(とある家庭・朝)
それはいつもと変わらぬ、とある家庭の朝の光景だった。母のメイコは朝ご飯を作りながら、家族がそろそろギリギリの起床時間になった事を台所の時計で確認し、部屋中に響き渡る声で、号令をかけた。
メイコ:みんなーーーーー! そろそろ起きなさーーーーーい!
(父・カイト(とメイコ)の部屋)
カイト:う・・・う~・・つ・・疲れがとれてないな・・・でも仕方ない、起きるか・・・
カイトは企業戦士。4人の子供を養っている、日本のパパさん。ですが、どうも最近お疲れ気味のようです。
(姉・ルカの部屋)
ルカ:ふぁ~、もう朝かぁ~、やだなぁ・・・学校行くの・・・
姉のルカは大学生。今はとある教授のセミナーで勉強していた。しかし、なにやら、行くのが嫌な理由があるようで・・・
(妹・リンの部屋)
リン:zzzzz
リンの部屋の扉の前で、弟のレンがリンを起こしに来た。
トントン
レン:ねーちゃん、朝だよ、もう起きようよ~
リン:zz・・・・ふが・・・・ふぁ~~~、もう、朝かぁ~。は~ぁ、学校か~・・・
レン:ねーちゃん、とりあえず学校は行こうよぉ
リン:ふぁ~、わかったよ、着替えて行くから先に行っていて
レン:僕も準備まだだから、終わったら僕の部屋の扉を叩いてよ
妹のリン、弟のレン(双子なのだが、レンはリンをねーちゃんと呼んでいる)は、中学2年生。いろいろある多感なお年頃だが、この二人にも学校で何か問題があるようで・・・
(主人公・ミクの部屋)
ミク:Gu・・・ん~・・・ふごぉ!
主人公のミクは高校3年生の受験生。昨晩もそれなりにだが受験勉強をしていて、今朝はちょっと眠いらしい。だが、既に止めてしまっている“目覚まし時計”を見て、大慌てで布団から起き、凄い勢いでセーラー服に着替えを済まして、カバンを持って、階段をバタバタと駆け下りてきた!
ミク:遅刻~!!!
(台所)
ミク:パン1枚、頂戴!
メイコ:ミク! ちゃんと食べてから行きなさい!
ミク:時間ギリギリなの! くわえて行くから!
メイコ:はぁ~。わかったわ、はい
メイコは焼き上がった食パン1枚をミクに手渡し、ミクはすぐにパンをくわえて、バタバタと玄関に駆け込み、靴を大急ぎで履いて、ドアを慌ただしく開閉させて、駆け足で出かけていった。
ミク:遅刻!遅刻!
(台所)
メイコ:全く・・・
カイト:ミクは今日も、か
メイコ:ええ。あなたからも、ちゃんと言ってあげてよ。ココの所、毎日なのよ
カイト:しかし、ミクは今年、受験ではないか。勉強で疲れているんだ
メイコ:でも・・・
そこへ仕度を済ませたルカがやってきた。
ルカ:おはよー、ご飯、ちゃちゃっと済ませて、がっこ行くわ・・・
メイコ:あら、なんか最近、元気無いわね。何かあったの?
ルカ:ううん、なんでもない
カイト:体には気を付けるんだぞ
ルカ:うん、パパ、ありがとう
ルカは自分で目玉焼きを1つ作り、コーヒーとパンをセットして、ちゃちゃっと朝ご飯を済ませて、大学に出かけていった。
メイコ:なんか、ルカ、あんまり元気ないわね~
カイト:大学とはいえ、セミナーとかイロイロあるし、忙しいんだろう
最後にリンとレンの双子が準備を整えて、台所に入ってきた。
リン:ふぁぁあああーぁ、おはよー
レン:ねーさん、準備かかりすぎ
リン:仕方ないのよ、女の子はいろいろと
メイコ:それはいいから、さっさとご飯済ませなさい。遅刻するわよ
リン&レン:はーい
リンとレンの二人は、ルカと同じメニューの朝ご飯を済ませて、メイコから受け取ったそれぞれのお弁当をカバンに入れて、二人で学校に出かけていった。
メイコ:うーん
カイト:母さん、どうした?
