No.643881

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第12話

黒天さん

今回は月と詠との会話と、反董卓連合の序盤のお話です。

2013-12-09 00:49:34 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8943   閲覧ユーザー数:6517

「昨日は取り乱してごめん、亡くなった友達にあんまり似てて驚いちゃって。

 

姓は島、名は津、字名は北郷。よろしく」

 

「改めて自己紹介しますね、私は董卓です……」

 

「昨日も言ったけど、ボクの名前は賈詡だよ」

 

華雄に案内されて月と会い、自己紹介。亡くなった友人に似ている、というのはある意味事実か。

 

だってここに俺と共に時間を過ごしてきた月も詠ももう居ないのだから。

 

「大切な人だったんですね」

 

「うん。あんまり似てるから、ついその人と重ねて泣きそうになっちゃってね」

 

「それでヤケ酒して、酔っ払った所をボコボコにされたって? 全く、情けない男に助けられたものね」

 

「詠ちゃん、そんなこと言ったら失礼だよ……。それと、私の事は真名で呼んでください、月といいます」

 

「そうね、ボクの事も真名で呼んでいいわ。ボクの真名は詠よ」

 

月はともかく、詠がこんなにアッサリと真名を許してくれるとは思ってなかった。

 

多分アッサリと真名を許した月に詠が文句をいい、結局月に押し切られて詠も真名を教える形になると思ってた。

 

華雄もそうだったようで驚いた顔。

 

「何よ、文句でもあるの?」

 

「いや、こんなにアッサリ真名を許してくれると思わなかったからさ」

 

「あなたは、恩人ですから……」

 

「どうにも、初めて会った気がしないのよね。

 

何故かわからないけど、あなたなら真名を許しても良いと思ったのよ」

 

「私もです……。どこかで会ったような気がして、あなたの姿を見ると安心するんです」

 

「そっか」

 

少しだけ安心、そんな漠然とした形ででも、覚えていてくれたとおもうと、救われた気がした。

「2人からだけ真名を許してもらうのも不公平だし、俺の真名を教えておくよ。

 

俺はの真名は一刀だよ」

 

「一刀さん……、ですか」

 

俺の名を呼んで、少し嬉しそうに月が笑う。

 

「それにしても、あなたが霞や華雄と知り合いだなんて思わなかったわ。

 

しかもお互いに真名を許してる仲だなんて」

 

「ああ、あ……、一刀には以前に世話になった事があってな」

 

華雄、主って言いかけたな、今……。流石に今の月の前じゃそう呼んじゃ不味い。

 

俺のことを真名……というか下の名前で呼ぶのがなんだか気恥ずかしそうで、妙に可愛くみえたり。

 

「へぇ。それにしても、そんな短い棒きれを武器にしてるなんて変わってるのね」

 

詠の視線は俺の腰の鉄扇へ。まぁこんなの使ってる人、こっちじゃ見たことないしなぁ。

 

「これは鉄扇っていってね」

 

武器を抜いて広げて見せると、2人して興味深そうにそれを見つめる。

 

「私の真名……。それに字は私の……」

 

月が鉄扇に書き込まれた自分の真名を見つけ、不思議そうに首を傾げる。

 

「ほんとね……、霞と華雄の名前も書いてあるわ。そっちのにも書いてあるのかしら?」

 

「こっちは……」

 

もう一方のの鉄扇を広げれば、今度は詠が目を見開き、本当に驚いた顔をして……。

 

「これ、間違いないわ、ボクの字よ……、それに恋の名前も……」

 

気味悪がられるリスクはあるけどこれをきっかけに何か思い出してくれないか、そう思って見せてみた。

 

そんな素振りは今のところ無い、やっぱり思い出すのなら夢、という形でなんだろうか

 

「世の中には不思議なこともある、そういうことさ」

 

「でも、華雄はこれをしってるんじゃないの?」

 

華雄の言葉に詠が食いつく。華雄は軽く頷いて言葉を続ける。

 

「ああ、この武器は私や霞、それに書かれた名の人物から一刀に贈った物だからな。

 

真名も同じだったが、姿も月達によく似ていた。もうこの世にはいないが……」

 

華雄が寂しそうに言うと詠はそれ以上追求しなかった。

 

もっとも、やはり納得は行かないようで、暫くの間、鉄扇にかかれた名前をじっと見つめていた。

 

「ともあれ、傷が治るまでゆっくりしていってください」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

なんでもないように振る舞ってたけど、実際の所、頭に包帯は巻いてるし、服の下はがっつり包帯をまかれてる。

 

下手に体動かすと痛むし……。打撲がほとんどだし、多分骨は無事だから1周間もすれば治るとおもうけど。

 

「傷が治るまでといわず、好きなだけ滞在してくださっても……」

 

そういって、頬を染めながらすっと俺から視線をはずす月、そしてやっぱり詠に睨まれる事になった。

 

「ありがとう」

 

もう一度礼を言い、俺はお言葉に甘えてある程度傷が癒えるまでここで世話になることにした。

───────────────────────

 

と、いったものの、そのあと数日も経たぬうちに、袁紹から檄文が諸侯に送られたという情報を霞から聞き、俺は大慌てで帰還することになった。

 

月達を悪くいった噂は袁紹が流していたのかもしれない。

 

大半が打撲だったこともあってか、どうにか帰り着くまでには傷は癒えた。

 

俺が城に帰り、洛陽の様子や、政の手腕等を細かく華琳に説明した。

 

もちろん霞や華雄が俺のことを良く知っている、なんていう話しは伏せて。

 

でも、やはり反董卓連合には参加する、ということ。

 

