前回までの仮面ライダーサカビト。
代々木悠貴は悪の科学者に洗脳・改造され、“仮面ライダー”を殺害してしまう。
その後、紆余曲折を経て代々木は改造人間サカビトを名乗り、V3と激闘を繰り広げるが、圧倒的なV3の力と技の前に敗北を喫する。
一方、異世界からひとりの少年が調査のために次元を超え、やって来ていた。
「ここでも…なさそうだね」
どう見てもただの高校生なのだが、ただの高校生がこんな所にいるはずもない。
彼、前杉士樹が居るのは、“何か”の機械が周囲を埋め尽くしている工場。
なにをしている機械なのかわからない。大きな機械が小さな部品を無数に生み出してる。その妙なフレーム…ディケイドライバーの部分品。立ち去ろうとする士樹は背後に感じる気配に足を止めた。
振り返ることはない、ディケイドライバーの光沢が鏡となり、後ろの男たちの姿を確認できる。
「なんだぁ…? ベルト工場に忍び込んだ奴って…お前かァ…?」
現れたのは、その腰にディケイドライバーを巻いているふたりの疑似ライダー。
レプリBLACK・RX、レプリスーパー1・スーパーハンド。レプリディケイド三人衆の内のふたり。
「あなた方はこの世界の…仮面ライダーですか?」
「それは違う。俺たちはレプリジン・ライダー、複製品さ…本物以上の、な」
「ゆっくりとこっちを振り向いて下さい、ゆっくりとです」
「分かりました」
素直に向き直った高校生の手元には、怪しく光るハンドガン。
だが拳銃というには不適切、手持ちの銃ではあるが、弾倉のあるべき場所にカードのリーダが備わっている。
「それは…!?」
「ゆっくりとお見せしましょう、僕の…変身ッ!」
【
現れたのは青…いや、蒼の戦士。
大きなディメンジョンアイズ、変わらず手の中にあるアクエリアス・ドライバー。
異世界の戦士、仮面ライダーアクエリアスだ。
「…ああ? なんだよ、てめえも複製品…レプリディケイドか?」
「純正品だよ。まぎれもなく、ね」
挑戦的な士樹の言葉を合図に戦闘が始まったが、口火を切ったのはアクエリアスではなく、レプリスーパー1でもレプリRXでもなかった。
【
真後ろから合成音声と一緒に飛んできたキックに引きずられるようにしてアクエリアスは工場外へと吹き飛ばされていた。
弾き飛ばしたのは、赤青黄の信号機ライダー、レプリオーズ・タトバコンボ。RXやスーパー1も続いて外に出る。
「オイオイ! 殺すなって風見さんが云ってただろ!? どこから来たのか分からねーだろ!!」
「…気づけ。手加減してた戦える相手ではない。それにまだ終わっていない」
【
タトバキックの土煙の中にライダーはふたり。
ひとりは当然アクエリアスだが、もうひとりはタトバキックの盾となった仮面ライダーガイがその場に崩れ落ちる。
これこそがアクエリアスがディエンドから受け継いだ能力。カードに封印されたライダーの力を引き出し、戦力として使う。
「今度はこちらから行かせてもらおう」
慇懃な態度から変わり、強気な語調に変わるアクエリアス。戦意高揚。
【
続いて現れたのはアクエリアスとは対照的な赤い銃を備えたライダー。
カードに召喚されたギャレンもまた、3枚のカードを連続して読み込ませる。
【
呪文のようにカードリーダーが読み上げる。
ギャレンはカードを戦力に使うライダーであり、その必殺技は双子座の名を持つカードによってギャレンがふたりに分裂する所から始まる。
「だったら、俺たちも…!」
レプリジンライダーたちも引き続いてベルトにカードを装填、響き渡るファイナルアタックライドの音声。
【
電子音声を掻き消す、もうひとつの電子音声。
先ほど盾となり、タトバキックからアクエリアスを庇ったガイが使ったカード。
