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前回までのあらすじ
前回のタイトルに詐欺はございません
話が若干進んだかな?
深刻な女性分不足
アレから二ヶ月の時が過ぎた。
今日も今日とて仁は忙しい。
「回避なんてしてるんじゃねえっ!」
「するわボケっ、後キャラが違うだろこのピンクの筋肉達磨!!」
必死に地面を転がり貂蝉の抱きつき攻撃を避ける仁。
「あらんっ、仁ちゃんがいい感じだったから、ちょっと本気になっちゃたわん」
「キモいっ」
鋭い回し蹴りを放つが、貂蝉はクネッとしなを作らせながらソレを回避する。
「ちっ、そっちこそ避けてるんじゃねえよッ!」
「いやだわ、こんな気の乗った蹴りを喰らったら乙女の柔肌に傷がついちゃうっ」
「乙女(ゴリラ)の柔肌?」
「誰がババコンガの皮膚だごるぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「言ってねえよ!?」
吹き飛ばされる仁。どうやら今日も彼の負けらしい。
家に度々訪れる貂蝉に模擬戦をしてもらうことになってはや二ヶ月。
仁は貂蝉相手に一度も白星をあげることができないでいた。
「また負けたのか、情けない」
「…いや、人類とゴリラが戦ったら負けるだろ、常識的に考えて」
「どぅわれが、コンゴウですって!」
「まぁいい」「何がいいのよ徐福ちゃん」「いや、話が進まん…行くぞ仁」
庵から出てきた徐福が地面に大の字になっている仁の服の首を掴み、家の中へと引きずっていく
「ちょ、まて、少し休憩、休憩を…」
「時間は有限だ」
「俺の生命力も有限だ~!」
「仁…人間の可能性は何時だって無限なんだぞ?」
第一の地獄、ピンクのビキニマッチョ地獄が終われば次は学問の地獄である。
文字を覚えるまでは優しかった徐福であるが、文字を覚えた後はスパルタであった。
(いや、スパルタってのも甘いよ?)
「なぁ、仁…なんでこんなことも分からないんだ?ああ、うん、お前は人間以下なんだな」
「ちょっ」
「すまんな、俺は人間の言葉しか分からないから…お前に教えるのは無理みたいだ」
「待て、どうしてそうなるっ、後、その手にもった鍵はなんだ!?」
「コレ?ああ、お前の夜寝てる居間の鍵だよ?コレを貂蝉に渡そうかと思って…」
「…徐福先生、真面目に、真面目にやるからそれだけはご勘弁を」
ズササササーと見事な土下座を決める仁。徐福はモノを教える際に暴力は振るわない。
しかし、彼の言葉の刃は暴力以上に人を傷つけ、的確に弱点を突いてきた。
「じゃあ、今日中に孫子を全部読もうか」
にやりと、髭と髪の中から笑う徐福。
(最近分かってきた…俺の回り、碌なやつがいねえ)
類は友を呼ぶという事である。
諦めて机の上を見ると、書の山が築きあがっていた。
「あの、その、なんだ…」
「13篇、82巻、図が9巻…まぁ、簡単じゃないか?」
「えーと…」
「さぁ、頑張って覚えろ♪」
「はい…」
諦めて書に取り掛かる。
この日仁が眠りに入ったのは明け方であった。
「死ぬ、こんな生活をしていたら俺は死んでしまう」
仁は町を歩きながらブツブツと呟いていた。
今日は、日々の雑貨や日持ちする食料を仕入れに街に来ている。俗に言う買出しだ。
此処最近のハードワーク過ぎる毎日のほんの一時の休憩、それがこの時間である。
「何しけた顔してるのさ、仁さん?」
「おや、仁じゃないか今日はうちによっていくのかい?お安くしておくよ?」
2~3度来たときに見知った顔が声をかけてくる。
「はは、ちょっと此処最近お疲れ気味でさぁ」
気の無い返事を返しながら、さらに町を歩き回る。
仁がとある店の前を通りかかると、店の親父が声をかけてくる。
「仁さん、あんたに教えてもらった料理が大当たりさ、コレもってけよ」
そういって、蒸篭から蒸しあがった饅頭を出す親父。
「お?おっちゃん、本当に作れたの?」
以前、此処で肉まんを食べたときに、ちょっと話をした料理。
まさか再現するとは思わなかった仁は店の親父に驚く。親父は得意げににやりと笑う。
確かに、店の中をのぞくと客…とりわけ、女性の客で店は満席になっていた。
「ふふ、仁さんに聞いたのとはちょっと違うかもしれねえけど、コレが美味いって評判でなぁ」
「どれどれ」
そういって、饅頭を二つに割る。中には肉の餡ではなく、小豆を煮込んだあんこが詰まっている。
ホカホカ湯気を立てるそれを口に運ぶと、一口齧る。確かに、日本で食べたものとは違う。
「…こりゃ、蜂蜜かい?」
