次の日の朝、少し早めに起きた俺は、散歩をしようと天幕を出た。
周りには見張りの兵士たちが数人いるだけで他には誰もいない。
俺は村を出て少し歩いて人のいない所でいろいろと思い出していた……
龍次「…此処に来てから何日か経つが、向こうでしていたトレーニングしてないな……」
こちらに来てからというもの毎日が忙しく驚くことばかりだった…
龍次「まあ、向こうにいても鬱陶しいだけだけどな」
そう、俺は7歳の頃から父さんに剣道をさせられていた…小さい頃に爺ちゃんが死んで、
父さんが、爺ちゃんに教わった剣術を教えてやろうと言い出したのを今でもハッキリと覚えている。
そして俺が、中学に上がる前に事故で父さんが亡くなった……、母さんは父さんに教えてもらった剣術を続けろと言っていた。
もちろん、やめる理由なんかないから中学で、剣道部に入り、家でのトレーニングも自己流でしていた。
父さんから教わったのは、俺の代で38代目昇華流剣術だ、そうだ。
そして中学での初めての大会に出た……俺が一番初めに勝負することになり、
俺は勝ち抜きで全員を倒した…人とまともに対峙したのは始めてだったが緊張もなく、相手の動きも遅すぎる位だ。
そのまま勝ち進んで行き全国大会で優勝を飾った。
が、問題はそこからだ。
中学1年で全国大会優勝というのが目立ったのか、
大会が終わってからというもの記者やテレビ局の奴等が学校や家に来てインタビューをしようと必死だった。
しばらくすれば納まったが納まる頃にはまた、大会があるのだ。
そして優勝→記者→大会、このループの所為で俺は中学をゆっくり過した記憶がない。
流石に鬱陶しかったので一人の記者のインタビューに答えて、満足して帰って貰おうと思ったが,
逆効果だった、記者たちは「答えてくれる」と思い込み、次の日からはいつもの2倍の記者が家の前で待っていたのだ。
だから、こちらに来れたのは俺にとって良かった事なんだろう、と思っていた。
龍次「それにトレーニングしなくても村の手伝いや、馬に乗ってるだけでも結構つかれるしな」
そんな事を考えていたら後から声が聞こえてきた。
穏「見つけました~~、此処で何してたんですか~?」
龍次「朝早く起きたんだ、だから散歩してただけだよ、で?何か用事か??」
穏「はい~、ご飯をお持ちしたのですが部屋に居られなかったので探してました~」
龍次「分かった、じゃあ戻るよ」
俺と穏は村へ戻った。
俺は朝食を済ませた後、直ぐに村の復旧を手伝った。
大方、昨日の内に終わっていたのでさほど時間もかからず昼には村を出ることになった。
瑠璃「待って!お兄ちゃん!!」
村を出る直前に声を掛けられ、振り向くと、そこには昨日必死に俺に訴えてきた瑠璃ちゃんが居た。
龍次「どうしたの?俺に何か用事??」
瑠璃「うん!……これ!!」
そう言って瑠璃ちゃんは木や石などで作られた首飾りを差し出してきた。
龍次「これは?」
瑠璃「コレはね、お父さんにあげようと思って作ったの!でも、お兄ちゃんに上げる!約束してくれたから……。」
龍次「……そうか、ありがとう」
首飾りを受け取り、瑠璃ちゃんにお別れをして、村を後にした。
冥琳「こんなに早く村の復旧が終わるとは思ってなかったよ、龍次殿には礼を言わねばならんな」
村を出て馬に乗って歩いていると冥琳が話しかけてきた。
龍次「俺は少し手伝っただけだよ、他は何もしていない」
冥琳「そんな事はない、兵を指揮していたのは龍次殿だろう?穏からの報告書を読んだが、指揮能力は高いようだ、普通なら復旧には2,3日掛かるほどの被害だったのにほとんど1日で終わらせたのだ、礼を言うには十分だとおもうが??」
雪蓮「そうそう、冥琳が褒めたいって言ってるんだから素直に受け取っときなさいよ♪」
冥琳「雪蓮!?私はそんな事、一言も言ってないでしょう!!」
雪蓮「そう?私にはそう見えたけど??ねえ穏?」
穏「そうですね~、冥琳様に褒めて頂けるなんて羨ましいですよ?龍次さん。」
他愛ない会話をしていた。
刑州南陽に着いた時に、門の兵士が雪蓮と何か話していた。
兵士「孫策様、袁術様がお呼びです。直ぐに向かってください」
