No.661658

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第二十六話


 お待たせしました!

 それでは今回は拠点第二部の一回目という事で。

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2014-02-08 19:33:01 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8651   閲覧ユーザー数:6022

 

 ある日の昼下がり。

 

 俺は城の厨房で少し遅めの昼食をとっていた。一人で食べるのも結構久々だ。ち

 

 なみに璃々は今日は瑠菜さんと一緒にいる。何故だか最近瑠菜さんは璃々の世話

 

 を積極的にかってでてくれる事が多かったりする。理由を聞いたら『子育ての予

 

 行演習』と言っていたので、『そのような予定があるのですか?』って聞いたら

 

 何故かもの凄く不機嫌な顔で睨まれてちょっと怖かったが…俺、何かまずい事を

 

 言ったのだろうか?(相変わらず自覚無し)

 

 それはともかく、久々の少々静かな状況を楽しんでいたのだが、そこへ…。

 

「か~~~ずピー~~~~~~~!」

 

 その楽しみを阻害するかの如くに騒々しく及川がやってくる。

 

「うううっ…聞いてえなぁ~…折角、ワイが役満姉妹のライブをぶわぁ~っと盛り

 

 上げようと思うて用意した衣装を三人共完全否定やで!!どう思う、この理不尽

 

 な扱いを!?」

 

「…そもそも、どんな衣装を用意したんだ?」

 

「これや!」

 

 そう言って及川が何処からともなく取り出したのは…。

 

「おい…俺には良く分からないのだけど、この衣装で体のどの辺りが隠れるんだ?」

 

 それはそれは露出度が多い…正直、ほとんど裸と言っても過言では無い程の薄い

 

 衣装であった。そりゃ、これじゃ…テンションによっては天和や地和は着てくれ

 

 そうな気もするが、人和は100%拒絶だろうな。

 

「何を言ってるんや!ちゃんと隠れる所は隠れるように出来てるんや!!それは服

 

 屋の店員のお姉さんで実証済やで!」

 

「実証済って…その服屋のお姉さんは喜んで着ていたのか?」

 

「モデル料をはずんだら二つ返事やったで?」

 

 そう言って及川が提示した金額は…間違いなく二月は遊んで暮らせる程の物だっ

 

 た。まあ、それだけ出してくれればそのお姉さんも一時的な恥ずかしさなど我慢

 

 しそうな気はするが。

 

 

 

「まあ、モデルはともかく…三人にとってはイメージも重要だろうし、いきなりの

 

 お色気路線はやめた方がいいんじゃないかな?」

 

「うう…やはりそういうもんかなぁ。ワイとしてはいきなりこっちから入って徐々

 

 に歌や踊りで魅せていく方がええと思ったんやけどなぁ…」

 

 ああ、及川は〇田社長的な路線でいこうと考えたわけか…確かにそれはそれで良

 

 い手だとは思うが…。

 

「俺としては三人は正統派で行った方が良いと思うけどね。今でもまだ三人の親衛

 

 隊的な人達もいるんだろ?お色気はその人達の顰蹙をかいかねないと思うけどね」

 

「それもそうやな…でも多少はお色気も入れてもええよな?」

 

「そうだな、あからさまなのはダメだと思うが…あくまでも本人達の意向も汲んで

 

 からだけどな」

 

 及川は俺の意見を熱心にメモっている。及川は及川なりに熱意を持って三人の世

 

 話役をやっているのでその点は安心だ。

 

「よし、かずピーと話してやる気取り戻したで…っちゅうわけでワイは行くで!」

 

 及川はそう言って勢い良く立ち上がったが何故だかバランスを崩してコケそうに

 

 なったので俺はとっさに支えようとしたが、結局巻き込まれるような形で派手な

 

 音と共に一緒に倒れてしまった。

 

「痛てて…大丈夫か、かずピー?」

 

「…ああ、何とかな」

 

 

 

「どうしました?今何か大きな音が…えっ!?」

 

 そこにたまたま通りがかったのだろう輝里が入ってくるが…何故か俺達の姿を見

 

 たまま固まる。

 

「輝里か、俺達は大丈夫だ…そっちこそどうしたんだ?そんな変な顔をして…」

 

「いえ…一刀さんと及川さんのそのお姿が…」

 

 輝里にそう言われ、俺達は自分達の姿を確認するが…及川が俺の上に被さったよ

 

 うな形になっているが、とりたてておかしい所は無いと思うけど?

