No.642531

義輝記 天水の章 その参

いたさん

義輝記の続編です。今回は、かなり長文ですので、注意して下さい。

2013-12-04 00:54:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2591   閲覧ユーザー数:2280

【 貂蝉、恋に弄ばれるの件 】

 

董卓様達は、目を瞬きして、この事態に驚く。

 

颯馬「まだこの地に来て、一刻もしていないのに、来訪者が訪れるとは、非常に奇想天外な話です…………が!」

 

義輝様や俺達は、ジィィィーと貂蝉を睨みつける! 

 

流石の貂蝉も、俺達の行動に奇異に思ったらしく、顔を赤らめて

 

貂蝉「人からの熱い視線は、いつ、何時でもいいわん!!」

 

と、悶えていた…………?!  

 

      パァァァァカカカァァァァァァァァァンン!!!!!!

 

貂蝉「いっっったぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!! 」

 

恋「ねね…。 これ、楽しい! もう一度……やっていい?」

 

ねね「恋殿が飽きるまで、おやり下さい!!!」

 

うん、気持ちは分かるけど、後、三発ぐらい喰らわしたら止めてあげて。 こちらが聞きたい話ができなくなるからね……。

 

義輝「颯馬よ、これをどう思う? 多分、貂蝉の仕業と思うのだが確証が無い。 だが、訪ねてきた者を待たせるのも礼に反する」

 

颯馬「ここは、董卓様の居城。 それなのに、わざわざは相手は、義輝様と俺の名前を名指ししてきた事から、狙いは明白です」

 

そのため、董卓様達を居城の奥に移動、護衛を付けて待機していただく。その後、義輝様達と俺が前面に出てその者達の相手をし、後方に何人か董卓様側の武官に来てもらい、急いで董卓様へ連絡をつけてもらうようにする。 

 

最悪、俺達が倒されても、無事逃げてもらえるように……。

 

と、考えを説明したら、何故か傍にいた董卓様や張遼殿達が猛反対!!!

 

董卓「導き手の御使い様が倒れては、この先私達の行動などわかりきっています。 それに、仲間達を見捨てて逃げるなんて出来ません!」

 

張遼「 こーんなおもろい話を自分達で処理しようと考えんのが、甘いんや! 一言ウチらに言えばええ。『 手伝ってくれ 』とな! 」

 

結局、董卓様、張遼殿、華雄殿が付いてきてくれた。

 

義輝「董卓様、誠に感謝する。でも、もしかの時は、必ず逃げて欲しい」

 

董卓「義輝様、私も太守でありますが、武人でもあるんです! その矜持にかけても、最後まで戦います!」

 

鹿介( ……颯馬殿、颯馬殿 )  クイ クイ 

 

颯馬( 鹿介殿、何か? )

 

俺の袖を引っ張る鹿介殿、日の本では見られなかった少し可愛い仕草に、少しドキリとした。 言っとくが、鹿介殿は『おなご』、姫武将だから。

 

鹿介(確か某が聞いたのは、『訪問者の来城』でしたが、いつの間に『襲撃者の撃退』になったのですか?)

 

颯馬(……董卓様の決意を決めた顔や張遼殿のあの楽しそうな姿を見て、今更、最悪の事態を想定しての考えでした! って、言えると思います?!)

 

鹿介( …無理ですね )

 

そもそも、襲撃者が正門から取次を頼むなんて有り得ない。しかし、常識を覆すのが奇襲の基本故に、義輝様に用心で申し出たのだが。 

 

あぁ、昌景殿と信長が二人して、ニヤニヤ笑っていやがる!

 

『そちらの事情は、既に把握済み』っと言わんばかり。 少しは、心配そうにしている光秀、三太夫、小太郎を見習え!

 

 

 

あっ、貂蝉は……、興に乗った恋殿のハリセンを十発以上受け止めて、意識が無い状態。 流石にそのままにしておけず、賈駆殿、ねね殿に看病、恋殿に護衛をお願いした。 結局、貂蝉よりは聞けずじまいになってしまった。 

 

 

◇◆◇

 

【 援軍来訪と貂蝉と??のど突き漫才?の件 】

 

〖 天水城、正門 〗

 

張遼「警備ご苦労さん! 報告もらったが、相手さんはどこや?」

 

警備兵「はっ! こちらの方々です!」

 

警備兵が、案内した先には……………!!!!!

