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真・恋姫†無双 ~孫呉千年の大計~ 第3章 2話

雪月さん

常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと

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2013-12-18 21:00:02 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4279   閲覧ユーザー数:3301

第3章 群雄淘汰・天下三分の計編 02話 『 長沙前哨戦 紫苑の誤算 』

 

 

 

 

荊州・長沙郡

 

現在の中国湖南省に位置し、北に大きな洞庭湖がある事でも有名である

長沙の街の近くを流れている、湘江を始めとした大小さまざまな河川が合流している都市

現在でも湖南省の中心として、経済の中核都市として発展を遂げている

 

長沙城へと続く道程にも大小様々な河川、池沼が数多く点在している事もあり、稲作には適した地といえ

大軍を擁しての速度ある攻めとなると困難を極めることとなる

 

そして長沙城を取り囲むように、北・東・西の3方角に大きな防衛拠点を有しているのが特徴である

 

大小さまざまな河が合流している長沙城へと乗り込んでいく孫呉陣営な訳なのだが

防衛に向いた地形と防衛拠点の他にも、今回は憂慮すべき点が存在した

 

それは現在この地を治めているのは韓玄ではなく、劉表の血族である劉琦なのであった

劉琦が孫呉陣営にとって障壁となり得たというのだろうか?

 

答えは否であり、劉琦に従っている武将に黄忠につき従っている5千にも及ぶ兵達が付き従っている事が

孫呉がこの地を奪い返す事を、容易ならざる困難なモノとして眼前に立ちはだかっていたのである

 

また大小さまざまな河には、長沙城や防衛拠点へと続く橋が架けられている訳なのだが、

劉琦軍はいつものように、まず数多く点在していた橋を、躊躇なく落としてしまっていた

 

そうした事もあり、橋を渡っての陸路からの攻撃となると、どうしても進入路が限られてしまう

弓の名手とも謳われる黄忠率いる相手には、格好の良い的であり防衛側に有利に働いていた

 

 

全てを加味したとしても、この度の荊南地方を切り取る遠征、一筋縄ではいかない・・・そう思えてならなかったのである

 

 

だがそんな防衛側有利な地形・戦闘予測状況を、冥琳を始めとした孫呉の頭脳が見過ごしていた筈もない

いつものような防衛を展開させた黄忠率いる劉琦軍こそが逆に不運であり、戦う時期と相手が悪かったといえるのであった

 

 

冥琳達参謀は、思春率いる水軍を江夏・江陵からの援軍阻止だけでなく、長沙攻略にも投入できるように準備をしてきた

思春の水軍投入だけなら、黄忠も長沙の守備に拘り、長期防衛も視野に入れていたのかもしれない

 

橋を落とし、防衛に最適な地形を作りあげたのにも関らず、放棄を視野に入れなければならなかった要因、それは・・・

 

1に、反董卓連合最中に柴桑を襲い、そこで手痛い被害を被った江陵や江夏の水軍の支援が当てにならなかった事

   蔡瑁達、荊北にいる重臣達にとって、荊南地方を守備する者達を切り捨てても良いと思っていた事 

 

2に、このとき思春率いる水軍は、秘密兵器として、新型『 焙烙玉 』を攻城戦へと使用した事が

   後々、黄忠達防衛側の計算を狂わせたといえるだろう

 

 

後々、この橋を落とし防衛経路を絞った事が・・・

逆に裏目となる絶望的出来事に、黄忠達防衛側は遭遇する事となるのであった

 

 

先に挙げたこの度使用する新型『 焙烙玉 』から説明を紐解くこととする

 

『 焙烙玉 』、別名を焙烙火矢とも呼ばれ、原型は文永の役の鳥飼潟の戦い『蒙古襲来絵詞』にも描かれていたり

日本の戦国時代、主に村上水軍等で使用されていたと噂される代物である

 

この『 焙烙玉 』、陶器に火薬を仕込み、導火線に火を点けて、敵方に投げ込む手榴弾のような兵器なのである

 

手で直接もしくは縄を付け、遠心力を使った投擲で行うモノが、今回孫呉によって使用された焙烙玉の正体なのであるが

通常は敵兵の殺傷を主目的とした兵器で、周辺の木造部分へ引火することは、あくまでも”おまけ”効果だったりする

 

しかし一刀と琥珀は、この『 焙烙玉 』にも更に一工夫を加えていたりする 

簡単に例えると”花火”といえば察しがつくのかもしれない

 

本来花火とは、火薬と金属の粉末を混ぜて包んだものに火を付け

燃焼・破裂時の音や火花の色、形状などを鑑賞するものだが

 

この特別仕様の『焙烙玉』には、花火で使われる金属の粉末といった物は混ぜ込まずに

花火の要領だけを使用する 焙烙玉の中に火薬の小球を何個も詰め込んで仕込みをした特別仕様に作り変えていた

 

その結果、引火して『 焙烙玉 』が炸裂すると

仕込んだ小球にも引火し、通常の『焙烙玉』より広範囲に、四方八方へと勢い良い火力を伴った火の粉が飛散するのである

 

 

それは『焙烙玉』本来の人への殺傷力というより

『焼夷弾』のような『 火力・放火重視 』の仕様へと作り変えていたのだった

 

 

長沙序盤戦の攻防の明暗を分ける、熱き戦いの火花が散らされる戦場へと赴いていく

孫呉、劉表の両陣営の兵達なのでありました

 

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長沙城の玉座の間に、女性が歩んでゆく度に、ヒールによる足音がコツコツと石と反響し合い、部屋中へと響き渡っていく

