『前に進めない。』、『捨てられた。』。
そんな事を彼女が想ったのは何年ぶりだろう。
ここには、かつてトレイユの街の農場があった。
奴隷労働させられていた召喚獣による反乱は失敗したものの…。
そのせいで奴隷問題が浮き彫りになり、農園の主は逮捕。
その後、土地はブロンクス家に買い取られ、住宅街として改装される事になった。
そんな工事中の農園の跡地の隅で、膝を抱えた少女が1人。
『フィズお姉ちゃん…アルバ…今頃どこで何しているのかな…?』
彼女の名前はラミ。フラット孤児院で育った孤児だ。高度な幻獣界召喚術の才能を見出されて、
唯一の肉親である姉と別れ離れになった。その後、召喚術師達の派閥の1つである蒼の派閥の跡取りとして、ロランジュ家の養子となった少女だ。
孤児院を出て暫くは召喚術師としての修業に勤しんでいたラミだったが…。
他にロランジュ家の跡取りが出来て、養子のラミは…………このアルマンの農園跡に捨てられた。
『何で…何で…こうなるのよぉ…………あたいは…何の為に強くなろうとしたのよぉ……』
今日もラミは泣いている…昨日も泣いた…明日も泣いた…。
そんなある日の事、かつてラミが見た顔の豊かな髪を三つ網にした少女がラミの隣に腰かけていた。
『蒼の派閥に捨てられたって聞いたけれど、こんな処に居たのね、ラミ。』
『フィズお姉ちゃん…』
ラミはそっと姉の顔を覗く。
『あたしもさ、リプレママとガゼルパパに捨てられたんだ。フラットじゃあ、遣りたい事見つからなかったから。』
ラミの姉…フィズは顔を斜め上に向けて語る。
『そうなの…。』
とラミは返す
『アカネは、シオンさんの処離れて、宝探しに行くんだってさ。』
『そうなの…お姉ちゃん。』
『アルバは、騎士として本格的な修業の為に旧王国との国境に向かったってさ。』
『そうなんだ…アルバは…。』
『騎士と言えば…サイサリスもレイドが出て行くのと同時期に騎士団を抜けて行方知れずだっけ。』
『そうだね…。』
フィズは俯いて涙声で話す。
『あたし達、人に反発してどっかに流れて行く事さえできなかったね。』
『うん。』
再会した姉妹は俯いたまま話さなくなった。
[newpage]
少し時が進み、場所も代わってここはトレイユの街の留置所の牢。
農園が顕在だった頃に起こった召喚獣誘拐事件の犯人である無法者兄弟2人が入れられている牢。
兄の名はギムレ、弟の名はバレン 2人はラミに捕らえられて引き渡され禁固刑を受け牢の中での退屈な日々を過ごしていた。
そんなある日の事、白髪の老人の牢番が2人の牢に近づいてきて2人に強い口調で語りかけた。
『出所だ、誰が来たと思う?』
『さあな。』
ギムレがぶっきらぼうに返す。
『僕達を外に出してくれる人なんて居るのかい?』
バレンも小声で言う。
『いるのよねぇ、これがさ。』
と、女の声がし、ギムレとバレンの牢に2人の少女が近づいてくる。
1人はお気に入りの帽子とコートに身を包んだ茶髪の少女、1人は紫髪のメイド。
2人は牢番に席を外させ2人に話しかける。
『今日からあんた達2人は、このポムニットの部下よ、いいわね?ギムレ、バレン?』
と茶髪の少女が言う。
『リシェル御嬢様…本当に御嬢様を誘拐しかけたこの2人を私の部下に付けるのですか?』
と紫髪のメイド…ポムニットが心配そうに言う。
『大丈夫よ、ポムニット。パパには話を付けたから』
リシェルは牢にさらに近づいて2人に言う。
『聞いてのとおりよ、あたしがここからあんた達2人を出す代わりに、あんた達はあたしの家の従者になって貰うわ。』
『いいのか…?俺を従者にして。こんな弟以外の手下に見捨てられて、挙句ガキに負けて逮捕された無法者を。』
