No.662171

英雄伝説~光と闇の軌跡~(番外編) 語り継がれなかった軌跡

soranoさん

外伝~”嵐の剣神”誕生秘話~後篇

2014-02-10 16:50:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1743   閲覧ユーザー数:1662

 

~東クロスベル街道~

 

「(こうして対峙しただけでもわかる……ユン老師―――いや、それ以上の相手だ!)風よ、我が力となれっ!!」

セリカが無意識にさらけ出している膨大な威圧をその身に感じ取るアリオスは最初から全力で戦う為に気功技――――軽功によって風の力を己の身に宿した。

「なっ!?戦闘開始早々アリオスさんが気功技を使うなんて……!?」

「アリオスさんが全力で警戒する程の相手なのか……」

最初から全力でセリカと戦うつもりのアリオスの行動を見たリンは驚き、ヴェンツェルは真剣な表情になり

「フェミリンスの件といい、エステル、お前は一体どうやってあんな”格上”と同等に接する事ができる上、その本人達もその事を当然の事と受け止めているんだ……?」

「アハハ、自分でもわかんないわ。」

「フフ、貴女らしいですわ。」

スコットに疑惑の目で見つめられたエステルは苦笑いし、フェミリンスは微笑みながらエステルを見つめていた。

「クッ………さすがはこんな可愛い二人を侍らしているだけはあるわね……!」

「というか普通に疑問なんじゃが……」

「どうしてエオリアさんは私達を抱きしめながら観戦しているんですか?」

エオリアに左右にそれぞれ引き寄せられて抱きしめられているレシェンテは呆れ、リタは苦笑しながら疑問を口にした。

 

「そんなの2人が可愛いからに決まっているじゃない!!特にリタちゃんとはまた会えるなんて、本当に嬉しいわ♪しかも新しい可愛い娘と一緒に来るなんて!エステル、よくやったわ!」

「ア、アハハ………リタはたまたまクロスベルにいただけだし、レシェンテまで来る事は予想していなかったから褒められても困るんだけどなあ……」

「アナタねえ、少しはその性格を何とかできないの?」

目を血走らせて叫んだエオリアの様子にエステルは冷や汗をかきながら苦笑し、ミシェルは呆れた表情で溜息を吐き

「ミシェル!レシェンテちゃんとリタちゃんは絶対に!私達のサポートよ!」

「絶対にお断りじゃ!わらわ達の身が危なすぎる!」

「アハハ……”幽霊”の私を怖がらず普通の人達に接する態度と同じ態度で接してくれる事は嬉しいですけど……さすがにこれは困りましたねえ。」

そしてエオリアの叫びを聞いたレシェンテは身体を震わせながら叫び、リタは冷や汗をかきながら苦笑していた。

 

「二の型――――疾風!!」

一方気功技で自らを強化したアリオスは電光石火の速さでセリカに先制攻撃をしかけた。東方独特の剣――――”太刀”の刃がセリカに迫ろうとしたが

「沙綾――――身妖舞!!」

刃が自分を襲う瞬間、セリカはまるで舞うかのような動作で高速に剣を振るってアリオスの太刀を受け流すと共に攻撃した。剣の軌跡すらも見えない6つの斬撃の内の一つはアリオスの太刀での攻撃を弾き、残りの5つの斬撃がアリオスを襲ったその時、アリオスは全て受け流す為に高速で太刀を振るってかけぬけたが

「グッ!?」

全てはさばききれず脇腹、足、腕からそれぞれ血を噴出させた!

