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楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていく。私達は食事を取り終え、
一通り街中を回っていたら、すっかりと夕暮れ時となってしまった。
私は後ろ髪を引かれながら、逢い引きも、もう終わりかと思い目を伏せる。
「んーーーっ!!…ふぅ。もうこんな時間か」
背伸びをし時刻を気にする一刀。そしてその目は空へと移した。
「桂花。後一ヶ所、行きたい所があるんだ。
良かったらでいいんだ。一緒に着いて来てくれないか」
思いがけないお誘いだった。私は躊躇なく了承する。
まだまだ、一刀と居たいと言う機会が舞い降りてきたんだ。
逃す理由がない。
「うっし!早速行こう!!」
一刀は顔を綻ばせて、両腕に力を入れながら胸の辺りに移動し、
手に頭を付けんばかりの勢いで嬉しそうな格好をとった。
そして、私の手を取り歩き始める。
一刀を察するに私と同じく逢い引きを終わらせたくない様子に見えた。
えへへ、何だか嬉しい。
私は自然と笑みが零れ、繋いだ手を解き再度、一刀の腕に抱き着いて、
目的地に向かった。
「どう?桂花。綺麗だろ」
「うん………」
目的地に辿り着いた頃には、すっかりと夜になってしまった。
お互い火を灯す物など持ってはおらず、闇夜を照らす光は
空で輝きを主張する月と星々だけ。
少し不安に駆られるが、今日は一段と空が綺麗なので、
幻想的な雰囲気に心を昇華される。
まぁ、それと、一刀と一緒に居ると言うのが一番安心できる材料だけどね。
そうそう、私達が今いる場所は街から直ぐそこにある、森林の奥深くで、
湖と川のせせらぎが優しく溶け込む癒しの空間。
そして、何に見とれているか、それは勿論、空、ではなく水面への光。
月と星々の輝きが水面へと潜り、その光の道筋に心ときめいている。
「本当に綺麗………」
「喜んでもらえて良かった。実はこれを見せたくて逢い引きに誘ったんだ」
「…そうなんだ。こんな素敵な風景を見させてくれて、
ありがとう、一刀」
「どう致しまして」
子供の様な無邪気な笑顔を浮かべる一刀。私もまた、
素直に嬉しく一刀へと微笑む。
「ねぇ、どうやって、この場所を知ったの?」
「えっ?…うーん。その、何といいますか……」
一刀は笑顔から一転して困った素振りを見せながら、
歯切れ悪く答えを濁す。
…ははーん。成る程そういう事か。
「誰とここに来たのかしら?」
「ち、違うんだ!訓練の帰りにたまたま知って」
「だ・れ・と」
「…凪と。で、でも、本当にたまたまなんだ!
それに。ここに誘ったのは桂花が初めてで…!」
「そっか。私は凪の御下がりの女なんだ。もう、知らなーい」
「いや!それは断じて違う!!機嫌を直してくれよ。桂花~」
私は一刀に背を向け、怒った様な仕草を見せつける。
背後からは情けなく、言い訳がましい声が響き相当、焦ってるみたい。
「…ちゃんと私を見てくれる?」
「ああ!目を離さず桂花を見続ける」
「…なら許す♪」
その台詞が聞きたかった。私はクルリと反転して一刀に近づき両手を取る。
そして、覆うような形で私の両手で一刀の両手を包み込む。
「…桂花。もしかして」
「うん♪」
ふふ、気付いた様ね。そう、私は最初から怒ってなどいない。
今までの行動は全て一刀を困らせる為に仕掛けた事。
何時も私ばかり恥ずかしい所を見られてたんだもの。
私だってたまには一刀の慌てふためく姿が見たい。
「…やれやれ。桂花も人が悪いな」
「昼間のお返しよ」
「そうきますか。なら、今度はこちらの番だ。
…目を瞑って」
一刀は包み込んでいる手を離し、私の耳元に口を寄せて甘く囁く。
この一連の行動で一気に胸が高まり顔は紅潮し、らしくない返事をして目を瞑った。
「俺がいいと言うまで目を開けないでね」
これって、その、そういう事よね。い、いきなりで心の準備が……
と、取り敢えずしやすい様に顔の角度を上げた方がいいよ…ね。
って!?何を期待しているのよ!!
でもでも、この雰囲気の中でする事といえば一つしかないし、
あううううぅぅぅ……
「はい。目を開けていいよ」
もういいの!!だってまだ口付けされて……きゃっ!!顔から冷たい感触が!!
「どう、驚いた?」
「驚くわよ!一刀、貴方一体私の顔に『桂花』」
「俺からの贈り物受け取ってもらえるかな?」
一刀が私にくれたもの、それは………
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こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
心が亡くなると書いて忙しい。
……すみません、お待たせしました。
取り敢えず出来たところまで投稿します~。
展開も甘さもありきたりで、ちょっと雑かもしれませんが…。
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