No.665202

ちょこれいとと…

黒兎さん

バレンタイン企画。散々悩んだ挙げ句、小説にしました
登場人物
└土竜庵、音澄寧子、雨合鶏、鳶代飾、海原鯱、小鳥遊命

2014-02-22 11:45:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:372   閲覧ユーザー数:362

バレンタインの数日前のこと。

庵は南蛮関連の書物を開いて、チョコレイトの作り方を調べた

 

「(既製品買ってもいいけど、手作りの方がいいよね)」

 

それからは所在場に籠りきり、バレンタインまでの数日間、チョコレイトの作り方を練習した。

何度も失敗を繰り返し、形は少々歪になったものの、味は満足いくものに仕上がった

 

「あたしの腕じゃ、これぐらいが限界かな?」

 

人にあげる物にしてはどうなんだろう?と疑問が過ったが今、自分に出来るベストを尽くせたと思った

 

「チョコ以外にも、なんか用意しておこう。」

 

チョコレイトの出来が良いものではなく、チョコともう1つ何か用意しようと、作ったチョコを保存してから、町の商店へと出掛けた。

 

「(何が、いいかな?)」

 

並ぶ商店を見回りながら、ここのとこ、寒い日々が続いてるのを思い出し、自身が思う渡したい人に似合いそうな物を選んでいった。

 

「(うん、これで…よし)」

 

品を決めたあと店主に頼み、贈り物用に包装してもらい商店を後にした。

 

ーー

 

そして、バレンタイン当日。

庵はドキドキと緊張感に見舞われながらこの日を迎えていた

 

「はあ(上手く渡せるかな?)」

 

緊張しながらも会場となる峠の茶屋へと入っていき、場内の賑やかな雰囲気に更に緊張を感じながらも周囲を見渡しつつ、渡したい人の姿を探した

 

「(人、多いな。)」

 

人の多さに感じる圧迫感と「ちゃんと渡せるかな?」の緊張で庵はすでに気疲れしそうになっていたが、ふと人だかりの中にピコピコ動く白い猫耳を見つけた

 

「あ。」

 

それが誰だかわかると、そっちへ歩を向けて歩み寄っていった

 

「寧子ちゃん、ちょっといいかな?」

 

一人目の渡したい人は『音澄寧子』。声を掛けると、彼女は自分の名を呼んで笑顔になる

それだけで、庵は少し緊張がやわらいだのを感じた

 

「何か用かにゃ?」

 

「あ、うん。よかったらこれ」

 

「にゃ!庵ちゃんからにゃ?」

 

「チョコもあるけど、こっちも貰ってくれるかな?」

 

「もう1つあるのにゃ?」

 

「チョコ以外にも、何か渡したくて」

 

「ありがとうにゃ、庵ちゃん!」

 

ありがとう、その言葉に少し照れ臭くなった。

彼女からも贈り物をもらい、嬉しさから表情が緩む。

少しその場で寧子と話した後、近くに渡したい人の姿を見つけ、寧子にそれを告げるとその人物へ歩み寄っていった

 

「雨合さん、ちょっといいかな?」

 

二人目は『雨合鶏』。そんなに面識はなかったが、同じ種族の血を宿している彼に渡したいと思っていた。

 

「お?呼んだか嬢ちゃん」

 

「うん。雨合さんに渡したい物、あるから」

 

「お、嬢ちゃんもくれるのか?」

 

頷きながらチョコの包みともう1つ別の包みを差し出した。

 

「2つもくれるのか?」

 

「ここのとこ、寒いから、マフラーなんだけど」

 

「確かにな。首回りが寒いなと思ってたんだ。ありがとな、嬢ちゃん。」

 

頭を撫でられ、頬を微かに染める。

 

「喜んでもらえて、嬉しいよ。探した甲斐があった」

 

男性に贈り物を渡すのには慣れてないため、照れ隠しに帽子を目深に被る。

 

「大事に使わせてもらうぜ」

 

その言葉には頷きで返事を返した。

 

ーー

 

雨合に渡した後、丁度声を掛けられて振り返ると其処には『鳶代飾』の姿があった

 

「飾くん」

 

何かと尋ねてみれば彼からバレンタインの贈り物をもらった

 

「あたしからも、あるんだけど」

 

「ほんと!?楽しみだなー。」

 

「大したものじゃ、ないけど。」

 

2つの包みを出し、1つはチョコでもう1つは飾に似合う帽子だという説明をした

 

「庵さんありがとう!」

 

笑顔で喜んでくれてる姿に、自然と表情が綻ぶ。

自分も贈り物を貰った礼を告げて、その場を離れた

 

「(あと二人、だね)」

 

その姿を探して場内を歩いてると、ふと、視界に『海原鯱』の姿を見つけた

酒を飲んでいたのか、ほんのり頬が赤く染まっている

 

「えっと、鯱さん。ちょっといいかな?」

 

「?」

 

鯱が自身を指差すと、庵は頷いて彼女に贈り物を手渡した

 

「くれるの?」

 

「うん、貰ってくれるかな?」

 

頷いて、包みをギュッとする仕草に「かわいい」と言いそうになったのを心に押し留めた。

 

ーー

 

鯱に渡した後、庵は目立つピンク色のリボンをした彼女に歩み寄った

 

『小鳥遊命』。彼女で渡したい人は最後だ。

正直、他にも渡したい人は居たが、制限があるため仕方ない。

 

「命ちゃん」

 

「あ。どうも。」

 

「今、大丈夫かな?」

 

「はい。」

 

「これ、命ちゃんに」

 

「私に?」

 

2つの包みを渡すと、命はジッと庵を見た

 

「?(な、なんだろう?)」

 

「ありがとう、ございますっ

あの、こっちには何が?」

 

「手袋、だよ。ここのとこ、寒いから、ね。」

 

「大事にしますっ」

 

笑顔になる彼女を見て、庵も表情を綻ばせた。

 

 

渡したい人全員に渡した後、楽しげな雰囲気の中様々なチョコの渡し合いと、参加者達のやり取りを眺める事にした。

 

 

「庵ちゃーん」

 

「え?寧子、ちゃん?」

 

「何で一人で居るのにゃ?みんなで楽しむにゃ!」

 

「え、え?」

 

「早く行くのにゃ!」

 

寧子に腕を引かれて、賑やかな輪の中へと入っていく、最初はちょっとした戸惑いがあったが、接してくれる人達と話していくうちに、次第に戸惑いは薄れ、その中に溶け込んでいった。

 

 


 
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