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模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第14話

コマネチさん

第14話「GOGO!ガンプラ猛レース!」

アイがコンドウに勝利した事実は、周辺から腕利きのビルダーを呼び寄せる結果となった。
そしてそれは単純なバトルだけでは収まらない程の物だった。

2014-01-20 19:26:07 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:961   閲覧ユーザー数:893

「間に合った……」

 

バスから降りるとナナがため息を漏らしながら呟いた。いつも通りアイも一緒だ。

 

「もう、ナナちゃんが寝坊するからだよ」

 

「ゴメンねアイ、昨日遅くまで新作作ってたから、でもそれだけ自信はあるものが出来たわ」

 

ナナはバス乗り場から、目の前にそびえたつ市民体育館を見上げ言った。

 

……

 

話は数日前に遡る。学校帰りによったガリア大陸での事だ。いつもの様にアイとナナの二人はガンプラバトルをやろうと、

店の二階に上がる。と見慣れた二人がいる。ハセベとコンドウ、何か話し込んでるようだ

 

「じゃあ当日にエントリーよろしくね」

 

「わかりました。っておぉ、ヤタテとハジメじゃないか」

 

アイ達に気付くとコンドウは向こうから話しかけてきた

 

「聞いたぞ、色んなビルダー達から挑戦を受けてるようだな」

 

「知ってたんですか。といってもまだ二人程度なんですけどね」

 

「でもちょっといい迷惑よ。これからどんどん強豪ビルダーが現れるとか言っちゃってさ。大方アイと戦って有名になりたいか、ポイントでも稼ごうってワケ?」

 

ポイント、ビルダーとの戦績ポイントの事だ。第一話で触れたが、勝利によって得られるこのポイントは勝利回数が多ければ多いほど溜まっていく。

溜まったポイントは強者の証でもあるのだ。同時にポイントの溜まった、つまり経験豊富な実力者は倒せば得られるポイントも高い。

必然的にアイも高いポイントを有していた。ナナはアイの戦績ポイントが奴らの狙いかと睨んだ。

 

「それもあるだろうが……もっと簡単な事だ。強いビルダーと戦って己の実力を試したいのさ」

 

「え?それだけ?」

 

「純粋にガンプラに熱意を注ぐ奴ほどそういうもんさ、己の操縦技術、己のガンプラの出来映え、そして相棒であるガンプラと自分の実力、

強いビルダー程邪な気持ちはない」

 

ナナが両手を肩の高さに上げ、ため息をつく。

 

「言わんとしてる事は分かるけどさ、それってちょっと美化しすぎなんじゃないの?」

 

「そうか?俺はそう思うが、まぁ皆に認められたビルダーの特典みたいなものさ」

 

「妙な特典ですこと」

 

「まぁまぁナナちゃん、私としてはなんやかんやで色んなビルダーとバトル出来るし、いつ現れても受けて立ちますよ」

 

アイとしては緊張はする。しかし自分の実力を試すチャンスであり、実力をもっとつければ

憧れのガンプラマイスター『イレイ・ハル』に近づけるかもしれないと嬉しい状況でもあった。

 

「おぉう。そいつぁ嬉しい返事だねぇ」

 

「?」

 

知らない声がした。声のした方、階段を見ると誰かが上がってくる。ブレザーを着た細身の少年だ。

制服からして中学生だろう。頬のこけた顔つきからやや近寄りがたい印象がある。

 

「俺の名はアマミヤ・ニワカ。ちょいと隣町では名の知れたガンプラビルダーさ」

 

「アマミヤ?あまり聞いたことがないな」

 

聞き覚えのない名前にコンドウが首を傾げる。コンドウも挑戦を受けてきた身、ある程度の実力者の名前は知っていた。

 

「恥ずかしながら割と最近力をつけてきたビルダーってわけだ。ヤタテ・アイ!俺は自分の実力を試してみたい、俺と戦ってもらおうか!」

 

指をアイに向け指名するニワカと名乗る男。

 

「解ったよ。自分で言った以上受けないわけにはいかないね!じゃあ早速!」

 

が、この日はそうはいかなかった。

 

「何を言っているんだ?バトルは日曜日、市民体育館でだ」

 

「え?」

 

アイはきょとんとした顔になる。

 

「どういう事ですか?」

 

「知らないのかい?今日はGポッド市民体育館に運んじゃったんだよ」

 

「?あ、ホントだ。Gポッドがない」

 

ハセベの発言にナナが二階を見回す。いつも二階の両端に三つずつ置かれたGポッドがない。いつもは狭く感じた二階もこうなると妙に広々と感じる。

 

「ちょっとあるイベントで使うんで市民体育館に持って行ったんだよ」

 

「イベント?またサバイバル大会?」

 

「これさ、読んでみなよ」

 

ハセベがA4サイズの紙を見せた。手に取り二人で一枚の紙を見るアイとナナ、

白い紙の上半分に『ガリア大陸主催!第一回ガンプラサバイバルレース』とロゴが書かれ、下には場所や日時、ルールが事細かに書かれていた。

 

「ガンプラレース?なんですかこれ?」

 