他のカード効力を打消す、カードライダー最大の天敵。
「っだ、ちょ、っは!?」
ギャレンのホエール・ドロップの効力がここで発動し、ふたりのギャレンとアクエリアスが三人揃って空中へと飛び出す。
カードの効力を掻き消され、無防備な三人の疑似ライダーにこれを防ぐ手段は存在せず、三人揃ってドロップ・キックによってベルトを破壊され、変身が解除された。
「こんなもん、かな?」
「そんなもんだろうな、そいつらじゃァな」
余裕綽々といったアクエリアスの背後、工場からゆらりと現れるひとりの少年。
先ほどタトバキックで開いた穴から窮屈そうにして出てきた彼の腰には、レプリジン・ディケイドライバーが巻き付いている。
「…君もレプリジン・ライダーか?」
「俺は工藤刹那、そして…こんな代用品だが…」
彼は手慣れた様子で、独特なポーズで腰のバックルにカードを装填する。
【
現れたのは、清廉なる白騎士。
仮面ライダー・ゲイザー。異なる世界で風都を守る若き戦士。だがしかし、その両目は抑えられない激情が溢れていた。
「俺は仮面ライダーゲイザー。お前のドライバーはD2シリーズだな? 頂くぞ」
ゲイザーの声に闘志が籠る。
仮面ライダーゲイザー=工藤刹那は以前の戦闘で次元を超越し、この世界へとやって来た。
だが、その戦闘によってオリジナルのゲイザードライバーは大きく破損してしまった。
次元移動能力を失い、元の世界へと帰る術を失った。
守るべき街も、愛する人も、共に戦う仲間も、全て置き去りにしてしまった。
錯綜する感情は激情を呼び、マスクを歪めていた。
仮面ライダーゲイザー・激情態。
「…これは怖いね。もう1枚、使わせてもらうよ?」
【
アクエリアスドライバーから現れたのは金色の獅子を思わせる仮面ライダー。
この次元は2010年。レプリライダーたちも見たことのないのは当然で、このビースト=仁藤攻介が仮面ライダーを名乗るのは2年後であるはずなのだ。
しかしながら、このビーストは仁藤攻介の変身したものではなく古代の変身者…みなまで云う必要がないので割愛するが。ビーストだけに。
【
ビーストは腰のホルダーから素早く指輪でフォームチェンジ、右肩に野牛の力を宿す怪力形態。
並の怪人ならば体当たりだけで粉砕するだけのパワーも有る。だが闘志を剥き出しにしたゲイザーは意にも介さず、正面から殴り掛かる。
「うおぁルァア!」
果敢に殴り掛かるゲイザーだが、カードが再現したビーストの戦力はパワーだけではない。無数のファントムを喰らった体捌きによってその一撃を受け止め、ゲイザーを転がすように投げ飛ばす。
弾き飛ばされたゲイザーも痛みを感じていないかのようにノーモーションで立ち上がり、既に両手に新しいカードを構えている。
【
【
召喚された凶悪なふたつの武器に、ビーストは反射的にバッファローマントで武装した右肩を前に出す。だがマントはエターナルエッジによって切り裂かれ、続くハーメルケインの殴打がビーストを一撃で昏倒させた。
アクエリアスももちろんただ見ているだけではない。銃型変身装置の利点を生かした連射をゲイザーに叩き込む。
「しゃらくせぇ、ってヤツだな。こいつはよぉォ!」
ゲイザーは被弾しながらも大部分の弾丸を撃ち落とし、次のカードを使う間を与えまいとアクエリアスへと突撃する。
だが、それもアクエリアスの計算の内。アクエリアスドライバーからの弾丸を受け、ハーメルケインもエターナルエッジも消耗が大きい。
攻撃に移る寸前、ゲイザーは次の武器を実体化させるはず。その間隙を利用してカウンターでアクエリアスがまだ実体化しているビーストを使ってファイナルアタックライドを叩き込む。