「お、分かったか、砂糖ってのがどうにも手に入らなかったんでな、蜜で似てみたのさ」
「ちょっと、甘いが…女には受けるかもな」
「ああ、女性の方が好むな、どうだい、あんたのいってた「あんまん」ってのはこんな感じなのか?」
「おう、ちょっと違うが、こんな感じだ」
「何か改良点はあるかい?」「そうだな、ちょっと餡にゴマの油を混ぜると風味がよくなるかもな」「ほほぅ…よし、今度やってみよう」
「商売熱心だねえ」
喋りながら食べていた饅頭の最期の一切れを口に放り込むんだ仁がしみじみと呟く。
「あたぼうよ、コレが俺の生きがいだからな!」
「さよけ、んじゃ、コレごちそうさん」
「ははっ、アンタだったら何時でも歓迎するから、また何か思いついたら教えてくれ」
「はいよ」
そういって店を後にする仁。
その後も買い物を続けながら、街の人と交流を広げる。
こうやって街の人間が話しかけてくるのは、人との間に垣根を作らない仁の性分もあったが
(ま、何より徐福の名前のおかげなんだがな)
徐福の名前は街でも有名で「変わり者の学者先生」として知られていた。
曰く、母の病が徐福から貰った薬で全快した。
曰く、働かない父を徐福が説教したら、次の日からガタガタ震えながら働くようになった。
曰く、雨が降らないから困っていたら、徐福が祈祷をして雨を降らせた。
とにかく、街の人間は徐福を信頼しているようだ。
その彼のところから来た人間という事で最初からそれほど警戒はされておらず、逆に歓迎されたものだ。
そんな事を思い出しながらぶらぶらと街を歩く仁。
「きゃあああああああああああああああああああああ!」
彼の耳に女性の悲鳴が聞こえたのはその時であった。
悲鳴が聞こえたのは、昔徐福が住んでいた余り治安のよろしくない場所である。
(俺は何かこういうことに縁があるのかね?)
急いで駆けつけると、メガネをかけた、ちょっときつめ目つきな女の子が
どう考えても、君達出る作品間違えてませんか?的なモヒカンたちに囲まれていた。
(え、何、街角が世紀末?)
「あ、あんた達、先生の家に案内してくれるんじゃなかったの!?」
「ああ~ん?案内しますよ?ただし、何時案内するとはいってない、ソレが一年後でも壱百年後でも問題ないはずだぁ!」
「な、何いってるのよ!?」
「ぐへへへへへ、アニキ、コイツ、高く売れますかねえ?」
「そうだなぁ、身なりもソコソコだし…身代金もとれるかもしれねえなぁ」
アニキと言われたモヒカンがにやにや笑いながら女の子を舐るように見る。
(あー、モヒカンの大きさで偉いのかこいつ等)
一方、仁は近寄りながら、意味も無い事を考えていた。
少女は逃げようとするが、モヒカンという生き物は数が多く逃げ道はないようだ。
「うえっへっへ、何処にいこうってんだい、お嬢ちゃん?」
「ひっ」
少女が怯える。ソレを見て歓声を上げるモヒカン。
仁はアニキと呼ばれたモヒカンの後ろに立つと、肩を叩いて声をかけ
「おいおい、何をしてるのさ」
「は?てめえなんだ…ブベラッ」
相手が答える前に思い切り顔面を殴った。
勢いよく吹き飛び壁にぶつかってピクピクするモヒカン。
「ア、アニキ!?」
「てめえ、何しやがる!」
「囲め、囲んじまえ!」
騒ぐ、他のモヒカン。
少女は口をぽかんと開けて、仁を見ている。
「何、ちょっとした、ボランティア活動さ。街は綺麗にってな?」
肩をすくめておどける仁。そんな態度にモヒカン達は怒り狂い
「何が歩乱手鋳亜だ、ぶっ殺す!」「わけのわからねえこといいやがって!」
「アニキの仇!」「俺達、蒙非官党のモノと知ってるのか!」
等々わめきながら、各々獲物を手に取り、仁向かい襲い掛かってくる。
「やれやれ…もう少し穏便に生きられないものかね?」
最初に飛び込んできた男の脚の甲を思い切り踏みつける。
つぶれたヒキガエルのような声を上げ、男が歩みをとめると、片手で相手の腕を払いそのまま鳩尾に肘を叩きこむ。
「まず、ひとつ…いやはや、ピンクのバケモノと比べるのもなんだが”弱い”な」
意識を失った男を地面に投げ打つと次の相手を迎え撃つ。
今度は大鉈を振り回すモヒカンだ。
「ハッハー、俺の大鉈が見切れるか!」
「…」
振り回す鉈を気にせずに間合いを詰める仁。無論、軌道が見えてる鉈に当たる道理もなく、相手と息がかかる距離まで近づく。
「ひっ」
驚くモヒカンを軽く押す。モヒカンは反射的に倒れないように前に体重をかける。
その力を利用し、腕を取り巻き込むような形で変形の一本背負いを決める。
「ぐぇ」