「単純にガンプラバトルのレースだよ。ここら近隣の模型店やゲームセンターのGポッドを集めて数十人でレースを行うって事、空飛ぶ機体、

地上を走る機体が他の機体と戦いつつコースを抜けゴールを目指す内容だよ」

 

「へぇ~バトル以外でもそういう競い方あるんだ」

 

ナナが読みながら感心するような声を上げる。

 

「ガンプラバトルも色々模索している競技だからね、ある意味実験的な催しでもあるのさ」

 

「そういう事だ。単純なバトルではつまらない!レースで俺と戦い、速さを競おうじゃないか!」

 

自信ありげにニワカは言った。

 

「レースは初めてですけど……勝負抜きにしても出てみたいし……ん?」

 

ふいにレースの紙を見ていたアイの目がピタリと止まる。と、急にアイの目は強く輝く。

 

「どしたの?アイ」

 

「賞品があるよ!『優勝者にはレースで関わった店全部で使える金券一万円分』だって!」

 

「そりゃレースなんだし賞品位はあるでしょ?」

 

「一万円かぁ……いいかも」

 

「?珍しいわね。アンタがそういう事言うって、アンタそんな金銭欲強かったっけ?」

 

アイの普段と違った反応にナナは違和感を持った。ガンプラに打ちこむ姿とはまた別の印象がある。

 

「え?そういうわけじゃないけどさ……単純にちょっと今月ピンチだし……」

 

「ますます意外ね。ガンプラ以外であんまりお金使うイメージなかったし」

 

「え~それヒドイよ。元々月々の出費高いもん私、私んちほとんど自分の物は自己負担だし……」

 

「あ~そういう事」

 

一応の理由はある。

 

「フフフ……やる気になっただろう?だがあいにくお前に賞金をやるわけにはいかない!」

 

「なんですって!」

 

「勝つのは俺だ!そして俺は勝利と賞金を頂く!」

 

「言わせておけば!解ったよ!改めて受けて立つ!絶対に負けないから!」

 

アイとニワカ、二人の気合は相当なものだった。ガンプラを、否、趣味をやる以上、金銭的問題は永久の課題なのである。

特に最近は物価上昇に消費税増税と厳しい故にビルダーもお金にうるさくなりがちだった。

 

ちなみにニワカは中学生、欲しいものが増えるにも関わらず、バイトも出来ない煩わしい時期だ。余計に彼は賞金が欲しかった。

アイも今はバイトしてない為同じだった。

 

「いつになく気合入ってるわね~。ただお金絡みなのがなんだかなぁ」

 

「まぁそう言うな、趣味と金銭問題は切っても切れん縁だからな」

 

「で、オッサン、それはいいんだけどさ」

 

 

「賞金は俺の物だ!首を洗って待っていろ!」

 

「何言うの!賞金は私の物だよ!」

 

 

「どの辺が『強いビルダー程邪な気持ちはない』?」

 

「……聞くな」

 

「ま、いいわ。アタシもやるからには新作を作って挑もうかな?何作ろう?」

 

「お?じゃあRGのスカイグラスパーとかどうだ?」

 

スカイグラスパー、ガンダムSEEDに登場した戦闘機でストライクの援護用の機体だ。ストライク用のストライカーパックを装備する事が出来る等

戦闘機としては独特の特徴がある。

 

「スカイグラスパーかぁ、戦闘機作った事ないし、それで行ってみるかな?」

 

……

 

そして日曜日に至る。とはいえRG(リアルグレード)はかなり細かい、ナナはスカイグラスパー製作に時間がかかってしまい夜遅くにやっと完成。

しかし結果寝坊してしまし、二人は急いでバスに乗り市民体育館についた。エントリーを済ませ更衣室で二人はパイロットスーツに着替える。

着替え終わった二人はバッグから持ってきたガンプラを取り出す。

 

「で、アイは何で出るの?いつも通りAGE‐2E?」

 

「うん。ちょっと装備が違うけどね」

 

アイが取りだしたのはAGE‐2Eダブルバレット。『ガンダムAGE』本編でも出た装備だ。両肩から銃を吊り下げたような肩部と四角い足が特徴だ。

一対多を想定した装備なので多くのガンプラが出るレースではこの機体が有利とアイは考えたのだ。

 

「AGE‐2なら使い慣れてるからね。これで優勝は頂きだよ!」

 

アイはダブルバレットをストライダー形態へ変形させ、両手で持ちながら見せた。

 

「ナナちゃんは?いつも通りストライクはキツいと思うけど……」

 

「それだったら心配ないよ?アタシも一人で新作に挑んでみたんだ。しかもRG!スカイグラスパーだよ!」

 

「う!でも負けないからね!今日は敵同士なんだから!」

 

「さすがにアンタに勝てるなんて思っちゃいないよ。でもま、全力は出すからね。ま、それは別として見てほしいな。アタシのスカイグラスパー、見てよこのハイディテ……」

 

バッグから取り出したスカイグラスパー入りの箱を開け、ナナは固まった……

 

「どしたの?ナナちゃ……て、え……!?」

 

アイもナナの箱の中身を見て愕然とした。箱に入ってたのはRGスカイグラスパーではなく……肩の長い砲身、

マニピュレーターのない四門ランチャーな手、そして足のキャタピラと、目のない顔……そう……箱の中身は……

 