――だが、鈍い痛みがアクエリアスの頭部を揺さぶった。
殴った。
武器を手放すこともなく、折れたナイフを握ったままの拳で、強引にアクエリアスの頭部に叩き込む。
対して効きはしない。殴りかかるという攻撃手段自体、カードで武器の補充が容易なゲイザーの設計セオリーからは外れた戦術なのだ。
「あまり、侮るなよ!」
アクエリアスも素早く引き金を絞り、弾丸を放つ。
至近距離から外しようがない連射、狙いは腰に巻かれたレプリディケイドライバー。
弾丸は一発ごとにベルトを削り、内面のパーツが剥き出しになるのに大した時間は掛からない。
ゲイザーが何発か殴ったところで、レプリディケイドライバーが破損・変身が解け、超次元カードバインダー、ライドブッカー2もベルトと同時に放り出される。
「まだだァァァッ!」
ベルトが砕けると同時に、刹那は背部に巻いていたベルトをずり下げるようにして腰に持ってくる。
――レプリジン・ディケイドライバー。量産型であることを利用し、刹那はもう一本装備していた――
ゲイザーのカードを入れ直し、刹那の激情の表情は、再び仮面ライダーゲイザー激情態へと変わる。
「それが奥の手か、だがな!」
ゲイザーの手元にはライドブッカー2が無い。瞬間移動で手元に戻すこともできるが、それでもタイムラグが生まれる。
殴られた頭部は痛みで熱くなっているが、頭の芯はしっかりと冷えている。それが前杉士樹だった。
【
「俺は、帰るんだっ…翔兄ィ、リイン…」
ゲイザーの手元にはカードはない。だがしかしひとつの指輪が握られている。
先ほど引き倒したビーストの装着していた指輪。ゲイザーはそれを密かに奪っていた。
指輪がカードへと姿を変える。
レプリジンディケイドライバーは、即座にそのカードを読み取った。
【
アクエリアスの放った“光”はギャレン・ガイ・ビーストをエネルギーとして吸収し。猛烈なスピードでゲイザーに迫る。
が、ゲイザーは当たる寸前で空中へと跳ねた。
普段のゲイザーのフィニッシュブローではない、ビーストのキックストライクに酷似したドロップ・キックが、アクエリアスの胸板を叩いた。
「う、ぐっ!?」
「…イカロォオオオオオオオスッッ!」
ゲイザー=工藤刹那の愛する女性の名前の絶叫とともに、仮面ライダーアクエリアス=前杉士樹は倒れ伏した。
ある独房の中、手錠に足枷という姿で口以外には動かせないふたりの少年。
「…で、今に至るってわけさ」
レプリディケイドたちのアジトの独房の中。
前杉士樹=仮面ライダーアクエリアスは、改造人間サカビト=代々木悠貴に自分の顛末をこと細かく話していた。
「話は半分も分からなかったが…次はリベンジだな、それなら」
「ああ。彼にも事情はあるんだろうが…僕も帰らなければならない。アクエリアスドライバーは取り戻す」
そう、今、士樹の元には変身銃=アクエリアス・ドライバーはない。
D2シリーズと呼ばれるアクエリアスドライバーには所有者の元へと帰還する瞬間移動能力があるが、それも機能していない様子だった。
士樹は、その理由がゲイザーの戦闘動機によるものだと推察していた。
――俺は帰る!――
――こんな代用品だが――
――イカロォオオオオオオオスッッ!――
発言からして、彼は“どこか”から来て、そして“なんらかの理由”によってベルトが使用できなくなった。
同種のドライバーを持つ士樹ならば、“どこか”が異世界であり、“なんらかの理由”がベルトの破損であることは容易に推測できる。
ゲイザーの男は自分の世界に帰るため、ゲイザードライバーの修理用のパーツとして、アクエリアスドライバーを奪い、そして恐らく分解され、パーツを抜かれようとしている。