「これで、二つ」
起き上がる仁。回りのモヒカンはあっというまに二人倒された事に驚き
「相手は一人だ、二人纏めてかかれ!」
「お、お前がいけよ、俺はあんなバケモノの相手は嫌だッ」
「俺は仲間を呼んでくる、お前等、後は任せるぜ」
などともめ始めた。
仁は、地面に落ちた先ほどのモヒカンガ持っていた大鉈を拾うと、両端を手に持ち
「お前等、まだ続けるなら…」
”気”の乗った膝を叩きつけて、大鉈をへし折る。
「こうなるけど、やるかい?」
にっこりと笑う仁、ソレに対して
「ひぃ、本物のバケモノだ~!」
「なんだ、コイツ、頭おかしいんじゃねえか!?」
地面に落ちた仲間も放っておいて、逃げ始めるモヒカン達。
仁はそれを見て苦笑すると、地面に座り込み今だ驚いている少女に
「立てるかい?」
と声をかける。少女は立ち上がろうとするが足元がおぼつかない。
「ごめんなさい、腰が抜けてしまったみたい」
「まぁ、こんな人外のモヒカン連中に絡まれたらそーなるわな」
そういって、少女を抱きかかえる。
「へ?」
「え?」
「なんで、ボクを抱きかかえて…まさか、アンタも」
そういって、じたばた暴れる少女。
「いや、此処危ないからな、コイツラも何時起きるかわからんし」
地面に寝転がるモヒカン達をつま先で突きながら仁が説明する。
「う…お、おかしな所に触らないでよね」
「はいよ、落ち着ける所まで行くか」
「いかがわしい所じゃないでしょうね!」「用心深いこって」
そんな訳で再び、先ほどの饅頭屋に戻ってきた仁は
店の親父に事情を話し、店の奥の方の席に少女と向かい合って座っていた。
「で、なんであんな連中についていったんだ?」
「あいつ等が探している人の家を知っているって言うから…」
少女は出された饅頭をぱくりと齧ると、罰が悪そうにそっぽを向きながらそう話す
「ああ、そういえば先生が~とか言ってたな」
「あ、そうよ…アンタ、ちょっと聞きたい事が」
「仁だ」
「ええと、仁、ちょっと聞きたい事があるんだけど、いい?」
「構わんよ、まぁ、この街に住んでないから知りたいことを知ってるとは限らんけどな」
茶を啜りながらのほほんと答える。
「徐福って人の家を知らない?」
「ぶっ」
横を向いて茶を噴出す。
前に吹かなかったのはナイスと、自分で自分を褒めてやりたい。
回りの客が一斉に仁の方を向くが、手を振り”なんでもない”と伝える。
「知ってるの?」
目の前の少女は予想外だったのか、目を丸くして仁を見ている。
「あぁ、知ってるが…その前に、お前さんはいったい誰で、徐福になんのようなんだ?」
そう言うと、少女は少し考える。どうやらこちらを完全には信じていないようだ。
(まぁ、先ほどあんな目にあってすぐに信じろというのが無理な話なわけだが…)
どうするかと、仁が考えていると
「ボクは賈駆、徐福先生に学問を教えてもらう為に尋ねてきたの」
「…なるほど、で、急に名前を教えてくれる気になったのは、またなんでだい?」
理由を問う
「急いでいるからというのが一点」「なるほど」
「街でボクを助けてくれたのも理由ね」「いやいや、実は皆グルかも知れないぜ?」
「ソレは無いわ、街の人のアンタ…じゃなかった仁に対する対応や、この店の店主からの印象もそうは取れなかったもの」
「はぁ…見てるところは見てるのか」
思わず、パチパチと拍手をして賈駆を褒め称える。
「つまり、今悩んでいたのは”振り”で、俺に”まだ信用されてない”と思わせる為ってところかね?」
「うっ、其処まで考えてはいないわよ」
にやりと笑う仁に罰の悪い顔をする賈駆。
「まぁ、俺は徐福のところで世話になってるからな、そういう話なら連れて行っても構わんさ」
「そう、ありがとう」
ほっとした顔で礼を言う賈駆。
だが、仁は微妙な顔つきで
「まぁ、余り師事するのはおすすめしないがな…」
と、聞こえない声でぼそっと呟いたのであった
あとがき
まずは投稿が遅くなりまして本当に申し訳ありません
さすがに正月休みを抜けて少々忙しくなりまして…(土下座)
ご意見、ご感想等ありましたらコメントでお願いしますー
貴方の一コメントが作者のケツを叩きます(キリッ
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最近寒いですね
風邪を引いたみたいで、ちょっと辛い毎日です
こ、今回こそ新キャラが出ますよ
大丈夫、俺を信じて
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