No.650871 真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第二十話2014-01-01 22:10:42 投稿 / 全12ページ 総閲覧数:9439 閲覧ユーザー数:6434 |
~陳留にて~
「…報告は以上です」
「ふん、麗羽もいい気味ね。何進を裏切り、張譲を見捨てて南皮に戻った結果
がこれなんだから」
夏侯淵からの報告を聞いた曹操はやれやれといった感じの表情でそう言って
いた。
「それで?北郷がいたのも間違いないのね?」
「はっ、間違いなく…袁紹との会談はその者が当たっていたようです。袁紹側
に放った間者よりそのような報告が」
「袁紹側か…仕方ないわね、何せ洛陽に放った方は皆失敗しちゃってるし」
「はぁ、まさか全員無傷で帰されてくるとは予想外でしたが」
二人の言った通り、曹操が洛陽に放った間者は全て無傷で捕らえられて丁重
に帰されてきていたのである。実はそれは一刀の命を受けた及川と文聘配下
の者達によって行われたものであった。一刀は二人に怪しいと思われる者を
捕縛するように命じていたのだ。元々情報だけでなく人の細かい素振りから
も選定する能力が高い及川と、博徒出身だけあってそういう裏の者達に顔が
広い文聘の二人が合わさり、普通なら潜り込んで怪しまれないような所から
もそういう者達を見つけ出していたのであったが、今の曹操達にはそこまで
はまだ分からなかったのであった。
「それで?盧植もいたのよね?」
「はっ、確かにその場に盧植殿も同席されていたようですが、あくまでも主は
北郷の方だったという事です」
「そう…北郷、やはりあなたは只者では無かったという事ね」
「しかし最初華琳様にこの北郷という男について探るよう言われた時は何かの
間違いかと思ってましたが…さすがの先見の明です」
「ふふ、そう?でも、どうやってそこまでいったのかしら…元々は何処かから
盧植の下に派遣されて、しばらく行方をくらましていたと思えば今度は新帝
の代理人として麗羽との会談に臨むって…」
さすがに命と一刀の繋がりを知らない曹操にその疑問を解決する術は無かっ
たのであった。
・・・・・・・
~南陽にて~
「なぁなぁ、七乃?」
「はぁ~い。何ですか、美羽様?」
「麗羽が大将軍のなったのは嘘だったというのは本当かや?」
「はい、何でも宦官との口約束だったとかですよ~」
家臣の女の子からそれを聞いた主君と思われる金髪の少女は笑い出す。
「ぬははっーー!!やはり麗羽如きが大将軍などとはおかしいと思っていたの
じゃ!」
「はい、やはりここは美羽様の方がふさわしいですよね」
「ぬははーーっ!!七乃、もっと褒めてたも」
しばらく二人はどうでもいいような事を繰り返していた。
(しかし、ずっと陛下が行方不明だったにも関わらず、この短期間での洛陽の
復興ぶり…それに麗羽さんを苦もなく追い返した手腕…これだけの事が出来
る者がいるという事ですね…これは少し調べてみましょうか)
家臣のバスガイドみたいな衣装を着た女の子は主君と戯れながらそのような
事を考えていた。
~建業にて~
桃色の髪の女性が黒髪の女性に話しかけていた。
「ね、聞いた冥琳?」
「ああ、洛陽での事か?」
「いきなり新しい皇帝が決まって一気に雰囲気が変わるって凄いわよね…」
「何せ十常侍どもが一掃されたからな。誰の筋書きかは分からぬがなかなかの
手際だと言わざるを得ん」
「それに袁紹がコテンパンされてすごすご帰っていったってのも最高よね」
桃色の髪の女性はそう言うとそれは上機嫌に酒を飲む。
「おい雪蓮、あまり飲みすぎるなよ。それに袁紹がどうなろうと今の我らには
あまり関係ない話だ」
「分かってるわよ。でも、袁家に一泡ふかせられたってだけでお酒三杯はいけ