 

 しかし輝里はそんな俺達の姿を見つめ続けている。しかも何やら段々と眼が熱っ

 

 ぽくなっていくように見える。

 

「おい、輝里…」

 

「用を思い出したので今日はこれで!!」

 

 俺が声をかけようとした瞬間、輝里は突然大きな声でそう言うとはじかれたよう

 

 にその場を去っていった。

 

「…元直はん、一体どないしたんやろな?」

 

「さあ?…とりあえず、そろそろどいてくれるか?重たいんだか」

 

「ああ、そうやな」

 

 ・・・・・・・

 

「ああ、こんな所に最高の題材があったなんて!これはいけるわ、今度の新作はこ

 

 れで決まりよ!筆が、筆が燃えるわ!!朱里、雛里、今度の庫見家も私の勝ちは

 

 もらったわ!!」

 

 輝里は部屋に戻るなりそう叫びながら何やら筆を走らせていたのであった。

 

 

 

 それから数日後。

 

 何だかおかしい…。

 

 何がおかしいって皆の…というより一部の女の子の俺を見る眼がなのだが。

 

「何や、かずピーもか。ワイもなんや」

 

 どうやら及川にも同様の視線が投げかけられているようだ。

 

「ふーむ…俺と及川に共通する物って何かあったか?」

 

「さあ?ワイにもさっぱりや。違う所から来たなんちゅうのは、もはや今更やし」

 

「仕方ない…あまりこういう事で使いたくは無かったけど」

 

「そうやな…ちょっと調べてみるわ」

 

 ・・・・・・・

 

 そして次の日。

 

「わかったで…原因はこれや」

 

 そう言って及川が持ってきたのは一冊の本だった。

 

 それは表紙に大きく『八百一』と書かれていた。

 

「はっぴゃくいち?」

 

「『やおいち』って読むらしいで」

 

 やおいち…何だろう?とりあえず中を見てみるが…えっ!?

 

「これって…や〇い本?」

 

「だから『八百一』だとさ」

 

 古代中国のはずなのに、こんな物があるとは…おそるべし異世界。

 

 そしてさらに読み進めると…。

 

「…この中の登場人物って、まさか」

 

 

 

「ああ、ワイとかずピーや。一応名前は変えてあるけど、どう見てもそうしか見え

 

 へんな」

 

「それじゃ、もしかして俺と及川がそういう関係だと思われているって事か?」

 

「もしかせんでも、な」

 

 何つう話だ…俺は普通に女の子が好きだというのに。あくまでも普通にな!

 

「しかし…これを書いた人が気になるな」

 

「ああ、そこに書いてあるのはペンネームみたいやし…本屋に聞いても執筆者の本

 

 名までは知らんいうてるしな。でも…」

 

「ああ、これだけ俺達の事が詳しく書いてある以上、俺達の事を知っている人物と

 

 いう事になるだろう」

 

「かずピーは心当たりは無いんか?」

 

「…残念ながら」

 

 ・・・・・・・

 

「ほう、それで妾の所へ?」

 

「いや、別にこのような話を命の耳に入れようなんて気はさらさら無かったんだけ

 

 ど?勝手に謁見の間に引っ張り込まれて話をさせられただけなのは気のせいか?」

 

 そう、俺達は二人で調査をすべく行動を開始しようとした矢先に何故だか暇そう

 

 にぶらついていた命に捕まり無理やり話をさせられていたのだ。皇帝として色々

 

 忙しいはずの命が何故こんな話に首を突っ込める暇があるのか不思議だが。

 

「深く気にするな。それよりもまずはその八百一とやらを書いた者を捜す事じゃ」

 

 いや、少しは気にしようよ…と思うのだが、命はすっかり探偵気分であれこれと

 

 推理を始めていた。しかし…。

 

「そういえば、どんな内容の本なのじゃ?お主達が題材になっているという以外は

 

 何も聞いてなかったの?」

 

「そういえばそうだったな。どうぞ」

 

 

 

 命はしばらく中を見ていたが、その顔はどんどんと渋い物になっていた。

 

「なあ、かずピー…陛下どないしたん?何だか嫌なもん見たみたいな顔になってる

 

 みたいやけど?」

 

「もしかしたら…」

 

 俺がそこまで言いかけた時、

 

「失礼します。一刀さんがこちらにいると聞きまして…」

 

 輝里が入ってくる。

 

「どうした、何か急ぎの用事か?」

 

「いえ、急ぎという程では…えっ!?」

 

 何か言いかけた輝里の視線が命の読んでいる本に注がれる。

 

「何故陛下があの本を…?」

 

「それは…」

 

 俺達が経緯を説明すると、何だか輝里の眼が泳ぎ始める。

 

「どうした?何かあったのか?」

 

「い、いえ…何も。そういえば急ぎの用事を思い出したので、私はこれで…」

 

 輝里が何故かそそくさとその場を去ろうとする。しかし…。

 