女性のヒールによる足音が静まると、うって変わり、静けさの中になんとも艶のある女性の声が部屋に響き渡るのであった

 

「劉琦様、いつもの如く、橋を落とし終え防衛に備えました

 今回孫呉は、甘寧率いる水軍も擁した陣容とのこと、東と北の防衛拠点に厚みを持たせた布陣としております」

 

「さすがは世に聞こえし名将・黄忠です そなたに任せておけば安心です 良きように計らってください

 ただ、先の戦いで江夏の水軍は、手痛い被害を被ったと聞き及んでいます

 援軍の派遣をすでに要請しておりますが、色よい返事を得ていないのが現状です」

 

「そうですか・・・ わかりました 出来る限りの手を尽くしてご覧に入れますわ」

 

「黄忠 苦労をかけてすまない 私に従ったばかりに貴方まで左遷されてしまう羽目となってしまった・・・」

 

「フフフ それこそ劉琦様 少しも気に病むことなどございません お気遣い無用ですわ

 私は出世を望んでいた訳でもありませんし、亡くなりし夫や璃々、家族が受けし御恩を少しでも返さんが為ですわ

 

「そう黄忠ほどの武将に言って貰えるのは光栄な事です」

 

「それでは劉琦様 任務に就きますのでこれにて失礼致します」

 

「よろしく頼む」

 

長沙城の玉座にての短い会話であったが、父・劉表に勝るとも劣らない心遣いを込めて

劉琦は黄忠を快く戦場へと送り出したのであった

 

本来ならば、劉表の長子である劉琦が、代表者として先頭を駆けなければならない筈なのだが

劉琦の才はこの乱世にてではなく、治世にて発揮される類の才であった

 

惜しむらくは、生まれた時代が泰平の世であったならば・・・と思わざるを得ない

 

現在の劉琦では、この大陸で荒れ狂う波を超えてゆけるだけの将才を備えていなかった事が

蔡瑁をのさばらせてしまった事が、劉表軍にとって滅亡へと舵を切る戦いへの火蓋が、今切って落とされた瞬間であった

 

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黄忠は斥候からの事前情報により、長沙城の東・西・北の三方にある防衛拠点のうち

長沙の街から南下した北側と、湘江から進軍してくると予想される東側、この二箇所に重きを置いて守備陣を敷いていた

 

ちなみに西側拠点を使用した経歴は、水軍が弱い劉焉との戦のみである

それも十常時派に属した後には争われた痕跡すらない

 

防衛を任された黄忠は、あくまでも東側の水軍での攻撃は陽動だと踏んでいた

 

というのも水軍に痛手を被ると、今度は自軍が退く時に困難を極める為、相手に強く抵抗されれば踏み込んでこない

そして今まで孫呉が取った戦略の指針が、北の長沙の街を経由しての攻めであったという経験則に基づいた推測をした黄忠であった

 

だがそうした黄忠の劉表側の経験則こそが、この度の戦での命取りとなるのだと、思い知らされる事になる

 

「訓練通り落ち着いて行動なさい さすれば孫呉軍に遅れをとることなどありません!」

 

斥候からいつも通り、長沙の街を経由して南下したと黄忠の下へと情報が入ると同時に

防衛拠点に軍を展開させ持ち場へと着かせると、黄忠は北側防衛拠点の最前線にて、声を漲らせて指揮を振るい軍勢を鼓舞する

 

「押し出せーーーーーーーー」

 

珊瑚の合図が木霊すると、珊瑚の隊の木製の盾を手にした隊が、一斉に北防衛拠点の一の門へと迫っていく

さすがに珊瑚の隊が盾を持ったまま接近してきていた為、黄忠の隊の弓射は有効打に届くはずもなく難無く防がれていく

 

「これでは埒があきません! 火矢にて応戦します! 早急に準備を整えなさい!

 ・・・整え終えましたか? いいですね? 3・2・1 射掛けぇーーーー」

 

北防衛拠点で指示し指揮する黄忠は、時間を稼ぐ事も考慮に入れ、無理に門外へと打って出るような事はなく

珊瑚の軍兵が盾を手に押し出して来るのを、火矢を交えて応戦する手を変え品を変えて

孫呉の攻撃を逸らしつつ、一進一退の攻防を展開させていたのだった

 

「くっ! さすがは黄忠 被害が拡大しては意味がない 一時後退する! 皆の者退けい!」

 

一気呵成に城門へと押し寄せていた軍勢の被害が拡大する事が懸念された為に

珊瑚はここでは無理をさせず、城門へと押し寄せていた軍勢を退かせるのであった

 

この見事なまでの黄忠の攻撃の切り替えの早い守備に対して、孫呉本陣でもこの話題で持ちきりとなっていた

 

この時、孫呉本陣に詰めていたのは、一刀を始めとした孫呉機動軍の面々がほとんどで

一刀、冥琳・紅・亞莎・藍里・瑠璃、第2総軍では蓮華、祭、穏の3人だけであった

 

「さすがは黄忠といえますね 兄様」

 

蓮華は真剣な面持ちで、隣に座っている一刀へ向けて、言葉を投げかけてくる

堅くなりすぎだなぁ そう感じた一刀は、蓮華の肩の力が少しでも抜けるようにと配慮すべく言葉を返した

 

「蓮華 結婚したのだから、いい加減『兄様』の呼称じゃなくてもいいんだよ?」

 

と首を傾け、さり気なく優しく問いかけている一刀に対して

一瞬言葉を失いきょとんとした蓮華の表情が、一瞬で沸騰し真っ赤に染まるのであった

 