「な・なんでガンタンクが?!」

 

わけがわからないと問いかけるアイにナナは両手で頭を抱えた。ガンタンク……ファーストガンダムで登場した人型と戦車の中間とも言うべき機体だ。

接近戦用の装備もなく、素早く動く事も出来ないが援護ではかなり活躍した縁の下の力持ちといったポジションだ。

 

「し・しまった!間違えて持ってきた!」

 

同時にナナの頭に今朝慌てていた光景が思い浮かぶ、あの時確認していれば……とナナは心の中で毒づいた。

 

「えぇ!どうするの!?今から家にとってくる?!」

 

「と言っても……時間ないよ!どうしよう……!これで出たって自殺行為みたいなもんだし……」

 

「出場自体は問題ないみたいだよ。コースを走るのは空飛んでも地上を走ってもいいって言ってたし」

 

「う~、……しょうがない、コイツで行くしかないか!」

 

そしてレースが始まろうとしていた。コースは『Vガンダムで登場した渓谷』バイク戦艦アドラステア及びリシテアが走った渓谷だ。

戦艦が走った場所なだけに横幅はかなり広く、スタート地点にはかなりの飛行可能な機体が浮かびながら待機していた。

 

「戦闘機に可変モビルスーツ、太陽炉搭載機、空を飛べる機体が多いな」

 

「やっぱ飛べる方が有利って事でしょ?……それにひきかえアタシは……」

 

「ナ・ナナちゃん……」

 

Gポッドに待機したアイ、待機していたナナが、アイに通信で若干投げやりになった声を送る。

 

「なんでキャタピラ持ちはアタシしかいないのよ……」

 

地上の周囲はバイクや四足歩行の機体はいるがどれもガンタンクより早そうだった。

 

「だ・大丈夫だよきっと、キャタピラなら悪路に強いし、かえって走りやすいよ」

 

「ハァ……まーいいわ、せっかく出たんだもの。意地でも完走してみせる!」

 

ナナが自分を奮い立たせる為に深呼吸、その後握った操縦桿に力を込める。と二人が話し込んでる内にレース開始のアナウンスが流れる。

 

「10・9・8・7・6……」

 

カウントダウンの声がヘルメットに響き、目の前のGポッドのディスプレイに赤いスタートシグナルが表示される。選手達に緊張が走った。

 

「3・2・1・0!」

 

0と表示された瞬間、目の前のスタートシグナルが緑に変わった。その瞬間、一斉に機体が飛び出す。しかしその後ろで動かない一際大型な機体がいた。

 

「わかってるわね!コウヤ!」

 

「フハハハハ!!!もちろんですよ部長!」

 

コウヤのアメイジングレジェンドガンダム、しかも腹部から後ろは大型のモジュールと接続していた。(バックパックは干渉する為外している。)

 

 

これはミーティアと呼ばれる巨大補助兵装だ。ミーティアに乗ったコナミが前方の何機もの機体をロックする。

「ロックオン完了!」

 

「ガッテン部長!ポチッとな!」

 

アメイジングレジェンドに乗ったコウヤがミーティアからのミサイル、ビームを一斉に発射する。

そしてそれは前を走るガンプラめがけて横殴りの豪雨の様に降り注いだ。

 

『!!!!???うわーっっ!!!』

 

同時に何人もの選手が悲鳴を上げた。スタートダッシュで密集していたのが不味かったのだろう。ミサイルに破壊される者。前の機体にぶつかる者。

弾幕は崖を削り落石で機体を破壊される者。地表に落ちた機体と衝突する地上の機体。

避けようとして渓谷の壁に衝突する者。数十機いたであろう機体は半分以上が破壊されてしまった。

 

「これで優勝はコナミ達の物ね!!オーホッホッホ!!」

 

「そうです部長!この為にミーティアを部費で買った甲斐がありました!!」

 

「定価(8000円以上)だったから今月の部費はすっからかんだけど優勝すれば元は取れるわ!!」

 

二人は笑いながら飛び出した。コウヤとコナミ、この二人は意気投合すれば暴走の度合いは恐ろしい程上がる。

二人とも勢いで突っ走る傾向がある為だ。しかも人の話を聞かない。

バカ笑いする二人、しかし直後慌てたコナミの声が響いた。

 

「ん?!!コウヤ前見てぇ!」

 

「ん?デェーッ!」

 

次の瞬間、コウヤとコナミのミーティアはカーブになってる壁に激突した。浮かれすぎて判断が遅れたのと、

ミーティアのサイズが大きすぎた為曲がりきれなかったからだ。(そもそもミーティアの推力は戦艦並にある。)

 

「はい、失格ね」

 

衝突で本体部のレジェンドが潰れた為失格、Gポッドから出てきたコナミとコウヤにハセベの無情な声がかかった。

 

「ちょっと!コウヤが曲がってりゃ失格になんか!」

 

「いや、曲がってても失格になってたよ?『巨大補助兵装』と『トランザム』は禁止って渡した紙にルールで書いてなかった?」

 

「なん……ですって……?」

 

ハセベから渡された紙を見て「あ、ホントだ」とコナミは口に出した。次の瞬間コナミ達の所為で失格になった数十人のビルダーが一斉にコナミとコウヤを睨んだ。

 

