No.666644

大事にしたい絆

黒兎さん

バレンタイン企画。
白鷺ユウ→黄詠鶯花
家族チョコです

2014-02-27 22:05:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:380   閲覧ユーザー数:377

バレンタイン数日前。

 

ユウは同じここのつ者である、鳶代飾のところを訪れていた。

 

理由はただ1つ鶯花に何か手作りの物を作りたいから、ここのつ者一手先が器用である飾に教えを乞いにきたのだ。

 

一番作りやすい小物の作り方を教えてほしい、と尋ねると、飾は「根付け」みたいなものがいいと相談に乗ってくれて作り方も丁寧に教えてくれた。

 

バレンタインまでの数日間、根付けの作り方を学び納得いくものが出来るまで作り続けた。

遅くまで付き合ってくれた飾には、何かお礼をしなければ、と思った。

 

ーー

 

バレンタイン当日。

茶屋で行われている。バレンタインの催し、参加してる人それぞれが思い思いの人に「ちょこれいと」という西洋の菓子を渡している。

中にはちょこれいと以外の物を渡している人もちらほら見えた。

 

と、白鷺ユウは視線を配りながら回りを眺めていた。

弓使いという特性から回りを見てしまうのはある主クセのようなものだ。

 

「(鶯花兄さん、見当たらないですね。)」

 

回りを眺めていたのは自身がちょこれいとを渡したい人物、『黄詠鶯花』を探していたからでもあった。

 

血のつながりはないが、ユウは彼を「鶯花兄さん」と呼ぶほど慕っている。

 

初めてそう呼んでみた時、鶯花がびっくりしつつも、嬉しそうな表情をしたのを覚えている。

 

何故そう呼んでみたのか、正直わからないが、自分に兄が居たらこういう人なのか?こういう人ならいい、そう漠然と思ったのだろう。

自身に血の繋がらない弟は居るが、兄という存在は居なかった。

兄弟、いや兄という存在に憧れを抱いてたのかもしれない

 

「(こうして、ここのつ者の中に馴染めてるのも、鶯花兄さんのおかげですね)」

 

バレンタインという親しい人に贈り物を渡すという催しは、鶯花に感謝の気持ち伝えるに良い機会だと思った。

 

手作りするほど料理は得意な方ではないので、既製品の「ちょこれいと」と有り合わせの素材で作った「鶯の根付け」それを綺麗に包装した箱を眺めた。

 

既製品のちょこれいとにした分、何か1つ手作りの物を渡したいと、簡単な根付けの作り方を教わり、鶯花の名前にもある「鶯」をモチーフにしたものを作った。

 

「喜んでくれたら、いいです」

 

そう呟くと、包みを大事に抱えてユウはその場を離れて鶯花を探しにいった

 

ーー

 

茶屋中を探したが、探し人の姿は一向に見当たらない。

 

「(何処に居るんでしょう?)」

 

茶屋の中に居なければ外だろうか?と疑問が過れば、ユウは茶屋の外に出てみた。

 

「あ、鶯花兄さん」

 

「ユウくん」

 

「やっと見つけました。」

 

「俺のこと、探してたんですか?」

 

「あ、はい。」

 

「それは、探させてしまってすいませんでした」

 

「いえ、大丈夫です」

 

ユウは人が沢山居る場所は正直得意な方ではない。

それでも自身を探してくれていたのだと鶯花はそれだけで笑顔になる

 

「鶯花兄さんはここで何を?」

 

「ちょっと、外の空気を吸いに」

 

「そうですか」

 

わからなくもない、茶屋の中にはちょこれいと独特の甘い香りと少しのお酒の匂いが漂っていた。

 

「ところで、何か俺に、用があるんですよね?」

 

「あ、そうでした。」

 

するとユウは鶯花に綺麗に包装された箱を差し出した。

 

「え?」

 

「僕から鶯花兄さんへの、家族チョコです。鶯花兄さんは沢山お世話になってますから、その、感謝の気持ちです。」

 

「ユウくん」

 

「これからも…兄と慕わせて下さい」

 

「も、もちろんです!ありがとうございます。ユウくん」

 

鶯花の喜ぶ姿にユウも笑顔になる

包みを受け取った鶯花はもう1つの包みに気がついた

 

「もう1つ、何かありますね」

 

「あ、僕は料理とかお菓子とか得意ではないので、ちょっとした小物ですけど、作ったんです」

 

「…」

 

「鶯花兄さん?」

 

「開けてみてもいいですかっ?」

 

「あ、はい。構わないですが」

 

ユウがそう言うと、鶯花は小さな包みを開けて、中身を取り出す。

 

「これ…」

 

「あまり上手くないですけど」

 

「そんなことないですよ。嬉しいです、ほんとにありがとうございます。」

 

「喜んでくれて、嬉しいです」

 

「大事にしますね、ユウくん」

 

「あの、鶯花兄さん。これからも…よろしくお願いします」

 

「はい、俺の方こそ、よろしくお願いしますね。」

 

血のつながりはない。

 

それでも、血のつながりを越えた何かが自身と鶯花、ここのつ者を繋いでいる。ユウはそう実感していた

 

血縁もなく、自身をここまで育ててくれた、白鷺家の両親のように。

 

此処に在る限り、皆との絆を大事にしていきたい。

 

「ほんとに、大事にしたいです」

 

「?ユウくん?」

 

「あ、独り言です。鶯花兄さん、そろそろ茶屋に戻りましょう」

 

「え?ああ、そうですね。俺も十分気分転換出来ましたし」

 

「じゃあ、戻りましょう。他の皆さんが探しにくるかもしれません」

 

「ええ、戻りましょうか、ユウくん」

 

「はい、鶯花兄さん」

 

外の空気を吸って気分転換を済ませた鶯花はユウと共に、まだ賑わっている茶屋の中に戻っていった

 

「(渡せてよかったです)」

 

少し緊張したがちゃんと渡せてよかったとユウは安堵の息を吐いた

 

 

 


 
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