 

「軍師殿!!」と、俺に歩み寄る、越後の竜『上杉謙信』 殿。

 

「「 颯馬!! 」」と、同時に声を掛けて走り寄ってくる、甲斐の虎 

『武田信玄』殿 とその妹御になる『武田信廉』殿。

 

『 兄者!!! 』と元気に叫んで、自分の身長以上の槍を背負い、こちらに向かう信濃の勇将『村上義清』殿。

 

『 兄様 』『 颯馬 』『 颯馬殿 』 とそれぞれ違う呼称を呼ぶ大友家の名将『立花宗茂』殿、『高橋紹運』殿、『立花道雪』殿。

 

颯馬「謙信殿、信玄殿、信廉殿、義清、宗茂、紹運殿、道雪殿……?」

 

なんで、日の本に残った姫武将達がここに? いや、それより日の本の各領国は、どうなっているんだ???

 

義輝様も、光秀も不機嫌そうだ。 あれだけ説得したのに、日の本を政務を行う将がこの地に勝手に来て……………………えっ? 

 

この地、銅鏡が導いたここ(異世界)に、どういう手段で来たんだ?!

 

??「私がここまで、連れてきたのだよ!!」

 

後ろから、貂蝉に負けず劣らずの野太い声がする!!!

 

??「…………成る程、貂蝉が肩入れ支度なる良い『おのこ』だ! じゃが、ダーリンにはまだ及ばないようじゃな。 ヌフゥゥゥーン!! 」 

 

振り向いた義輝様達の刻が止まる!! 表情が凍り付く!!!

 

なんだ、貂蝉と初めて会ったばかりの頃を、わぁ、また寒気がーーー!!

 

貂蝉とはまた違う、見たくもないない際どい衣装を纏い、長い髪を左右に束ね

白い見事な髭を生やす、筋肉質な大男。

 

貂蝉「あらーん、卑弥呼! 私の頼みを実行してくれたのねん!」

 

卑弥呼「むぅぅぅ! 強き漢女の波動を感じたが……。 まさか貂蝉!! お前だったとは!!!  ……………見違えたぞ!!」

 

貂蝉「この外史に来て、友の生き様を、その願いを受け止めた私だから…。今なら、卑弥呼。 アナタを超える事も出来るわよ!!! 」

 

卑弥呼「……良かろう、その強さを試してくれる……!」

 

二人の『 漢女 』が、対峙する…………。

 

卑弥呼「ドオリャャャアア!!!」

 

卑弥呼が、一瞬にして両拳に体から発した気を纏い、貂蝉に右拳を叩き込む!

 

貂蝉「……………!」

 

拳が当たる瞬間、貂蝉の身体が左右に残像を残しつつ、拳を『すり抜けて』て前に進んで行く?!

 

            ズゥガガァァァァーーーンンン!!

 

貂蝉の後方の地面が、一直線に抉れ(えぐれ)飛ぶ!! 

 

…慌てて、卑弥呼を見ると、右拳から流血し、突いた状態で停止している。

 

卑弥呼「まさか、某外史の暗殺拳、究極秘奥義を繰り出してくるとは!」

 

『フン』と、気合いを卑弥呼が掛けると、流血が止まった…。

 

貂蝉「…そのために、私は『 愛と悲しみ 』を背負う事になったわ…」

 

後ろを振り返り、また、構え直す。

 

董卓「おば様! これ以上危ない事は止めてください!!!」

 

董卓様が、いつもの穏やかな口調とは違う、激しい口調で叫ぶ!

 

その声に、あの偉丈夫がぐらついた?!

 

卑弥呼「……貂蝉! まさか『 おば様 』とは、お前の事か?!」

 

貂蝉「そうよん! この子は、義理の娘みたいなところかしら?!」

 

卑弥呼「…………お、お前は、我ら漢女道永久の課題とされる『 母 』になれる道を見つけたと言うのかぁぁぁぁ!!!!」

 

           ズドォォォォーーーンンン!!

 

悲痛な叫びを上げ、身体を落とし両拳で地面を叩く!

 

卑弥呼「クッ! 私の負けだ!! だが、貂蝉が我らの課題を克服できる道を見つけ出した事は嬉しいぞ! 更に精進するのだ!!!」

 

 

ア……、そう言えば董卓様ハ、貂蝉の血縁者じゃ、ナカッタノダナ。ヨカッタヨカッタ… と、俺は軽く現実逃避をしてしまった。

 

董卓様は、ホッとして肩をなでおろす。

 

 

少ししてから、話が思いっきりそれていた事に気付き、改めて問い直す。

 

日の本の政務等は? それにこの地に来れた理由は?

