No.657740

ALO~妖精郷の黄昏~ 第6話 此の親にして此の子あり

本郷 刃さん

本編に戻って第6話です。
今回は珍しく笑いあり、笑いありだけのコメディ回ですw

どうぞ・・・。

2014-01-26 11:02:48 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:12580   閲覧ユーザー数:10977

 

 

 

第6話 此の親にして此の子あり

 

 

 

 

 

 

 

和人Side

 

俺たちSAO生還者の学生たちが用意された専用の学校に通い始めて1年が経過し、2年目が訪れた。

GW(ゴールデンウィーク)に入り、数日の休みが与えられた。

当たり前だが課題もそれなりに出されているためそちらの消化もこなさなければならない。

まぁ俺にとっては大したものではないので、いつも通りに連休に入る前の日と初日で終わらせている。

その初日の午後なのだがアメリカに単身赴任していた父の桐ヶ谷峰嵩が、

珍しく連休を取ることが出来たようで、我が家に帰ってきたのだ。

前にあったのは年末から正月にかけての間なので、約4ヶ月ぶりということか…。

 

「ただいまだ、和人。元気そうだな」

「おかえり、親父。俺に元気がないことなんてあまりないけどな」

 

いつものノリというべき軽口で挨拶を交わす親父と俺。

現在、母さんは仕事のため家には居らず、スグも剣道部の練習のため居ない。

2人とも夕方には帰ってくるとは言っていたので、今日の晩飯は久々の家族揃ってのものになるだろう。

 

「先に風呂にでも入ったら良いよ、準備はしてあるから。荷物は寝室に運んでおけばいいんだよな?」

「お、すまないな。それじゃあ風呂に入らせてもらうぞ」

 

少々疲れた様子だったので風呂に入ることを勧めてから俺は親父のキャリーバッグを寝室に運び込んだ。

しばらくして風呂から上がってきた親父は先程よりもすっきりとした表情をしていた。

 

「はぁ、さっぱりした…。麦茶とかあるか?」

「あぁ、冷えてるのがあるから淹れるよ」

 

頭をタオルで拭きながらソファに座った親父にガラスコップに淹れた麦茶を渡す。

それを飲みきるとソファの前のテーブルに置き、俺は椅子の方に腰掛ける。

 

「最近の調子、というかお前の近況はどんなものだ? あまりお前自身の口から聞いてないからな」

「学校の方は成績もテストも学年1位をキープしてるし、全国模試も1位、流派の方も鍛練は疎かにしていない。

 明日奈との仲は良好を通り越して良いくらいかな」

「相変わらずだな…」

 

聞かれたので普通に答えたのだが苦笑で返されてしまったが、気にしないでおく、いつものことだから。

 

「そういう親父はどうなんだよ。儲かってるのか?」

「ああ、中々だよ。最近では海外にもVRゲームの会社が多く出来ているからな。その影響もあるのか取引が多いんだ。

 忙しい代わりに給料はかなり増したよ。『ザ・シード』様々だ」

「そりゃよかった…」

 

逆に聞いてみると親父も上々の様子だが、

その『ザ・シード』を自分の息子が配信を開始させたと知ったらどんな反応をするのだろうか…。

ま、家族といえど言うつもりはないし、これは俺と明日奈とユイ、

それに『神霆流』の面々とエギル、凜子さんしか知らないからな。

 

「しかし、証券会社のリーマンが良くもまぁ連休なんてもらえたな…」

「年に2回くらいしか日本(こっち)に帰らないだろ?

 上司が『少しくらいは融通してやるから偶には帰ってやれ』って言うもんだからな。ありがたく帰ってきたんだよ」

 

親父はアメリカに渡り、長年に亘って証券会社に勤めているのだ。

帰ってくること自体は少ないが、俺たち家族のために働いてくれているわけで、やはり嬉しいと思える。

俺も明日奈やユイという守りたい家族が居るからこそ、割と無茶な菊岡のバイトもこなしたりするわけなんだけどな。

 

「俺さ、なんとなくだけど親父たちの気持ちが分かるようになってきたよ。

 大切な人たちが出来たから、一緒に居られるように養いたいっていう感じの…」

「そうか…。まぁしっかりと実感できるのは、しっかり結婚して子供も出来てからだと思うけどな」

「そうだよな……………ん?」

 

あれ? 俺、もしかしてユイのこと親父に話してない? まて、そんなはずは………あった…言っていない、だと!?

お、思い返してみれば、母さんにも、彰三さんと京子さん、浩一郎さんにも言っていないぞ!?

これ、不味くないか…?

