No.647868

「真・恋姫無双  君の隣に」 第4話

小次郎さん

変わり始めた美羽たちと平和?に過ごす日々
そこに約定によって、来訪した孫権たちが

2013-12-24 12:01:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:21417   閲覧ユーザー数:14439

姉様に長沙太守の辞令が朝廷より届き、私達は抱き合って喜びを分かち合う。

普段感情をあまり表に出さない冥琳や思春も笑顔を見せている。

母様の戦死後、力を失った我ら孫家は袁術の庇護下におさまり屈辱の日々を過ごしていたが、ようやく独立する事が出来たのだ。

取引条件として私は袁術の元に行き人質にならねばならないが、我が身一つで独立が叶うなら安いものだ。

人質の件では皆から異論が上がったが、姉様が天の御遣いとやらとした話を伝えてくれ、皆は不承不承認めた。

しかし、確かにそれでは人質とは言い難い。

「御遣いは何を考えているのでしょうか?」

私が尋ねると姉様は楽しそうに、

「それは、貴女自身で確かめてきなさい」

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第4話

 

 

今日も次々と挙がってくる報告を受けながら政務に励んでいる。

以前はそんな俺を他所に好き勝手していた美羽たちだが、養蜂の村に行ってからは日々の過ごし方が変わった。

午前は七乃に勉強を教わり、午後は街に出かけるのが美羽の生活習慣になっている。

勉強は七乃が美羽の思考パターンを良く分かっていて、非常に上手く教えている。

飴と鞭のさじ加減が絶妙で、美羽に勉強を飽きらせる事も嫌がらせてもいない。

街に出かければ色々見たり聞いたり忙しそうで、街の子供達と遊んでいることもあるそうだ。

治安が改善され生活もしやすくなってきたので、街の人達も美羽を受け入れてきてる。

念のため目立たないように護衛も配してあるし、警備隊にも話は通してある。

充実した日々を過ごしている美羽を見るのは嬉しい。

その分俺の仕事量が増えるのはご愛嬌だが、まあそれはいい、それはいいが、美羽に付きっきりで七乃の仕事を押し付けられるのは納得がいかない。

「え~、私の事も護るっていったじゃないですか」

言った、確かに言ったよ、だけど仕事を代わりにやるとは言ってない。

おまけにわざとらしく唇に指をもっていくし。

一日の政務を終え、自分の部屋に戻ると二人が待ち構えている。

美羽は今日あった出来事を話してくれたり、俺に話を聞きたがる。

そしてそのまま俺のベッドで眠りにつく。

最初は美羽の部屋に運んだけど、次の日に涙目で怒られた。

「妾と一緒に寝るのは嫌なのか」

「そんな事はないけど、俺は起きるの早いから寝るのの邪魔になるよ」

と伝えたけど、

「かまわん、一緒に寝るのじゃ」

泣いてる子には勝てず承諾する。

その日に部屋に戻ると昨日と同じで二人がいて、あとベッドの大きさが倍以上になっていた。

部屋のほとんどがベッドだよ、どうやって用意したんだ。

仕方なく三人共ベッドで寝転びながら話をする。

美羽が眠そうなので着替えさせるからと俺は部屋から追い出され、数分後に部屋に入ると寝着に着替えた二人がいた。

なんで、

「まさか美羽様と二人で寝るなんて思ってないですよね~。そもそも美羽様は私と一緒に休まれてたんですよ。何で私が除け者にされるんですか。大体老若男女問わず片っ端から閨に誘い込み獣となる一刀さんと二人っきりなんて有り得ませんよ~」

「老と男は無い、それ以前に誘い込んで無い!」

「前科一犯」

あ、あれは雪蓮が尋常な状態じゃなかったし、俺も久しぶりだったから。

朝に起きたときに事情は聞いたけど、恥ずかしそうにしてた雪蓮はかわいかったし。

だから後悔はしてない、してないけど反論できない。

「まあ、どうせ一刀さんの意思なんかどうでもいいですし、さあ休みましょう」

もう色々諦めて俺も着替える。

なんで七乃、じっとこっちを見てるの?