「う……あー……皆さん怖いお顔して……」

 

観戦していたカワサキは「バカ……」と自分の額に手を置き呟いた。

 

 

「あーあ……ドジだねぇー」

 

ガンタンクに乗ったナナが衝突したミーティアを見て言った。ガンタンクのスピードが遅かった所為でミサイルの攻撃にさらされれずに済んだのだ。

 

「乗ってたのがもっと早い機体だったら危なかったな……」

 

ガンタンクで得したかもしれない。そう思いナナはガンタンクのキャタピラを走らせた。

 

「アイ……大丈夫かな」

 

 

 

「だいぶ減っちゃったな。後どれくらい残ってるんだろう」

 

ストライダー形態で渓谷を飛びながらアイは呟いた。自分はどうにかさっきの不意打ちを避けきる事が出来、トップに出ることが出来た。

しかし半分以上のビルダーが脱落してしまった所為か、まだ別の選手は追ってこない。

と、そこへGポッドに警告音が流れる。

背後からのビームだ。

 

「きたっ!」

 

なんなくかわし、そのままストライダーを加速させるアイ、撃ってきたのは『ガンダムseed destiny』に登場した可変機、ムラサメだ。

戦闘機形態に変形したムラサメはダブルバレットに追いすがり、容赦なく右翼に取り付けられたビームライフルを撃ってくる。

 

「くぅっ!ピッタリストーキングしちゃって!……ん?」

 

と、前方から何かが迫ってくる。左右のガケから、てっぺんにビームキャノンがついた、巨大なタイヤが二つこちらに降りてきた。

 

「アインラッド!?」

 

アイは叫ぶ。アインラッド。『Vガンダム』に登場した支援機だ。タイヤ状のユニットの中には機体が乗り込み動かす構造だ。

アインラッドはガンプラが発売されていない。大会側が仕組んだNPCというわけだ。

巨大なタイヤは散開し、それぞれに体当たりを仕掛ける。

 

「チッ!」

 

ダブルバレットは体当たりをかわす。が、後ろにいたムラサメはもう一機のアインラッドの体当たりを受けてしまう。

その威力は一撃でムラサメを粉砕した。

 

「チッ!優勝させる気はさらさら無いって事ね!」

 

アイは叫ぶとダブルバレットが人型に変形、そして肩のドッズキャノンを両手に持つと肩部から巨大なビームサーベルを発生させる。

それはまるで翼と言ってもいい大きさだった。

 

「せぇええええいっっ!!」

 

左右から迫るアインラッドを、ダブルバレットのビームソードは真正面から切り裂いた。

 

 

「しっかしまぁ、上は騒がしいわね~」

 

アイのかなり後ろ。ナナは遠くで繰り広げられる戦いを、眺めながらガンタンクを進めていた。

アインラッドは待ち伏せをしている為トップのビルダーしか会う事はない。ナナには無縁の相手だ。

残った機体も戦闘により撃墜され更に残りの数を減らしていた。

ただ一人戦闘に巻き込まれないナナは時折撃墜されたであろうガンプラの残骸を見る。

 

「ん!?」

 

とそこへ、一体の破壊されたアインラッドが蠢くのが見えた。中からボロボロになった黄色い機体、ゲドラフが這い出てくる。

アインラッドを操作する中身でこれもNPCだ。

ゲドラフは完全に沈黙していない様で、土偶の様な目を見開き、手に持ったビームライフルを震える手でガンタンクへ向ける。

 

「う・うわっ!」

 

慌ててナナはガンタンクの両腕の4連装ボップミサイルランチャーを撃ちまくった。ミサイルを受けたゲドラフはそのまま爆散する。

 

「こっちも呑気に走ってられないか。急ごう」

 

 

再びこちらはアイの方、コースも後半に差し掛かったところに、トップの機体を後ろにつきながら丁度撃ち落したところだ。

 

「これでまたトップ!アインラッドも今の所ないしこのまま逃げ切れば!」

 

「クハハ!そうはいかん!」

 

「!?ニワカ君!」

 

聞き覚えのある声と共に大型のビームがダブルバレットを襲う、かわしつつ後ろに現れた機体を確認した。それは『ガンダムW Endless Waltz』に登場する

サーペントという機体だ。重武装が特徴で単体ではあまりレースには不向きの機体かもしれない。だがその機体は違った。

 

「しかもメテオホッパーに乗ってる!?」

 

そう、サーペントはメテオホッパーという一輪バイク(飛行形態に変形可能で今はその形態)に乗っていた。

更にフロントカウルが改造されており、ガンダムヴァーチェという機体のGNバズーカ、更にその左右にはGNキャノンが搭載されていた。

 

「恥ずかしながら俺はガンプラ単体では並の実力しかない!だが支援機と併用すれば話は別!