「うぷぷ 初々しいのう 権殿~」

 

「ですねぇ~♪」

 

一刀と同様の事を皆も感じていたのだろう

祭と穏は一刀にすぐ様同調を示して茶化し、冥琳・紅・亞莎・藍里・瑠璃はというと、その様子をにこやかに笑って抗議する様子もない

 

先程まで敵である黄忠に凌がれて苦戦しているとは思えない、やんわりとした雰囲気を纏った本陣の様子だったのだ

 

「うぅ~~~~~兄様 皆が居る前で暴露しないで! 貴方達まで一緒になって茶化さないで! 祭! 穏! もう!」

 

と蓮華は顔を真っ赤にしながら、穏を睨みつけ、祭の胸をぽかぽかと叩いているようであるが

その蓮華の様子がさらに愛らしく、より大きな笑いの渦となって、蓮華の抗議は一向に効果がないようである

 

「蓮華様 我らはあくまでも黄忠をこちらへ引き付けておく役目ですからな? その事をお忘れなきように」

 

「コホン 一刀様と結婚されたのは羨ましい限りですが、大将たる者 泰然自若に優雅に振舞って戴けるようお願いしますわ」

 

と笑顔のまま冥琳と紅の2人の重鎮達に優しく諭されては、漸く自身の肩に力が入りすぎていた事を悟った蓮華は

 

「ええ! 肝に銘じておく事にするわ」

 

蓮華の尚も堅苦しい返答に、皆苦笑いを浮かべながら

今後の長沙攻略の検討を再度地図を机上に広げ、指し示しながら進めていく

 

 

先程の冥琳の言にもあるように、北側防衛拠点に黄忠を釘付けしておくことが、孫呉機動軍を中心とした隊の役目であった

被害が大きくならないように、祭率いる第1総軍の人数を割いて、今前線にいる珊瑚と交代で北側防衛拠点へと攻めかかる

 

一方本陣にいない 思春・楓・明命・琥珀を中心とした第2総軍が主体となって

さらに孫呉機動軍の弩弓隊の子虎、弓隊の桜を加えた編成で、東側防衛拠点を落とす手筈となっていたのである

 

名前の挙がらなかった霞と高順の2人はというと・・・

本陣詰めと一刀から聞き及んで、霞は激しく抵抗というか文句を、一刀へとマシンガンの如く捲くし立てた

 

「本陣で酒も飲めずじっとしてたら、うち退屈で手震えて死んでまう! 

 かずとぉ~ うちあっちを手伝ってもええやろ?」

 

と物騒な物言いで一刀を脅しつつ駄々をねじ込む

一刀は仕方無しに、霞のお目付け役として高順をつけ、子虎の隊へと配属させ送り出したのである

 

そして現在の霞はというと・・・東側防衛拠点へと水軍で移動中という事もあって、船底ですやすやとお昼寝中である・・・

 

子虎にしてみれば、霞がじっと寝ていてくれている方が正直有り難いので

2人に一切声もかけずにそっと船底に隔離し、厄介払いしておいたのである・・・

 

高順としては、とばっちりも良い所なのだが・・・

自身の上司である一刀や霞に文句を言う事もなく、能面無表情のまま命に服して霞の傍らで素直に従っている

 

開戦して一日が経過しようとしているが、依然として死傷者数の被害状況は孫呉側に多く出ており

初期段階において、劉琦・黄忠率いる防衛側の思惑通り、戦闘を有利に運んでいたといえる

 

 

 

 

ほぼ一日遅れで到着した孫呉第2軍を中心とした思春達の部隊も、東側防衛拠点へと攻撃を開始したのである

 

この情報を斥候より聞いた黄忠は、理由は以前述べた経験則に基づいた思考から、東側防衛拠点を部下に任せっきりにしてしまう

 

珊瑚の攻撃に加え、祭も加わった北側防衛拠点は、黄忠の矢の切り替えの指示がなければ

初期のように、即城門へと取り付かれてしまい、防衛拠点を失いかねない事態を招く恐れもあったからだった

 

しかしその恐れこそが曲者であり、孫呉が北側防衛拠点にて、意図して作り上げていた虚像といえたのである

 

また思春達は、東側防衛拠点の攻めに関して、合流を果たしてから1~2日目には、防衛拠点の下見や下準備に当てていた事が

結果的に、黄忠の油断を誘ってしまう原因ともなったのである

 

やはり自身の経験則による考えに間違いがないと、黄忠は確信へと到ってしまったのである

この事は黄忠から柔軟な思考を奪ってしまっていたのであった

 

不安や恐れは時に味方を不利に導き弱くする悪しき事だと思うかもしれない

しかし言い方を変えると、相手に対する警戒感の現れといってもいい

 

防衛側が敵に対して安心するのは退けてからであって、戦いの最中でなど持っての他である

 

その初歩ともいうべき過ちを、黄忠は知らず知らずの内に犯していたのだった

そして黄忠の過ちを指摘する人物もまた、この長沙の地に劉表陣営に誰もいなかった事が最大の不幸であった

 

地形の下見、下準備を終えた孫呉第2軍を中心とした思春達の部隊は、本隊と連絡を取り準備が整った事を知らせると

翌明朝より、本格的に長沙東側防衛拠点へと攻撃を開始したのであった

 

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孫呉側の祭の隊は盾を手に持って、城門へと勢い良く突進・・・という訳ではなく