美羽は既に眠りについている。

俺も寝ようとベッドに入ると七乃が俺の横に来る。

「七乃さん、話してた時のように美羽を挟んで川の字になるんじゃないのでしょうか」

「どうして私が一刀さんの妻にならなくてはいけないんですか、寝る前から寝言をいうなんて本当に頭がお花畑ですね」

「では何故、俺の腕は七乃さんに抱え込まれてるんでしょうか」

胸の感触が伝わってくるんですが。

「本当なら美羽様を抱え込んでるはずなのに、一刀さんのせいでそれが叶わないんですよ、代用品です」

「はあ、そうなんですか」

「そうなんです、さっさと眠ってください」

眠れるわけがない。

悶々としてるうちに両隣からは規則正しい寝息が聞こえる。

息子は大変元気な状態でこのままでは眠れない。

よし羊を数えよう、羊が一匹、羊が二匹、・・・・。

百匹ぐらいで諦めた、ますます強く抱え込まれた腕に全神経が集中する。

俺の理性もライフが0に近い。

このままでは拙い、どうしたら。

そうだ、最後まで諦めてはいけないと魏の皆から教わったじゃないか。

そして、絶体絶命の状況に天啓がひらめく。

華琳の絶が一振り、華琳の絶が二振り、・・・・。

効果的面だった。

息子のライフは0になった。

冷や汗が止まらなくて首筋が寒いけど、そのまま数え続ける。

なんか切ないけど危機は乗り越えた。

そんな日々を過ごしつつ、一昨日は霞の飛龍偃月刀で昨日は凪の氣弾に世話になりながら、今日は俺の補佐を務めてもらう孫権が到着する。

玉座の間で孫権が甘寧、呂蒙を供にして美羽に礼をとる。

「お久しぶりにございます、袁術殿。孫仲謀、お召しにより参上しました」

「うむ、よく来てくれたの。一刀の力になってたもれ。すまんが妾は約束があっての、これで失礼する」

玉座からピョンと飛び降りて、足早に玉座の間を出てゆく。

「待ってください美羽様~、あ、孫権さん、失礼しますね」

美羽を追いかけて七乃も出て行く。

俺はため息を吐くが、孫権の後ろで甘寧が凄い殺気を発していたので慌てて弁明する。

「申し訳ない、孫権殿。実は街の子供達に歌を歌ってあげる約束をしていまして、朝からずっと気にしておられたんです」

いや、言い訳にならないよな、これ、どうする?

「子供達に歌?」

「はい、主に代わってお詫び申し上げます。何卒ご容赦の程を」

 

袁術が子供達に歌?あの尊大で我儘の塊のような袁術が?

私は現実味が感じられなくて信じられなかった。

でも先程の私への返答、以前に比べてずっと・・・・。

「孫権殿?」

話しかけてきた御遣いの声に、私は頭を切り替える。

「もう気にしないで、貴方が天の国から来たという」

「姓は北、名は郷、と申します、字はありません。此処では天の御遣いなどとも呼ばれ、この国の宰相を務めさせていただいてます」

「私は孫仲謀、後ろの二人は甘興覇と呂子明、私を手伝ってくれる者たちだ。よろしくお願いする」

「心強い限りです。何分手が足りなくて難渋していましたので、お力添えに感謝を」

「こちらこそ、姉の長沙太守の拝命は北郷殿が口添えしてくれたからと聞く。孫家を代表して改めて御礼を申し上げる。思春、亞莎、貴女たちも挨拶なさい」

「甘興覇だ」

「あ、あ、あ、あ、あ、あの、あの、あの」

「オーケー、落ち着こう、はい、ゆっくり大きく息を吸って、はい、吐いて~」

桶?何故桶がでてくるの?