その気持ちは、理解できる。
ドライバーを奪われた今、士樹も完全に同じ気持ちだからだ。愛する者たちを残してきたことへの焦燥、離別への恐怖、そして自分のために他人を犠牲にする正当性を探す自分への嫌悪。
ゲイザーの男は、その葛藤の中で愛が勝った。何が有ろうとも帰らなければならない、その愛への激情が彼を狂わせた。
「アクエリアスドライバーのセキュリティをあいつらが突破するまで時間が無い…悠貴、なんとかならないか? この手錠?」
「あ? なんだ? 別にこんな手錠はなんでもねえだろ。変身しなくてもよ」
「…え?」
平然と云い切る悠貴に、眉をしかめる士樹。
「お前、手錠付けられたことねえのか? お巡りさんに付けられるだろ?」
「…いや、ないだろう」
「喧嘩とかして何人か殴ると、何時の間にかパトカー居たりしねえ?」
「ないない」
「変わってンなあ、別の世界の人間だしな」
「そうか…? この世界の人間は…みんな、そうなのか?」
「当然」
多大な勘違いを生みそうになっているが、その勘違いを是正する人間はこの独房の中には居ない。
さて、当の悠貴は、両手の手錠に意識を向ける。
「…ッセイイィイイ」
悠貴は深く息を吐き、全力で拳を左右に広げる。手錠の鎖がジリジリと妙な音を立てる。
「って、力技っ?」
「かぁあああー…見てろ、見てろぉ、見てるぉッ!」
切れるわけがない、そう云おうとした士樹の言葉を遮ったのは、あっけない音。
手錠のチェーンが切れた。アッサリ。
真っ赤な顔で肩で息をしつつ、代々木悠貴はニヤリと笑う。
「ウソ、だろ?」
「…だぁー! どうだぁああ! そして行くぞ! 変ンンン身っ!」
変身した悠貴は、動くようになった両手で悠然と変身ポーズ。
風と共に戦士へと姿を変える悠貴を見て、士樹はサカビトというシステムの概要を理解していた。
この改造体は、変身に道具を必要とせず、体に移植された取り外せないベルトだけで変身できるが、変身にはポーズが必須であり、両腕が使えなければ変身はできない。
今の悠貴の動きを見逃さない洞察も、ベルトを取り外さず、そのまま手錠だけで幽閉していた事実からの推理、これらもまた仮面ライダーとしての資質といったところだろう。
「さてと、どうする? ドアを蹴破ってジャンプして出るヤツにするか? 殴って壊してポーズ決める? 俺としては瓦割るみたいにヘッドバッドがオススメだ」
「…どれも素敵だと思うけど、まずはこっちの手錠を――」
言いかけた所でドアが外側から爆発した。
転がるように壁に叩きつけられたのは、仮面ライダーZOのレプリディケイド。見ている間にベルトは砕け、変身解除。
ドアの外には、見覚えのない詰襟の白いスーツ姿の男。
「これは…? NEO ZECTはレプリディケイドだけではなく、改造人間も作っていたのか…?」
急展開に対しても士樹は冷静だった。
ZECTという名前は聞いたことが有り、かつ先ほど悠貴からV3Dという仮面ライダーに擬態した地球外生命体=ワームの話も聞いていた。情報のピースが揃ってくる。
次はこの詰襟の白服男の正体を知るために、どう質問すれば良いか。そんな逡巡する間、悠貴=サカビトの両手が白服の男の胸倉を掴んでいた。
「悠貴! その人、V3Dの仲間じゃ無さそうだ! まずは話を聞こう!」
「もう聞いた!」
「…え?」
「俺はよ、変身すると耳がやけによく聞こえるようになるんだ」
そのとき、変身していない士樹の耳にもハッキリと聞こえた。戦闘の爆発音と衝撃が空気と独房を揺らした。何かが起きている。
「…ユーキさん、V3Dを知っているなら話は早い。
あいつはワームです。何年か前に存在を公表されていたでしょう?