 

「どうしたんだ、和人? お前が百面相をするなんて珍しいじゃないか」

「い、いや、なんでもないよ。ちょっと思い出したことがあって、明日奈に電話してくる」

「そうか? それなら俺はゆっくりしているとしよう」

 

親父がテレビの電源を付けてニュースを見始めたのを機に、俺はすぐさま自室に戻って念の為に鍵を閉め、

携帯端末を片手に明日奈に連絡を取る。数コールのあと、コール音が切れて彼女の声が聞こえてきた。

 

『もしもし、和人くん? どうかしたの?』

「明日奈、落ち着いて聞いてほしいことがある。大声を上げたら“1週間キス禁止”だからな」

『それどんな地獄!? わ、わかったけど、一体なにがあったの…?』

 

明日奈が動揺するのが手に取って分かった。まぁ彼女にとっては我慢できるものではないだろう……俺?

勿論、我慢できるぞ。

 

「いいか、落ち着いて良く聴けよ………俺たちは、ユイのことをそれぞれの両親に伝えていない」

『……………あ…』

 

長い間の後に「あ」だけ聞こえたがすぐに聞こえなくなったことから察するに、自分の手で口を押さえたのだろう。

これで“1週間キス禁止”はなくなったな……正直ホッとした。

 

『そ、そういえば、紹介するどころか教えてすらいなかったんだっけ…? ど、どうしよう、和人くん?』

「VR世界の中で養子とはいえ俺と明日奈の娘、それぞれの両親からすれば孫だからな……真正面から正直に話すしかないだろう…」

『そっか、そうだよね…』

 

ユイとの出会いからいままでの経緯も含めて、話しをしなければならないな。

 

「丁度と言っていいのかもしれないけど、いま親父が帰ってきてるんだ。少しで良いから双方で時間が合えばいいんだけど…」

『いまは大学もお休みだから母さんは大丈夫だと思うよ。

 父さんもいまは経営陣のサポートが主だから、時間は作れるんじゃないかな~?

 ただ、兄さんはちょっと出張ってるけど…』

「俺の方は親父は大丈夫だけど、母さんとスグがなぁ…。

 まぁ母さんは大事なことって言えばなんとか都合をつけてくれると思うし、スグは部活動もあるけど事情は知っているし…」

 

お互いに話してみた結果、とりあえずまずは両親には話さなければならないということになった。

そんな時、ふと明日奈が不安そうな声で話し掛けてきた。

 

『和人くん…大丈夫、だよね?』

「大丈夫だよ。ウチの両親も、明日奈のご両親も、ちゃんと理解を示してくれるはずだ。俺たちの親なんだから、信じよう」

『うん…そうだね、信じなくちゃね!』

 

ユイのことを不安に思うのはわかるが、話してみないことには何も始まらないし、

親を信じているからこそ、話さなければならない。

難しいことだとは思うがユイには俺たちがついているのだ、大丈夫に決まっている。

 

「親父と母さんにはなんとか時間をとりつけてもらえるように言うけど、明日奈はどうかな?

 なんだったら俺の方から彰三さんと京子さんに…」

『ううん。わたしの両親なんだから、ちゃんと自分で言うよ』

「そうだな。それと今日の夜、ALOでユイにも伝えよう……予定が決まったら、決行ってことで」

『うん、了解です。それじゃあ、また夜に』

「ああ、また」

 

通話を終えてから息を吐く。

これでこのGW中にユイのことを話すのは決まったから、あとは出来るだけ時間を合わせてそれぞれの両親に話すだけだな。

 

 

 

 

夕方5時にはスグが帰ってきて、6時になる頃には母さんも帰ってきた。

親父が帰ってきたからなのか、早々に仕事を切り上げて帰って来たらしい。

母さんは親父に対してはあっさりとしている方だと思っていたんだが、

そこら辺を聞いてみると「アンタと明日奈ちゃん、直葉と刻君にあてられたのよ」と微笑みながら応えた、

どうやら俺たちが原因らしい…。

珍しく疲れた様子も見せないで久しぶりに夕食を作る母さん、

その一方で俺はスグにユイを両親に伝えることを教えた。

その時、やはりスグもそういえばという表情をしていたのは言うまでもない。

そして、母さんが夕食を作り終え、久しぶりに家族揃っての晩餐となった…。

 

夕食後、スグが気を利かせて部屋に戻ったので俺は親父と母さんに伝えることにした。

 

「親父、母さん。GW中にだけど、明日奈のところのご両親と一緒に話したいことがあるんだけど、時間取れないかな?」

「俺は大丈夫だが、母さんはどうだ?」

「ん~、なんとかしようと思えばできるけど……明日奈さんのご両親も一緒っていうことは、大事な話なのね?」

「あぁ、結構というか、かなりかな…」

 