 

謙信「…まず、私からだな。私は領主を景勝に譲り隠居したのだ。 補佐に兼続達を付けて…。 そんな隠居した数日後、毘沙門堂に籠もり祈祷をしていたら、この『 毘沙門天の御使い 』が参られ、軍師殿のところに送ってくれると、仰られるのでこの地にこれたのだ! 」

 

…誰が、『 毘沙門天の御使い 』かツッコミたいが、後回し。

 

信玄「私は、身体がこのように病に冒されているため、養生しながら政務を行っていました。 すると、この者が現れ『 お主の病を完治させ、尚且つ天城颯馬に逢えるようにしてやろう! 』と言われたのです!」

 

信廉「私もその場に居たので、一緒に来たのですよ、颯馬。 政務も心配しないで大丈夫です。 信濃の『 真田昌幸、信幸、幸村』の親子が臣下についたので、任せてきました」

 

颯馬「……新参者に、国を任せたのですか?!」

 

そんな事をすれば、謀反による国の乗っ取りが出来る! 信玄殿達が、そんなヘマなどしないはずだが?!

 

信玄「颯馬が言いたい事はわかりますが、手は既に打ってあります」

 

と、信玄殿が説明する。

 

真田昌幸は、その政務処理能力や謀略の才が信玄殿と匹敵するとの事。だが、その身分が低いため、なかなか取り立ててやる事ができないのが悩みだった。

 

そこで、今回の話が入り、信玄殿と信廉殿が出国、留守を昌幸に任す。勿論、補佐に残りの四天王を配置し、万が一のときに備える。

 

そもそも、昌幸は誇り高き謀将で、簡単な国取りに興味は無い。しかも、娘の幸村は信玄殿に盲目的に忠誠を誓い、信幸殿は今の生活に満足しているので、もし、謀反をおこせば、親子協力どころか、反対に足を引っ張られ兼ねない。

 

しかも、無事留守を守り、政務を滞りなく行えば、家臣達の信頼を集め、武田家重臣の座を得られるし、真田の家名も上がる。 飴と鞭を加えたこの策に、わざわざ謀反を起こすのは、逆に己の首を絞める行為になるだろう。

 

俺は、正に深謀遠慮の策だと褒めちぎる。 そんな二人の顔が真っ赤になったのを見て、直接褒められる機会も少ないから当然か、と軽く流す。

 

義清は、領国は既に武田家所有であるし、武人として働く場所も日の本にないため、敬愛する義兄の力となりに来たという。

 

宗茂、道雪殿、紹運殿は、領国はあるが、自分達の動く場所はもう無いとの事で、義昭様にお願いし、許可を得てこちらに来たそうである。

 

颯馬「謙信殿、信玄殿、信廉殿は、わかりました。 ですが、義清、宗茂、

道雪殿、紹運殿は、どうやってこちらに?」

 

卑弥呼「それは、恋する乙女の波動を感じたから、連れて来たのだ!!」

 

それを聞いて、顔を赤らめる謙信殿以下七人。

 

貂蝉と卑弥呼は、それを見て『 恋する乙女達はいいものね! 』『私も早く戻り、ダーリンとイチャイチャするのだ! 』と、乙女らしい動きで騒ぐ。

 

だ~か~ら、お前~ら、体をクネクネするなーーー!!!

 

 

張遼「………で、話は済んだか?」

 

賈駆「説明は、当然してもらうわよ!!!」

 

恋「また、増えた。 友達増える事、とっても嬉しい! 」

 

ねね「恋殿、ねねも友達ですぞ!」

 

華雄「……む、また強き奴らが来たか。明日からの調練が楽しみだ!」

 

貂蝉がくれば、勿論、看病していた三人も来るわけで…。 また、一から説明をしなければならないのか! と頭を抱える。

 

ふと、横を見ると、光秀も何やら困り顔。 どうした?と聞いても、『 颯馬に話を聞いてもらうと、私が更に落ち込みのでいいです…… 』と、わけのわからない返答がきた…?? 何かあれば力になるとは伝えたが。

 

謙信殿達から、改めて挨拶を受けられる義輝様。 順番が違うじゃないかと思っていたが、義輝様はそんな事関係無しとばかりに、笑顔で対応していた。

 

全員の挨拶が終わり、思い出したように義輝様が苦笑気味に、ポツリと言う。

 

義輝「しかし、こうも集まっても、わらわ達の居場所が定まって居らぬのに……どうするべきかの?」

 

よ~~~く考えてみれば、董卓様は俺を御使いとして信用されているが、義輝様達や今回来てくれた謙信殿の事を受け入れるとは、一言も言っていない!

 

アッ! と、この場所にいる新たに来た謙信殿達意外が、叫ぶ!!! 

 

董卓「ごめんなさい!!! あまりにも考えられない事が多くて、皆さんの部屋の案内を命じる事、忘れていました!!」

 

ペコペコと、義輝様達や俺に謝る董卓様! 