るわ~!」
「お前は何時でもその位普通にいくだろうに…」
黒髪の女性は眉間に皺を寄せながらそう言ってため息をついていたが、
(しかしこれは好機かもしれん…うまく新帝と繋ぎを取れれば、我らの悲願の
達成の切欠になるかもしれんな)
心の中でそう考えていたのであった。
~とある戦地にての陣の中~
「ねえねえ、そういえば愛紗ちゃん聞いた?洛陽の事」
軍議の最中に主らしき女性に話しかけられたポニーテールの女性は困惑気味
の表情を浮かべる。
「桃香様、いきなり何を…今は軍議中ですよ!?」
「ええ~っ、重要な事だよ?何て言っても新しい陛下が即位前に自ら黄巾の軍
勢を討伐しちゃったんだからさ」
「確かにそれは効果的な方法ではありますね」
「朱里…今はその話をしている場合ではないだろう?軍師であるお前がそれで
どうする?」
「はわわっ、そうでした…桃香様、今は私達がどう動くかを話し合っていたは
ずでしゅ…」
「朱里が噛んだのだ!」
「あわわ、朱里ちゃんが鈴々ちゃんにツッコまれてましゅ…」
「雛里も噛んだのだ!」
「鈴々、お前はもう少し考えてから発言しろ!」
この軍の特色なのか、軍議が何時の間にか単なる雑談の場となっていた。
ポニーテールの女性はため息を一つついてから主の女性に話しかける。
「それで、桃香様?その洛陽の話が今の我々と何か繋がりがあるのですか?」
「ええっと…だからさ、今度はそっちの方に行ってみたらどうかなぁって」
「行ってどうするのです?我らはただの義勇軍、行った所で相手にもされない
可能性が高いではないのですか?」
「うっ、それはそうなのだけど…」
「でも行ってみる価値はあるかもしれません」
そう答えたのはベレー帽のような物を被った女の子であった。
「朱里?それはどういう意味でだ?」
「私達はこれまで公孫賛様から提供を受けた糧食でしのいできましたが、それ
もそろそろ限界に近付いています。新しい陛下が噂通りの御方なら、うまく
いけば私達に対する支援や補給も可能なのではないかと」
「お腹すいたら戦えないから鈴々は賛成なのだ!」
「うん、私も朱里ちゃんの意見に賛成~!」
「雛里、お主はどう思う?」
「あわわ、あ、あのでしゅね…私も朱里ちゃんの提案が現状では一番良いので
はないかと思いましゅ」
話をふられた魔女っ子のような帽子を被った女の子はカミカミながらもそう
答える。
「ううむ…皆がそういう意見ならば」
「よし、けって~~~い!じゃ、みんなで洛陽へ向けて出発!!」
~黄巾党の天幕の中~
「人和、一体どうなってるのよ!?此処最近私ら負け続きじゃない!!」
「それよりもお姉ちゃんお腹すいたよぉ」
「天和姉さん!少しは我慢してよ!お腹がすいてるのは皆同じなんだから!」
実際の話、洛陽南部で負けを喫して以来、それまでとは一変して黄巾党は負
けが続いていた。何故かというと…。
「やっぱり洛陽での戦闘の時に皇族の旗が翻ったのが原因ね…しかもあの旗は
この間即位したっていう新しい皇帝の物だったようだし…」
張梁がそう呟いた通り、黄巾党を討伐したのが新たな皇帝だというのが大陸
中に広まり、その新帝が最初に行ったのが都を腐らす宦官達の処分だったと
いうのが民達に希望を持たせ、その結果民衆達のほとんどが黄巾党を支持し
なくなっていたのである(支持されないのは便乗した山賊・盗賊が略奪や暴
行を繰り返しているからでもあるのだが)。
「人和、どうするのよ?このままじゃ…」
「どうするって言っても…実際私達には根拠地にするような所も支持してくれ
る地盤も無いし…」
「じゃ、私達だけで逃げちゃおう!」
「天和姉さん、何言ってるのよ!?此処で全てを放り出すってわけ!?」
「…それも一つの手ね」
「人和!?あんたまで何を…」