黒き布が巻かれ放たれた矢を、一斉に打ち込んできたのを、守備する劉琦・黄忠軍から失笑を買っていたのだった

 

こんなヘロヘロの矢に当った者など、我が軍にいないと思われるほどの遅さだったからだ

 

事実、劉琦軍大半の者が、孫呉側から放たれたこの黒き布が巻かれたヘロヘロ矢に、当るというような事はなく

周囲の木に刺さったり地に落ちたりと鼻で笑い”放置”してしまったのだ

 

 

矢に巻かれた黒き布の正体を知る事も知ろうともしない・・・

 

 

だがこの黒き布に不信感を抱き、落ちている矢へ近づいていく人物がいた 

長沙の防衛を主・劉琦から全幅の信頼を得て任されていた名将・黄忠であった

 

矢を風にのせ、飛距離を伸ばすというのならば、弓を扱う黄忠とても何とか納得できた

しかし黒き布を巻きつけただけで放ったのでは、矢の速度も遅くなるだけ、威力とて風に削がれてしまう等

良い事なしと相場は決まっている

 

 

ならば精兵を誇る孫呉軍が何故こんな物を? そして矢が放たれてから鼻につくこの臭い・・・

ふと疑問に思ったのが切欠だったのだ

 

 

矢へ近づくと、鼻の奥をツンとつく嫌な臭いが、自然と黄忠に顔を背かせ反射的に臭いをシャットアウトさせる程の強烈な臭いであった

 

こんな臭い一度嗅げば、二度と忘れるはずもない臭いの元となる代物・・・

 

「くっ この鼻をつく嫌な臭い・・・ もしかして臭水(くそうず)!?」                   ※臭水=石油

 

そう、黄忠が黒い布の正体に閃いた時にはすでに遅かった・・・

 

水上に控えし、思春の部下達、水軍の面々が少しの躊躇なく

矢が射掛けられし場所近くへと寸分違わず『焙烙玉』を正確に次々と投げ入れていく

 

通常の『焙烙玉』では考えられないような火力を、周囲へ散らしながら火花を次々に咲かせ

時には大きな爆音を響かせ、一瞬で周囲へと拡散し燃え広がっていく

 

守備に使用している建物や櫓、草木へと次々に燃え移り、あっという間に防衛側の被害を拡大させた

 

そしてその飛び散った火の粉は、黒き布を巻いた矢に、次々と引火し劫火となって

櫓や防衛する屋敷などを容赦なく焼き払っていった

 

 

「こっ黄忠様! 水をかけても火の勢いが一向に衰える気配がありません!!」

 

 

部下がこう叫んで黄忠の元へと転がり込んできた

この事態に黒い布の正体を知っている黄忠は歯噛みして悔しがる

 

「臭水を使っているから水じゃ無理ね・・・ 砂をかけて消火をさせるのが一番なのだろうけれど・・・

 

そう呟き終えた黄忠の視線は、防衛拠点の建物や櫓を捉えており

紅蓮の炎を纏って焼け落ちる光景を後の長沙の姿と重ね合わせ、表情をさらに堅くさせていたのであった

 

そして悪い知らせは続くもので、遡る事半刻ほど前に、同様の事が東側防衛拠点でも行われていたのだった

 

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多少引きつった笑顔を見せながら、もみ手すり手で思春へと近づく霞

 

「思春さ~ん・・・ あのさぁ~ うちそろそろ拠点に突・・・出かけてもいいかいな?」

 

と霞には珍しく下手に出て殊勝な態度で思春に問いただしている

 

「なんだ霞か? 今忙しい! 貴様の勝手にすればいいだろ?」

 

こちらは霞と違い通常通りといえる、いつものぶっきらぼうな言葉で返してきたのである

 

「えっ? マ~ジ~で? やった! 大将の了解も得たことやし いっくでぇ~~~~高順! しっかりついてきぃ!」

 

と飛龍偃月刀を手にし、颯爽と船から飛び出していく霞と溜息をつきつつ付き従う高順

 

「いいんですか? 思春の姉さん 首輪取り外して?」

 

と霞がいなくなったのを良い事に、表現に悪意が篭っている子虎の言に対しても

 

「構わん! どうせ奴(霞)の目的など知れている 勘違いも甚だしい

 それを知っていて、北郷はこちらへと押し付けてきたんだ 

 

 少しは相手するこっちの身になれっていうんだ まったく・・・ぶつぶつ」

 

と一向に気にした様子もなく、テキパキと軍師で傍に控えていた琥珀へと指示を出し終え、次々と船を繋いでいく

 

本来なら船を繋留するそんな仕事は、思春の仕事ではないのだが・・・

なんだかソワソワとして忙しない思春の様子から、ようやく事態を飲み込めた子虎であった

 

「姉さんも大変ですな~ 隊長に色々と借りがありますしね~~~」

 

「余計なお世話だ 子虎も”例の物”を私に渡して、お前もさっさと弩弓隊を率いて突入しろ!」

 

と先程よりさらにぶすっと殺気を滲ませた口調で、子虎へとぶっきらぼうに言い放った思春である

 

「おおぉ~ 怖っ! 副将の朱然に指示してもう突撃させてま~す!