ギムレがささくれた様にリシェルに話す。
『今、御嬢様は、弟のルシアンぼっちゃまが軍学校に行って寂しいんです…どうか…。』
『嫌だね、僕らは奪う事と戦う事しか知らず、奪う事と戦う事しか出来ない。』
とバレンはポムニットが言いかけている処できっぱりと言う。
『従者を補充したいんなら、他を当たってくれ。』
と言ったギムレはそっぽを向く。するとリシェルは…拳を握りしめて言う。
『あんた達じゃなきゃいけないの!あたしはねえ!あんたが欲しいのよ!ギムレ!』
『え…?』
ギムレは多少頬を赤らめリシェルの方を振り向いて、格子に近づいて驚いたように言う。
『おい…それ本当か!?リシェル!?』
『本当よ。バレンと一緒にあたしの従者として、いや…友達としてやり直してごらんよ。』
リシェルは優しく2人に語りかけた。
『リシェル…バレン、決めたぞ…。』
『あんちゃん?』
涙声で語るギムレにバレンは驚いた表情で言う。
『こんな俺達でも…真っ当になれるんだ…リシェルと…』
ギムレは其処まで語ると泣きだしてしまった。
『交渉は成功したようだな。』
牢番が戻ってきて言う。
『ええ、鍵と2人の元々の持ち物を渡して頂戴。』
とリシェルが言った処で、
『待て。』
とバレンがリシェルを呼びとめる。
『娑婆に出たら行きたい所がある、ダメか?』
『別にかまわないけれど…?』
[newpage]
4人はバレンの希望で着工中の農園の跡地に向かった。
自分達がかつて悪事を働いた現場が、今どうなっているか見たかったのだ。
そこで、会ったのは再会したものの俯いたままの姉妹…。
『なあリシェル?こいつらも、雇ってくれるか?』
とギムレがリシェルに聞く。
『あんた達が連れて行きたいなら…』
とリシェルは返すと、バレンは姉妹に近づいて言う。
『少なくとも僕は…………昔迷惑かけた事に関しては…今はこういう形でしか…』
『俺も同じだ。』
ギムレも姉妹に近づいて言う。
『俺と一緒にリシェルの従者にならないか?フィズ?』
『僕は、君が欲しいんだ、ラミ。』
こうして、リシェルとポムニットは、4人の新たな従者にして新たな友を屋敷に連れて帰る事になった。
『ラミ、あんたはルシアンの部屋使いなよ。あいつ私物殆ど持っていなかったから。』
『バレンと相部屋なら。』
バレンにひっついたラミはリシェルに対してそう返す。
『ところで、ギムレ、フィズ?あんたらはどの部屋に?』
『『もう決めてある。』』
とリシェルに対して2人は声を揃えて返した。
その夜…
『ちょっとギムレ!?なんであたしがドア側でフィズが窓側なのよ!?落ちる!』
『ギムレさん!これ以上こっち側に来ないで下さい。潰れちゃいます!』
『俺こそ、何で俺が中央なんだよ!』
リシェルの部屋は前より騒がしくなった…2人の同居人の為に…。
一方、かつてのリシェルの弟の部屋は、
『バレンー、もう寝ちゃうのー?』
『ああ、明日からは働きづめだろうからな。』
『ねえ、バレンー、明日一緒に…』
『俺はもう寝る、お前も夜ふかしせずに寝ろよラミ。』
『バレンー、バレンったらー。』
夜な夜な変な話声がするようになったとさ。
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pixivにPSPSN4発売記念に投稿したSSと同じ物
早い話がSN4ギムレ&バレン兄弟更正ED妄想二次創作SSなんで苦手な人は注意
pixivにアカウント持っていないギムレ&バレン兄弟ファンの皆様の為にここにも投稿させて頂きます。
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