のために作ったらしいから、そいつに着替えてくれ」
「え、いいの?」
「零くんのところの服って高いって有名なんだよねー」
「センスはどう考えても女二人だよな、
男の二人には有るはず無いし……それにしてもいい出来だよな」
「えへへ、ありがとうございます」
「あら、ありがとう」
そういえば、この二人いつのまにやら衣類ブランド立ち上げてたっけ。
でも、この二人がいつも着てる服って俺達が作ってるから……
ホントは自分たちもと思ってないだろうか……
「姫ちゃん、ごめん」
「ねーちゃん、ごめんね」
「へ? おめかしって兄さんの作ったので以外ありえないでしょう?」
「え? おめかしの服って創の作った服以外にないでしょう?」
「「えっでも」」
「「夫のが嫁のために作った服は、
夫の嫁に来て欲しい服の好みに仕上がります。
夫の好みの嫁で居ることが私達の望みです」」
いやはや、照れるね。
「「ありがとう」」
「「どういたしまして」」
****
「でよー善吉、ボコボコにされた気分はどう?」
「最悪最低だな」
「鶴喰の方は?」
「僕も同じようなもんだよ」
原作通りちゃんと打ちのめされたようだ。
ああ、姫ちゃんと廻さんを移動させておいてよかった。
「いやはや、まだまだおまえらもこどもだねぇ」
「いやいや、同い年のお前には言われたくないよ」
「とは言っても、僕達の中で一二を争う出世頭だよね、四人は。
黒神グループと並ぶ企業をたった四人で切り盛りし、
世界で一番金持ちランキング上位四人を五年連続独占中、
そして、今や時の人続出中の新興国『セイヴス』のVIP」
鶴啄が、今の俺達の現状を並べていく。
そして、VIPからは、善吉が引き継いで喋り出した。
「何故か豪邸でなく大きめの一軒家に四人で住み、
金持ちの威厳が全くないことで有名で、『セイヴス』国民からの人気も絶大。
議会での相談役としても活躍中。どこまで世界で有名になるつもりだ?」
いやはや、ほんとうは途中で止めるつもりだったんだよ?
たださ、やってると途中から面白くなっちゃって、やっちゃただけさ。
どこまで生けるのか、それは少し興味があるから、
「俺達がいなくなると世界が滅亡するくらいまでやってみようかな?」
「頭を地面にこすりつけてもいいからそれだけはやめてくれ」
「そう? 残念だ」
「お前の残念は、本当に残念そうだからやめてくれ。
ああ、そうだ。あの人は見つかったのか? 前に依頼したやつ」
善吉が話題を変える。前と言っても一週間ほど前だが、
『あの人』つまる所は球磨川さんのことを見つけてくれとの依頼だ。
あー、一応の成果は上がった。俺達とは勝負ができない。
球磨川さんもそれを理解していたようだから、俺達とは勝負していなかったそうだ。
が、
「悪いな、今回の成果を開示することはできないぜ。
あの人からの意思表示によって俺が話さないことは明かすが、
あの人が何処にいて、何をしていて、何を目的としているのか、
その全てを、俺は明かすことを今回は拒否させてもらうぜ
悪いな善吉、今回はうちの会社のミスだ。
こちらに入るはずだった報酬に加えてマンションでもつけて返してやるよ」
「経済面ですごく格差が感じられる一言がついてたぞ、おい。
でも、まぁ、あの人本人から言われたんじゃしかたないな。
いろいろな人が探しても無理で、お前らが最後の綱だったけど、
その綱で引張る相手が綱を話したんじゃ意味が無い」
「え? 今回は球磨川さんは勝負を放棄しちゃいないぜ?