その怪物がZECTという組織の設備や資金を使っていたので、私たち“財団”が退治に来たんだ。この手を放して下さいませんかねぇ?」
恐らく、嘘は無いだろう――士樹はそう判断していた。
士樹の知る世界ではZECTという組織はワームとの関りが深く、NEOという名前からして、壊滅したZECTの資材を使ってV3Dが率いている組織がNEO ZECT――そう考えるのが妥当。
だが、相も変わらず悠貴は気に留めない。手も離さない。
「今からお前を殴る。歯を食いしばれ」
「人の話を聞かない人は…馬に蹴られて死んでください」
白服男が手品のように指を鳴らすと、その手の中には緑色の小箱が表れている――ガイアメモリだ。
【
ガイダンスボイスが小箱から響き、男は自分の首筋にガイアメモリを差し込む。
どうなるか? この小さな長方体は人間の肉体に吸収され、その名の通りにユニコーンの記憶を地球から呼び出し、人間の肉体に表現する。
すなわち、この男のように額に角の生えた馬顔の怪人となるのだ。
「よお、士樹よお…やっぱり、蹴りとかパンチでドアを壊しちゃ…マズいよな」
『え?』
士樹とユニコーンの声が重なった次の瞬間、ユニコーンはただの馬になった。
アイデンティティである角を、サカビトの頭突きで圧し折られて。
「瓦を割るみたいによ、頭突きって…カッコいいよな」
胸倉を放さず、そのまま続けざまにヘッドバッド。
ユニコーンの男…というか、馬面怪人は何か喚き散らしているが、サカビトは三発、四発と意にも介さない。
無言で繰り出される頭突きは、ユニコーンのメモリが耐用限界を超えてメモリブレイクするまで続いた。
「…悠貴、どうした?」
「云っただろ。変身すると耳が良くなるってよ…どっかから聞こえるんだ」
話しながら既にサカビトは走り出している。
ドアを見つければパンチで壊し、行き止まりでは壁を蹴破り、時には天井を頭突きで叩き割って上に跳ぶ。
辛うじてだが、士樹もその移動に追走し、途中からサカビトの走っている理由を知った。
「うちの“財団”の人間ではないな、何者だ? V3Dの仲間か?」
十数人の白い詰襟集団と、倒れ伏した何人ものレプリディケイドの中で奮戦するゲイザー激情態。
そしてさっきからサカビトの超聴覚に届いていたサインの音源たちが“居た”。
「子供…?」
視線の先には、泣きじゃくる子供たち。
危険への恐怖、守ってくれたレプリディケイドたちの血の匂い、白服たちの殺気に中てられてパニックに陥っている。
だが、そのことよりも士樹が驚いたのは、その内の何人かは顔にステンドグラスのような文様が浮かび上がったり、中には小さいが灰色の怪人になっている者も居る。
ファンガイアやオルフェノクといった、先ほどの悠貴の話では、V3Dやレプリディケイドたちが駆除しているはずの人種たちだった。
「…保護していたのか…? レプリディケイドたちは、この子たちを…?」
「気付くのが遅いんじゃないかな、アクエリアスの人」
「そんなことはどうだって良いんだよ」
士樹が状況の把握に努める中、サカビトは拳を構える。
ボクシングや何かではない、拳を固く握って胸の前に置くという喧嘩殺法の構えだ。
「おい、改造人間。状況が分かってないようだから云っておくぞ。俺たち“財団”は人間だ。お前と同じで体を改造してる奴も居るが、この子供の姿をしているバケモノとは――」
「お前たちだよな? ガキどもを泣かせたのは?」
「だから、こいつらは人間じゃないと…」
「そいつらは泣いて助けを呼んでいた。仮面ライダーを呼んでいた。だから…俺が来た」
独房の中からずっとサカビトが聞いて居たのは、この人ではない子供たちの悲痛な叫びだった。