「なっ……なんなんだい、今の攻撃は!?」

「たったあれだけの攻防でアリオスさんが3回も攻撃を受けた……!?」

「俺には剣を一振りしたようにしか見えなかったが………あの一振りによって一体どれほどの数の斬撃が放たれるんだ!?」

攻撃を受けたアリオスの様子を見たリンとスコットは混乱し、ヴェンツェルは信じられない表情でアリオスを見つめていた。

「雷光――――地烈斬!!」

続けて放ったセリカの雷を宿した衝撃波は地面を雷撃と衝撃波によって破壊しながら高速でアリオスを襲い

「ハアッ!!」

アリオスは太刀に闘気を纏わせて跳躍して回避し

「―――大雪斬!!」

上空からセリカに太刀を振り下ろした。

「紅燐――――舞華斬!!」

「!?」

上空からの攻撃に対抗する為にセリカは一瞬で剣に膨大な闘気を溜め込んだ後、上空から襲い掛かる太刀に対し闘気を溜め込んだ剣を横に振るってアリオスを吹っ飛ばし

「ハッ!」

吹っ飛ばされたアリオスは空中で受け身を取って地面に着地した。しかしその時

「―――風よ、吹き荒れろ。大竜巻!!」

魔力が込められたセリカの声に呼応した大気中に漂う魔力がアリオスを中心とした天をも貫くほどの竜巻が発生し、アリオスは竜巻の中に封じられた!

「………………ハァァァァァァァァ――――――――――――ッ!!」

竜巻の中心にいるアリオスは竜巻によるダメージをその身に受けながら精神統一をして太刀に膨大な闘気を纏わせた後、自ら一回転して太刀を振るって竜巻を打ち消した!

 

(ほう、やはり”本物”は違うな。)

「―――なるほど。”風の剣聖”の異名は伊達ではないという事か。」

竜巻を斬撃によって破壊される様子を見ていたハイシェラは感心し、セリカは静かな口調で呟き

「ふふっ……そういうセリカ殿の剣はあまりにも”人間離れ”し過ぎている………”風”よりも早いその剣はまるで”嵐”と言った所か………”神”の如き圧倒的な力にて敵対する者を蹂躙する事からして”剣神”と呼ぶべきかもしれんな………」

アリオスは静かな笑みを浮かべてセリカを見つめた後太刀を一端鞘に納めて抜刀の構えをし

「―――だが、我が風の刃は全てを切り裂く!風巻く光よ、我が剣に集え!」

抜刀した瞬間膨大な闘気と風をその身に纏わせた!

 

「………おおおおおっ!」

そして風と闘気をその身に纏うアリオスはセリカに突撃して無数の斬撃を解き放ち

「枢孔――――身妖舞!!」

対するセリカも舞うかのような動作で超高速に無数の斬撃を解き放ってアリオスの攻撃を相殺し

「奥義――――風神烈波!!」

「雷光――――滅鋼斬!!」

膨大な風と闘気を纏わせた太刀と膨大な雷と闘気、魔力を纏わせた剣の刃がぶつかり合い、二人を中心とした場所に凄まじい衝撃波が発生した!

 

「グッ………!?」

奥義を放ち終えたアリオスは太刀を通じた電撃をその身に受けて身体の動きを鈍くして怯み

「―――中々やるな。ならばこちらも見せてやろう。”飛燕剣”の究極奥義の一つを。枢孔―――――紅燐剣!!」

そしてアリオスから距離を取ったセリカは剣に膨大な闘気を纏わせて一振りした。セリカの一振りによって発生した無数のセリカの分け身達が超高速で疲弊しているアリオスに襲い掛かった!

「な―――――」

たった一振りによって発生した無数のセリカの分け身達を見たアリオスは絶句し

「秘技――――裏疾風!!」

すぐに気を取り直して攻撃の対処の為に電光石火の速さで自分に襲い掛かるセリカの分け身達を回避しながら分け身達を攻撃して消滅させていたが、セリカの分け身達のスピードはあまりにも早く数が多いため次々と攻撃の最中に傷つき

「斬!!」

残る力全てを振り絞って凄まじい斬撃波を放って分け身達全てを消滅させたが

「グッ………まだまだ未熟………」

疲労によって地面に膝をつき

(うむ。まあ、ここまでできれば人間としては上出来な部類だの。)

「………………………」

戦闘続行が不可能なアリオスの様子を見たセリカは静かに剣を鞘に納めた。

 