 あ~そうそう! 隊長から預かってました”約束のブツ”です お受け取りを~♪」

 

差し出された”ブツ”を素早く確認し終え、懐へ仕舞い込む思春は、疑惑の目を子虎へと向けつつ・・・

 

「お前・・・この事誰にも話すなよ? 話したら・・・」

 

「ぶっ殺すでしょ? はいはい それじゃいってきまぁ~す ぷぷっ」

 

「何笑っている・・・くそっ 北郷め! 余計なヤツに預けおってからに・・・

 こちらの弱みに色々と付け込み、押し付けおってからに・・・ぶつぶつ」

 

思春のいう”弱み” 子虎が笑いを浮かべ手渡した”物”

・・・それは蓮華特製のお守り袋だったのだ

 

この戦が始る前に、手先の不器用な蓮華が、仕事の合間に密かに縫って作っていた手作りのお守りであった

 

1つは安産祈願にと姉である雪蓮に、残りは一刀に手渡した・・・のだが

先程も記載したように、蓮華は手先が不器用な為、手に傷を多く作りながら、それに比例するように失敗作も数多く存在していたのだった

蓮華の机の横に設置されてあるゴミ箱に数多く・・・

 

思春はその失敗作の内、良好なお守りを見つけ出し1つを拝借しようとしたのだが

その際に運悪くお礼を言いにきた一刀と鉢合わせし事が露見してしまったのだ

 

そこで一刀がふと思いついたのが、先日の霞の押しの一手の頼み事であった

 

霞の事だから黄忠という強敵と戦いたいが為、あちらの軍へ手配してもらうよう頼んだのであろうが

これは会議を寝て話を聞いていなかった霞の誤解にある

 

霞に誤解だ、会議で黄忠はこちら(孫呉機動軍)で抑えると説いたとしてもきっと・・・

 

「そんなん嘘や! うちに勝手をさせない為のインチキに決もうとる!」

 

と変な所だけ勘が鋭く先読みされるのがオチで、駄々っ子状態の霞は全く手に負えなくなる経験をしている一刀は

先程弱みを握った思春へと、霞の世話を丸投げしたのである

 

霞の世話を押し付ける代わりといってはなんだが・・・

一刀は蓮華からお守りを2つもらっていたので、内の1つを思春へと口封じと共に融通すると約束したのだ

 

本来ならこの場でお守りを渡してしまってもよかったのだろう

 

ただいつもの一刀にとる思春のツンとした態度が、悪い方向へと働いた事により、その場で渡す事を一刀が躊躇したのである

成功報酬として渡すには、作戦では一刀と思春は別部隊に所属していた

 

なので本来なら桜に事情を説明して渡せばよかったのだが

瑠璃と桜の関係は姉妹に近い為、今回の事情を話せば瑠璃へと話が伝わる可能性も大で、思春がへそを曲げかねない恐れがあった

 

という事情もあった為、消去法で子虎になった訳なのだが・・・ 一刀は知らないが、実はこの子虎も中々に曲者だったりする

 

いつもぶすっとして鬼の思春のシゴキという名の訓練に耐えている子虎にとって

鬼教官にこんな秘密があったとは・・・と思春の弱みを握り興味津々であった

 

そして事ある毎にこの件を持ち出し、子虎は思春を脅迫する事となるのであるが・・・

 

自業自得というか子虎のいい加減な爪の甘さが露呈し、逆に斥候で腕を磨いた思春に弱みを握られ

手酷い目に合う子虎であるのですが・・・

 

そんな思春と子虎の間の大人の事情はさておき・・・

 

霞が東防衛拠点へと飛龍偃月刀を手に突撃し大音声で叫ぶ

 

「黄忠という猛将はどぉ~こぉ~やぁ! さっさと出てこんかい!」

 

と叫ぶものの・・・敵から返ってきた答えは・・・

 

「黄忠将軍なら北防衛拠点にて指揮を執っておられます」

 

との言葉を聞き霞は顔面蒼白、口をぱくぱくしながら、後ろに控えている高順へと視線を移すものの・・・

 

「・・・ご愁傷様です 隊長」

 

と身も蓋もない言葉で見事轟沈・・・ 荊南地方を攻めている間中ずっと・・・

一刀に対して、呪いの愚痴をぶつぶつと呟き、時に口角を上げニヤリと笑う毎日でありましたとさ

 

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              ・

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そうした東側防衛拠点を制した孫呉の事情など知る由もない黄忠は

もう少しこの報せを早く受け取っていれば・・・ そう思い歯噛みするものの・・・

 

結局は東側拠点が先に落とされているのだから、遅かれ早かれ長沙城へと撤退せざるを得ない状況となるのは確実であり

 

孫呉側の狙いは私をここへ釘付けにしておき

東側拠点を速やかに落とし去ることだと気付いた時には、全ての勝敗が決していたのだった

 

自身の経験則が足を引っ張った事に、美しく艶やかな表情が強張りを見せる

だが黄忠に後悔している余裕は許されなかった

 

「・・・この状況では、ここで防衛した所で命の無駄よ! 長沙城まで後退するわ! 皆に急ぎ通達を出して!!」

 

「ハッ 委細承知いたしました!!」

 

厳しい表情を崩さない黄忠に指示された兵士は、指示を携えて急いで黄忠の元から駆け去っていくのだった・・・

 

 

その後もこの『 四散型焙烙玉 』と黒き布が巻かれた矢を使用され

北側防衛拠点は次々と火の海と化して、機能を完全に停止へと追い込まれていく

 

橋を落とし進入路を制限した長沙の誇る北・東の防衛拠点は

数日間に渡る抵抗の甲斐も虚しく、次々と奪われいき制圧されてしまったのである・・・

 

 

さすがにこの状況となってしまっては、守備を任されている黄忠としても、とても長期に長沙を維持しつつ

北部からの援軍を期待するという当初の目論みは、早くも崩れ去ったと言わざるを得ない状況となっていた

 