サカビトは走った。風よりも速くと祈りさえした。人生の中でバイクが手元にないということにこれほどまでの憤りを感じたことはないほどに。
全て子供たちの視線が云っている。助けが欲しいと。誰かに助けてほしいという思いが浮かび上がっている。
「仮面ライダー? 風都のアレか? お前もそこのゲイザーと同じ仮面ライダーなのか?」
「違う。仮面ライダーは子供を庇って俺に殺された。俺は仮面ライダーを殺して生き残っちまったマヌケだよ」
なんだこのバカは、という嘲笑が“財団”の白服たちの間に広がり、その醜悪な笑顔が次々と怪人へと変わっていく。
ガイアメモリ怪人:ドーパント、人造進化生命体:ミュータミット、星の力を顕現させたゾディアーツ、異世界の力を宿した怪物:フォルスなど。
部屋の中を埋め尽くすばかりの怪人は、総勢十五体ほど。
「足りないな。俺は仮面ライダーを殺した改造人間サカビト! お前らなんざ百体居たって…俺には勝てねえ!」
怖くないはずない。この前まではただの高校生だった男が、こんな状況で恐怖を感じないはずはない。
それでも、己の恐れや涙をペルソナで覆った戦士となり、風のようなマシンと共に駆けつけ、子供たちの涙を拭うためだけに戦おうとする。
その姿を、その精神を、その思いを、少なくとも士樹は“仮面ライダー”と呼んでいた。
「じゃあ、三〇〇人必要ってことですか? アクエリアス!」
ゲイザーは腰に携行していたアクエリアスドライバーを士樹へと投げ渡す。
それと同時にゲイザーのレプリディケイドライバーが限界を迎え、粉砕・変身が解ける。
「…良いのか?」
「後でもう一回、奪い返してもいい。まずは“こっちの世界の”財団Xを叩き出す! こっちの翔兄の分も!」
ゲイザーは背中に巻いていた予備ベルトを腰部に回し、アクエリアスはカードバインダーを召喚する。
そしてそれぞれに自らを象徴するカードを取り出し、カードリーダーに読み込ませる。
『変身っ!』
【
【
並び立つ、緑のサカビト、蒼のアクエリアス、白のゲイザー。
「…ちょっと色合いが地味ですかね…?」
「そういうときは敵の血反吐で赤色だぁ!」
「仮面ライダーのセリフじゃないな、それは」
三色ならば、負ける気しないはず。
サカビトたちが激闘を始めようとする中、すでに激闘の中にいる戦士、仮面ライダーV3D。
最強クラスのライダーであるV3の精神力と力に加え、ワームのクロックアップを習得しているV3Dだが、敵を倒しきれずに居た。
アジトを襲撃されている情報を知りながらも、V3Dは敵を倒しきれず、ただ仲間たちからのコールサインを受け続けていた。
「やりますね。さすがはデルザー軍団を壊滅させた七人ライダーの能力を受け継ぐだけのことは有る」
その言葉を発した怪人の腰には、デルザーを表す蛇のエンブレムが輝いていた。
元ネタ解説劇場。
タトバキックで倒せない
>まあ、オヤクソクですな。 レプリオーズでもトドメ技にはなりません。
合体技だったり連携だと違うんですけどね。
…あれ? 今回はこれだけか?
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全仮面ライダー映像作品を同じ世界観として扱い、サカビトを中心に各々の謎を独自に解釈していく。
サカビト=代々木悠貴は改造人間であるが、仮面ライダーではない。
仮面ライダーを倒すために悪の科学者によって拉致・改造され、子供を庇った仮面ライダーを殺害してしまった一般人だ。
人々から英雄を奪った罪を贖い、子供たちの笑顔を守るため、サカビトは今日も戦うのだ。