この『ライドサーペント』と『ボルケーノトータス』!二つの力を見せてやるぜ!そして優勝はもらった!!」

 

ライドサーペントはダブルバレット目掛けGNキャノンを撃ってくる。

 

「後ろにつかれたままじゃやられる!」

 

空中戦で後ろにつかれる事は撃墜同然だ。アイはダブルバレットを上に大きく宙返り、サーペントの後ろに回り込もうとする。

 

「ループか!甘いぜ!」

 

ニワカはGNキャノンを上へと向ける。

 

 

「対空攻撃も!?」

 

アイが叫ぶと同時にGNキャノンが放たれる。アイは機体を縦にしビームを回避する。そしてどうにかサーペントの後ろに回り込む。

 

「これで!」

 

アイはドッズキャノンを撃とうとする。

 

「甘い!」

 

ニワカはそう言うとサーペントを立ち上がらせ、ダブルバレットにふり向く。右手にはビームガトリングガンが握られてる。

 

「なっ!?」

 

アイが叫ぶと同時にサーペントは撃ってくる。アイはドッズキャノンを撃つのを断念。回避に専念するしかなかった。

 

 

アイ達の戦っている少し後ろの地点、そこでも飛びながら戦っている二体がいた。

 

「今日ばかりは同じチームでも容赦しないッスよコンドウさん!勝つッス!アンタにも!このレースにも!」

 

「また勝つ事に拘ってるわけか!」

 

「前も今も変わらないッスよ!」

 

見慣れた二体。ソウイチのザクⅣとコンドウのミブウルフだ。ザクⅣは自力飛行が出来ない為、ベース・ジャバーという支援機に乗り空を飛んでいた。

ソウイチは並行して飛ぶミブウルフにハンドガンを連射する。

 

 

「全く……元気有り余っちゃってまぁ」

 

程々のい後ろを飛んでいたバウ・H(分離)ツチヤが呟く。

 

「だがここにいる以上手加減はせんぞ!ソウイチ!」

 

「それでいいッス!」

 

――そうさ!勝つんだ!そしてコンドウさんに結果を捧げる!そして俺は強くなって……アンタを超えてやる!!――

 

そう心で叫ぶソウイチ、

コンドウのミブウルフは頭部の鍬形、その間から円月輪状のビームを発射した。ビームチャクラムだ。それはザクⅣのハンドガンを横から切り裂き破壊する。

 

「あっ!」

 

ソウイチが声を上げる中、ミブウルフは十手とナギナタを構え突っ込む。

祭セットと呼ばれる武器セットに付属している武器だ。ナギナタは矛と柄を連結されており長さが延長していた。

不意を突かれたザクⅣはそのままコクピットにナギナタを突き刺された。

 

「最近は少し眉間のしわもとれたと思ったんだがな」

 

「……冗談言っちゃいけないッス」

 

「そっか……」

 

不機嫌そうに言いながらソウイチのザクⅣは落ち、爆発した。

 

「コンドウさん、終わったか」

 

後ろからツチヤがコンドウに近づく

 

「おぉサブロウタ。お前もやるか?」

 

「いや、いい、今日はレースに集中したいからね」

 

「そうか、さて……ヤタテの方は……」

 

 

再びアイの方、ダブルバレットは再びニワカのサーペントに追われる形となっていた。ぴったりマークされ離れようとしない。

 

「クハハハ!いつまで持つかな!?」

 

「クッ!」

 

後ろからGNキャノンが何発も放たれる。避けながらアイはどうすればいいかと思案していた。

ふとアイは横を見る。横は切り立った崖でこのステージはずっとこんな風景が続く。

 

「……試してみるかな!」

 

何か思いついた様だ。アイはガケの側面にダブルバレットを近づける。

 

 

「逃げるのか!?待てよ!」

 

ニワカもダブルバレット追いかけガケに近づく。

 

「来た!」

 

アイは後ろにサーペントがついて来ているのを確認すると。機体をほぼ垂直に傾け、両肩のドッズキャノンを斜め上に向けた。

そしてすぐさま崖に向けてドッズキャノンを連射した。

 

「な!何をする気だ!?はっ!」

 

ダブルバレットが通り過ぎた後。ちょうどライドサーペントの頭上から大きな岩が雪崩のように幾つも降ってくる。アイはドッズキャノンで崖を削りトラップにしたわけだ。

 

「こ・しゃ・く・なぁぁ!!!!」

 

振る岩を避けながらサーペントはコース内側に戻る。

 

「危なかった……っ!ヤタテは?!」

 

ダブルバレットを見失ったニワカは辺りを見回す。その時、Gポッドに警告音が響く。

 

「なんだ!?っ!」

 

ニワカが気づいた時、とサーペントの左腕をボルケーノトータスごとビームが貫通した。

 

「真下から……だと!」

 

そう、下にはダブルバレットがドッズキャノンを構えていた。続けてサーペントにドッズキャノンを放つダブルバレット

 

「お!おのれぇぇ!!」

 

直撃はしていないものの、ビームにさらされながらサーペントは黒煙をあげ墜落していった。

 

「もう大丈夫……かな?」

 

アイが再び飛ぼうとすると、コンドウのミブウルフとツチヤのバウ・Hが来た。

 

「おぉヤタテ、ニワカのガンプラらしきものが落ちていくのが見えたが……」

 

「えぇ、どうにか退けられましたよ。後はゴールするだけです」

 

「後続も来ていないみたいだし、どうだ?俺達と競争しないか?」

 

「いいですね。でも優勝は私が……ん?」

 

アイはGポッドに違和感を感じていた。画面全体が小刻みに揺れている。小さな地震でもおきたかの様だ。しかもだんだん揺れは大きくなっていく。

 