 

ちょっと、太守様(月)が俺等(こんな奴)に簡単に頭を下げちゃ駄目(!!)ですから! っと止める俺と賈駆殿。

 

董卓様は、『まだ、謝り足りませんが…』と、呟きつつ発言する。

 

董卓「 改めてお願いします! 私こと『 董 仲穎 』は、天城颯馬様や義輝様御一行を天より降臨された天の御使いと認め、ぜひ、我が家、我が国、この世界の人々のために、お力添え下さい!!! 」

 

義輝「……承知しました。ただ、我らは天の御使いという仰々しい者では無く、薫卓様の配下として組み込んでいただければ………」

 

董卓「それはいけません!! おば様も申していました。『 義輝様達は天の御使い 』だと。 それに、私は天城様の降臨も目撃しています! それなのに、配下に加えるなど恐れ多いこと、許可できません!!」 

 

董卓様と義輝様の話合いが続くが、[配下に入る!⇔駄目です!]で、全然纏まらない………。 早くしないと、日が暮れてしまう。

 

今回は、『 長 』同士の対談なので、配下になる者達の発言権は無い。

 

…が、こうも長引くのも他の者も困る故、俺が進み出て進言した。

 

颯馬「 義輝様、董卓様。 お二人の間に発言すること、お許し下さい 」

 

義輝「…本来は、許可せぬが、現状は平行線を辿っているからの」

 

董卓「御使い様である天城様も、発言権はありますから」

 

義輝様は苦笑、董卓様はにこやかに笑い、双方より許可いただいた。

 

颯馬「ありがとうございます。 まず、我ら義輝一行は、董卓様を上にして力になりたいと願っています。これは、よろしいですか?」

 

董卓「はい、本当でしたら、天の御使いである天城様か義輝様を戴き、私達が配下になるべきなんですが……」

 

董卓様は、残念そうに顔を下に向ける。 

 

…良かった! そんなことになれば、本末転倒だ!!!

 

颯馬「 董卓様は、大事な事をお忘れです。 我らは、この大陸を無事に平和にすれば、元の世界に戻る者達ですよ? そのような無責任な奴らに大事な国を預ける心算ですか? 」

 

董卓「 ……………………………… 」

 

颯馬「 それに、董卓様は李儒様のため、御自身のために、この国を平和にしたいのでしょう? それを我らに託すのはなく、我らが支えて董卓様が御自分の思うように行えばよろしいかと。 もし、間違えていれば、そのときは容赦なく進言致しますので! 」

 

董卓「 ……では、天城様は、あなた方を私達の配下と扱えと仰るのですか? 私達のために天より来られたのに、危険な戦場へ身を投じるように命を下せと…………… 」

 

悲しそうに力無く俺に話す董卓様。 …本当に優しい方だ。だから、義輝様や俺達が全力で手助けしたいと思っていると知ったら、驚くのだろうか?

 

颯馬「 俺達は、命令をただ下し、高みの見物を決め込む気は毛頭もありません。兵や民達が苦しむのなら、同じ視線でその事を確認したいのです 」

 

俺は、董卓様の顔を見て語る。俺達の思いが真剣である事、戦場へ行く命令をうけても恨みをしない事、董卓様自身の治めた世を見てみたい事。

 

…………少し、背中の視線が痛いが、気にしない! 気にしない!

 

颯馬「…先程申しましたが、俺達は役割が終われば、この世界を去らなければなりません。 ですから、配下でも客将扱いにして下さい」

 

客将なら、配下としても縛られは少ないから、いろいろ動きやすい。

 

この世界で、何が俺の世界と同じモノがあるのか? 何が無いのか?

 

それを確認しなければ……………。

 

董卓「 わっ、わかりました! あ、天城様がそう申されるのであれば、私からは、何も言いません! はい! こちらこそ、宜しくお願いします!! 」

 

義輝「…コホン。 では、この足利義輝とその供回り十四名、客将として董卓様に忠誠を誓いましょう! 以後敬称は不要ですから 」

 

義輝様が、皆を代表して、董卓様に忠誠を誓う。

 

ついでに、義輝様は日の本より来ている皆にも、敬称は不要と申し渡された。

 

義輝様、いや義輝は、元々もっと堅苦しくなく皆と交わりたかったそうだ。

 

大陸に渡る理由も、その一つだったと聞いたが、いつも自由に動き回っていたようだから、そんな事に全然気付かなかった。

 

董卓「わかりました、皆様の命、お預かりいたします。 それから、先に来られた御使いの義輝さんや天城様達に私の真名『 月 』を預けますので。 あと、できましたら、私も敬称は無しで……」

 

賈駆「私はまだ、あなた達の事がよくわからないから、真名は信用を持ってたときに、預けさせてもらうわ」

 

張遼「ウチは『 霞 』や! 敬称は不要、以後よろしゅうな!」

 

その後、謙信殿達の紹介、月様や霞達の紹介となった。

 