真剣かつ少し言い難そうに俺が言ったので、両親は顔を見合わせてから頷いた。

 

「分かった。もしかしなくてもだが、早い方がいいのか?」

「彰三さんと京子さん次第だけど、早い方がいいと思う」

「ん、それなら出来るだけ時間を空けられるようにするわ。なんなら明日でも構わないわよ」

「いや、さすがにそれは向こうも都合がつかな『~♪~♪』っと、ごめん。明日奈からだ……どうした、明日奈」

 

なんとか時間を空けてもらえることが決まった時、端末の方に明日奈から連絡が入り、リビングから出て廊下で通話をする。

 

『あのね、和人くん。ユイちゃんの話のことなんだけど、明日って駄目かな…?

 明日なら父さんも母さんも予定が空くって…』

「明日、か……いや、大丈夫だ、うん…。場所は俺の家で。それじゃ、またあと(ALO)で…」

『うん、またあとで』

 

………まさかの明日…。ボーッとしているわけにもいかず、リビングに入った俺は両親の前のソファに座る。

 

「えっと、明日奈が明日なら大丈夫だと、言っていたんだけど…」

「あら、丁度良いじゃない。それなら明日で決定ね、会社に連絡しなくちゃ」

「その話しは何処でするんだ?」

「此処でする。というか、内容的にうちの方が都合が良いからな」

「「……え?」」

 

話し合いの場所は勝手ながら決めさせてもらった。だってユイを紹介するには設備(・・・)も整っているうちの方が良いからな。

少々呆然とした様子から復帰した母さんは「掃除を!?いえお菓子の用意を!?」とかテンパっていた。

親父は涼しげな表情をしていたが、足が震えているのを隠せていないぞ…。

とりあえず2人を落ち着かせてから、俺は部屋に戻ってALOへとダイブした。

 

ALOにて明日奈と2人でユイに明日のことを伝え、心の準備をしておくように言った。

少しばかり不安そうな表情をしていたが、俺と明日奈で大丈夫だと抱き締め、笑顔を見せてくれたので、おそらくは大丈夫だろう。

あとは、明日がくるのを待つだけだな…。

 

 

昨晩の急ながらも決定した事柄が本日実行されるわけで、俺と親父は朝から掃除やら買い出しやらをすることになった。

親父が「俺、久しぶりの休みなんだけどなぁ…」とぼやいていた、正直悪いことをしたと思ったり…。

まぁ買い出しはそれなりの店に和菓子を買いに行って、

掃除はそれほど汚れているわけでもないので箒で埃を出して掃除機で吸い込む程度のものだ。

ちなみにスグはというと、やはり部活動のためにいないわけで、本人は「部活で良かった」などと言っていた。

午前中はそんなこんなであっという間に時間が経過し、昼食を取ることになった。

そして午後2時、その時がきた…。

 

――ピンポーン…

 

インターホンが鳴らされ、俺たちは3人揃って玄関に向かい、戸を開けた。

 

「こんにちは、和人くん」

「やぁ、明日奈」

 

俺と明日奈が挨拶を交わしたところで、彼女の後ろから彰三さんと京子さんが姿を現した。

 

「こんにちは、和人君。桐ヶ谷さんたちもお久しぶりですな」

「お久しぶりです。結城さんもお元気そうでなによりですよ」

「翠さんとは4月のあたまに会って以来ですわね」

「ええ、京子さん」

 

彰三さんと親父、京子さんと母さんも挨拶を交わす。

結城親子を迎え入れ、俺たちはリビングで話し合うことにした…。

 

 

 

 

まずはお茶を飲みながら軽い談笑をしていたがそれはあくまでも空気を作るためのものであり、

それを頃合いと思った俺と明日奈は顔を見合わせて頷き合い、両親たちもその空気を察してか真剣かつ静かな表情になった。

 

「今回、聞いていただきたい話しにはある大元の話があるので、まずはそこから話させていただきます」

「あれは、わたしたちがまだ『ソードアート・オンライン』に囚われていた時にまで遡ります」

 

俺と明日奈は言葉遣いを正し、ユイとの出会いを語る。

元々、一時期保護していた少女ということを話してはいたが、どういう経緯で知り合い、

彼女がどういった存在であるのかは知らせていなかったのでまずはその時のことを詳しく語った。

話していく内に親父と彰三さんは何度も悲痛な表情を浮かべ、母さんと京子さんに関しては涙を浮かべていた。

そして、SAOにおいてのユイとの別離までを話した。

 