「すう~~~~~~、はあ~~~~~~~」

「はい、もう一度」

「すう~~~~~~、はあ~~~~~~~、りょ、呂子明と申します。よ、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「・・っ」

「見たとおり亞莎は恥ずかしがりやでな、すまないがそれ位にしてやってくれ」

「わかりました。ではご挨拶はこれで。お部屋の方へご案内しますのでゆっくりとお休みください。夕食の準備が出来次第、お呼びに参りますので」

部屋に案内され侍女が退出後、私は二人に話を振る。

袁術、城下の街並み、民たちの表情など以前とは全く違う。

御遣いが宰相になって様変わりしている事は報告で聞いていたが、まさか袁術まで変わっているとは想像も出来なかった。

かつての袁術を知る思春も驚いたようだ。

最初は無礼さに腹をたてたが、今考えれば厭味や悪意は全く感じなかったと、私も同感だ。

やはり御遣いの影響だろうか、そういえば姉様は御遣いの話をする時は随分上機嫌だった。

管輅の予言が流布し、袁術の下に現れた天の御遣い。

天は袁術を選んだというのか?

いや、そうと決めるのは早計過ぎる。

何より、本当に御遣いかどうかも証明されていないのだ。

とにかく私は御遣いの補佐として此処に呼ばれた。

期限も決まっておらず、どう転ぶか分からないが、孫家の名を汚さないよう振る舞わなくては。

そうこう話しているうちに夕食に呼ばれた。

袁術と張勲も戻ってきていて、御遣いたちと私たちで食事を摂る。

食事中の袁術たち三人の姿は、兄妹?父娘?夫婦?といった感じで主従ではなく家族だった。

驚きつつもその様子を見ていたら、何となく袁術の変わりようが理解できた気がする。

あの子は失っていたものを再び手にしたのだ。

今のあの子を見ていると、これまでの恨みつらみが霧散していく気がした。

食事が終わり袁術と張勲は湯浴みにいき、残った私達は何も話さずお茶を飲んで過ごしていたが、御遣いが明日からの事を話してきた。

「孫権殿たちは十日ほど自由に過ごしてください」

私は御遣いが何を言っているのか理解できなかった。

「どういう事だ。私は補佐として呼ばれている、物見遊山で来たわけではないぞ」

「孫権殿、今の貴女に何が出来るというのです」

「貴様っ!」

「思春、待ちなさい」

「蓮華様」

私は思春を制して御遣いに問いただす。

「どういうことだ、人質にさせる仕事は無いという事か」

やはり本心は孫家への牽制か。

「私は自由にと申しましたが、逆にお聞きしましょう。貴女たちは十日間、どうお過ごしになるというのです?」

「仕事もせず何をしていろというのだ」

「この国の事を何も知らないに等しい者に、何の仕事が出来るのです!」

彼の強い声に私は言葉に詰まる。

当たり前の事ではないか、それでは先程の自由の言葉の真意は、

「十日間、この国で見聞を広めて欲しい、という事だったのね」

「はい、言葉が足りなかった事はお詫びします。私は貴女たちを指示通りに働く者欲しさにお呼びしたのではありません。私と共に考え、私が思いもつかない事を考える者、様々な角度から良い政を行っていく者を求めてお願いしたのです」

「私は、この国の者ではないのよ」

「為政者の視点が持てる者など、それこそ大陸中探しても多くはないでしょう。でしたら私にとっては些細な事です」

「些細か」

彼の言葉に器の大きさを感じる。

「改めて申し上げます。十日ほどとは言いましたが、期間を延ばしてくださってもかまいません。街の様子を観察するもよし、人々と話をするもよし、軍の訓練を見学するも参加するもよし、近郊の村に行くもよし、自由にして下さい。案内の者を必要とするならご紹介します。また疑問点があれば私がご説明します」