俺達とはもともと勝負をするつもりがあの人にはないよ。
俺達と勝負するのは論外だってさ。勝負は理があってこそのものだってよ」
「そうだね、君たちとは勝負をすること自体に意味が無い。
君たちが本気になれば、指パッチンで世界が消えるはずだからね」
その通りですよ阿久根さん。今度の注文はオマケしよう。
「あの人は元気にやっていることだけは言っといてやるよ。
今でも元気で負けかけてるから安心しやがれ」
「そうか、まぁ元気ならいいか。
頼りがないのは元気の印とも言うからな」
「ま、そういうわけでめだかのところにでも行って来い。
理事長室でまどろみを貪り食ってるはずだ」
「え!? あ、そうか、そうだな! 行ってくるよ」
行ってらっしゃい。お前らのレールはここまでだぜ善吉。
此処から先はどうなるのか……楽しみだねぇ
「まぁ、向こう八十年は退屈させないでくれよ?」
****
「『あ』『零くん』『久し振りだね』」
「お久しぶりです、球磨川さん」
「『姫ちゃんとイチャイチャしてるかい?』」
「それはもう好きなだけイチャイチャしていますとも」
「『ふーん』『それは良かった』
『あ』『そういえば』『めだかちゃんが月を創るんだって?』」
「ああ、そういえばそうでしたね。
俺に言えば、次の日には完成させてあげるのに」
「『めだかちゃんだし仕方ないよ』『それより』
『やっぱり君たちに勝負を挑まなかったのは正解のようだね』」
「家のポストの裏側に接着剤でくっつけてあるとは思いませんでしたよ。
まぁ、判断自身は正解です。俺達とは勝負が成り立ちませんから」
「『仕方ないね』『じゃあ』『皆によろしく言っておいてね』
『報酬は……』『僕の螺子の盛り合わせなんてどうかな?』」
「いいですね、好きなだけ頂いていきましょう」
「『じゃあ』『合図は何がいいかな?』」
「お好きにどうぞ、勝手に台詞を予想して、被せてみますよ」
「『わかった』『じゃあ』『頼んだよ?』」
「『せーの』」
「《せーの》」
「《『旧スク水!』》」
****
「色々なところを回ったんですよ安心院さん」
「それはそれは、楽しい新婚旅行だったね」
「世界一周はやっちゃったので、
次は世界百周くらいでもいいかもしれませんよね?」
「そうだね、君と零くんならそれもいいかもしれない。
ところで、せっかく人が気持ちよく休んでるところに来たのかな?
姫ちゃんはそんなに無粋なことをする子じゃなかったと思うんだ」
「夕飯の献立を考えていたらそっちまで気が回らなくて……
ごめんなさい安心院さん、次は気をつけますね」
「僕に対する気遣いは零くんのための献立に負けるのか、
まぁ仕方ないね、うん、仕方ない。気にしなくていいよ」
「ありがとうございます。あ、ところでいつぐらいまで引きこもるつもりですか?」
「ああ、そのことなんだけどね、どうしようか僕も悩んでるんだよ。
時間は有り余ってるからね、まぁ向こう二年くらいはまだいいかな」
「引きこもりすぎると、兄さんが引きずりに来るかもしれませんよ?」
「うーん、じゃあ、その時は全力で抵抗してみようかな。
できないことリストがまだ一つしか無いからね」
「あ、じゃあ兄さんと含めて今のうちにもう一つ増やしてあげましょうか?」
「………いいね、おいでよ姫ちゃん。かわいがってやるぜ」
「あら、言うじゃないですか。神にそんなことを言うものじゃないですよ?」
「終わったら晩御飯僕の分もよろしく頼むよ」
「分かりました。腕によりをかけますね」
「「さて、じゃあ、久しぶりに一戦」」
****
「ただいまー」
「あ、兄さん。おかえりなさい」
「今日は洋? 和? 中華? フランスだったり?」
「えへへ、今日は、和ですよ」
「いいね。あ、そうだ。安心院さんには会えた?」
「ええ、問題なかったですよ。兄さんは?」
「こっちも問題なし。ずいぶんと元気そうだった」
「まぁ、いつも通りですね」
「うん。まぁここからはレールがないし、自由に進むだろ」
「スキルありきの世界……次は何処行ってみます?」
「そうだね、まぁ次の世界はもう少し後にしようか」
「分かりました。じゃあ、またあとで」
「うん、それじゃあ」
「……次のお話は又今度。
そうだな、次は剣がよく出てくる物語がいいかな。
はてさて、今回は一応ここで区切りとしよう」
「『終話開幕ニューゲーム』次はまた二千三百年後くらいに」
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神様と転生した主人公が
めだかで原作に入るお話
※注意※
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