「和人、お前…」

「……2人とも、辛い思いをしたようだね…」

 

父親たちの重苦しそうな言葉に俺も明日奈も一度は表情に翳を落としてしまうが、この先の話のためにもすぐに話しを続ける。

 

「だけど、わたしと和人くんはユイちゃんと再会することができたんです…。

 『アルヴヘイム・オンライン』の、『ALO事件』の時に…」

「「「「っ……」」」」

 

明日奈がALO事件といった瞬間、両親たちが表情を歪めたのに気付いた。

当然だろう、結城夫妻からすれば自分たちの部下が犯した事件であり、

親父と母さんからすれば俺が相当な被害を受けた事件なのだ。

むしろ忘れることなどできるはずもないだろう。

 

「さきほども説明した通り、SAOでのユイとの別れの時に彼女をカーディナル・システムから分離させました。

 そしてALOはそのカーディナル・システムを直接コピーしたもので稼動しています」

「わたしが和人くんを助けるためにALOを訪れた時、SAOで使用できたアイテムの大半が使用できなくなっていた中で、

 あの子の心(・・・・・)といくつかの武器が使用できたんです。

 そして、それを使用することで…わたしはユイちゃんと再会することができました」

 

そこからは明日奈がユイや友人たちと共に俺の救出に訪れたところまでを簡単に説明した。

そこまで話したことで既に大方のことを察してくれた両親たちはやはり俺たちの親なのだと実感できた。

 

「明日奈、和人君…2人の話を聞いて大体のことは察しました。彼女はいまどうしているのかしら?」

「それにいまその話しをするということは、私たちでも会うことができるということなんじゃないの?」

 

気になる、というのがひしひしと伝わってくるのは母親たち。

一方の父親たちはというと「ということは俺の…」とか「人と変わらない感情のAI…」などと呟いている、色んな意味で心配だ。

ともかく、ここまで話した限りでは大丈夫そうなので、明日奈と顔を見合わせて頷き合う。

 

「それじゃあ、いまから会ってもらいます」

「え、それって…」

「どういう…」

「おいで、ユイちゃん」

『はい、ママ』

 

俺の言葉にさすがに驚く母さんと京子さんに対し、明日奈はユイの名を呼び、彼女の声が明日奈の携帯端末から聞こえた。

明日奈が端末を両親たちに向ける。

 

『はじめまして、パパのパパさんとママさん、ママのパパさんとママさん。

 パパとママの娘でユイと言います、よろしくお願いします♪』

「これはこれは…」

「ど、どうも、ご丁寧に…」

 

ユイの笑顔な挨拶に彰三さんと親父は見た感じかなり動揺しながら応対している。おいっ、動揺しないでくれよ…。

しかし、妙に静かな母さんと京子さんは真剣な表情でユイを見ている。

 

「「ねぇ、和人(明日奈)…」」

「「は、はい…」」

 

母さんと京子さんの妙に迫力ある言葉に明日奈どころか俺もびびる、いやマジで半端じゃないです、はい…。

 

「「……………黙っていたの…?」」

「「……………」」

 

これは、いままで黙っていたことをご立腹なのだろう…。ユイもどうすればいいのかと、若干涙目。

しかし俺は親父と彰三さんの表情に気付いた……苦笑しているだと?

 

「「どうしてこんなに可愛い孫がいるのを黙っていたの!?」」

「「ご、ごめんなさい……………はっ?」」

 

謝ったものの、改めて放たれた言葉に明日奈共々疑問符を浮かべる。なんとおっしゃいまして…?

 

「んもぅ、どうしてもっと早くに紹介してくれなかったのよ! こんな可愛い子だなんて!」

「そうよ。2人だけで可愛がりたいのも分かりますけど、もう少し早くても良かったのに」

「「は、はぁ…」」

 

母さんと京子さんの物言いに俺たちは頷くしかない。母さんはともかく、京子さんてこんな人だったか?