というのも、本来、本拠地である襄陽や江夏・江陵の水軍の援軍が期待出来ないのならば

荊南の武陵・零陵・臨賀(桂林)・桂陽といった、各地方から差し向ければ?と思われる方々もいるかもしれない

 

しかし劉表軍の主力は、常に襄陽周辺の新野といった各都市に駐屯させている軍勢と江夏、江陵に控えている水軍が主力である

 

今まで長沙や武陵が攻められる際には、江夏、江陵といった諸都市から援軍の水軍が派遣されて

長沙を攻める軍勢の後方を扼していた事情からも察する事が可能であろう

 

また劉表の病状の悪化に伴う跡目争いで

長沙へ飛ばされる事になった劉琦の処遇1つをとってみてみても、お判りになるかもしれない

 

跡目争いで破れ左遷された劉琦に、主・劉表の血族とはいえ、胆の小さい蔡瑁が多大な兵権を与える筈もない

 

よって長沙は、蔡瑁から一番遠い関係、出世が遠い人物が集まる場所となっていた

黄忠もまた、劉表が病に伏せる事が多くなった時に、劉琦と共に長沙へと左遷された1人である

 

荊南地方の要衝の長沙がそうなのだから、武陵・零陵・臨賀(桂林)・桂陽といった荊南諸都市には

平時に守備に就いている兵数も、ましてや猛将と謳われる将など皆無であり

ほぼ全ての荊南都市において、将といえばその地を治める文官というお粗末さであったのだ

 

そんな杜撰さでも、今までなんとかなった事が、今回の悲劇を生んだともいえた 

 

荊南地方の領主達は皆、今も尚、長沙が置かれている絶望ともとれる深刻な状況を、正確に把握している筈もなく・・・

いつもと同じように、時期に呉へと帰っていくものだと、タカをくくっている節さえあった

 

 

長沙を落とされた次には、自身の首が飛ぶ危険性すらあると認識出来ずに・・・

 

 

反董卓連合当時、月の参謀だった詠は、眼前に迫り来る連合軍をしのぐ事だけで精一杯で、視野が狭くなっており

目先の利益に心奪われ、のこのことその誘いに乗じて、蔡瑁や黄祖は柴桑を攻めた訳なのだが

 

この戦闘行為こそが、そもそも取り返しのつかない大きな誤り・間違いであった事も知らずに・・・

 

散々に打ち破られ敗北を喫した結果、この度の長沙への援軍も出せず・・・と

黙って指を咥えて観ているしかなかった失態を演じる事となってしまったのである

 

全ては周公謹、冥琳にとっては、大陸を制す為の布石の1つ1つが、劉表陣営を追い詰めて早期の北・東拠点の陥落へと繋がっていたのだった

黄忠も蔡瑁も黄祖といった劉表で勇名を馳せる将であろうとも、盤上で取り囲まれる碁石となんの変わりもなかったのである

 

 

冥琳と同じ視点に立っている打ち手など、劉表軍にもはや存在すらしている筈もなく・・・

 

 

そして北・東拠点の陥落した現在となっては、西側防御拠点が存在しようとも、もはや意味もなく形骸と化しており

長沙城は丸裸にされ、孫呉軍にまんまと包囲を狭められる異常事態へと追い込まれてしまうのであった

 

 

 

 

北側防御拠点から無事に撤退を完了させた黄忠は、孫呉の用意周到さに唇を強く噛み締め

苦々しく少し高台にそびえ建つ長沙城から見下ろしていた

 

黄忠は防御拠点へと孫呉側を誘導はしたが、あれだけ付け火を使い放っていたというのに・・・

長沙の街に被害が出ている様子もみられず、戦争が起きている事による外出の控えによる閑散とした風景だけであったのだ

 

単に攻めるだけではなく、奪ったあとの治世も考慮に入れた最低限の被害状況に抑えていると感じて舌を巻いていた

 

以前、孫堅が治めていた長沙を奪う際、黄祖や蔡瑁を始めとした水軍は、

街のことなど少しも考慮もせずに、略奪し放題に奪い取った

 

結果この地は異民族の流入も招いて大きく荒廃したのである

この事実が便利な土地柄でありながら人々をさらに流出させ、長沙の街の復興を遅らせる一因ともなっていた

 

劉琦様が統治することによって、多少の潤いは見せ始めた矢先にまた戦争と嘆いたのだが

どうやら杞憂であったらしい

 

黄忠の記憶の中の孫呉軍像は、以前緋蓮につき従っていた孫呉軍の印象しかなかった

荒々しく雄雄しく勇ましく そんな言葉で彩られた軍隊であった

 

しかし今は・・・緻密・精密といった軍隊を連想させる

 

どちらも防衛側からみれば嫌な軍隊といえる 一気呵成に防衛を瓦解に追い込んでいくのは前者だろう

だがふとした事で崩れ去るのも前者なのである

 

緻密・精密といった軍隊を連想した後者は・・・ 防衛側にとってこれほど嫌な軍隊はないだろう

 

滅亡しかけていた孫呉軍を、この10年ほどの月日の間に

劉表軍に届かぬ勢力へと再構築させ、軍隊の色まで変えて見せた見事な手腕

 

その変革をもたらした人物こそ・・・

今私の眼前に近づいてくるこの男の子の仕業だというの?