月様達と初めて会う謙信殿達は、真名を預ける者かどうか各将次第ということになり、この騒ぎは収まりをみせる。 やれやれ…と、一息ついた。

 

月様より、天水城で宴を開くと聞いた後、卑弥呼より小声で伝言と巻物を受け取る。 姫武将の一人からだと聞いたが、正直、信じたくない話だった……。

 

◇◆◇

 

【 新たな仲間達との交流の件 】

 

〖 天水城の大広間 〗

 

☆☆☆

 

霞「いや~、謙信、いける口やないか! この城内で酒に付き合ってくれる奴なんて、だ~れもおらんかったから、無茶うれしいやん!!」

 

謙信「いや、私もこの世界で飲み仲間が出来るとは、思いもしなかったので嬉しい。 おっ、張遼殿! 杯が空いてます、さっ、どうぞ!」

 

霞「謙信、かた~い、かた~いでぇぇ! もっとやわらかくな! …それとウチの名は『 霞 』とよびぃ! 真名を預けたんやから、呼んでくれないと寂しいやんか……………グス、グス」

 

謙信「わかりました! 泣かなくても良いですから! 」

 

 

 

★★★

 

信長「わたしは~酔ってない~ぞ! キャハハハ!! 」

 

三太夫「 ほら、信長の姐さん! 部屋に行くよ? ほらぁ 」

 

信長「 やら! 颯馬! 颯馬に運んでもらうのら! 」

 

三太夫「 旦那は、董卓様いや月様と話をしているから 」

 

信長「 やら! 颯馬、颯馬の方がいいのら! 」

 

鹿介「 三太夫殿、某も手伝いましょうか?! 」

 

三太夫「 いいんですか? 鹿介の姐さん? 」

 

鹿介「 えぇ、それにおなごの部屋に三太夫殿が入るのは、些か拙いのではないですか? 」

 

三太夫「 うぐ、確かに…。 じゃあ、お願いします! 」

 

☆☆☆

 

紹運「 姉上、あの漢女とやらに連れられ、この地に来ましたが、本当にあの『 三国志 』の世界なのでしょうか? 」

 

道雪「 そうですね、書物に書いてあった通りの建築物、そして人物の名前から見れば、嘘とは思えません。しかし……… 」

 

紹運「しかし………?」

 

道雪「なんで、将が全員『おなご』なんでしょうか!」

 

紹運「あーー、そう言えば…」

 

道雪「紹運は、どうなんです? 私達の新たな主君になられる董卓様を始めとして、武将が全員美人やら可愛い娘。 恋敵が増える一方ですよ?」

 

紹運「私は、ただ颯馬と一緒に居たい。それだけなんです!」

 

道雪「 無欲ですね、紹運は。 それでは、私が颯馬殿をいただいても構わないという事ですね? そのままで良ければ、待っていればいいですよ? 」 

 

紹運「駄目です! それと、これとは違いますぞ、義姉上!」

 

道雪「…無欲より貪欲。 武芸も恋も己次第と覚えておきなさい!」

 

紹運「義姉上………わかりました!」

 

★★★

 

恋「…………はむ。 モグモグ 」

 

義清、信玄、信廉、宗茂、小太郎「ふぁぁ~~~ん」

 

ねね「恋殿! こちらに肉まんがあります! こちらを!!」

 

小太郎「恋様、私の方にも料理が沢山ありますから!! 」

 

ねねと小太郎が、自分達の方に興味を向くように料理を見せつけあう!

 

ねね「小太郎! 恋殿の給仕はねねの仕事です! お前は他の方に挨拶に向かえばいいのではないですか?」

 

小太郎「ねね様、ご心配をお掛けしますが、大丈夫ですよ! ご挨拶は全部しましたし、恋殿の給仕の許可は、月様から得ていますので!」

 

恋「……心配しなくても、いい。 全部、食べる…から」

 

ねね、小太郎「「  恋殿(様)!!!!  」」

 

☆☆☆

 

信玄「この可愛い生き物が、あの『 呂 奉先 』なのですか? 」

 

信廉「皆さんのお話だと、そうなりますね。」

 

義清「でも、とても可愛いのじゃ!!」

 

宗茂「…でも、一度戦場に出れば血の雨を降らす武力の持ち主。 うん、私も精進して、兄様に役立つように頑張ります!」

 

義清「そう言えば、お主も兄者の事を兄様というんだな?」

 

宗茂「兄様は、私の未熟なところを指摘してくれて、直すように力添えしただきました。 私は、尊敬の意味を込めて呼ばせてもらっています!」

 

義清「…うむ、その向上心は良し!! 私達も切磋琢磨して、兄者にお役に立つように頑張ろうではないか! のう?」

 