「何じゃ、この本は?このような物、書いた者の気が知れんわ」

 

 陛下がそう呟いた瞬間、輝里が一瞬固まったように動きを止める。

 

「陛下はそういう本は読まへんのですか?」

 

 及川のその問いに、

 

「ふん、男同士の睦み合いなど見て何が楽しいのじゃ?こんな非生産的な物、見た

 

 だけで眼が腐りそうになったわ」

 

 命はそう答えると、八百一を汚い物を触ったかの如くに床に投げ捨てる。しかし

 

 その瞬間、輝里から何やらキレたような音がしたかと思ったと同時に輝里は命に

 

 向かって怒鳴り始める。

 

 

 

「何て事をするんですか!?そもそもこの内容の何処に眼が腐る部分があると言う

 

 のですか!!こういう禁断の関係にこそ燃える物があるのを何故認識出来ないの

 

 です!?大体、これを作るのにどれだけの苦労をしたと思ってるのですか!人の

 

 汗と涙の結晶をそうも簡単に…」

 

 輝里のそれを聞いたその場の人間全員が眼が点になる。輝里は尚も何か言おうと

 

 したが、

 

「…一刀、良かったな。犯人が自分から名乗り出て来たぞ」

 

 命のその一言で我に返って周りを見回すと同時に恥ずかしさからか顔を瞬時に赤

 

 くしてその場にうずくまってしまった。

 

 ・・・・・・・

 

「申し訳ございませんでした…」

 

 半刻後、輝里は完全土下座で謝り続けていた。

 

「いや、その…とりあえず頭を上げて、ね?そんなに怒っているってわけじゃない

 

 から」

 

「いや、此処は怒るべき所じゃぞ一刀。まさか自らの補佐役にこのような仕打ちを

 

 受けるなどあり得ぬ話じゃからな。とりあえず妾が代わりに怒っておこうか?」

 

「…いや、そんなのはいらないから。ええっと…でも、輝里のそんな趣味があった

 

 なんて驚いたよ」

 

 俺がそう言うと輝里はますます縮こまりながら、

 

「…だって、私にそんな趣味があるなんて知られたら一刀さんに幻滅されるって思

 

 ったから」

 

 そう消え入りそうな声で話す。

 

「まあ、確かに驚きはするけど…別にそんな事で輝里を嫌いになったりはしないよ。

 

 個人の趣味にまであれやこれやと口を出すつもりは無いし。さすがに人に迷惑を

 

 かけるようだったら言うけどね」

 

 

 

「なら今回は一刀に迷惑がかかったから嫌うという事じゃな?うむ、きっとそうじ

 

 ゃろう。なあ、一刀?こんな変態趣味の被害にあってさぞや傷ついたであろう?

 

 今日は特別に妾が優しく癒してやろうぞ」

 

 命はそう言うと俺の右腕に自分の腕を絡ませて思い切り胸を押し付けてくる。

 

「ええっと…当たってるんd『当ててるのじゃ。そちの国で言う所のさーびすとか

 

 いうものじゃ』…いや、サービスって言われても」

 

 …確かに命のボリュームたっぷりの物がガンガン俺の腕に当たってきて、その感

 

 触が何ともいえず素晴らしいの一言で…。

 

 俺がそう思ってるのが顔に出ていたのか、俺の顔を見る輝里の形相がみるみる内

 

 に険しくなっていく。

 

「ななな…何をなされておられるのですか!?そのような無理やりな…」

 

「ほう、輝里にはこれが嫌がっているように見えるのか?どうやらやはりあんな物

 

 を何時も見ておるから眼が腐ってしまったようじゃな。のう、一刀♪」

 

 命はそう言って輝里を一瞥するとこれみよがしに俺に擦り寄る。

 

「ぐぬぬ…」

 

「おや、何をそんな唸り声を上げておるのじゃ?お主は不毛極まりない男同士の睦

 

 み合いにしか興味が無いのじゃろう?だったら妾が一刀と何をしてようとも一向

 

 に構わないのではないのか?」

 

 命がそう言った瞬間、輝里から再び何かがキレる音が聞こえた。そして…。

 

「それとこれとは別です!一刀さんだって困ってるじゃないですか!!」

 

 輝里はそう言うなり俺の左腕に自分の腕を絡ませて自分の方へ引っ張ろうとする。

 

 輝里の方も俺の腕にギュッとしがみついた感じになっているので、俺の左腕には

 

 命の物とは一味違う柔らかい感触が伝わってくる。

 

 

 

「何をするか!そっちこそ無理やり一刀を引っ張ろうとするでない!!」

 

「いいえ、離れるなら陛下の方です!!」

 