 

 

黄忠が見下ろしみつめる先には・・・

 

 

1人の青年の姿と青年につき従う2人の少女らしき人影が、黄忠へと無防備に近づいてくる姿が目撃できたのである

 

「一刀様 危険です 近づきすぎです! 黄忠は弓の名手と聞き及んでおります! くれぐれもご注意を」

 

「あはは 明命 忠告ありがとう 蓮華が心配して明命をつけてくれたんだ

 明命と瑠璃が両脇に控えてくれているんだ きっと大丈夫さ」

 

一刀の言葉を聞き、自身へと信頼を寄せてくれる嬉しさが込み上げ、表情がついつい緩みがちになる明命であったものの・・・

 

「一刀しゃま あそこにいる」

 

と瑠璃に指差され、明命も体中に緊張を漲らせて、すぐに一刀を庇えるよう姿勢を取っている

 

「一度目にしておきたい人物だと思っていたが・・・

 あの女性が・・・黄忠? 初めてお目にかかるがやっぱり女の人なんだな 

 あの女性が後に蜀の五虎将に祀り上げられる人物だというのか」

 

臭水の燃えるキツイ臭いと共に、焼き焦げ蒸し暑い空気が周囲に漂っている長沙城の城壁から対峙する2人

これが一刀と黄忠という2人中心人物、初の邂逅となったのである

 

              ・

              ・

              ・

 

「貴方は北郷 一刀ですね?

 警告します! これ以上近づくようなら射殺します! 即刻この長沙より兵を退かせなさい!」

 

警告せず射殺してしまえばいいのに・・・ そう感じ苦笑を禁じえない一刀ではあったものの・・・

黄忠がそういう卑怯を纏った蔡瑁や黄祖といった人物とは一線を隔す、尊敬に値する人物なのだと一瞬で感じた一刀であった

 

「長沙の人々には迷惑をかけ、大変申し訳ないと思ってはいますが、それは出来そうにもありません」

 

敵である黄忠に対しても、言葉少なげではあるが丁寧な物言いで返す一刀であったが

 

「なんの謂れがあってこの長沙を! 平和に過ごす長沙の人々を徒に戦火に巻き込むというのですか!」

 

黄忠の激昂が睨みつける視線が、容赦なく一刀の心を穿つ

 

「全てはこの大陸に平和をもたらさんが為、呉に暮す人々の安寧を妨げる者達を排除せんが為・・・」

 

黄忠に対してそう答えるのが精一杯だった一刀である

 

「くっ 吐く言葉だけは立派ですのね!」

 

通り一辺倒、口だけともとれる言葉 

・・・けれどこの青年から感じる声音は、言葉が持つ重みと責任を正確に黄忠へと伝えていた為

黄忠は次なる言葉を紡ぐのに躊躇してしまったのだった

 

「ならば劉表軍に属する将としての貴殿に問おう! 

 先の反董卓連合時、洛陽へと派兵している我らの隙をつき、平和に過ごす柴桑に攻め入ったのは如何に?」

 

「そっそれは・・・」

 

「蔡瑁や黄祖が勝手に仕出かした事?とでも、言い逃れするお積りではありますまいな 黄忠殿?」

 

「うぐっ!」

 

僅か数度の遣り取りだけで、黄忠が追求すべき事柄に関して、もはや意味を成さない事を肌で感じていた

どちらが後先なのか? この戦いに意義があるのかと問いただす事は無意味であった 

 

 

それぞれに理由があり、守るべき者を背負っていたが故に戦になった ただそれだけ・・・

 

 

「我ら孫呉はこれより、この大陸に平和をもたらすという大義を掲げて、人々が安んじて日々の営みを行わんが為

 先ずはこの長沙を含めた荊南の地を、鎮めてご覧にいれてみせよう」

 

黄忠を前にしながら、のうのうと一刀はこう言い放ったのである

 

 

黄忠は一刀の主張に怒る事はなく、なんと希望に満ち溢れた青年の主張といえるだろうと素直に感心していた 

 

一刀の主張は自信過剰とも取れかねないが、この青年は国を率いる頭領たる者 

これくらいの大風呂敷を広げる気概がなくして、目指す国家の希望を引き寄せられようか?

 

もしこの人の臣下にいたのなら・・・

私は今こちらに敵意の視線を向け続けている、2人の少女達と同じ純粋な気持ちを胸に秘め、立ち向かっていられたのだろうか?

そういった黄忠の淡い純な想いも、互いの立場が違えば受け入れられる筈もなかった

 

「その立派な大義とやらを掲げ・・・ 一体どれほどの謂れなき人々が亡くなり、嘆き悲しんだとお思いですか!

 貴方にはその声が届かないのですか!?  恥を知りなさい!!! 北郷 一刀!!」

 

黄忠の辛辣な言葉は、一刀にもこれ以上、互いに言い争うことは平行線であり、時間の無駄だと悟らせるには十分であった

だからこそ、一刀は自身の奥底に普段は仕舞い込んでいる言葉を、黄忠に向かって言い放つのであった

 

 

「・・・全てを覚悟しております 

 多くの幸せを導く事によって、この手より毀れて壊していく数多の声がある事もまた事実でしょう・・・

 

 ですが我が妻でもある孫策は、共に拾ってくれると申しております

 そしてここに控えている者達、我が後ろに控えている皆が、私の足りない部分を補ってくれると信じております」

 

そんなのは貴方の世迷言に過ぎない! そう言いたかった黄忠ではあったが・・・

 

一刀の傍に控えている明命と瑠璃の視線 

そして一刀の後ろに控える兵士達の瞳に宿した光に、自然と息を呑んでしまった黄忠であった

 

「言葉では何とでも私に対して言えますわ!