宗茂「はい!!」

 

信廉「………姉上、私達もうかうかしておれませんね」

 

信玄「信廉、こういう時こそ泰然自若にいる事です。 まだ、私達もこの場所にきたものの、どういう場所か把握していません。 まずは、しっかり情報を確認しつつ、行動を起こすのです」

 

信廉「はい!!」

 

★★★

 

【 義輝、光秀に刮目するの件 】

 

義輝「…………………………」

 

光秀「…浮かない顔ですね、義輝様」

 

義輝「光秀か、もう敬称を付けなくても…」

 

光秀「わかっていますが、そうすぐに直すのは難しいので、当分は敬称付きで呼ばせて下さい。 で、義輝様? 悩み事なら相談に乗りますよ?」

 

空の杯二つと酒を持ってきた光秀は、わらわに注いで渡してくれた。

 

こやつも颯馬の事で大分悩んでいるはずはずなのに、わらわに笑顔で接してくれる。 颯馬にお似合いの胆力じゃな……。

 

義輝「悩みはある。 しかし、まだわらわの中で整理が出来ておらぬので、答えられぬじゃ………。 すまんな」

 

光秀「いえ。 …私も同じ状態ですね。 義輝様に愚痴を聞いてもらおうと思いましたが、忘れてしまいましたから」

 

わらわに合わせてくれたのか、にこやかに杯を重ねて酒を勧める。

 

光秀「義輝様の悩みも私の愚痴も、この歓迎会には不要ですね。 今はこの仲間達と出会ったことを感謝致しましょう!」

 

わらわ達は、他愛の話をしながら飲み交わした。

 

☆☆☆

 

【 月、颯馬の片鱗を知り、新たに誓うの件 】

 

今、私は、とても、ドキドキしています………!

 

天の御使いにして、義輝さんの軍師、天城颯馬様。

 

颯馬様の主である義輝さんや天から来られた皆さんに、天城様の武勇伝を聞いたら、本当ですか?と何度も聞き返しては、驚くばかり!

 

敵の武将を捕らえても殺さず仲間に引き込む弁舌、兵や民達に好かれた人望、

数々の勇将、知将を策略で壊滅に持ち込んだ軍略、将の皆さんに対して見せた優しさ…………って、へぅ~~、思い出したら顔が熱~い!!

 

深呼吸、深呼吸。 …スー、…ハー、…スー、…ハー。 ケホッ! 

 

う…ん、少しは落ち着いたと、思うけど…………。

 

護衛に華雄さん、どうしても一緒についてくるという詠ちゃんと共に向かうと

天城様は、一人で飲んでいました。 前に一杯の酒をついだ杯を置いて。

 

月「天城様、飲んでいます?」

 

颯馬「 えぇ、いただいていますよ。 あんまり呑むと、明日の仕事に差し支えますからね。 えーと、月様、何かご用ですか? 」

 

董卓「いえ! あの、その…少しお話させていただこうと思いまして… 」

 

颯馬「 そうですか、それは、すいません! 華雄殿や賈駆殿と来られたので、何か大事な話があるのかと勘違いしてしまいました 」

 

頭をかいて、謝罪する天城様。 私は、そばに置いてある杯を不思議に思い問うことにした。 誰も居ないのに、置いてあるその意味を知りたかったから。

 

すると、天城様は悲しそうな顔をして、話をされました。

 

おば様の先生になられる卑弥呼様は、天城様の仲間をお連れした恩ある方。

 

その方より伝えられた伝言があり、それを聞いて私は、浮かれていていた事に後悔しました…。 仲間のお一人が病で亡くなられた事とその方よりの遺言。

 

天城様に軍略を教えてくれた、先生のお一人だったそうで……。

 

元々、体が弱い方だったが、その軍略の切れ味は凄く、天城様も度重なり苦戦を強いられた、と苦笑しておられました。

 

それでも、なんとか降して仲間に入ってもらい、いろいろと学ばせてもらったと、懐かしそうに語ってくれたんです。 その方には、仲の良い親友が二人いて、いつも三人で行動していたと。 丁度、私と詠ちゃんみたいに………。

 

卑弥呼様は、その三人もお連れてするつもりで立ち寄ったそうなんですが…。その方の寿命は……既に尽きようとしていた、そうです……。

 

卑弥呼様を初めて見て、驚いた親友のお二人は、身を挺してその方を守ろうとしたけど、その方自身に大丈夫と言われ、引いてもらったといいます。

 

★☆ ??視点 ☆★

 

??「…コホ、コホ。 アナタは、颯馬さんのところまで行くのですか~?」

 

??様と??ちゃんに看病してもらったが、??さんの寿命は、あと少し。

 

本当は、三人で颯馬さんの手助けしたかったんですけどね~。

 

でも、最後の願いが通じたか、変な御使いさんが来てくれました~よ~。

 

??さんの見たあの世には、こんな御使いなんて、居なかった気がするのですが……………???