彼の言葉に後ろで聞いていた亞莎が質問する。

「あ、あの、そこまで私たちに見せてくれるんですか?政策の内容もですが、軍の訓練なんて他国の者に見せていいんですか?」

「かまいません、調べようと思えば難しい事ではありませんし、例え真似られたとしても後を追いかけるだけの者は先を進む者を追い越す事は出来ません」

悔しいが、その通りだろう。

「自由に行動しているから何が起こっても不思議ではない、という事か」

思春が険のこもった発言をする。

「思春っ、取り消しなさいっ!」

今の発言は看過できない、私の身を案じてくるのは有難いが余りにも礼を逸する。

「甘寧殿、貴女のご主君の安全は私が絶対に保証します」

「口では何とでも言える」

「思春っ!」

止めようとする私を彼が手で制する、表情に変化は無い。

「このような形になるのは不本意ですが。私の真名は一刀、この名を貴女方にお預けします。我が真名にかけて貴女方の身をお護りする事を誓いましょう」

「なっ!」

私は驚きの声を上げ、思春と亞莎は声も出ないようだ。

彼もそれ以上何も言わない。

だが、彼の誠実さは十分に分かった。

ならば私も真摯に彼と向き合わなくては。

「一刀、私の真名は蓮華、そう呼んで欲しい」

「よろしいのですか?」

「ああ、あと敬語もいらないぞ、いつもの話し方でいい」

「分かったよ、蓮華」

一刀が笑顔で応える。

その笑顔をみて心臓が高鳴る、その事を誤魔化すように横に顔を向ける。

「あ、ああ、それでいい」

くっ、顔が熱い、どうしたんだ、私は。

「か、か、一刀様、私は亞莎と申します」

驚いたわ、あの恥ずかしがりやの亞莎が自分から言い出すなんて。

「ありがとう、亞莎。俺も一刀でいいよ。」

「は、はい、一刀様」

また一刀は笑顔で応える。

「・・っ」

真っ赤だった亞莎が更に真っ赤になってる、なんかモヤモヤするわね。

「北郷、我が真名は思春、貴様に預ける」

「ありがとう、思春。一刀でいいよ」

「それは今後の貴様次第だ。だが、先程の非礼は侘びる、すまなかった」

「いいよ、思春がどれだけ蓮華を大切に思ってるか分かったから」

「フンッ」

顔を背ける思春。

「はは、思春ってかわいいなあ」

「なっ、き、貴様っ、斬る」

顔を赤らめて怒る思春、こんな思春は初めて見るわ。

亞莎が思春を必死に宥めているのを一刀は楽しそうに見てる。

・・不思議な人ね。

袁術が変わっていた様に、私達も変わるのかしら。

怖くもあるけど、私は此処にこれて良かったと思った。

 

 

「風、次は何処に向かいますか?」

「ぐう」

「寝るな」

「おお、そうですねー、此処からなら袁術さんのところが近いですかねー」

「袁術と言えば、天の御遣いという者が宰相になったと聞きますね。随分活気がよくなっていると商人がいってました」

「ふむ、どういった御仁か私も興味はあるな」

「星ちゃんは賛成ですね、稟ちゃんはどうですか?」

「いいでしょう、袁術に興味はありませんが、御遣いという者には会ってみる価値がありそうです」

 

 

「斗詩さん、猪々子さん、気に入りませんわ」

「え、姫様、私達、何かしましたか?」

「姫~、アタイ、何かやったっけ?」

「貴女達のことではありませんわ、美羽さんの処にいるという天の御遣いとやらの事ですわ」

「あ~、そういや、えらく評判いいらしっすね」

「何故私の下ではなく美羽さんのところですの、納得いきませんわ。貴女たち、ちょっと行ってきて連れて来なさい」

「ひ、姫様、無茶ですよ。宰相になってるんですよ、どう考えても無理です」

「でしたらその御遣いとやらを見定めていらっしゃい。そういえば荀彧さんが仕事が欲しいと言ってましたわね、ついでに連れて行ってらっしゃい」


 
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