No.637634

見敵必殺 Search & Destroy

i-pod男さん

ああ・・・・大学の願書作りが(泣)

2013-11-17 14:22:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:741   閲覧ユーザー数:737

MP5を肩に掛けると、USPを抜いてフラッシュライトとレーザーの電源を入れた。LEDの眩く白い光が薄暗い陽光が届かないガレージの一角を照らし出した。

 

「まずはこの中で手掛かりの捜索しましょう。捜査は私達の専売特許だし。」

 

「だな。どこから始める?」

 

「まずガレージだ。」

 

田島の質問に俺が口を開いた。

 

「こんなデカい家だし、燃えてはいたが、大型のテントに使うキャンバスも幾つか見つかった。恐らく一心会の連中は避難民と一緒にここから脱出したんだろう。中に残ってる奴はいないと考えるのが妥当だ。」

 

ゆっくりとガレージ内に足を踏み入れ、銃に装着したフラッシュライトで中を捜索する。誰もいない。

 

「道具が散らばっているって事は、修理でもしていたんだろうな。ハンヴィーのスペア・タイヤが二つ転がってる。他の車がタッチされてないって事は、全部EMPによってやられたみたいだ。ガソリンの入ったポリタンクでも残ってりゃ良いんだが。」

 

田島がすり減ったタイヤを足でどかし、座り込んだ。

 

「正門を突破した時のタイヤ痕は見たか?」

 

「ああ。ハンヴィーのタイヤと同じだ。血が付着してハッキリとセメントに残ってたよ。リカ、間違い無く静香は存命中だ。」

 

その瞬間、ガシャンと音がした。何かが壊れる音が。上か。さて、テロリストかヤクザか、はたまた避難している市民か。どちらにせよ、無視は出来ない。

 

「どうやら火事場泥棒と言う名の先客がいるみたいだな。」

 

俺の好戦的な笑みを見て、リカは太腿のホルスターに収納されたシグを引き抜いた。俺もUSPのスライドを引いて装弾を確かめると、構え直した。室内ではハンドガンの方がサブマシンガンやライフルとは違い小回りが利くし、いざとなればシングルハンドでも命中率に支障を出さずに撃てる。

 

「田島、ここの守備をお願い。広いし、後ろから回り込まれるなんてのは嫌だから。」

 

「了解。」

 

小柄なリカがポイントマン(前衛)、俺が後衛を勤め、屋敷内に侵入した。床は木製のフローリングに絨毯が敷かれている。木が軋む音を出さない様に絨毯の上を歩こうとしたが、割れたガラスの破片が踏む度にジャリジャリと音を立てるので、二十歩前進するだけでも一分近くは掛かった。

 

「すぅ〜〜〜〜、はーーーーー・・・・・」

 

俺はリカに合わせて呼吸を整える。自分でも何故かは分からないが、リカを引き寄せてキスした。葉巻独特の甘い匂いが吐息に混ざって俺の鼻孔に流れ込んで来る。

 

「いきなり何?」

 

不機嫌そうに俺を睨むリカ。こう言う顔もまたたまらなくイイんだがな。

 

「興奮剤だ。久し振りだったしな。」

 

「そー言う事は後にして。」

 

死角となるドアの後ろや、他の隠れられそうな所を探した。屋敷の中は庭や正門付近に比べると幾らかはマシだが、荒れている事に変わりは無い。家具はひっくり返され、破損し、窓ガラスも割れ、大抵の金目の物は恐らく盗まれただろう。広い客間から中庭らしき庭園に続く所が少し開かれたガラスの引き戸から見えた。

 

ジャリッ

 

カチンッ・・・・

 

ガラスを踏みしめる俺達以外の足音、そして金属音。脳内の警報全てが凄まじい勢いで鳴り始めた。する事は一つ。

 

「伏せろ!!」

 

リカの襟首を掴んで本革で作った大型ソファーの後ろに隠れた。銃声の嵐が突如として巻き起こる。ソファーに詰められた羽毛も着弾と同時に空に撒き散らされ、粉雪の様にヒラヒラと落ちて来る。

 

「NVG(暗視ゴーグル)でもあれば楽なんだがな・・・・」

 

サイレンサーを銃口に取り付けながらぼやいた。こんな状況にいながらも我ながら随分と能天気だなと思う。銃声から察するに、恐らくコイツらはどこからか銃を手に入れて碌に訓練もしなかった素人だろう。マガジン一本分撃ち尽くす勢いで連射音が続くのだから。音から察するに5.56ミリと時折12ゲージ、そして9ミリ弾。

 

「どうする?」

 

「弾なら一応あるけど、あんまり使いたくはないわね。」

 

「今使わなくていつ使うんだよ?」

 

マズルフラッシュが見えた所に適当に銃弾を二発ずつ散撒いた。あいつらが弾切れになるのを待つのも良いが、それまでカバーとして使っているこの哀れなソファーが保つかどうかだ。銃声が鳴り止んだ所でUSPを左手に持ち替え、MP5を右手に構えた。片手じゃ保持し難い上に命中率もアレだが、左腕と右腕を重ねて交差させ、支点を作る事である程度安定させる事が出来た。

 

「行くぞ。」

 

左手はUSPのセミオート、右手はMP5の指切りバーストで壁やらキャビネットが穴ぼこだらけになって行く。百合子さん、すんません。と、心の中で両手を合わせた。

 