 

卑弥呼「うむ、本当は三人連れて行こうと思っていたのだが。 すまぬ、私の行動を移すのが遅かったようだ。…ダーリンの力でも及ばない程とは」

 

??「アナタが落ち込み必要は、ないです~よ~。 これが??さんの寿命なんですから~。 でも、二つ程、アナタに頼んでも良いですか~?」

 

卑弥呼「死に行く者への餞、出来るだけの事はするぞ!!」

 

??「ありがとう、ございま~?! ゴホ! ゴホ!!」

 

口から、吐血が増えました、か。 ??さんの寿命がきているなら、早くあれを伝えなければ…いけません、ね。 きっと、颯馬さんに、役に立つは、ず。

 

枕元に置いて、あった、巻物と最後の言付けを、頼んだんで~す……。

 

卑弥呼「では、確かに預かり、天城颯馬に渡そう!」

 

御使いさんは、そう言って、庭から出て、いきまし、た…。

 

あ~、眠い、眠たい。 でも、目を閉じると、二人が、悲しむし、きっと、颯馬さん、も………………………………。

 

☆★ ??視点終了 ★☆

 

天城様が、置いてあったお酒は、その方に向けての弔い酒だったんですね…。

 

私は、すぐさま謝罪しました。 将の皆さんはそれを知って離れていたのだと

今頃になって分かるなんて……。 私は情けないです!

 

天城様は、笑って『 気にしないで 』って言ってくれましたが、目が真っ赤になっていたのは、流石に、わかりましたよ…。

 

この後で、詠ちゃんと共にその『 巻物 』という、卑弥呼様から届けられた丸まった変わった書物を、見せていただきました。

 

文字は、私達が使う文字に似たようなものはありましたが、サッパリ読めません…。 詠ちゃんも、顔をしかめて見るのですが……。

 

見かねた天城様の説明と可愛い図解入りの絵で理解したことは……。

 

『はんべえさんがいとしきそうまさんにささげる』の文。

 

『じゅうめんまいふくのじん』という兵法の簡単な説明。

 

詠ちゃんは、天城様より説明をもっと長く聞いて、質問したり、悩んだりして

結果、出てきた言葉は……。

 

詠『……天才。 この将と戦っていたら、確実に負けてた』

 

あの自信家の詠ちゃんが、あんなことを言うなんて……………。

 

天城様は、この巻物の持ち主に勝てる軍略を持つ人、仲間のために悲しむ事が出来る人、最初お会いしたときから、私の心に入って来た不思議な人…。

 

私は、天城様にお礼を言って、離れました。

 

天城様の弔いの儀式を邪魔してしまいましたが、その奥底を覗けたことは、収穫、なんでしょうね…。 部屋に戻ったら銅鏡に向かい、その方の御冥福を祈ると同時に決意しました。 『 天城様は、私達が必ずお守りします』…と。

 

★★★

 

【 颯馬、昌景の過去に救われるの件 】

 

卑弥呼より、もらった巻物と伝言。 それと共に、軍略を歳久殿と一緒に教えてくれた『 竹中 半兵衛 』殿が亡くなられた、と言う知らせ。

 

顔を見て、言葉を交わし、肌を重ねた、愛しき女性の一人。

 

俺の身を案じ、最後の力が尽きるまで、書き続けたと思われる兵法書……。

 

その証拠に、最初は力強かった文字が、少しずつ薄く弱くなり、最後はかすれていた…。 ところどころに、策の破り方、防ぎ方まで書いて…。

 

あなたは、俺の事を何て考えていたのだろうか? 寂しかったのか? それとも、あなたを省みず自分の事ばかり勤しむ、俺を恨んでいただろうか?

 

いろいろ考えるが、その度に目の前がぼやけてしまい、袖で拭う。

 

昌景「 颯馬、横を良いか? 」

 

颯馬「 ……………… 」

 

昌景殿は、俺の沈黙を肯定と受け取り、横に座る。

 

昌景「 ………………… 」

 

颯馬「 …………………… 」

 

昌景殿は、ただ横で静かに酒を呑む。 ……何も喋らず、何も聞かず。

 

そんな具合で、半刻(一時間)過ぎ、俺はたまりかねて、言葉を発する。

 

颯馬「 昌景殿、一体何をしに、ここへ来られたのですか? 」

 

昌景「 颯馬の気持ちが分かるから、そのまま、横に居たまでさ 」

 

颯馬「 昌景殿? 」

 