「もうこの戦は私達とは関係無い所まで広がっている。此処でもう私達が関係
ないって行方を眩ましてしまえば、後は自然消滅するはずよ」
「自然消滅ねぇ…でも逃げた後はどうするのよ?」
「何処か知らない所まで逃げてまたやり直せば良いんだよ~ねっ?」
「人和…どうするのよ?」
「そうするにしても時機が必要だわ。それについては私に一任してくれる?」
張梁の言葉に二人は頷く。
(それじゃ後は何時逃げて何処へ行くか…此処を間違ったら大変な事になる)
張梁は心の中でそう呟いていた。
「よし、これで良しっと。大分洛陽も賑やかになってきたな」
俺は残った瓦礫の片付けが終わると街を見回す。
初めて来た時も瑠菜さんの救出で来た時も正直都とは程遠い位に寂れまくっ
ていたのだが、命が皇帝に即位してからこっち、戻ってきてくれた民の皆さ
んの頑張りでようやく賑わいらしきものが見える位にはなってきていた。
現在命は寂れた洛陽の復興・ほとんど崩壊している政の建て直し・黄巾党の
討伐の三つを抱えて忙しい毎日を送っている。しかし本人曰く『こういう時
に頑張る為に天水ではのんびりと力を蓄えていたのだからまったく無問題』
との事だ。何だかんだいってもこの時代の人間は基本身体が丈夫だ。むしろ
俺達現代人は生活が便利になり過ぎて弱くなっているという方が正しいのか
もしれないのだが。
「さて、次は『おお~い、かずピー!』及川?どうした!」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、捜したで」
「…一応朝の申し送りで俺は基本此処ら一帯の片付けの指揮を執るって伝えた
はずだが?」
「…ノリが悪いなぁ、こういう時はそう言った方が緊迫感が出るっちゅうもん
やで?」
「それじゃ緊迫感の無い話なのか?」
「おっと、そうやない!北方二十里余りの所で黄巾党がどっかの義勇軍と戦っ
てるちゅう話や!!」
「義勇軍?旗印は?」
「何でも『劉』らしいんやけど…」
「まさかそれって…」
「やっぱかずピーもそう思うか?」
俺達は頷くと一緒に駆けていった。
「全軍準備は良いか!」
『応っ!!』
俺の号令に兵達が応える。
一応俺の立場を説明しておくと、董卓さんの客将という立場はそのままだ。
しかし幾ら新皇帝が立ったからといっても政以上に崩壊した禁軍がそうそう
元に戻るわけではない。実際三将軍以外の軍はまったく形を成していないの
が現状なので、命達の話し合いの結果、俺達北郷組は董卓さんから洛陽への
出向という形で派遣されている。そして新たな兵の徴募や戻ってきた兵達を
加えて今率いている数はおよそ二千五百というところになっている。
(それとは別に及川と文聘が預かる諜報部隊が約四百いるのだが)
・・・・・・・
「一刀さん、あそこです!」
輝里の指差す方向を見ると『劉』の旗印の軍が戦っているのが見える。その
数はおよそ四千弱といった所か。黄巾党は見る限りおよそ七千余り、義勇軍
も善戦してるが数の差は如何ともしがたいのか少し押され気味だ。
「輝里、どうする?」
「まずは…沙矢、七百を率いて敵の側面から衝いてください。但し攻撃したら
そのまま突き抜けてください。決してその場に留まらぬよう」
「はいっ!」
「続いて蒲公英、六百を率いて敵の背面に回り、沙矢が突き抜けたら背後から
攻撃してください。但し一撃与えたらすぐに離脱、いいですね!」
「は~い!」
「その後二人は交互に攻撃をしかけてください。必ず一撃を与えたらすぐに離
脱を、いいですね!」
「「はい!!」」
「そして一刀さん、本隊の私達はこのまま待機、私が合図したら一気に攻撃に
入ります」
「分かった」
「それでは開始です!全員配置についてください」
「朱里ちゃん、状況は!?」