「なんですかこれ!?地震?」

 

「いや!見ろ!」

 

アイとコンドウ、ツチヤのGポッドに警告音が響く。そして地響きと共に『それ』は姿を現した。自分達より10倍は大きいであろう高さ。

渓谷全体をゴゴゴ……と揺らす巨体と二つのタイヤ。その正体は……

 

「巨大なバイク!?じゃなくて、あれってまさか!!」

 

巨大なバイク……否、戦艦が走ってきた。

 

「ア!アドラステア!!」

 

コンドウが叫んだ。アドラステア、Vガンダムに登場する強襲用戦艦、その姿は艦艇にバイクの前輪と後輪をつけたとしか言いようがない。

全高150m、全長は426m、武装面でも全身にヤマアラシの針の如く連装砲と対空砲を装備、

劇中ではリシテアという巡洋艦と共に艦隊を編成、地球の都市を直に踏み潰すという血も涙もない作戦を敢行した恐るべき戦艦だ。

ガンプラバトル時のアイ達の機体が10m代後半位の大きさしかない事を考えるとその大きさが分かるだろう。

 

「何ボサッと止まってるんだ!」

 

「お先に!」

 

茫然と止まっているアイ達を後ろから追い上げてきたガンプラ達が数機追い越す。大型戦艦がいると言っても渓谷をギュウギュウに詰める程の幅はない。

脇を通り抜ければ楽に突破できると考えたのだろう。

 

「あ!待て!不用意に近づくな!」

 

「何言ってるんだ?これ位迂回すれば……なっ!」

 

追い越したガンプラのビルダーは驚愕した。対空砲火が一斉に自分達目掛け放たれた。更に横のハッチからアインラッドが続々と出てくる。

 

『うわぁあああっ!!』

 

追い越したガンプラのビルダー達が悲鳴を上げる。上を飛んでいた者は対空砲に撃墜され、下を走っていた者は護衛のアインラッドに撃墜され、

またある者は無理に通ろうとしてアドラステアに衝突してしまった。だがその中で一機だけアドラステアの地帯を突破したガンプラがいた。

 

「へへっ!どうだ!抜けたぜ!後はこのままゴールするだけ……」

 

そう突破したビルダーが言い終わらない内にそのビルダーの乗機が爆発した。

 

「!?攻撃は受けてないのに!」

 

「いや、見るんだヤタテ!」

 

コンドウが機体の指で示す、アドラステアの後方には渓谷の端から端までピンク色のビームが、壁の様にステージを覆っていた。

 

「バリアであの先に行けない!?」

 

「先に行くにはあれを倒さなければいけないという事だね!」

 

「大会側が金券渡す気が最初からないってのがありありと分かりますよ。まったく」

 

アドラステアは渓谷を進みながら各々の機体へ連装砲を撃ってくる。こちらを追いつめるつもりだ。散開し、回避する三機、

 

「コイツを倒さなきゃ進めませんよ!」

 

「どうする?コンドウさん」

 

「ここは三人で手を組もう!俺が奴らの攻撃を引きつける!その隙にお前らはアドラステアを!」

 

「なら俺も陽動に加わるよ。数が多いほうがいいだろう?」

 

「助かる、サブ、その隙にヤタテはアドラステアのブリッジ(艦橋)を!」

 

「解りました。やってみます!」

 

そして全員が一斉に取りかかる。ツチヤのバウ・アタッカーはアインラッドを引きつけようとビームライフルでを撃つ。がアインラッドの正面には通用しない。

 

「やはり真正面は硬いか!だが!」

 

アインラッドはバウ・アタッカーを潰そうと迫る。だが直後、バウ・アタッカーの下半身、バウ・ナッターがアインラッドを側面からエクスカリバーで突き破る。

アインラッドの弱点は側面だ。(中のゲドラフはビームシールドで側面をガードしてはいるが)

アインラッドが倒された情報はアドラステアにすぐさま伝わる。アドラステアは連装砲をバウ・アタッカーに向け発射しようとする。

だがその部分に球状のビームが撃ちこまれ連装砲は爆発。遠くでコンドウのミブウルフがトライパニッシャーを撃ったのだ。優先順位を変えたのか、

連装砲と対空砲火がミブウルフ目掛けて放たれる。コンドウは連装砲を難なく回避する。

 

「そうだ!こっちへ来い!」

 

コンドウの叫びに応える様に前後からアインラッドが襲ってくる。コンドウは手に持った十手と矛でアインラッドを受け止めた。回転するタイヤに十手と矛が激しい火花を散らす。

注意の目はコンドウ達に注がれている。

 

「ヤタテ!今だ!」

 

バウ・アタッカーで連装砲を引きつけていたツチヤが叫ぶ。アイはダブルバレットで一気にアドラステアのブリッジに迫る。このまま肩のビームソードで切り裂くつもりだ。

 

「いけるっ!!」

 

対空砲をかいくぐりながら、肩からビームソードを発生させ突っ込むアイ、もう少しでブリッジに届く、だがその時に警告音がGポッドに響く。

伏兵として潜んでいたのか、一機のアインラッドはダブルバレットの横から突っ込んできた。

 