「ぅあっ!?」

 

一人仕留めた。

 

「ぐぅっ・・・」

 

「あっ・・・・・・」

 

二人、そして三人目。壁に視界を一部遮られてハッキリとは見えなかった寝室らしき部屋からライフルを構えた男が降りて来た。

 

「おやすみ。」

 

しばらく待ったが、銃声も足音ももう聞こえない。後一人、二人はいそうなんだが、探してるうちに静香達がどんどん離れてしまう。ガレージに戻ると、田島から少し離れた所に腹に銃弾を三発食らった哀れなチンピラが見えた。右手には死して尚握り締めたトカレフが握られている。心の中で合掌する。

 

「とりあえずこれで恐らく全員だろう。さっさとトラックに戻ろうぜ、あそこに起きっぱなしにして置き引きされないか気が気じゃないんだ。」

 

田島は立ち上がってトラックの方に戻り、リカと俺ももう一度だけざっと中を見回してからトラックに乗り込んだ。だが、田島は直ぐにバリケードに使われていたコンクリートのブロックの影に身を潜めた。

 

『トラック、敵影三つ。全員武装。』

 

身振り手振りでどうなっているかを説明する。こんな時にか。まあ、あれだけ銃をバカスカ撃ちまくってたら気付くだろう。暗くて見えなかったが屋敷の中を物色していた奴らの仲間っぽい。俺もチラリとだけトラックを止めた所を見た。ガラの悪そうな男三人がトラックに乗ろうとしていた。一人は開襟シャツから桜の代紋らしき刺青が覗いている。クレー射撃の——正確にはダブルトラップと言う種目——で使う上下二連のショットガンを持っていた。あのトラックの中には俺の『荷物』も入っている。流石にあれを取られちゃマズい。

 

「殺すか。」

 

俺はMP5のアイアンサイトで狙いをつけ、至極無感動に引き金を引いた。乾いた銃声と共に三人は例外無く喉や眉間などの急所を9ミリ弾によって貫かれ、糸が切れたマリオネットの様にバタバタと倒れた。

 

「ほ〜、こいつら桜庭会の奴らか。刺青が見えたからまさかとは思ったが。」

 

倒れた奴を仰向けにひっくり返してさっきの刺青を確認した。一心会と同じ位危険視していた暴力団の組員だ。

 

「結構危ない橋を渡りまくってる連中だとは聞いてたわ。ヤクだろうと何だろうと、金になるなら何でもする、外道の風上にも置けない様な奴らよ。一昔前は、ワルにもワルの掟って物があったのにね。」

 

「まあ、今となっちゃ動く死体の仲間入りだろう。金で雇われた連中ってのは殆どの場合目先の事しか気にしてないしな。」

 

一人一体ずつ死体を路肩に向かって無造作に蹴り飛ばすと、持っていたショットシェルや匕首、バタフライナイフなどの使えそうな物を奪って移動を開始した。本来ならあのバリケードを突破したい所だが、折角の『新車』をお釈迦にしたくない。陸上自衛隊が使う対戦車弾、通称『パンツァーファウストIII』があったが、これもいざという時の為に取っておこう。何よりここで使うには音がデカ過ぎる。

 

「隣家の方も見てみるか?脱出するとすればそこ位しか無い。広い空き地が幾つかあったのを覚えてる。物資も運ぶとすればそこら辺だろう。この屋敷の広さを考えたらあり得なくはない。」

 

「でも、大丈夫なの?一心会って言ったら、警察でも目を光らせてる相手よ。私達が出向いて歓迎されない可能性は無いとは言えないでしょ?」

 

「大丈夫・・・・・とは言い切れないが、」

 

「じゃあ」

 

「その筈だ。空港では他の隊員がいたから詳しくは言えなかったが、携帯が使えなくなる前に何度か静香以外にも電話していたろ?強力な友達がいるって。」

 

「もしかして・・・・」

 

察しが早いリカは直ぐに俺の言わんとする事を理解した。

 

「ああ。あの時電話していたのは、憂国一心会会長夫人、高城百合子さんだ。後ろに積んであるバッグの荷物も、リカが貸し出した銃も、彼女のツテで手に入れた。あの人はそれだけの力がある。独身時代、ウォール街でエグゼクティブの護身術コースに通っていたらしい。射撃の腕なら、俺やリカと同じ位だと思うぞ。少なくともそこらにいる人間よりずっと頼もしいし、只でやられる様な人じゃない。」

 

俺は一呼吸して、間を置いてから再び続けた。

 

「彼女が死んでいなければ、ある程度の情報と一緒に物資も確保出来る可能性がある。戦地並みの被害状況を見て分かったと思うが、生存率は低い。ハイリスクハイリターンのギャンブルになるだろう。が、やってみる価値は有る。」

 

リカと田島は暫く沈黙していた。まあ、無理も無いわな。百合子さんは一心会会長夫人と言う俺達とは立場的には対極の存在である。今更とは言え、会いに行くのは多少抵抗はあるだろう。それに、彼女が俺の事を会員や旦那にに喋ったとは思えない。もし彼女が俺の事を知らないと言ったら、その時点でゲームオーバーだ。

 

「・・・・・行きましょう。静香の命には変えられないわ。」

 

「仕方無い、付き合うとしますか。」


 
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