「今正面を鈴々ちゃん、右翼から愛紗さんに衝いてもらってます!向こうの陣
形が崩れた瞬間に一気に距離を取って態勢を立て直しますので桃香様はこち
らに!」
義勇軍は苦しい戦いを強いられていた。というのもこの戦いは義勇軍にとっ
ては予期したものではなかったからだ。森を抜けた所で黄巾党と出くわした
のと向こうに先手を打たれたせいでうまく態勢が整っていないせいで優勢に
立つ事が出来ずにいたのである。そこに…。
「新たな軍勢が来ます!!」
「敵の援軍!?」
「いえ、あの軍勢は敵の側面を攻撃してます!」
新たに現れた軍勢が横合いから攻撃を仕掛けた為、黄巾党の勢いが一瞬止ま
り、その隙をついて義勇軍は何とか距離を取る。
「愛紗さん、損害は!?」
「死傷者はおおよそ一割弱といったところだ…ところであの軍は一体?」
「分かりません…あっ、新たな軍が」
今度は背面より現れた軍が攻撃すると黄巾党はさらなる混乱に包まれる。
さらに二つの軍が入れ替わりで攻撃を仕掛けるので黄巾党からは完全にまと
まりを無くしていた。
「何と見事な…数はあちらの方が少ないのに」
「あっ、また新たな軍が来たのだ!!」
「二人はうまくやってるな…輝里の思い描いた通りなのかもしれないけど」
「ふふ、二人は私が思った以上に動いてくれてます…さあ一刀さん、そろそろ
準備を」
「応っ!」
それからおそらく数秒程度であったろうか、輝里は敵味方の動きを見極めて
いた。
「今です!一刀さん!!」
「全軍…突撃!!」
輝里の合図を受け、俺が号令をかけると同時に全軍が攻撃をかける。
こちらの数こそ少ないが、既にまとまりを無くしている黄巾党に、それを支
える力はもはや無く、小半刻もしない内に散り散りになっていたのであった。
・・・・・・・
「一刀さん、こちらの損害は重傷者二十三名・軽傷者四十二名、完勝です」
「そうか、皆良くやってくれた。怪我した者は一刻も早い治療を」
俺がそう指示を出していると、
「一刀様、義勇軍の将がお礼を言いたいとこちらに来てます!」
沙矢がそう報告してくる。
「分かった、会おう」
「初めまして、私はこの軍を率いています北郷と申します」
「は、初めまして!!わ、私は…りゅ、劉備と申します!!」
俺が自己紹介すると、桃色の髪の女の子がかなりわたわたとしながら名を名
乗る。やはり劉備だったか…。
「あ、あの、この度は、た、助けていただき、あ、あ、ありがとう、ご、ござ
い、ました!」
「桃香様、噛みすぎでしゅ…あっ、噛んじゃった」
「ふふ、あなたも相変わらずね、朱里」
「えっ?…はわわっ!?輝里ちゃん、何で此処にいるんでしゅか!?」
「輝里…この娘知り合い?」
「ええ、水鏡女学院の後輩ですから」
「は、初めましちぇ、諸葛亮でしゅ…はわわ、また噛んじゃった」
諸葛亮って…マジで?このカミカミな娘が?
続く。
あとがき的なもの
あけましておめでとうございます!
mokiti1976-2010です!
今年もよろしくお願い申し上げまする~。
という事で、今回は各方面の方々の話と桃香さん
&朱里ちゃん登場の巻でした!
一応言っておきますが、別に前作のヒロインだった
から朱里の台詞だけ多いとかいうわけではありませ
んので。
一応次回はこの続きからです。
果たして劉備軍との出会いは何をもたらすのか?
それでは次回、第二十一話にてお会いいたしませう。
追伸 初詣のおみくじは末吉でした。
恋愛「戯れをしなければ成就するでしょう」
縁組「もうすぐ良い便りが来るでしょう」
金運「身を崩す事は無いでしょう」
末吉の割りには良い事ばかり書いてありました。
皆様は如何でしたか?
Tweet |
|
|
52
|
2
|
追加するフォルダを選択
お待たせしました!(といっても約一日ですが)
2014年の初投稿です!
続きを表示