弐之四 『 族、討伐戦 Ⅱ 』
江都を出発してから程なく。雪蓮達の軍は賊の進路上に回りこみ布陣することに成功していた。報告にあった賊、三百に対しこちらの兵力は千、と三倍以上を用意していた。
「冥琳、たかが賊相手に多過ぎるんじゃない?」
「そうでもないよ。」
雪蓮の疑問にそう答えたのはこの戦いにおいての立案者である狐燐であった。
「もし、本当に術者がいてこちらの兵にも術を掛けてきた場合を考えれば、数的有利が簡単に覆らないだけの数を用意するのはいい方法だよ。」
「と、いう事だ。だが、なぜ三倍なのかは私も気になっている。よかったら説明してくれないか?」
と狐燐の意図を窺うと、どう説明すべきか思案してこう切り出す。
「例えば、新しい武器、もしくは戦術なんかを手に入れたとする。そしたらどうする?」
「???…まぁ、本当に使えるものかどうか試してみるわね。」
「そうだな、どこまで実用的か試してみなければ、いざという時に役に立たなければ意味も無いしな。」
「うん、それで今回の策はそこを突くためのものなんだ。」
狐燐の言い方にますます訳が分からないといった二人に、さらに説明を続ける。
「つまり、この術者はまだ力を手に入れたばかりってこと。自分の限界、術の限界を理解していない。はやい話が素人って事。」
「ふ~ん。でも、この数が相手の限界を超えてるってどうして言い切れるわけ?」
「もっと高位の術者ならもっと分かりにくくするからね。例えば相手の人格を残したまま操るとか、城の人間丸ごと掌握したりとか。」
「なるほど。では全軍で畳み掛ければ勝てるということか。」
と、狐燐の説明に納得した二人だったが狐燐の策はまだ続きがあり、それを伝える。二人とも驚き反対もしたが狐燐に説き伏せられ、渋々納得する。それこそが狐燐の策においてもっとも重要でありかつ外せないものであった。
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「・・・来たわね。」
雪蓮達の布陣した軍の前方に件の賊が現れたのは予想していた刻限の倍はかかった頃だった。
「雪蓮、目的と合図は分かっているな。」
「ええ、ばっちりよ。」
「なら前線は任せるがくれぐれも無茶はするな。」
「それも分かってるわよ。」
それだけ言うと、雪蓮は部隊を指揮するために前線に立つ。生前に母、孫堅がそうしたように、王自ら兵を率い戦うために。
「全軍!!突撃!!」
母から受け継いだ『南海覇王』を掲げ叫ぶ。それに応えるように雄叫びを上げて兵達はその背に続いた。
あとがき
ここ数日頻繁に頭痛に襲われ、とりあえず痛みが無いうちに出来たとこまでを投稿することにしました。
本当はガッツリ長文書きたいけど、かなりつらい。
てなわけで今回はここまで。ただ、次回は少々時間かかっても長めに書く予定です。
では、また次回。
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頭痛が痛い。またも短文になってしまった。
注:オリ主作品です。一部オマージュもあります