雪蓮「また~?私達今返ってきたばかりなのよ?勘弁してよね~ほんと」
龍次「(袁術ってこないだ聞いた、此処の主だったな……)」
少し気になったので、穏に少し聞いてみることにした。
龍次「袁術って、今は俺達の主だよな?」
穏「そうですよ~、何かあると面倒ごとは全部私達に押し付ける子です」
俺は「そうか」とだけ言い雪蓮のところに行った。
龍次「雪蓮、袁術のところに行くんだろう?俺も行ってもいいか?」
雪蓮・冥琳「「駄目!」」
二人が声を揃えて反対してきた。
龍次「何故だ?」
冥琳「龍次殿が天の御遣いだとバレれば袁術は貴方を自分のところに置くかもしれないからよ!」
龍次「それは絶対にない。」
俺には言い切れる根拠があった。
いくら袁術が高い地位に身を置いていようと、天には届かないからだ。
穏からもどういう人物か聞いてある。
此処では俺の知る人物と多少異なるみたいだからな。
雪蓮「………わかったわ」
冥琳「雪蓮!!どうして?」
雪蓮「勘よ、でも約束して、絶対に袁術のところに行かないって」
真剣な目つきでこちらを見る雪蓮に俺は「大丈夫だよ」とだけ言っておいた。
それから雪蓮と二人で袁術のいる部屋まで足を運んだ。
俺と雪蓮は袁術の部屋に着き、中に入った。
そこには金髪の子供が一人とそばに居る青色の髪の女性が居た。
龍次「………おい…」
雪蓮「な~に??」
袁術に聞こえないように小声で話す。
龍次「まさかとは思うが……アレが袁術なのか…?」
雪蓮「そうよ?なんで??」
…………絶句……
……正直に信じられなかった……
目の前に居るのは袁術で、総大将で、子供なのだ。
龍次「(勤まってんのか??君主としての役割……)」
俺が色々考えている時に袁術が話を振ってきた。
袁術「何をしておる!早う入れ!!」
龍次「(うわ~~、凄く偉そうだ…、ああ、偉いのか。)」
雪蓮「はいはい、で?今度は何の用事?私達今返ってきたばかりで疲れてるの」
袁術「そうかえ?でも休んでる暇はないのじゃ!」
張勲「盗賊が近くくに出没してるんですよー、今から出向いて倒しちゃってください」
入るなり無理難題を吹っかけてくる袁術たち、…なるほどこういう奴等か…
龍次「袁術さん?ちょっといいかな。」
袁術「なんじゃ、お主は!」
龍次「俺の名前は、昇華龍次だ、天の御遣いの者だ」
俺がそう名乗ると二人が驚いた(雪蓮と張勲)
雪蓮「ちょっと!なんでわざわざ言うのよ、名前だけでいいじゃない!」
張勲「天の御遣いって、ナントカって占い師の言っていた??」
袁術「のう七乃?何なんじゃ?それは」
張勲「実はですね、最近噂になってるナン「菅輅だ」…その人が言うには、流星と一緒に来て乱世を鎮めちゃうんですって」
袁術「そうなのかえ??……なら童の所に来るのじゃ!!そして童の為に働くのじゃ」
自信満々に勧誘してくる袁術とは裏腹に、雪蓮は嫌な流れになったと顔に出ている。
龍次「断る。」
迷いのない声で断言した。
不満があるようで、袁術は言い返してきた
袁術「これは命令なのじゃ!!童は偉いのじゃ!命令には逆らったら打ち首なのじゃ!」
龍次「ほう……、貴方は自ら天の敵になると……そう言うことですか??」
俺は袁術を睨み脅しをかけた、まあ、袁術に通じるか分からないが……
そして俺は言葉を続けた。
龍次「分かるか?この乱世の中で天に敵対して長く生きられると思っているのか?それに…」
追い討ちをかけるように袁術に言い放った。
龍次「君の下では乱世を鎮めるのも厳しいだろう、君がいかに偉くても天には届かない…この意味は分かるだろう??」
袁術「うう~、な、七乃!アヤツは怖いのじゃ~」
張勲「大丈夫ですよ~、美羽さま、昇華さんの鬼畜~、変体~」
なんか凄く腹が立ったがこの際気にしないでおこう。
袁術も諦めてくれて、賊の事も袁術にナントカしてもらう形で話し終えた。
その後は、袁術の部屋を出て冥琳達の所に戻った。
続く…
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遅くなりました。
すいません><