「……………………」

二人の戦いを見ていたミシェルは口をパクパクさせて絶句し

「な、何なんだい、最後のあの攻撃は!?」

「たった一振りで無数の分け身達を発生させた挙句全てを目標に放つ………あんな人間離れした技も剣技なのか!?」

リンとスコットは驚きの表情で声を上げ

「嘘………あのアリオスさんが一太刀も浴びせる事ができずに敗北するなんて………」

「あまりにも圧倒的だな……あれ程の戦いをしたというのに息も全く乱れていないぞ………」

エオリアは呆け、ヴェンツェルは重々しい様子を纏って呟いた。

「本当に手加減したのかしら?最後のアレって結構本気で攻撃したんじゃないの??」

「ど、どうだろうね?」

「セリカさんの場合だと手加減していてもミント達から見たら本気としか思えない攻撃だもんね……アハハ………」

「間違いなく、手加減はしているでしょう。もし”神殺し”が本気で攻撃していたらあの人間は全身塵を残すことなく切り刻まれて絶命してしまいますわ。」

セリカが放った最後の剣技を知っているエステルはジト目になってセリカを見つめ、エステルの推測を聞いたヨシュアとミントは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、フェミリンスは静かな表情でアリオスを見つめ

「ま、当然の結果じゃな。」

「フフ、さすが主ですね。」

レシェンテとリタはそれぞれ口元に笑みを浮かべてセリカを見つめていた。

 

「ハッ!エオリア……じゃなくて、フェミリンス!お願いだからアリオスの傷をすぐに回復してあげて!」

「―――わかっていますわ。――――大いなる癒しの風!!」

そして我に返ったミシェルの指示に頷いたフェミリンスは傷ついたアリオスに治癒魔術を放ってアリオスの傷を完全回復した。

「ハア、アリオスを軽く超える強さの人をサポートに付けたら逆にサポートを付けられた遊撃士達が足手纏いになる気がしてきたわ………」

「だからセリカ自身も言ったじゃろうが。セリカ自身を主体に行動させた方が効率がいいと。そしてセリカの補佐をできるのはエステル達を除けばわらわとリタだけじゃ。」

疲れた表情で溜息を吐いたミシェルの推測を聞いたレシェンテは呆れた表情で指摘した。

「そう言えばさっきから気になっていたのだが………二人ともそんなに強いのか?」

「そっちの幽霊の嬢ちゃんの強さは以前の”怪物”事件で知っているけど………それでもあたし達と同じぐらいのレベルと思っているんだけど。」

レシェンテの指摘を聞いたスコットとリンは不思議そうな表情でレシェンテとリタを見つめた。

 

「フフ、あの時は”かなり”手加減していたんですよ?」

「ちなみにリタは”リベールの異変”での時、ジンさんと一緒にヴァルターを相手に戦って無傷で勝利していますよ。」

「なっ、ヴァルターってまさか!?」

「リンや”不動”と同門であった”結社”の”痩せ狼”か!」

「レ、”執行者(レギオン)”を相手に無傷で勝利って……ありえなくねえか?」

ヨシュアの話を聞いたリンは驚き、ヴェンツェルは目を見開き、スコットは表情を引き攣らせ

「何を言っているのよ!?リタちゃんはすっごく可愛いのだから強くてもおかしくないわ!」

エオリアは真剣な表情に叫んだ。

「どういう理屈じゃ………」

「ア、アハハ………」

エオリアの叫びを聞いたレシェンテは呆れ、リタは冷や汗をかいて苦笑していた。

 

「まあ、その娘の強さに関してはリベール各支部からも報告を受けているからそれでいいとして……レシェンテだったかしら?随分自分の実力に自身があるみたいだけど………よければみせてもらえないかしら?」

「よかろう!”神”であるわらわの力に驚くがよい!」

「ハアッ!?」

「なんだって!?」

「き、君もセリカさんやフェミリンスさんのように”神”なのか………!?」

「なるほどね!レシェンテちゃんは”神”クラスと言ってもおかしくない可愛さだもんね!」

「……一人ほど、戯けた事を口にしているが……まあいいじゃろう。」

自分の発言に驚いているリン達の中で唯一予想とは斜め方向の言葉を口にしたエオリアに呆れていたレシェンテは気を取り直して詠唱を開始した。

 

「天光満る所に我はあり!黄泉の門開くところに汝あり!出でよ!神の雷!」

レシェンテが地面に巨大な魔法陣を発生させて両手を空へと掲げると、晴れていた空に雷雲が発生して太陽を覆い、その場を暗くした!