「側面!?」

 

アイが気づくとダブルバレットは右側から跳ね飛ばされ落ちる。これにより右肩のビームサーベルとドッズキャノンは破壊されてしまった。

 

「ヤタテェッ!ハッ!」

 

ツチヤは叫ぶと同時に上からアインラッドが襲いかかってくるのに気付いた。眼前に広がる回転するタイヤ……

 

「俺とした事が……」

 

気づいた時には遅かった。バウ・アタッカーはそのままタイヤに潰され落ちて行った。

 

「サブ!何という事だ……」

 

ツチヤがやられた事はコンドウ達も気づいた。自分の立てた作戦で勝てると楽観視してしまった自分をコンドウは後悔する。

 

「このまま……やられるの……?」

 

墜落したダブルバレットの中、アイが呟く。だがその時だった。

 

「まだ諦めんな!!」

 

聞き覚えのある声が響く。

 

「ニワカ君!?」

 

声はライドサーペントに乗ったニワカの物だった。ニワカの声に続くように、ボルケーノトータスのフロントカウル、GNバズーカも大きな音を立てる。

最大まで蓄えたエネルギーが轟音を上げていたのだ。

 

「チャージには時間がかかる!アドラステアがお前らを引きつけていたのは都合が良かった!」

 

アドラステアもニワカが何をするのか気付いたのだろう。アインラッドをサーペントに向かわせる。

 

「今さら!!遅いんだよぉぉッッ!!」

 

ニワカが叫ぶとフルチャージしたGNバズーカが放たれる。エネルギーの濁流は防ごうと前に出たアインラッド数機を飲み込み、更にアドラステアのブリッジを飲み込む。

光の洗礼を受けた艦橋は蒸発しアドラステアの動きは鈍り、そして沈黙した。同時にバリアも消失、アインラッドも止まった。

 

「止まった……」

 

「良かった……でも凄い……一撃で」

 

アイは安心すると共にボルケーノトータスの威力に驚く。それと同時に複数のガンプラがアイ達を追い越す。

 

「あっ!」

 

「へへっ!アドラステアを倒してくれてサンキュー!」

 

「後はボク達がゴールしてやるから!」

 

アイ達がアドラステアを倒すのを待っていたのだろう。

 

「ま!待ちなさい!!」

 

「漁夫の利というわけか!俺も急がなければ!」

 

アイはダブルバレットを変形させると追いかける。コンドウもそれに続いた。

 

「俺を……忘れるなよ……」

 

その後ろでニワカのサーペントの眼が輝いた。

 

 

「こっちが倒すのを待っていてぬけぬけとゴールするなんて許せないんだから!」

 

アイはダブルバレットの残った左肩のドッズキャノン、ふくらはぎのカーフミサイルを飛ばしながら前にいるガンプラを撃ち落して行った。

コンドウのミブウルフもまたビームチャクラムで一機ずつ撃ち落してゆく。

先程のアドラステアが最終防衛線だったのだろう。アインラッドは一体も出てこない。

 

「残るは一機!」

 

前方を飛ぶガンプラ、二門のビーム砲を突き出した戦闘機に変形したセイバーガンダム『こちらも登場作品はガンダムseed destiny』

に向けてドッズキャノンを撃つ。しかしセイバーはそのビームを左に回避、

 

「!?」

 

「甘いな!こちらは今まで温存して飛んできたんだ。消耗していたお前らの射撃なんて当たらないぜ!」

 

セイバーのビルダーが叫ぶ、が、横から大型のビームが飛んでくるのが見えた。

 

「な!何だ!うわぁぁ!!」

 

そのままセイバーはビームに飲まれ爆散、アイは横を見ると愕然とした。ライドサーペントが黒煙を上げたボルケーノトータスに乗り

垂直である渓谷の壁を、アイ達と並行しながら走っていたからだ。そしてGNキャノンは真上、アイ達から見てこちら側を向いていた。

 

「そ!そんな!壁を走るなんて!」

 

「飛行は出来ないがこれ位の事は出来るぜ!まだ勝負はおわっちゃいない!覚悟しろ!」

 

サーペントはそのままGNキャノンでダブルバレットを狙い撃つ。ダブルバレットはビームを掠めつつも回避、

 

「うわっ!でもね!」

 

アイはストライダー形態のまま、左肩のドッズキャノンを切り離しビームサーベルを発生、

 

「ヨレヨレなのはアナタだって同じなんだから!」

 

そのままダブルバレットと肩を捻り渓谷の壁、ライドサーペントに叩きつけた。

 

「う!うわぁぁ!!」

 

切り裂かれたサーペントとボルケーノトータスは爆発、と思いきや当たる前に回避行動をとったのだろう。

斬ることは出来たが直撃には至らずまだボルケーノトータスは走っていた。

 

「そんな!致命傷にはなった筈なのに!」

 

「フフフ……やってくれるぜ……」

 

ニワカはもうサーペントが持たないと悟る。だがこのまま終わるつもりはなかった。そんな彼が取る行動は……

 

「このボルケーノトータスは俺の足、こいつがやられる事は俺自身がやられる事を意味している。だが一人じゃやられねぇ!」

 