 命と輝里は俺を挟んで完全に睨み合う。しかも二人とも段々と絡める腕の力が強

 

 くなっていくので、それに伴って押し付けられてくる感触も強くなってきて…こ

 

 れは困った事になるのか、喜んだらいいのやら…。

 

「及川、助けてくれ…」

 

「何言ってんねん、そないにリア充な男を助ける義理なんかワイには無い!一生そ

 

 うやって挟まれたったらええねん…べ、別に羨ましくなんか無いんやからな!」

 

 及川に助けを求めるも、そう言われて拒絶される。

 

 このまま一体どうなってしまうのかと思った瞬間、

 

「おや、これはこれは…若いというのは良い事だな。はっはっは!」

 

 そう言って何事も無かったの如くに入って来たのは空様だった。

 

 さすがに空様の前で騒ぐのは躊躇われたのか、二人はようやく俺から腕を離す。

 

「何だ、別に続けていても私は一向に構わなかったのだが」

 

「オッホン!それで、か…李通殿は何用で此処に?」

 

「いや、何やらこっちから騒ぎ声が聞こえたから見に来ただけだ」

 

 命の問いに空様はそう答える。ちなみにご承知の如く『劉宏』は死んだ事になっ

 

 ているので、命も人前では空様の事を『李通』と名で呼んでいる。さらに言うと

 

 空様も命の事は人前では『陛下』と呼んでいたりする。その度に命の顔が微妙に

 

 引きつるのはお約束だが。

 

「それはそうと、一体何で騒いでいたのだ?」

 

「実は…」

 

 俺が輝里の書いた八百一を見せて経緯を説明すると…。

 

「何だ、こんな内容でとはな。相変わらず陛下もこういう事は苦手なのだな」

 

「ぐっ…」

 

「?…命はやはりそういうのが昔から嫌いだったのですか?」

 

 

 

「ああ、大体こういうのは昔から後宮でも多くてな。ほら、宦官の中にもなよなよ

 

 したような者もいるだろう?そういうのを見て興奮する近衛兵とかもいたりして

 

 な…私も何回かそういう場面を見た事はあったがな。陛下は昔そういう場面に遭

 

 遇して以来、こういう事に強烈に不快感を示すようになったのさ」

 

「なっ…近衛兵と宦官?まさか…これは盲点」

 

 空様の述懐に輝里が反応を示す…って、そこに!?

 

「あ、あの…李通殿?出来ればその辺の所を詳しく…」

 

「ああ、良いぞ?飯でも食べながら話そうか」

 

 そう言って輝里と空様は謁見の間を出ていった。

 

「なあ、ええんか?あれ、放っておいて…」

 

「とりあえず俺達から矛先が逸れたって事で…個人の趣味にこれ以上どうこうも言

 

 えないし」

 

 命もその展開にこれ以上ついていけなかったのか、その場は何となくこれで解散

 

 となったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 そして十日程経った頃、平原にて…。

 

「朱里ちゃん!朱里ちゃん!輝里ちゃんの新作がまた出てるよ!!」

 

「ええっ!?この間の『異世界からの使者達』が発禁処分になったばかりなのに?」

 

「今度は『近衛兵と宦官』だって!」

 

「はわわ…こんな、屈強の近衛兵が女性と見間違う程の美貌を持つ宦官をモノにす

 

 る展開なんて、しかもまるでその場で見たかのような臨場感…さすが輝里ちゃん」

 

「あわわ…私達も負けてられないでし」

 

 ・・・・・・・

 

 同じ頃、某所にて。

 

「ぷはぁーーーーーーっ!?」

 

「おやおや、稟ちゃんってばまたですかー。はいはい、とんとんしますよー、とん

 

 とーん」

 

「ふがふが…すまない、風」

 

「ところで今度は何の本を…おや、これはこれは。このような本が出るとは何だか

 

 洛陽も随分楽しそうな所になったようですねー。これは一度行ってみる価値があ

 

 るかもしれませんねー」

 

 輝里の書いた新作は色々な人に影響を与えたのだが、それを俺が知る事は無かっ

 

 たのであった。

 

 

                                                                続く。

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの。

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は…腐女子の回でした。

 

 まあ、何時までも輝里の趣味をスルーして

 

 おくわけにもいかないかと思いまして…。

 

 何だか色々な所に影響を及ぼしてましたが。

 

 とりあえず次回は拠点第二回目…登場人物はまだ考え中です。

 

 

 それでは次回、第二十七話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 一応、北郷組の面々は命と真名を預けあっていますので。

 

     それと、個人的な話ですが、私のパソコンを新しくする

 

     関係上、次回の更新は少し遅れるかもしれませんので。

 

 

 

 

 

 

 


 
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