 貴方の今の言葉がどこまで本当なのか 今後ゆっくりと見定めさせてもらいますわ」

 

黄忠はそう一刀へと、最後の言葉を投げかけ終えると、踵を返して一刀達から去っていくのであった

こうして長沙の前哨戦は、ここに来て孫呉に傾き、有利に展開しここに終わりを告げたのである

 

 

 

 

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●『真・恋姫†無双 - 真月譚・魏志倭人伝 -』を執筆中

 

※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を

人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております

 

上記を御参照になられ御納得された上で、右上部にありますお気に入り追加ボタンを押し、御登録のお手続きを完了してくださいませ

お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします<(_ _)>

 

■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

  春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

  『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた

  優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

  容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である

  祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

   呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

  容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである

  髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが

  その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである

  服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

  普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

  発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

  このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

  ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

  容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている

  背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

  容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである

  眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から

  姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

  緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

  祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

  部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

  真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

 

  容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている

  均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである

 

 ○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ) 

 

  荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

  知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

  以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま

  呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている

 

  容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

  (背丈は朱里や雛里と同じくらい) 真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

  ○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)

 

  『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

  槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

  容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ  

  胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている  

 

  ○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)

 

  弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが

  一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で徐々に頭角を現し

  後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

  容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである 

  二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える 

 

  ○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)

 

  朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

  その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

  天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為

  未熟であった一刀の補佐にと転属させられる 

 

  初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に(わだかま)りも消え

  一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

  後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している

 

  容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである

  服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・

  と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)  

 

  ○太史慈 子義 真名を桜(サクラ)

 

  能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者  桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し

  騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)

  本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という

  両者の良い処をとった万能型である

 

  武器:弓 不惜身命

  特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く

  隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった

   

  容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子

  眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める

  一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる

 

  真剣に話している時にはござる口調であるが、時折噛んだりして、ごじゃる口調が混ざるようである

  一時期噛む頻度が多く、話すのを控えてしまったのを不憫に思った為

  仲間内で口調を指摘したり笑ったりする者は、自然といなくなったようである

 

 ○高順

 

  「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年 

  以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた

  高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた

 

 ○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)

 

  緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし

  緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある

 

  この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・  

  正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして

  気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが

 

  この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・

 

 

 ○孫紹 伯畿 真名を偲蓮(しれん

 

  一刀と雪蓮の間に生まれた長女で、真名の由来は、心を強く持つ=折れない心という意味あいを持つ『偲』

  ”人”を”思”いやる心を常に持ち続けて欲しい、持つ大人へと成長して欲しいと2人が強く願い名付けられた

  また、偲という漢字には、1に倦まず休まず努力すること、2に賢い、思慮深い、才知があるという意味もある

 

  緋蓮、珊瑚、狼をお供に従え?呉中を旅した各地で、大陸版・水戸黄門ならぬ

  ”偲”が変じて”江東の獅子姫様”と呼ばれる

 

 

 ○青(アオ)

  白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前 

 

  白蓮から譲られる前から非常に気位が高いので、一刀以外の騎乗を誰1人として認めない 

  他人が乗ろうとしたりすれば、容赦なく暴れ振り落とすし蹴飛ばす、手綱を引っ張ろうとも梃子でも動かない

  食事ですら・・・一刀が用意したモノでないと、いつまで経っても食事をしようとすらしないほどの一刀好き

 

  雪蓮とは馬と人という種族を超え、一刀を巡るライバル同士の関係にある模様

 

 ○狼(ラン)

  珊瑚の相棒の狼 銀色の毛並みと狼と思えぬ大きな体躯であるが

  子供が大好きでお腹を見せたり乗せたりする狼犬と化す

 

 

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【あとがき】

 

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます

いつも大変お世話になっております

 

年末年始が近づき寒くなってまいりました

また、就職説明会、並びに受験シーズンの到来と忙しい時期にも差しかかっております

 

皆様健康に気をつけ、日々を元気にお過ごしくださいませ

 

それでは今回の話にへと話題を転換しますと・・・

 

現在の中国長沙市南に位置している咸嘉湖周辺を

この度の舞台である長沙城に設定しておりますが、もちろん雪月独自の設定ですのでご了承くださいませ

 

長沙の前哨戦の模様をこの度お送りいたしましたが、いかがでしたでしょうか?

 

紫苑さんと孫呉陣営との戦い、劉表軍が抱える問題などが浮き彫りとなった回でもあるかなとも思います

 

ここから紫苑達の巻き返しがあるのか? それとも簡単に陥落するのか?は

”新年明けての更新となります話”にて、明らかになる事となりますので

随分お待たせさせてしまう事となり、大変申し訳ありませんがご了承くださいますよう、よろしくお願い致します<(_ _)>

 

白蓮、麗羽、華琳を始めとした華北の動向、翡翠、桃香や恋、劉璋を始めとした涼州・巴蜀を中心とした動向

そして劉表、美羽を始めとした孫呉陣営に連なる動向、各勢力の動きに対しての司馬懿の動向と

まだまだお送りするお話は多々ある訳でして・・・

 

来年はその辺りをじっくりと時間を費やして制作し投稿していく予定でおります

 

これからも皆様の忌憚のない御意見・御感想、ご要望、なんでしたらご批判でもと何でも結構です

今後の制作の糧にすべく、コメント等でお聞かせ下さいませ よろしくお願い致します<(_ _)>

 

それでは次回更新予定となります1月15日(水)まで(*´∇`)ノシ マタネ~♪


 
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