「なっ!?」

「さっきまで晴れていたのに急に雲が……!?」

「―――いえ、あれは雷雲よ!」

「………まさか。”神”は天候まで変えられるのか……?」

急に暗くなった空を見たミシェルとリンは驚き、エオリアは真剣な表情に叫び、アリオスは目を見開いてレシェンテを見つめていた。そして雷雲からすざましい雷を帯びた巨大な大剣から現れ

「力の違いを見せてやろう!インディグネイト・ジャッジメントッ!!」

そして大剣が何もない地面に落下した瞬間、その場に大地震を起こした後クロスベル自治州全体にまで轟かせるほどの轟音を立てると共に街道全体を照らすほどの閃光が走り、さらに雷雲から雷が雨のように降り注ぎ、全てが終わると空は晴れ、大剣が落ちた場所には焼き焦げた跡を残した巨大なクレーターが出来ていた!

 

「………………………」

レシェンテの圧倒的にして超越的な力にミシェル達は絶句し

「こら―――――――――――ッ!幾ら何でもやりすぎよ、レシェンテ!!クロスベルに住んでいる人達がビックリするでしょうが!?」

「少しは加減しろ。」

エステルはレシェンテを睨んで怒鳴り、セリカは呆れた表情で指摘し

「いや、間違いなくみんな驚いているから。」

「クロスベルの人達、混乱していないといいんだけどね………」

「急に空が暗くなった後あれ程の大地震や轟音が起これば普通ならば驚きますわ。」

エステルの言葉を聞いたヨシュアは疲れた表情で指摘し、ミントは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、フェミリンスは呆れた表情で指摘した。

 

「ハ、ハハ………た、確かにこんなのもう、どう考えても”人間業”じゃねえな………」

「それどころか現存の兵器でもこんな事ができないよ………」

「まさに”神”の所業だな………」

そして我に返ったスコットは表情を引き攣らせ、リンは疲れた表情で溜息を吐き、ヴェンツェルは重々しい様子を纏ってレシェンテを見つめていた。

「…………………………(彼らがこのままクロスベルに滞在し続ければ”碧き零計画”の最大の障害として立ちはだかるかもしれないな………)」

「ハア………もう、歩く”天災”と言ってもおかしくないじゃない。今のを見たら別の心配が色々と出てきたわよ………」

アリオスは厳しい表情でレシェンテを見つめ、ミシェルは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「キャ――――――――ッ!さすがレシェンテちゃん!可愛くて強い!可愛い事が正義である事をまさに証明したわね!!」

するとその時声を上げたエオリアが一瞬の速さでレシェンテに近づいてレシェンテを抱きしめ

「ええい、離せっ!苦しいじゃろうが!?というかお主、絶対アネラスと同類の者じゃな!?」

「アハハ……私達を見ている目がアネラスさんとあまりにも似すぎているものね………」

エオリアに抱きしめられたレシェンテは嫌がり、リタは苦笑いをしながらエオリアを見つめていた。

「ア、アハハ………まあ、とにかくセリカ達が今後しばらくあたし達の代わりに手伝ってくれるから、よろしくね。」

「全くこの娘ったら……………………まあ、何はともあれ更に忙しくなったクロスベル支部ももうしばらく安泰ね♪」

そして無邪気な笑顔を自分に向けたエステルに脱力したミシェルは気を取り直して口元に笑みを浮かべてセリカ達を見つめていた。

 

こうしてセリカ達はエステル達の代わりに遊撃士協会で多くの依頼をこなす事となった。後に風や雷の魔術を使う事や、まるで嵐のごとく剣を振るい、”剣聖”と称されるアリオスすらも及ばない実力を持つ事からセリカは”嵐の剣神”、まさに伝承にある”魔女”のように様々な魔術を苦もなく操り続ける事からレシェンテは”紅の魔女”、銀色に輝く神聖なる気を纏う槍を扱う幽霊である事からリタは”真銀の霊女”の異名で呼ばれる事になり………短期間でゼムリア大陸にその名を轟かせる事となった………

 

 

 


 
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