実際が暴君などでは無いにしても、大多数が信じている噂が外では事実。

 

俺の時もそうであったように、これから先の時代を生き抜くために、風評を得るために、これに参加しないという選択肢は無いという。

 

反董卓連合でどういう立ち居振る舞いをするか、どうやって月達を助けるか、しっかりと考えたかったが俺に考える時間は多く与えられなかった。

 

というのも、虎牢関と汜水関を董卓軍が改装し、より強固な要塞へと変えようとしているという情報が飛び交い、

 

改装中の無防備なうちに攻め入ろうという話しが持ち上がり、出陣の日が前倒しになって、十分な準備もできぬうちに諸侯が招集されたのだ。

 

武具の不足や兵士の練度不足、兵糧の不足等、問題を抱える諸侯は多い。

 

華琳はその点、しっかり先読みしていたのか抜かりはないようだった。

 

頭を悩ますことが色々と起きる反面、俺にとって良いことも一つはあった。

 

麗ちゃんがほぼ快復し、医者の手を離れたのだ。あとは自宅療養でも問題ないとのこと。

 

だからといって華琳を裏切る気は無いけれど、悩みの種が一つ解消されたのはいいことだ。

 

それに霞や華雄が前の世界の事をハッキリと覚えているなら、きっとなんとかなる。そう考えて、俺も出陣の準備をすすめた。

現地に到着してみれば、集まった諸侯は前と変わらない顔ぶれだ。北郷軍が無い以外は。

 

確か劉備は公孫賛の軍の末席に居るはずだが、俺は顔をあわせる事はなかった。

 

軍議の席には来ておらず、華琳もその姿を見なかったらしい。

 

俺はそもそも軍議の席には同席しなかった。

 

袁紹の顔は見たくもなかったし、おそらくつかれるだけだろう事がわかっていたから。

 

華琳から聞いた話しでは、結局前回の時と同じように、袁紹がゴリ押しで盟主になったらしい。

 

全くやれやれだ。

 

前回と違うのは、華琳は陣地から他所に行こうとしなかったと言うところか。

 

それと、朱里がここ……、曹操の陣営に武具を調達にやってくることもなかった。

 

会えるかと思って多少は期待してたんだけど、期待はずれに終わった。

 

軍議のあと、しばらくの時間を置いて、袁紹が号令を発し行軍を開始する。

 

前と同じように数時間も歩けば渓谷の途中にソレは姿を現す。

 

汜水関……。

 

前回と違うのは、汜水関の各所に足場が組まれており、周囲に資材が固めて置いてあるぐらいか。

 

どうやら工事中というのは本当だったらしい。

 

門は片方が外されていて、蝶番の補強でもしようとしていたのか、工具類が門の周囲に散らばっている。

 

「桂花、紫青、どう思う?」

 

「確かに工事中のように見えます、足場を組んでいる場所も妥当……。

 

矢間を増やす工事でもしていたのでしょうか?

 

より強固な要塞にしようとしている、というよりも補修工事でもしていたようですね」

 

「私の意見もおなじよ、傷んだ場所の修理とちょっとした改装、といった所かしら。門の修繕もしようとしていたようだし……。

 

まだとりかかったばかりで、職人たちが慌てて逃げたように見えるわね」

相変わらず……というか、月の所から帰ってきてからこっち、前にも増して華琳より俺の傍に居る事が増えた。

 

しかし行軍中に華琳から離れて俺の傍にいるのは軍師としてどうなんだ2人とも……。

 

あと桂花は酒を飲んだ日から数日後、急に様付けやめたいとか、ありのままで喋りたいなんてことを申し出てきたので俺は2つ返事でOKした。

 

何か思い出したんだろうかとも思ったけど、深く詮索するのはやめた。

 

「天泣、天梁、多分キツい戦いになるけど、覚悟はできてる?」

 

「大丈夫です~」

 

「こちらも大丈夫です」

 

「星も、大丈夫?」

 

「私の隊は準備は万全、それに一刀殿は私がこの程度で臆するとお思いか?」

 

「確かに、頼りにしてるよ」

 

話しているうちに汜水関は目前まで迫ってくる。

 

一応城壁の上に兵士が現れて、城壁の上や矢間からこちらに向かって矢を放ってくるものの

 

門が片方外れていては防衛もろくにできず、またたく間に制圧されていく。

 

前回のように華雄が奇襲を仕掛けてくる事もなく、突撃指示オンリーの袁紹の指示にしたがっていても汜水関を簡単に落としてしまう事ができた。

 

何かあるような気がする。紫青も桂花もそういって考えこむものの、脳天気な袁紹がそんなことを考えるわけもなく、

 

イケイケゴーゴーってなものである。結局汜水関は素通りもいいような所で抜ける事となった。

 

一応、各軍で数人が汜水関を調べたのだが、別段変わった所は無し、何か仕掛けがあるわけでもなく、

 

袁紹軍にせっつかれる事もあり、そのまま通り過ぎた。

 

でも俺は絶対何かあると思う。

 

霞が勝つつもりで策を練っているともいっていたし……。

 

防衛のための将が誰も居なかったのも腑に落ちない。いくら工事中とはいえ兵士の数が少なすぎたようにも思う。

 

考えてみてもしょうがない、今は汜水関をあっさり抜けられたことを良いことと思い、

 

俺達は次の虎牢関に向けて俺達は歩をすすめた。

 

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回は月と詠との会話と反董卓連合の序盤です。

 

霞達の用意した策とは何なのか、一刀はこの後どう動いていくのか。

 

うまく描いていければいいなと思います。

 

何の策があるか、予想出来る人も居るかもしれませんがその辺りはまた次回、ということで……。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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