メイコ:ん? あ、えっと、リンとレンなんだけど、なんか最近、ハキハキ感が少ない、と思って。小学生の時は、もっと積極的に学校に行っていたように思えるのよ。何て言うの? その、“学校楽しい”っていう表情で通学していた感じがして
カイト:母さんもか。私もそう思うよ。中学1年の時はそうでもなかった気がするけど、2年になってからかな、なんか、あんまり乗り気がない感じで通学しているな
メイコ:学校で何もなければいいけど
カイト:そうだな。さて、食事も終わったし、そろそろ出かけるかな・・・うーん・・・
メイコ:あら、あなた、お疲れ気味?
カイト:ん? ああ、ちょっと最近仕事が忙しくてな・・・忙しいとはちょっと違うか。どちらかというか“気疲れ”かな
メイコ:あなた、あんまり無理しないでね?
カイト:ああ、大丈夫だよ
メイコは食事を終えたカイトに、手作りのお弁当を持たせて、玄関から出かけていくカイトを見送った。
メイコ:さて、私も食べようかしらね
そう言ってメイコが台所の椅子に腰掛けた時、けたたましい電話の音が聞こえてきた。
チリリリリリリーン!!
メイコ:はぁ~、何となくわかるのよね、こんな朝っぱらから、全く。買わないって断ったのに、何度も何度も・・・
内容がわかっていて出たくないのだが、メイコは仕方なく、いつものように電話に出ることにした。
(ミクの通学中・とある路地)
ミクは最寄りの駅から電車に乗り、降車駅から高校へ到着するために、とにかく走っていた。
ミク:はぁ・・・はぁ・・・で、電車は間に合ったし、後はこのショートカットコースの路地を走っていけば、間に合う!
その路地は狭く、人通りもない、まさにミクが見つけた穴場コースなのだった。
ミク:よし! もう大丈夫d
その瞬間、ミクの姿が路地から消えた。いや、正確には、突然開いた穴の下に消えていったのだった。突然の事であり、更に何故か気を失った状態で、体を投げ出すようにして、穴の先、真っ暗な空間に、ミクは落ちていった。
・
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(???)
???:おーい、そろそろ起きろ~! 僕、怒っちゃうぞ~!
???:起きて下さいな
???:ヽ(゚Д゚)ノ
ミク:う・・・う~ん・・・あ、あれ?
そこは、“あの路地”だった。穴もない。
ミク:う、うわ! 私、転んだか、なんかして、気絶した・・・・って、あんたら、誰? なんで人形が喋って動いてるの?
ネル:僕はリーダー妖精のネルだよ。宜しく!
ハク:私はサポート妖精のハクです。宜しくお願いします
テト:(ノ*・ω・)ノ
ネル:あ、こいつはムードメーカー妖精のテトだ。ちょっと事情で喋れないけど
ミク:は、はぁ・・・って!!!! 遅刻!遅刻!
ネル:それなら大丈夫。ここは君たちの世界ではないから、学校も遅刻もないよ
ミク:え!? だって、ここ、あの路地じゃない!
ハク:えーっと、“パラレルワールド”って知ってます?
ミク:それくらいわかるけど・・・・って・・・ここ、そうなの?
テト:(*≧ω・)b
ネル:正確には、パラレル、つまり平行世界のうち、君たちの家族と密接に関わっている世界なんだ
ミク:パラレルでもアパレルでもなんでもいいわよ! と、とにかく私、穴に落ちたっぽいのよ。頭打ったかもしれないから、学校ないなら、せめて病院行かせてよ。メイコママにはケータイで連絡するから
ネル:それは必要ないよ。君は無傷だ
ミク:え!? だって、気絶していたんだよ!?
ハク:私たちが貴方の意識を飛ばした状態でここに呼び寄せたんです
ミクはもう何がなんだか解らなくなって、つい、カッとなってしまった。
ミク:あんた達が!? あー、もう、何でもいい! とにかく家族に連絡だけはさせてよ!
ネル:この世界では、君の家族は誰一人、家族として生活してないよ。そして君もこちら側の君がいるらしいから、君は知っている人に連絡する手段がない
ハク:それと、私たちはアストラル体だから、ここの人と直接、交信する事も出来ません
ネル:あ! でも、眠くならないし、お腹も空かないから、安心して
ミク:???・・・・じゃあ、何のために私はここに来たのよ
ネル:君の世界の家族に存在する各人の問題とクロスリンクしているこの世界を救って欲しいんだ
ハク:そっちの家族の問題から生み出された“悪魔”が、この世界の君の家族だった各人と関わって、この世界に影響を及ぼそうとしているんだよ
ミク:悪魔??? そんなのあんた達みたいなファンタジー系の人がやれば、もっと簡単なんじゃないの? 私、パンピーよ?