昌景「 儂も、好きなおなごと死別した事がある。 許婚だったがな…。  戦に行って無事に戻れば………と、よくある展開だ 」

 

颯馬「 ……………… 」

 

昌景「 当時、御館様は今の御館様でなく、その父上だった。 その方は、無類の戦好きでの。 隣国に戦ばかり仕掛け、国政を省みることもなかった 」

 

昌景殿は、手を組んで目を瞑り、昔の記憶を掘り出すように語り出す。

 

昌景「 …冬将軍が訪れて、山々が真っ白の時期に、御館が戦を開始したのだ。 その時期に行うのはこちらの不利と、説いてみたが、逆に臆病者呼ばわりされ、出陣する事になってな。 あの頃は、儂も若かった…… 」

 

その頃を思い浮かべたのか、昌景殿の目が険しくなる…………。

 

昌景「 今度の戦いは、生きて帰れんかもしれん。 そう思った儂は、許婚に理由を説明し、この決まり事をなかった事にしてもらいたい、と一方的に頼み込んで出陣した…。 戦は、思っていた以上の苦戦だったが、儂は何とか命を拾え、また帰国する事ができた。 ……だが、待っていたのは、許婚の冷たくなった遺体だったよ……… 」

 

昌景「 その許婚はな、寒い夜に百度参りを行ったのだ。それも、百日間…もな。無論、家族や友が止めさせようとしたが、笑顔でそれを制して続けたそうだ。 儂の生死が伝わらないのなら、出来る事をして待ちたい、と言って 」

 

昌景殿は、杯の酒を飲み干すと、手酌で注ぎ足す。

 

昌景「 儂は、急いで許婚の屋敷に飛び込みと、皆が泣きながら集まっているではないか。 ゆっくりとその場に行くとな、許婚が眠っている様に横たわっていた。 傍に寄ると、不思議と許婚の顔が少し笑顔になってな…。儂は、男泣きに泣いたものさ……… 」

 

忘れていた。 大事な人との死別とは、決して俺一人だけでは無いことを。 昌景殿に、何と声を掛けようと思っていると………。

 

昌景「 じゃがな、もし、颯馬が許婚を可哀想など思うなら……論外だ! 」

 

俺は、驚いて目を見張る!!

 

昌景「 その許婚が自分に出来る事を命懸けで行ったのだ。儂らは、戦場で命を落とす行為も、武将の生き様などと大義名分を挙げる者もいるが、実のところ、愛する者達を守りたい心があるからだ! 儂がそうだったからな… 」

 

昌景「 武将の我らがこのように思うのに、守られている者は黙って居られる訳がない! 自分の出来る事を模索して、その行為に命懸けで行い、愛する者の一助にと…な。 許婚は、儂を助けるために命を落とした。 だから、儂が無事に戻ってきたのを見て、満足して死を迎えいれたのだ。 それを可哀想で済ますのは、許婚の生き方に対して失礼な行為だ。 だから、儂は許婚のために怒る。それに、こうして長生きさせて、もらっているのだからな! 」

 

よっこらせっと…いつもの若々しい昌景殿に珍しく、掛け声をかけて立ち上がる。 その弱々しい態度に、思いの深さを知る。

 

昌景「 ……そうそう、経験豊富の年寄りからの苦言だが、愛する者の為に命懸けで行った行為は、必ず役立つし、決して無駄にしてはならん! それだけでも、覚えておいて損はないからな!! 」

 

いつもの昌景殿に戻られ、颯馬も早く休めと案じてくれながら、割り当てられた部屋に向かって行った。

 

俺は、もう一度、巻物を手に取り、ジッと見る。

 

冷静に見れば、小さな吐血の跡。 中には、字が少し歪んでいたり、水滴に濡れたか大きく滲んでいるものもある。 体勢が上手く取れなくなったから字が歪んだのかもしれない、滲んでいるのは、自分の不運に涙した跡かも………。

 

俺は、卑弥呼より伝えてもらった言葉を思いだす。

 

『 颯馬~さん、また、お会いしましょう~! 』

 

前に置いてあった、主の居ない席の杯を飲み干すと、巻物と一緒に部屋にもどる。一晩、じっくり読み、自分の糧に変えよう。

 

いつの日か、どこかで会えたら、誇れる俺を見てもらうために……………。

 

 

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あとがき

 

今回、コメントをいただき、ありがとうございます!

 

最初のコメントの方が、辛口だったのでドキドキしながら、みましたが普通のコメントで、ホッとした次第です。

 

作品も今週の投稿で、来年までできるか分からないということと、新章に移るので、出来る限りまとめてしまえということで、詰め込みました。

 

また、次回も読んでいただければ、嬉しいですので、宜しく御願いします。

 

 

 

 

 

 

 


 
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