 

「ユイちゃんだったわね。翠おばあちゃんですよ~♪」

「あら、翠さんだけずるいですよ。私は京子おばあちゃんでいいからね」

『はい! 翠おばあちゃん、京子おばあちゃん♪』

「「可愛いわ~♪」」

 

にぱぁっと笑顔を浮かべるユイにゆるゆるになる母親たちに、俺も明日奈も呆然とするしかない。

そんな時、親父と彰三さんが話しかけてきた。

 

「まぁ母さんだからな。わかるだろ、和人」

「あぁ、うん…。今更だけど分かった気がする…」

「父さん、母さんって…」

「環境や事情が原因とはいえ京子は元々子煩悩だからね。いまの彼女は浩一郎や明日奈が生まれた時と同じ顔をしているよ」

「そっか…」

 

親父と俺が呆れというか諦めの表情になる一方、明日奈は彰三さんからまだ知らぬ母の一面を知り、

少し寂しそうにしながらも嬉しそうにしている。

 

「2人が言い難かったのも解るさ。俺たちが知らずに孫ができて、それが特殊な生まれだっていうことだからな」

「そうですな。ただ、もう少し早めに話してほしかったのはやはり思うところだよ。親を頼ってほしいからね」

「賢い子どもを持つと違う意味で苦労しますね、結城さん」

「まったくですな、桐ヶ谷さん」

「「はっはっはっ!」」

 

勝手に納得している親父たちも明日奈の端末を持つ母親たちの元へ行き、再びちゃんとした挨拶を交わしているが…。

 

「「(言えない…。忘れていただけだなんて、今更言えない…)」」

 

俺と明日奈の心中は至って穏やかではなかった。謂わぬが仏なのかもしれないけど…。

 

ともあれ、ユイのことを受け入れてくれた両親たちには感謝の気持ちで一杯である。

その後、俺がゼミの仲間たちと開発しているプローブや設置型カメラなどを運用することで、

ユイとさらに交流できることを説明したりした。

他にもユイが俺と明日奈の活躍やどれだけ俺たちを思ってくれているかを懇切丁寧に熱く語ったので、

俺と明日奈はかなり恥ずかしかったりした…。

 

 

 

 

「それにしても、ユイちゃんと直接触れ合えないのは残念だわ…」

「そうですね~」

「確かに我々としてもちゃんと会ってみたいですな~」

「ふむ、とするとやはり…」

 

京子さんも母さんも心底ガッカリしている感じだが、彰三さんと親父はある手段を思いついた様子。

 

「和人、ALOは俺みたいな初心者でも大丈夫なものなのか?」

「そりゃ勿論。慣れてないと最初は変な感じがするかもしれないけど、慣れればそうでもなくなるし……って、まさか…」

「そのまさかだ…。アミュスフィアとALOを買ってユイちゃんに会いにいけばいい」

 

やはりか。ま、その線で行くのが妥当だろうし。

 

「和人、早速買いに行くわよ! 案内しなさい!」

「まぁまぁ翠さん。私の方ですぐに手配しますので…」

「いいのですか?」

「「ちょっと待って!?」」

 

くっ、母親たちの暴走の度が過ぎてツッコミしきれない!?

 

「いや~、ゲームなんて何年ぶりになるやら…」

「私もVRゲームは開発の段階で少し触れただけでして…。しかし童心がくすぐられますよ」

「ああ、それはわかります」

「「親父(父さん)は止めるの手伝って!」」

 

妻をなんとかするのがアンタたち()の役目じゃないのか!?

 

『おじいちゃんたちとおばあちゃんたちに会えるのが楽しみです~♪』

 

肝心の要であるユイも今回ばかりは無理だった……頭が痛くなってきた…。

 

一騒動あり、なんとか事態は沈着、結城一家もご帰還し、俺はどっと疲れが出た。

部活を終えて帰ってきたスグに事の次第を説明し、

「あたし居なくて良かった」と言われた時には割と本気で刻の前に簀巻きで差し出そうかと考えたよ…。

 

 

その後、ALOの我が自宅にて、時折4人組の男性と女性、または主に女性2人が小さな女の子と遊ぶ姿が目撃されることになった。

少女へのあまりの溺愛っぷりに俺は友人に訊ねられた…。

 

「なぁキリの字とアスナさんよぉ…。あの4人って誰なんだ?」

「「……親です…//////」」

 

質問にはそう答えるしかなかった…。

 

 

今日も桐ヶ谷家と結城家は平和である…。

 

和人Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

あとがき

 

本編第6話は和人と明日奈が両親にユイを紹介する話しでした。

 

なぜ今更になってと思われるかもしれませんが、決して自分が忘れていたわけではありません、断じて!

 

なんというか、話のタイミングが作れなかったんですよね~。

 

物語の展開上、和人も明日奈も仲間たちも忙しかったために紹介するシーンを描けなかったんですよ。

 

まぁ今回丁度良いことにGWでのお話しという感じにさせていただきました。

 

笑い一辺倒でしたが・・・w

 

ちなみに親である和人と明日奈が親バカなら、その両親たちもユイに対して同じであるかと思い、

話しのタイトルを「此の親にして此の子あり」にしました。

 

それでは次回もお楽しみに・・・。

 

 

 

 


 
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