ネル:残念ながら、僕たちではその悪魔と闘えないんだ
ハク:闘えるのは、この世界を構成する君の家族だった人たちと、君たちの世界で一番密接な人物、つまり、あなただけなんです
テト:( ̄ー ̄)
ミク:・・・つまり、この世界は私の家族だった人たちの問題とクロスリンクして出来ている。当人達は、別の生活をしているけど、既にその悪魔と関わった生活になっているから、どうにもできない。家族の中で、その問題を引き起こしている“悪魔”に干渉できるのは、私だけ、と
ネル:さすが飲み込みが早いね。こう言っては失礼だけど、君には家族だった人達を代表して、この世界を救う“責任”をおっているとも言えるな
ハク:貴方の家族だった面々が、そっちの世界で抱えている“問題“は、こっちの世界とクロスリンクしているから、こっちを救えば、貴方の世界の問題も消えると思うわ。悪くない話だと思うけど?
ミク:・・・それで“私”は、元の世界に帰れるの? それだけはしっかり聞いておかないと、契約できないわ
ネル:大丈夫。このクリスタルボードを見て
ネル達が持っていた六亡星型のパネルのそれぞれの鋭角部分に、5つの灰色の球形クリスタルと、紫に輝いている球形クリスタル1つの計6つが置いてあった。
ネル:君がこっちに来た事に反応して、この紫1個だけが発動したんだ。これは、君が刀の達人である“剣神・神威”に変身できるクリスタルなんだ
ハク:残りのクリスタルも問題を解決していって、この世界に変化を与えれば、発動していくと思います
ミク:・・・で、私は帰れるの?
ネル:いや、その、帰るためには、この6つのクリスタルを全部発動させないとだめなんだ
ハク:つまり、全部の問題を解決しないと、帰れないんです・・・すみません
テト:(´・ω・`)
ミク:・・・わかったわ。それしか方法がないんだったら、やるわ。家族の事も心配だし
ネル:さすが! 戦う受験生! 覚悟が違う!
ハク:正直、自信がなかったんですが、快諾してくれて助かります
ミク:さっさと、一人目に取りかかるわ。うちの家族の誰?
ネル:えっと、この灰色のクリスタルの方です
“2時”に該当するクリスタルは紫に光っていたので、ネルは4時の方向にある灰色のクリスタルをミクに覗かせた。そこには・・・
ミク:! ルカ姉さんじゃ・・・・あれ? なんかOLやっているみたいだけど・・・ルカ姉さんは大学生だよ?
ネル:さっきも言ったとおり、そっちの世界とこっちの世界では、名前も一部違うし、生活も違う。えっと、その人の名前は、“巡音ルカ”で、“亜須田(アスダ)商事”って所でOLをやっているみたいだね
ミク:本当にうちの家族の名字と違うんですね
ハク:では、その方の会社がある所まで、ワープします
ミク:え!? で、でも、私達が突然消えたら・・・
ネル:大丈夫。この世界の人には私たちは見えません。そのかわり、私たちもこの世界の人に助けを求められません
ミク:・・・覚悟が必要なわけね・・・いくわ、行きましょう!
ハク:では。“亜須田商事”にワープです!
すると、4人の周りに真っ黒の空間が現れ、4人を飲み込むと、その場所から消えてしまった。
これから始まる、4人の世直し旅、果たしてどうなることやら・・・
(続く)
CAST
ミク:初音ミク
リン:鏡音リン
レン:鏡音レン
ルカ & 巡音ルカ:巡音ルカ
カイト:KAITO
メイコ:MEIKO
妖精ネル:亞北ネル
妖精ハク:弱音ハク
妖精テト:重音テト
その他:エキストラの皆さん
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※久しく投稿できませんでした。すみませんでした。また続きを投稿させていただきます。
○ボーカロイド小説シリーズ第13作目の”クロスリンク・プロブレム ミクの試練!“シリーズの第1話です。
○今回はちょっとシリアスで社会派でファンタジーの、不思議作品です。
○内容が、リアル世界の問題をテーマにしているので、そういうのが苦手な方はご勘弁を。
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