ニワカは、サーペントとボルケーノトータスをガケの上てっぺんにのぼらせるとアイのダブルバレット目掛けて飛んだ。

 

「俺と一緒に落ちろぉぉ!!」

 

ダブルバレット目掛けてボルケーノトータスが迫る。

 

「あーもう!うるさい!」

 

アイはカーフミサイルをボルケーノトータスに撃った。

 

「う!うわっ!」

 

ミサイルを受けたボルケーノトータスはコントロールを失い落ちていく。しかもその先には……

 

「コンドウにぶつかる!?」

 

「な!何!こっちに来るだと!うおぉぉ!!」

 

ダブルバレットに近い場所で飛んでいたミブウルフに背中から衝突。

ミブウルフは疑似太陽炉を搭載していたバックパックを失い、ボルケーノトータスと共に谷底へ落下していった。

 

「コンドウさんが……ニワカ君……自分の命と引き換えに(※死んでません)私に優勝を託してくれたんだ……解ったよニワカ君!私必ず優勝して賞き(ガシッ)あれ?」

 

自分の優勝を確信した所為か、失礼な事を言うアイのダブルバレットに誰かがしがみ付いた。、

 

「何勝手に人を殺してんだコラァ!!ぶつけたのはボルケーノトータスだけだぁ!」

 

「うわ!生きてた!」

 

ニワカのライドサーペントがアイのダブルバレットに左足からぶら下がる形で掴みかかっていた。サーペントは上半身のみ。腕も右腕しか残ってない状況だったが、

 

「このまま地面にひきずり降ろしてやる!」

 

「くっ!しつこい男は嫌われるよ!」

 

振りほどこうとアイが操縦桿をガチャガチャと動かす。が、それだけでは済まなかった。

 

「フハハ~!逃がさんぞぉぉ!」

 

「そうだぁ!まだ俺は飛べる!」

 

『え!?』

 

アイとニワカが同時に驚く。ダブルバレットのすぐ隣でコンドウのミブウルフがボロボロになりながら飛んでいたからだ。

 

「疑似太陽炉は失ったが残った粒子でここまでこれる事は出来た!俺は力尽きるまで諦めんぞ!」

 

「ぎゃー!ふえてるぅぅ!!」

 

しかしもうミブウルフに飛ぶ力は残っていなかった。すぐ失速しそうになる。

 

「ま!まだ落ちるなぁ!」

 

とっさに隣のダブルバレットの腰にしがみつくミブウルフ。ダブルバレットの重量はますますかさみ、ヨタヨタ飛ぶダブルバレット。

 

「うわーっ!どこ触ってんですかエッチィ!!」

 

「ガンプラ越しだろうが!」

 

「うおおお!いちまんえんんんん!」

 

と、その時だった……

 

ばきっ

 

ダブルバレットのストライダー形態、その腹部の赤い接続パーツのピンと尻と背中のジョイントパーツが……折れた。

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

アイ、ニワカ、コンドウの三人が同じ言葉を言うと共に……真っ二つになったダブルバレットはサーペントとミブウルフとまとめて地面に落ちた。

 

『えええええええええええ!!!!!!!』

 

三人の叫びが重なった後、地上に激突した三機と三人のビルダーはまとめて失格となった。で……結局レースがどうなったかと言うと……

 

 

「え~優勝は!なんとガンタンクのハジメ・ナナさんです!!」

 

最終的にナナだけが残ったため優勝はナナになった。故に二位も三位も立つ者はいないという状況だったが

 

「おめでとうございます!」

 

係員がナナに優勝トロフィーと金券の入った祝儀袋を渡す。ナナは苦笑しながら受け取った

 

「あ・ありがとうございます……嬉しいは嬉しいけど……いいのかなこんなんで……」

 

付け足すようには小声でナナは呟いた。

 

「いいのかなぁ。こんな終わり方で」

 

離れた場所でツチヤがナナと同じセリフを、苦笑しながら言った。

 

「最後に残ったのアイツなんだから仕方ないだろう?」

 

「まぁ『無欲の勝利』という事ッスね。『ウサギとカメ』とも言う」

 

「で、そのウサギさん達は?」

 

「向こうでヘコんでる」

 

コンドウが指を刺す。一番欲をギラつかせていた二人がヘコんでいた

 

「いちまんえん……」

 

「ナナちゃん……」

 

とまぁ初めてのガンプラレースは凄まじいグダグダで幕を閉じた。第二回からはさすがに普通のレースにしよう。と思慮不足だった役員達は思ったのだった。

 

「ところでヤタテさん、ハジメさんがガンタンク持ってたのが意外でしたけど、なんで持ってたんスか?」

 

「……あーナナちゃんね、ガンプラでガンタンクが一番可愛いんだってさ」

 

「あの人もあの人で変わってるッスね……」

 

 

ネタ被りは百も承知!ご無沙汰です。コマネチです。今回はレースの話となりました。

前回サバイバル大会をやったけどそれらしい事があまりできなかったので今回は派手にやってみました。

ご意見ご感想ありましたらよろしくお願いします。

 

そして今回の登場オリジナルを投稿しました。

ライドサーペント&ボルケーノトータス

http://www.tinami.com/view/656289

ガンタンク

http://www.tinami.com/view/656290

よろしければどうぞ。


 
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