No.654159

宇宙(うみ)の旅人と、オアシスと-時空を超える者 外伝-

こしろ毬さん

かなり前に描いていたのにアップするのを忘れてました(笑)。
あるところでイラストのリクを頂いて、それを描いていたらおっこちたお話です。ちなみにリクは「島くんと佑」。
時期としては『時空~』でも『想いは再び~』でもおっけーな感じにしたつもりです。

にしても、古代くんがすっかり「にーちゃん」モード全開ですね(大笑)

2014-01-13 00:58:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:642   閲覧ユーザー数:640

お昼時のヤマト食堂。

 

ブラックコーヒーを飲み干し、まだまだ時間はあるのだが第一艦橋に戻ろうかと、佑介が立ち上がろうとしたとき。

 

「…あれ、佑介ひとりか?」

 

上から降ってきた声。

 

「島さん!」

佑介が振り返ると、航海長の島大介が立っていた。

島も食事は終わったのか、コーヒーが入ったマグカップを持っている。

佑介は「空いてますよ」というように隣を示しながら、

「俺もおかわり貰ってきますね」

と、厨房に向かった。

 

「おや、佑介くん。コーヒーのおかわりかい?」

生活班・炊事科の平田一が、その温和な顔を綻ばせた。

隣にいたチーフの幕之内勉も、眼鏡の奥で目を細めている。

「はい。平田さんが淹れるコーヒーって美味しいですから」

「嬉しいこと言ってくれるねえ」

佑介の台詞に、平田は更に笑みを深めてそのマグカップを受け取る。

 

実は佑介。

コーヒーはかなり飲み慣れていて、結構うるさいほうだ。

味、色、香り。どれも一口だけでその違いを見極めてしまう。

母の小都子からは、

「将来、バリスタかコーヒーソムリエになっちゃえばいいのに」

などと言われるくらいで、その佑介に「美味しい」と言われるということは、お墨付きを貰ったも同然なのだ。

 

「はい、お待たせ」

しばらくして平田が、香ばしいコーヒーが入ったマグカップを佑介に渡す。

「ありがとうございます」

佑介はそれを受け取りつつ、

「…あ、今度俺にもコーヒーをご馳走させてください。お世話になってるし…」

平田はちょっと目を見開いたが。

「ああ、楽しみにしてるよ」

破顔一笑という言葉が似合うほどの満面の笑みを浮かべたのだった。

 

席に戻ってきた佑介に、島は。

「…古代と一緒じゃなかったのか?」

「さっき、呼び出しがあって行きましたよ」

マグカップをテーブルに置いて椅子に座りながら、苦笑気味に答える。

「そりゃまた…ぶりぶり言いながら行ったろ、あいつ」

「あはは…」

呆れた表情で言う島。佑介は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 

「…でも、佑介が来てから古代も変わったな」

「え?」

コーヒーを一口飲みつつ言う島に、佑介は僅かに目を見開いた。

「ヤマトが戦艦だということは佑介も知ってるだろ。…普段なら、いつもピリピリした空気で張りつめてるんだよな」

それは、佑介も初めてヤマトに来た時に感じたものだ。

戦艦ゆえに、いつ何時戦闘に巻き込まれるかわからない。

そう思うからこそ、常に緊張した雰囲気が漂っていた。

「特に古代は、指導者…艦長代理だ。一瞬たりとも誤った判断をするわけにはいかない」

「…それは…命に関わるから…?」

躊躇いがちに言う佑介。

「そう。…だから当然だけど、緊張した顔しか思い浮かばなくてね」

苦笑気味に笑って、島は佑介を見た。

「それが、佑介がヤマトに現れてからは、よく笑うようになってさ。雰囲気も柔らかくなったというか」

「…それ、古代さんからも似たこと言われましたよ」

「古代が?」

島の言葉に頷く。

「俺がヤマトに現れてから、みんなの表情が柔らかくなったような気がするって。…俺、なんにもしてないのに」

ふっと苦笑気味に笑う。

 

「…きっと、佑介は『オアシス』なんだろうな」

 

ぽつりとつぶやくように言う島。

 

「え…」

「そこにあるだけで、旅人を癒すオアシス。…うん、ぴったりだな!」

島はにかっと楽しげに笑うが、対する佑介は。

「そ、そんなことないですよっ。そんな大それた…」

慌てて手を振って否定するだけだ。

 

そんなこんなで、休憩時間が終わるまで島と佑介は色んなことを話していたのだった。

 

 

「お帰り…って、島と一緒だったのか?」

「うん、ばったり会っちゃって」

第一艦橋に戻ってきた佑介に、進は目を瞬かせて尋ねた。

「佑介とは、初めてゆっくり話ができたよ」

島もにこにこ顔だ。

「色々、教えてもらったよ」

「そうか」

年相応の屈託のない笑顔で言う佑介に、進はいつもの穏やかな笑みを浮かべるが…。

「…ところで、島?」

「なんだ?」

何の疑いもなく進を振り返った島だが、その瞬間顔が妙に引きつった。

 

「いやな。ちょーっと航路のコースのことで話があるんだが」

 

にっこりと笑っている進。だがそれが恐ろしいと感じるのは気のせいか…?

「い、いや、これからチェックに入るからまたあとで…」

島は引きつった笑顔のまま、じわりじわりと尻込みする。

佑介は…と言えば、ふたりの様子に?マークを浮かべている。

 

「いいからいいから。たまにはゆっくり話したいしな」

進は半ば強引に、島の腕を引っ張って第一艦橋から出て行った。

 

…その後に向こうで悲鳴が聞こえたのは、気のせいだと思いたい(笑)。

 

 

「…な、なんすか? あれ」

「佑介くんは気にしなくてもいいの」

目をぱちくりさせている佑介に答えながら、

 

(もう…古代くんってば。ある意味“兄バカ”なんだから)

 

ほう、と溜め息をつく雪ちゃんでした(笑)。

 

 

【おまけ】

 

古代「島っ! おまえ佑介に変なこと吹き込んでないだろーな!?」

島「い、言ってない、言ってないってば~!」

 

 

 


 
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